美しいノイズに魅せられるTHE NOVEMBERSの新作『Rhapsody in beauty』

THE NOVEMBERS | 2014.10.10

 「こんなに美しいノイズがあるのか」と、思わず呆然としてしまった。

 THE NOVEMBERSのニューアルバム『Rhapsody in beauty』は、オープニングの「救世なき巣」から、THE NOVEMBERSの美に対する真正面からのテーゼが行なわれる。清潔に整えられたポップスの音に対して、彼らが提示するのは“音になる前の音”だったり、“未整理のいろいろなものが入り混じった音”だったりする。考えてみれば、自然界で聴く鳥の声の後ろには川の瀬音が鳴っていたり、爽やかな風の音は何万枚もの葉っぱの音が混じっていたりする。
 THE NOVEMBERSは自分たちの基準で、“ロックのノイズ”を音楽として聴かせる道を選んだ。ノイズにボーカルが霞んでしまう歌がある。その一方で、豪華なストリングスのようにロマンを掻き立てるノイズが歌を彩る曲がある。そして僕は最初にこのアルバムを聴いたとき、彼らの美ノイズに呆然とさせられたのだった。
 昨年あたりから超個性的なバンドが次々に登場しているが、THE NOVEMBERSはこのアルバムで間違いなくシーンの最注目バンドになると確信する。

 このインタビューは9月16日に行なわれたが、直後の27日に小林祐介に女の子が誕生した。まだこの世界にやってきたばかりの“楓ちゃん”の話も交えながら、新作について聞いてみた。

EMTG: 「今日も生きたね」の穏やかなサウンドから、一気に爆発したね、今回のアルバムは!
小林:はい。メンバーみんなで 「ロックっていいな」って言いながら作ってました。ベンジー(浅井健一)と一緒にやったりするようになってから、少年心が出てきたっていうか(笑)。
EMTG: 爆発する少年ノイズかぁ(笑)。
小林:『To(melt into)』と『GIFT』を作って、道徳や正義やリアルについて考えてみて、それが「今日も生きたね」でいったん完結したんです。で、前作の『zeitgeist』 を作り終わった時点で、次はロック・アルバムを作ろうって思ってました。道徳や倫理以前に、あらかじめ“美”であるものがある。つじつまが合わなくても、美は美なんだっていう。そもそもTHE NOVEMBERSで表現したかったのは、美しさなんですよ。美に執着してきた。だから今回の『Rhapsody in beauty』は、「つじつまを合わせなきゃ」っていう考えに対して、ちゃぶ台をひっくり返してやるっていう(笑)。
EMTG: それで“ノイズの洪水”なんだ!
小林:病的なものとか退廃を、 このところ遠ざけていたんですけど、やっぱり「美は美である」って言いたくなった。道徳と美って、相反するものではなくて、軸が別なんだと思う。でも今って、ポジティヴなものしか機能しないと思われてる。だけど、ネガティヴにも美がある。自分のことで言えば、たとえばウジ虫の湧いてる死体を、きれいだなと思ってた頃があった。それは道徳に反するかもしれないけど、美を感じることは誰にも止められない。暴力衝動は誰にでもあるし、それを実際にやってしまったら犯罪になるけど、音楽の中だったら許される。暴力的なエネルギーを解放できるから、 音楽っていいと思うんです。
EMTG: そうだよね。でも、それを誤解する人がいる。そういう音楽とかコミックスがあるから、暴力事件が起きるとか。でも、音楽で解放するのと、 実行してしまうのは、全然別のことなのに。それにしても、思い切ったロックアルバムを作ったね。
小林:一人で暮らしてたらわからないですけど、今は結婚してもうすぐ子供が生まれるので、ぎりぎり世の中とつながってます(笑)。船のイカリのイメージ。もしくは風船の糸が地面とつながってる。どこまでも高く飛んでいけるのかって言えば限界はあるけど、その糸がピンと張っている。「手放しの自由」に憧れつつ、それが無理なこともわかっている。切なさや諦観はあるけど、それこそ音楽の中で自分の衝動や美を解放できるのは幸せだと思いますね。
EMTG: 子供を可愛がるノイズロックって、すごくいいね(笑)。実際、『Rhapsody in beauty』はどんな風に作っていったの?
小林:“Beauty&Noise”っていうキーワードを持って作り始めて、途中でその裏に隠れている音楽のフォルムにどんどん気付いていったって感じです。
EMTG: 面白いね。1曲目の「救世なき巣」は?
小林:これは“届かない声”が テーマで、「今日も生きたね」の後、戦争の渦中に置かれてしまった子供を歌おうと思った。歌詞は一筆書きみたいに書けたんですけど、主語に悩む時間が多かったです。
EMTG:4 曲目の「Blood Music.1985」のクールなボーカルもカッコよかった。
小林:最初は叫んでみたんですけど、そうするとアバンギャルドさがなくなっちゃう。なので冷静に歌ってみたら、楽器のエキセントリックさが立つようになりました。
EMTG: いろんなトライをしながら、完成していったんだね。
小林:レコーディング中にライブがあったり、入り乱れてたんですよ。でもそれがよかった。フジロックみたいな大きな野外のライブをやったとき、たとえばフェスでふらっと観に来た人に何か感じてもらえる曲とか、今度のワンマンの新木場コーストでやったら楽しそうな曲とかがイメージできた。そうしたら、自分の“憑きモノ”が取れていって、たとえばエフェクターを踏む音がいいと思ったら、ノイズとしてカットせずに採用するとか、自分たちのルールが生まれていった。そういうのが、今後のTHE NOVEMBERSの基準になっていくと思います。
EMTG: メンバーはどんな様子だったの?
小林:彼らは悩みませんよ。美しければ、カッコよければオーケー(笑)。 今回、レコーディングのリハーサルからノイズだらけだった。僕もサビで“イェー!”しか言わない。ケチな価値観を置き去りにして、みんなでノイズで埋めようっていう。ただ、「美しければ、何でもオーケー」って言ってる割には、僕は無知ではいられなかった(笑)。
EMTG: タイトル曲の「Rhapsody in beauty」は、フジロックでやってたね。
小林:はい。このボーカルは ユーミンを意識したんですよ。
EMTG: えー、どのへんが?!
小林:コードとかメロディ、あと切なさ(笑)。一方でドラムは、焦燥にかられている感じを出したかったので、アンビエント・マイクを活かしてます。
EMTG:「Sturm und Drang」のジミヘンみたいなギターソロもカッコよかった!
小林:あれはケンゴマツモトの 「ギターの音って、とにかくカッコいいよね」っていう大ざっぱな感じが功を奏した。なので、録り直しが出来ないように、クリック無しでレコーディングしました(笑)。
EMTG: 楽しそうなレコーディングだなあ。
小林:自分たちのいいと思うもの、きれいだと思うものを出したいと思った。で、そういうものを持ったまま、たとえば武道館みたいな大きいところに出しゃばりたい。「武道館をやるバンドは、こうでなきゃいけない」っていうのを外して、自分たちの得意なことを持ち寄って武道館を目指してくれる人たちと、コミュニティを作りたい。
EMTG: 照明や音響のスタッフとか。
小林:そうです。もっと楽しめるやり方があると思う。たとえばL’Arc-en-Cielは、L’Arc-en-Cielの ままアリーナをやってるし、BOOM BOOM SATELLITESも DIR EN GREYも自分たちらしい武道館をやってる。武道館でしかできない表現を創造すれば、やる価値があると思う。自分たちも含めて、バンドの活動の仕方がもっと自由になるといいですね。それができなくて、 音楽を止めてしまった仲間もいたんで。シガー・ロスみたいなバンドが武道館を埋められるって、すごくいいと思う。
EMTG: いいね。最後にアルバム・タイトルに込めたのは?
小林:『Rhapsody in beauty』は「美による狂詩曲」って意味なんですけど、自分たちの根源的なものを後世に伝えていきたいという気持ちで付けました。
EMTG:ありがとう。ツアーを楽しみにしてます!

【取材・文:平山雄一】

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ビデオコメント

リリース情報

Rhapsody in beauty

Rhapsody in beauty

2014年10月15日

MERZ

01.救世なき巣
02.Sturm und Drang
03.Xeno
04.Blood Music.1985
05.tu m’(Parallel Ver,)
06.Rhapsody in beauty
07.236745981
08.dumb
09.Romance
10.僕らはなんだったんだろう

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お知らせ

■ライブ情報

THE NOVEMBERS TOUR - Romancé -
2014/10/17(金) Nagoya Club Quattro
2014/10/19(日) Osaka Janus
2014/11/7(金) Sapporo Colony
2014/11/14(金) Fukuoka Drum-Be1
2014/11/15(土) Hiroshima Cave-Be
2014/11/24(月) Sendai enn 2nd
2014/11/25(火) Niigata Club Riverst
2014/11/28(金) Tokyo Studio Coast - Tour Final -

※詳細、その他のライブ情報は、オフィシャルサイトをご覧ください。

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