それでも世界が続くなら、1stシングル『僕らのミュージック』をリリース

それでも世界が続くなら | 2014.05.09

 インディーズ時代から熱い支持を集め、昨年9月にメジャーデビューして以来、ますますリスナー層を広げている「それでも世界が続くなら」。多くの人が胸の内に抱えつつも、真正面から見据えることがなかなかできない不安、苛立ち、孤独、絶望などを生々しく抉るバンドだ。彼らの魅力を改めて鮮やかに示しているのが、1stシングル『僕らのミュージック』。印象的なメロディやエモーショナルなバンドサウンドに彩られた4曲は、様々なことを我々に語りかける。今作について篠塚将行(Vo & G)に話を聞いた。

EMTG:前にお話をした時に「曲は思っていることのメモ」っておっしゃっていたのがすごく印象に残っているんですけど、今回の曲もそういうものなんでしょうね。
篠塚:はい。最近思っていたことがこれっていう感じですね。でも、そういうのが僕のスタンスっていうより、音楽ってそもそもそういうものだと思っているんです。だから好きなんですよ。でも、そういう音楽ばかりではなくなってきているのも感じていて。「こうやったら売れるんじゃないか?」とかいうやり方が増えているから、逆に僕みたいなのが興味を持ってもらえるのかもしれないですね。「こうすれば響くものになる」って、さも手品のタネを知っているかのように音楽を作ることに、僕は抵抗があるんです。理屈で作る人がいてもいいと思うけど、僕みたいに理屈じゃなく作る人がいてもいいじゃないですか。僕にとってはこれが普通のことなんですよね。
EMTG:篠塚さんと同様の考え方で創作をしているミュージシャンは他にもたくさんいると思いますけど、よりそういう考え方に対して意識的であるように感じるんですよ。
篠塚:なるほど。他の人と較べたことがないですけど、そうなんですね。
EMTG:「僕らのミュージック」は、そういう姿が刻まれている曲だと思いました。自分の作った音楽が少しでもリスナーの役に立つものになって欲しいっていう気持ちもこもっていますよね?
篠塚:まあ、そうですね。そういうことを言われるのが気恥ずかしくはあるんですけど(笑)。嬉しいのはたしかです。でも、僕のやっていることって、結局はお手紙を書いているようなもんなんです。「これはすげえいい手紙ができたぞ! これは絶対に読んだ人が感動するはずだ。これを額に入れて大事に取っておくだろう」ってならないんじゃないですかね? 僕もそんな感じです。聴いてくれて何かを感じてくれるのは嬉しい半面、「そうじゃねえんじゃないか?」っていう気持ちがあるんです。
EMTG:でも、それでも世界が続くならの曲って、リスナーの心にすごく届いているはずですよ。篠塚さんが個人的なことを描いているにせよ、リスナー各々が自分のことのように聴いている部分があると思いますから。
篠塚:そうなんですかね? でも、僕は結局、音楽を聴いて感動できるその人がすごいんだと思っているんです。音楽なんかで涙を流したり、テンションが上がるその心を持っているやつがすごい。だから作るやつは普通だと思っています。やりたくてやっているだけだし。それは金にしたいやつも、気持ちをこめているやつも同じ。みんなやりたくてやっているだけなんですよね。
EMTG:でも、やりたくて作ったものが、リスナーの心を動かすとは限らないわけですよ。
篠塚:まあ、そういうものを選んでいるのは、聴く人ですけどね。
EMTG:出会ってくれたって、素敵なことじゃないですか。
篠塚:僕もそう思います(笑)。
EMTG:それでも世界が続くならは、それがやれているんじゃないですか?
篠塚:そうですか? いや、申し訳ないです(笑)。
EMTG:みんな聴きながら、いろんなことを考えているはずですよ。
篠塚:僕、岡本太郎が好きで、彼の本を読んだりもするんです。でも、本ってそれを書いた人の言葉ですけど、読んだ時に向き合っているのって自分なんですよね。読みながら考えているのは書いた人のことじゃなくて自分のこと。音楽もそうだと思うんです。聴いた人が自分と向き合うために聴くのが音楽。みんなきっと自分のために音楽を聴くんですよね。僕はそれがすごく好きなんです。曲を聴いて好きになって、バンドを応援したりしますけど、実は自分のために聴いているっていうことを自覚して、自分にエネルギーを使って欲しいと思います。だから「作る人がすごい」って持ち上げられることに僕はすごく抵抗があって。そういうのを見ると「音楽って、すごい人がやるものなんだ」って思われちゃうから。僕は「あれ? 俺もやっていいの?」って思えるバンドになりたいんですよ。誰かが何年後かに「中2病みたいな名前のさっぱり売れねえバンドがいたけど、俺、すげえ好きだったな。だってあいつら嘘つかなかったもん。だから俺もそういう音楽をやるんだ」っていうやつが1人……いや1人じゃ俺と同じ数だから意味ないな。2人、3人出てきて、そういうのが続いていって欲しいです。こうしてメジャーデビューして、もし仮に何かやっていいんだったら、そういう種を蒔いて帰りたいんです。
EMTG:なるほど。
篠塚:「やりたいことをやってる。チャートなんかに入んねえことは分かってるけど、やってやるんだ!」っていうハードコアの人たちとかの言葉を聞いて「かっこいい」って僕が思ってしまうような世の中が嫌です。だって本来、それって普通のことであるはずだから。そういうのを「かっこいい」って思う自分を感じて、気づきました。「かっこいいと思うってことは、俺はみんなのことがかっこいいって思ってないんだ。音楽のことが信じられなくなってきてるんだ」って気づいたんです。それが嫌だったんですよね。「僕らのミュージック」もそういう歌です。ツアー中に作ったいくつかの内の最後に書いた曲です。これがシングルに選ばれたことに驚きました。他の曲は「今、これが言いたいから曲にして消化しよう」っていう感じで作ったんですけど、この曲は「もう何もないけどエネルギーだけは残っている」っていう中で出てきたので。
EMTG:何もない状態だったからこそ、むしろご自身の根本に揺るがずにある想いが生々しく出てきたんじゃないですか?
篠塚:そうかもしれないですね。だからこの曲は僕にとっての「普通」なんですよ。そういう歌だから「シングルにしよう」って周りの大人が言った時にびっくりしたんです。そう言われるってことは、他の人にとっては普通じゃないのかなと。だから褒めてもらうのは苦手ですね。インタビューにならないと思うんですけど(笑)。
EMTG:作ったものが誰かの心に届いて、何かしら感じてもらえているっていうことは信じてもいいと思いますけどね。それはメディアの人間とかに褒められるのとは何の関係もないことですから。
篠塚:まあ、あんまり気にしていないですけど。でも、聴いてくれた人が何か感じてくれるんだったら、それはすげえいいなあって思います。
EMTG:まあ、僕が1人のリスナーとして思ったことを敢えて言うならば、今回の4曲って「自分もこれに近いことを思ってるな」って感じられる部分がいろいろある曲たちですよ。例えば「エスと自覚症状」だったら、「人間同士が100%分かり合うことはできない」っていうことにある希望の歌として受け止めました。「分かり合えないからってひたすら嘆いたり、対立につなげる必要は全然ない。“分かり合えない”っていう前提に立つからこそ、お互いの違いを素直に尊重し合うこともできるんだよなあ」っていうことを思いました。
篠塚:なんか、ありがたいですね。その曲も自分にとってはネガティブでもポジティブでもなく普通のことなんですけど。
EMTG:「普通」の感情であっても、それを具体的な形として実感するのってなかなか難しいことじゃないですか? 音楽なり、何かしらの作品って、受け手が抱えつつも曖昧模糊としている想いに形を与えるのが役割の1つじゃないですかね? 漠然としていたものを具体的な像として感じられた時、受け手の心は動くわけですよ。
篠塚:なるほど。そうかあ。こうやって話をしていると気づくことってありますね。
EMTG:僕も今お話しながら自分の考えに気づいている部分もあるわけです。先程、篠塚さんがおっしゃったことにも通じますけど……会話も、音楽を聴くっていう行為も、根本は自分との対話ってことなのかも。
篠塚:人間って群れで生きる動物だし、誰かの存在によって自分に気づくんでしょうね。孤独だと病気になりやすくなったりするみたいですし。
EMTG:音楽を聴くのって、自分以外の誰かに触れつつ自分と向き合う行為なんですかね?
篠塚:たしかに、音楽を聴くと孤独感が減る部分もありますからね。
EMTG:他人の感情に触れて、「この想いは自分だけじゃないんだ」って思えたり、自分を掘り下げるきっかけにもなりますし。今回の4曲も、そうなっていくんだと思いますよ。
篠塚:いやもう、申し訳ないです。その結論に着地できないのが申し訳ないんですけど(笑)。
EMTG:別に着地させなくていいですよ(笑)。これはあくまで僕が思ったことの概要っていうだけのことですから。「へえ、そうなんだ」で流すだけでいいです。
篠塚:めちゃくちゃ嬉しいんですよ。でも、着地できないんです。
EMTG:前に話をした時にも、何だかんだで堂々巡りになったんだよなあ(笑)。
篠塚:なんか名物みたいになってますよね(笑)。
EMTG:着地しないまま、ぐにゃぐにゃした感じで終わりましょう。
篠塚:意見交換みたいで面白いです。「いい曲ですね」とか言われるのって苦手ですし。その人にとっての「いい」って何なのか分からないし、僕にとっての「いい」も日によって違いますからね。「いい曲を作ろう」っていうことも最早していなし。「じゃあ、僕のできることは?」って言ったら、壊すことなのかなと。地震とかが来たら倒れそうなところを見つけて「とりあえず解体しておくから、あとは上手な人が何か作って!」っていうような。壊すのって評価されたり日の目をみたりしないことだけど、そういうのが好きだし、向いていると思ってやっているんです。僕って元々はライブハウスの店員をやっていて、誰かの音楽を応援したり、足しになることをやろうと思っていたのにメジャーデビューしちゃったんです(笑)。だから「才能」っていう発想も嫌いです。「ミュージシャンが上でリスナーが下」っていう感じがするので。
EMTG:「才能の塊である篠塚はカリスマ性たっぷりにこう言った」とか、記事に書かないので心配しなくていいですよ(笑)。
篠塚:分かっています(笑)。

【取材・文:田中 大】

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リリース情報

僕らのミュージック

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僕らのミュージック

発売日: 2014年05月07日

価格: ¥ 1,143(本体)+税

レーベル: 日本クラウン

収録曲

1. 僕らのミュージック
2. エスと自覚症状
3. 不燃ごみの日
4. 片方だけの靴

リリース情報

もう君はいい人じゃなくていい

もう君はいい人じゃなくていい

発売日: 2014年07月02日

価格: ¥ 2,667(本体)+税

レーベル: 日本クラウン

収録曲

メジャー第2弾となるフルアルバム

<シングル、アルバムW購入者特典>
“幻のMV応募者全プレ実施!”
「僕らのミュージック」と、「もう君はいい人じゃなくていい」の両方を購入した方に、メンバーの菅澤智史(G)が制作した幻のMusic Video「ヘイトミー ヘイトユー」をプレゼント。
※この特典は期間限定となっております。応募詳細についてはアルバム封入の応募ハガキをご覧ください。

お知らせ

■マイ検索ワード

動物病院
猫を飼っているんです。口内炎になっちゃって。いろいろ調べたら、原因となっている歯を抜かなきゃいけないみたいで。今朝、ちょうど抜歯のための検査に行ったので、「朝は何時からやっているのかな?」って調べました。


■ライブ情報

1st single「僕らのミュージック」リリースワンマンツアー「僕らを置き去りにした音楽と再会する日」
2014/05/27(火)札幌Sound Lab mole
2014/05/30(金)仙台 HOOK
2014/06/06(金)名古屋 CLUB UP SET
2014/06/14(土)広島BACK BEAT
2014/06/15(日)福岡DRUM SON
2014/06/21(土)大阪LIVE SQUARE 2nd LINE
2014/06/28(土)東京 下北沢GARDEN

hoshioto’14
2014/06/07(土)岡山県井原市美星町 星空感 特設ステージ

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。


ニコニコ生放送 配信限定ワンマンライブ
「僕らのインターネットジャック」

2014年5月10日(土)
・20:00-21:00 Music Videoループ放送
・21:00-21:50ネットライブ生放送
・21:50-22:10プレミアム会員おまけコーナー
http://live.nicovideo.jp/watch/lv177104039

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