椎名林檎、次のディケイドへ向かう宣誓の1枚「逆輸入~港湾局~」

椎名林檎 | 2014.05.27

 椎名林檎がデビュー15周年イヤーの締め括りに「逆輸入~港湾局~」をリリースする。これは椎名がこれまでにSMAPやTOKIO、栗山千明など、名立たるアーティストへ提供してきた楽曲を初めてセルフカバーしたアルバムだ。レアで、フレッシュで、キャッチーな11曲のリアレンジは、大友良英、前山田健一、冨田恵一、小林武史など、当代きってのマエストロ11名が手掛けた。生と電子が入り乱れた豪華絢爛なサウンドは、まさにジャンルを超越した快感に満ちている。さらに後半では話題沸騰中のNHKサッカー放送テーマ曲「NIPPON」(6月11日リリース)についても。最新のアルバム/シングルの両面から、作家としてノリにノっている椎名の現在を感じてほしい。

EMTG:それにしてもいい曲だらけのアルバムになりましたね。
椎名:嬉しい! ありがとうございます。
EMTG:あとどの曲もボーカルがいい。少女の可愛さから淑女の妖艶さまで変幻自在で、文句無くカッコいい。
椎名:とんでもない。作詞と歌唱については相変わらず片手間でお恥ずかしい限りです。こんな自分の扱い辛い声で歌を入れた時、曲にどう命が宿るのか、我ながらレシピが分かっているようで分かっていないのでしょうし、未だにそこを見極められないからこそ、今日までやめられなかったのかもしれませんが。
EMTG:そうかもしれませんね。今回はなぜこうした提供曲のセルフカバーアルバムを?
椎名:以前からファンクラブを中心にお客様からのご要望が多かったので、15周年リリースの締め括りにご用意させていただきました。そもそも提供曲とは、あくまで先様からのオーダーに応えてお渡しした唯一のものあり、一度は自分の手を離れた曲です。だから本当は自分で歌うのは、少し不本意でもありまして。それでも本当に多くのご要望をいただいたので、それならばせっかくですから私自身がドキドキしながら歌えるような、何らかの新しい要素が欲しいと思いまして。
EMTG:それがこの11名の豪華なアレンジャー陣に繋がったわけですね。この人選はどのように?
椎名:私にとってJ-POPの大半は自分のデビュー以降、仕事の仕方を学ぼうと思って聴いたものが多かったので、初対面だった方々も含めて、私が一方的にJ-POPを教わったような方々や、近年ご活躍の皆様のお力をお借りしようと思い立った次第です。
EMTG:アレンジャーのフィルターを通した提供楽曲のセルフカバーだから“逆輸入”。ではその後ろに“?港湾局?”がくっ付く理由は?
椎名:秘密です。ふふふ。
EMTG:すっごく気になるんですけど?……(笑)。「プライベイト」(広末涼子)と「カプチーノ」(ともさかりえ)はご自身のデビュー直後に書かれた曲でしたね。
椎名:昔の曲なのに、ヒャダイン先生と小林武史先生の素敵なアレンジのおかげで、特に意識することなく、楽しく歌わせていただきました。ヒャダイン先生には、この曲を「どこまででもキラキラにしてほしい」とお願いしました。小林先生は如何なる素材も普遍的なポップスへトリートメントして下さる確かな手腕が流石でいらっしゃいました。
EMTG:前山田さんと大友良英さんは、2010年代の記号性を強く担った人選ですね。
椎名:ヒャダイン先生は頓知の効いた好青年。何をされても確実で早くて面白くて“高性能”という言葉がぴったりです。大友先生は何と言ってもあれだけお茶の間に浸透した音像(※『あまちゃん』の劇伴)を仕掛けた方。早々にご一緒できて光栄でしたね。
EMTG: SMAP(「真夏の脱獄者」)やTOKIO(「雨傘」、「渦中の男」)といったジャニーズ勢への提供曲を英語詞で歌ったのは意図的ですか?
椎名:いくらなんでも男言葉が過ぎるかなという理由と、先様のファンが楽曲を御愛顧いただいた頃のイメージを崩しかねないと思って、むしろ別物として聴いていただけた方がいいのかなと思いました。
EMTG:大沢伸一さんが手掛けた「真夏の脱獄者」は、やはりソウル/R&Bのテイストに溢れていますね。
椎名:たとえばファーストアルバムの「丸ノ内サディスティック」や「茜さす 帰路照らされど……」なども、言わば骨格はフィリー・ソウルとも呼べますし、ソウルやニュージャックスウィングなどはリアルタイムで大好きでした。でもそういう引き出しだけだと思われちゃう危険があるので、とにかく王道を歩んで、信頼を最初に獲得してからにしようと、当時は少女なりに戦略を練っていたのです(笑)。それに当時はロックかロックじゃないかっていうことを殊更に語る人が多かったので、まずはそこにお参りしないとという部分もありました。
EMTG:「青春の瞬き」(栗山千明)は東京事変の解散ツアーでも演奏された曲でしたね。
椎名:ですのであの場にいらしたお客様には、大事な門出の口上のように記憶して下さっていたようですね。冨田先生もそのことを知って下さり、踏まえた上での細やかな配慮をして下さいました。
EMTG:椎名さんはデビュー当時のインタビューで「いつか記名性を持たず、しかし深い感動を与えられる、そんな無色透明な楽曲が書けたら」と度々話していました。「青春の瞬き」や「幸先坂」(真木よう子)、そして野田秀樹さん作の舞台「エッグ」に提供した「望遠鏡の外の景色」は、まさにその目標に辿り着いた曲なのでは?
椎名:そうだと有り難いですね。最近ようやく僅かな手応えを感じ始めてはいますが、まだまだ及びません。私にとって提供曲とは、曲の善し悪し云々以前に“その場に適っているのか否か”が重要なのです。その上で、その人のためのオーダメイドというか、オートクチュールで有りたいと常に努めています。
EMTG:今回このアルバムと共にもうひとつのトピックがニューシングル。現在話題となっている NHKサッカー放送のテーマソング「NIPPON」です。
椎名:プレッシャーがハンパじゃありませんでした(笑)。ただ今回ばかりは一大事という感じで、周囲の人々がいつも以上に助けてくれました。私なりの“勝ちにしか行かない曲”を目指しました。
EMTG:カップリングの「逆さに数えて」については?
椎名:勝負のあとになかなか解けない緊張を描きたかったのです。人生には幾度か、鮮烈なハレの場が訪れますね。それを如何にして迎えるか、ケのほうを切り取ろうとした一曲です。
EMTG:よく分かります。そして“NIPPON”という直球なタイトルからは、椎名さんの強い意志を感じます。
椎名: この国の、本来の精神性をスケッチしたいと思ったのです。日本人のポーカーフェイスは美徳であり、勝負に於ける大きな強みです。味方同士、密かに目配せし合うような時間を写したつもりです。
EMTG:ではデビュー15周年イヤーの締め括りとして、今後の目標があれば。
椎名:作家としては女のための女による、女の業の専門家としての音楽を書きたいですね。「ライバルはセルジュ・ゲンズブールです」と宣言して(笑)、大和撫子のデカダンを鳴らすために、これからも日々奮闘したいです。
EMTG:なるほど。では最後にもうひとつ。椎名さんの提供楽曲は今回の「逆輸入~港湾局~」に収録されたもの以外にまだまだありますよね?
椎名:そこは先ほどお答えできなかった秘密に関わるので(笑)。
EMTG:おっ!? これはもしや次の機会もそう遠くないうちに……?
椎名:さあ、どうでしょう? でも楽しみにして頂けますと幸いです(笑)。

【取材・文:内田正樹】

tag一覧 アルバム インタビュー 女性ボーカル 椎名林檎

リリース情報

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発売日: 2015年09月14日

価格: ¥ 1(本体)+税

レーベル: 1

収録曲

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逆輸入 ~港湾局~【初回限定生産版】

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2014年05月27日

EMI Records Japan

1. 主演の女
2. 渦中の男
3. プライベイト
4. 青春の瞬き
5. 真夏の脱獄者
6. 望遠鏡の外の景色
7. 決定的三分間
8. カプチーノ
9. 雨傘
10. 日和姫
11. 幸先坂

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NIPPON

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2014年06月11日

EMI Records Japan

1. NIPPON
2. 逆さに数えて

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