SAKANAMONど真ん中のサウンドが表現されたミニアルバム『ARIKANASHIKA』

SAKANAMON | 2014.10.10

 ミニアルバム『ARIKANASHIKA』が素晴らしい。SAKANAMONの音楽の魅力が濃厚に凝縮されている1枚だ。母親の不可解な行動をテーマにしつつも、実に心温まるナンバーとなっている「マザーラインナップ」。とても身近なあの昆虫との闘い、彼らの境遇へ寄せる仄かな同情がスリリングなバンドサウンドで表現された「害虫」。ベースの森野光晴が手掛けたアッパーなインスト曲「AGEINST」(使っているコードはAとGとE)……今回のテキスト内でじっくり触れられなかった曲も鮮やかな仕上がりなので、ぜひ聴いて欲しい。本作について藤森元生(Vo & G)に語ってもらった。

EMTG:1曲目の「幼気な少女」って、バンドマンとして思っていることをかなりダイレクトに表現していると感じたんですけど。
藤森:なるほど。まあでも、いろんなものが溜まりに溜まって爆発したっていうことではなく、ずっと昔から感じていたことです。「それを今、口にしてみようかな。大丈夫かな?」っていう曲(笑)。捉えようによってはお客さんに喧嘩を売りかねない内容かなという懸念がありまして。
EMTG:でも、《手を差し伸べてくれるのは特殊な感性持つ貴方々だけ 十分幸せですが何か》って歌っていますし、ファンにはすごく感謝しているじゃないですか。
藤森:はい。曲を聴いて、いいと思ってくれている人たちは、悪い捉え方はしないと思います。
EMTG:自分たちがいいと思って提示するものと、多くの人が受け入れるもののギャップで悩んだりはします?
藤森:それに関しては意外と納得しています。むしろ「普通じゃない」っていうところを善しとしているところもありますので。それを受け入れた上での気持ちが、この曲で言っているようなことですね。なんだかんだ、結局自信がない感じなのかも(笑)。批判もしつつ負け犬の遠吠えのようなところがあるんですけど。そこも含めて自分らしいのかなと思っています。
EMTG:メンバーとお酒を飲んだりすると、よくこういう話になるんじゃないですか?
藤森:森野さんとはするかな。
EMTG:木村さんとは?
藤森:きむさんとはあまり真面目な話をしないので(笑)。
EMTG:(笑)このグッと来るメロディはSAKANAMONの王道だと思います。
藤森:どういうわけか、こういうのを作りたがっちゃいますね。「前にも同じメロディなかったか?」って不安になることもあるんですけど(笑)。そういうものを外しつつ、自分がいいと思うものにするのは大変です。
EMTG:デジタルな要素を加えた「アリカナシカ」は、新しいタイプのサウンドじゃないですか?
藤森:はい。歌詞は「幼気な少女」に続いて、僕の自信のなさや不安が出ていますけど(笑)。ネガティブなところは出ちゃいますねえ。まあ、それでも開き直っちゃうのが僕らなんですけど。
EMTG:世の中の多数から肯定されているものが「正しい」とされることへの疑問が表現されていますけど、ハッとさせられる視点です。
藤森:これも日頃から思っていることですね。僕、他の人から「お前はおかしい」ってよく言われるんです。それはまあ気持ちいいことでもあったんですが、あまりにも言われるので、「俺はそんなには間違ってないぞ!」と。
EMTG:すごくいいことを言っている歌詞ですけど、後半で《パンツが履ければ正常か》とか、いきなりパンツの話を持ち出すのもSAKANAMONらしさを感じた部分です。
藤森:僕、大抵言いたいことって1番で完結しちゃうんです。だから2番以降は自分のことが出てくる傾向があるんですよ。だからそこからは、自分に関して否定されていることを羅列しています。僕、パンツを穿かないこともあるんです。滅多にないですけど、でも「穿かなくてもいいのかな?」とは思っています。
EMTG:考えてみればパンツって何で穿くんですかね?
藤森:パンツって何ですか?
EMTG:何でしょうね?
藤森:「隠す」っていうのだったら、下着じゃなくて、その上の方があれば大丈夫じゃないですか。
EMTG:ズボンは頻繁に洗濯するものじゃないから、下着のパンツの方を頻繁に替えて清潔を保つっていうことなんでしょうけど……考えてみればパンツって非常に曖昧な存在ですね。
藤森:パンツで隠している部分って不潔とされているけど、開放的にしてあげれば手とかと一緒で汚くないはず。むしろ清潔になるのかも。
EMTG:なるほど……まあ、パンツの話はこれくらいにして、曲の話に戻りましょう(笑)。サウンドのデジタルな感じは、どういう考えの下でこうなっていったんですか?
藤森:制作中に特に何か具体的に考えたわけでもなく、何となく持って行ったものなんです。それでどんどん形になったら、評判が良かったんですよ。
EMTG:ボーカルに少しエフェクトをかけていますよね?
藤森:そうなんです。僕、そういう音楽も好きなんですけど、SAKANAMONでもやってみようとはあんまりならなくて。今回はそれが楽曲に合っていて、こうなったんでしょうね。打ち込み系は今までも6曲に1曲くらいやってきているんで、もう少し増やしていってもいいのかなと思っています。
EMTG:今回の曲ってどれもキャラが立っているし、「SAKANAMONらしさ」みたいなところもすごく出ていると思います。「マザーラインナップ」「害虫」「君の○○を××したい(読み:キミノアレヲナニシタイ)」もそうですけど、歌詞とサウンドのギャップって「SAKANAMON節」とでも言うべき作風じゃないでしょうか?
藤森:そこはめちゃくちゃ意識していますね。「いかに曲だけ聴いて想像できないテーマを乗っけるか」っていう。
EMTG:例えば「君の○○を××したい」も、実に叙情的で甘酸っぱいメロディですけど、歌詞がなんとも言えませんね。これ、藤森さんが出演しているドラマ(スペシャドラマ館『スリーピース~とあるクソバンドが自然消滅するまで~』)の主題歌ですが、番組のために書き下ろしたんですか?
藤森:そうです。最初の顔合わせの時に監督さんとお話をして、台本も読ませて頂いて作りました。ドラマの中での僕の役は根暗で、気持ち悪くて、好きな女の子がいて、その娘に対してポエムを書いているんです。歌詞はそのポエムの内容を結構引用しているんですよ。最初はもっときれいな感じだったんですけど、「SAKANAMON、藤森元生らしさが足りない」ということになって書き直したんです。気持ち悪い感じのところは、ほぼ書き直した部分ですね。
EMTG:過剰に想いを募らせている感じが危ない香りを漂わせていますけど、すごくピュアなラブソングでもあるという……不思議な曲です。
藤森:「何を舐めたらいいだろう?」とか「何を食べたら気持ち悪いかな?」とか、みんなと話し合いつつ考えました(笑)。
EMTG:(笑)KEYTALKの小野(武正)さんがギターで参加していますね。
藤森:はい。彼もこのドラマに出ているんですけど、撮影中に思いつきでお願いしました。
EMTG:募る想いの雄叫びのようなギターソロが印象的です。
藤森:いろんなパターンを弾いてくれたんですけど、Cメロの《近くにいたいし》から《言えない事までしたい》までの気持ちをギターで表わして欲しいとお願いして、こういうソロを弾いてくれました。エモーショナルで荒ぶっている感じですね。
EMTG:KEYTALKとは仲いいんですか?
藤森:よく話しますけど、多分僕らの片想いです。彼らは友達が多いけど、僕らは友達が少ないので……。彼らのたくさんいる友達の内の1つという感じじゃないでしょうか。もっと仲良くなりたいです(笑)。
EMTG:(笑)いいコラボもできたし、充実した作品になりましたね。2月にアルバムを出しましたけど、それ以降、曲作りに関する心境の変化はありました?
藤森:どうでしょうね?今回の曲って、今年に入ってから書き始めたものなんですよ。結構調子良くて。何も考えていないといえば、考えていなかったですね。だから、迷いはなかったかもしれないです。
EMTG:「SAKANAMONのこういうところが好き!」ってファンが再確認できる1枚にもなっていると思います。
藤森:シンプルなギターロックの部分を蘇らせたというか。昔の1stミニアルバムの『浮遊ギミック』の進化版のように感じて頂けたらいいなあと思っています。初心感と言いますか。
EMTG:初心感が出たのは自ずと?
藤森:いや。結構意識しました。前作のアルバム『INSUROCK』で変なことをいっぱいやらせてもらったので、「ちょっと1回安心したいな」と(笑)。いや、安心したいというか、「SAKANAMONの真ん中のところをもう1回見せておこう」と。
EMTG:11月からはツアーが始まりますけど、どんな意気込みで臨みますか?
藤森:対バンツアーなんです。「やってくれるんですか? ありがとう!」というバンドがたくさん出てくれます。対バンツアーは打ち上げが楽しいのもいいんですよ。ワンマンの打ち上げは反省会になっちゃうので(笑)。

【取材・文:田中 大】

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ビデオコメント

リリース情報

ARIKANASHIKA(初回プレス限定特殊仕様)

ARIKANASHIKA(初回プレス限定特殊仕様)

2014年10月01日

ビクターエンタテインメント

1. 幼気な少女 (読み:イタイケナショウジョ)
2. アリカナシカ
3. マザーラインナップ  
4. AGEINST 
5. 害虫
6. 君の○○を××したい (読み:キミノアレヲナニシタイ) 

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オモ族というのは民族。おしゃれな部族です。アーティスティックな装飾を施すんです。ネットで見て、「すごい!」と思って。かっこいいんですよ。僕、アフリカンアートっぽいものが好きなんです。


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SAKANAMONのアリが対バンツアー2014
2014/11/04(火) 仙台MACANA
guest : GOOD ON THE REEL
2014/11/06(木) 札幌Sound Lab mole
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2014/11/10(月) 広島CAVE-BE
guest : THE ORAL CIGARETTES
2014/11/11(火) 福岡DRUM SON
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2014/11/13(木) 高松DIME
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2014/11/18(火) 大阪JANUS
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2014/11/19(水) 名古屋UPSET
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2014/12/01(月) 恵比寿LIQUID ROOM
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