amazarashi、ニューアルバム『夕日信仰ヒガシズム』リリース!

amazarashi | 2014.10.29

 極端な言い方をすれば、これまでのamazarashiが人間の痛みや苦しみ、怒りという負の感情を暴く楽曲に比重があったとしたら、最新アルバム『夕日信仰ヒガシズム』は、そのなかで人間の強さや美しさに希望を見出そうとする作品だと思う。  今回も秋田ひろむはメールインタビューでいくつかの質問に答えてくれたが、今作について「ただの僕の意思表示かもしれない」という。そこにメッセージなどなく、ただ意思そのものがあるだけ。その意思が音楽になったとき、こんなにも聴き手の心を揺さぶり、その奥底にある何かを鼓舞するのだ。まさにamazarashiが新しい領域へと踏み込んだアルバム『夕日信仰ヒガシズム』。そこに込めた想いを訊いた。

EMTG:9月に開催された一夜限りのプレミアムライブ“千分の一夜物語「スターライト」”は語りと音楽とで紡ぐ、とても見応えのあるライブでした。改めてなぜあのようなライブを行ったのでしょうか?
秋田:始めはシンプルなアコースティックライブをやろうという所から始まって、いろいろアイディアを出してたら、ああいう形になりました。テーマとしては「スターライト」(『夕日信仰ヒガシズム』では2曲目に収録)という曲をいかに感動的に聴いてもらえるかで、それを目指して物語を書いたり、演出を加えて行きました。楽曲もわりと古めのもの中心で、僕の過去を巡る物語になりました。
EMTG:そのライブでは“あまざらし”というインディーズ時代の名義で行なわれましたが、その理由も教えてください。
秋田:アマチュア時代はピアノの豊川と二人でアコースティックスタイルでやっていたので、そこを核として、そこにいかにプラスαしていくか、っていうのをイメージしてました。amazarashiのサウンドとは別に、あまざらし時代の延長線上でライブをするとどうなるだろう、という考えからです。
EMTG:20個のメトロノームを同時に鳴らす演出など、とても効果的に音を使う工夫が見られました。実際にやってみて難しかったこと、苦労したことはありましたか?
秋田:メトロノームは大変でしたね。上手くいくか運頼みのところもありました。実は上手くいかなかったときのための保険とか、そういうところまで詰めて考えてました。メンバースタッフ皆でアイディアを形にして行く作業でした。
EMTG:“千分の一夜物語「スターライト」”を終えてみて、何を得られたと思いますか?
秋田:amazarashiの表現方法が広がったと思います。演奏も歌も今まで以上に繊細で気を使うものでしたが、それによって美しい音を作り上げられたので良かったです。演出もそうですね。新しい武器が増えたというか、そういう気持ちです。
EMTG:そして新作アルバム『夕日信仰ヒガシズム』ですが、聴いた時に“千分の一夜物語「スターライト」”のその先の物語のようにも感じました。あのライブが今回のアルバムの序章だった、という意図はありますか?
秋田:あのライブを通じて何かしらアルバムにも注目してもらいたいという気持ちはあったんですが、「スターライト」がリード曲みたいに思われるのは嫌だなという気持ちがあって、自分の中では古い曲ですし。完全に別ものとしてアルバムを提示しようと思ってました。
EMTG:前作 1stアルバム『千年幸福論』からは、間にミニアルバムを挟みながらも、およそ3年ぶりのフルアルバムになります。今回のアルバム構想はいつ頃からスタートしましたか?
秋田:曲を作りはじめたのは1年前くらいでしたが、アルバムを意識しだしたのは今年に入ってからだと思います。曲が出来上がって行くなかで、似た様な方向性が見えてきたので、これが今歌いたいことなのかな、っていう風に方向修正したりしながら今回のような形になりました。
EMTG:前述の「スターライト」をはじめ、「もう一度」「ヨクト」など、今回のアルバムではこれまでの作品以上に外向きの広がり、陽性の雰囲気、前へ進むんだという強い意志を感じます。作り手としてはそのような意識はありますか?
秋田:そうですね。悲観的なものはなくそうという意識はありました。amazarashiが得意な部分なんですが、それとは別に新しい手法を手にしたいという気持ちもありました。作り手として幅を広げたいと思ってました。
EMTG:アルバムタイトルの意図を教えてください。
秋田:僕の主義、イズムという意味で付けました。僕の家は夕日が直射するんですが、夕日ってちょっと切なくなったり過去を思い出したり、不思議な感覚があって、それは何故なんだろうというところから考えはじめました。amazarashiの以前の曲にも夕日という言葉は多かったし、何かしらの意味があるんだろうと思いました。そこから僕にとっての大事なもの、そうじゃないものをはっきりさせていく作業をしていく過程で、今回の曲達が生まれました。
EMTG:全体的に夕日~夜の時間帯の楽曲が多いように感じました(「スターライト」「夜の一部始終」「街の灯を結ぶ」など)。そのようなコンセプトはありましたか?
秋田:いつも夜に曲を作る事が多いのでそうなったのかもしれません。僕の中で通じてある比喩として、夜というのは悩んでる瞬間だったり、報われてない状態だったりするので、根っこの部分にそういう意識はあったと思います。
EMTG:秋田さんにとって夕日とは?夜とは?ヒガシズム時間とは、1日の中でどんな時間帯ですか?
秋田:人生は有限ですけど、皆普段それを意識して生活してないと思うんです。でも夕日を見た時に今日が終わるということは理解するわけです。歌詞の中では《最小単位の死》(「夕日信仰ヒガシズム」)と歌ってるんですが、無意識に人生の終わりを感じてるんじゃないか、限りあるということに気づかされてるんじゃないか、だから夕日を見ると切なくなったりするんじゃないか、という風に思います。
EMTG:1曲目は、『夕日信仰ヒガシズム』というアルバムタイトルにも通じる「ヒガシズム」という曲から始まります。何か奮い立たせるような楽曲だと思いますが、この曲ができた経緯を教えてください。
秋田:この曲が一番最後に出来たんですが、アルバムの全貌が見えて来たところで、なにか一つ足りないなと思って、最後のピースをはめる様な気持ちで作りました。悲惨な事件や事故はニュースで見るだけで僕とは遠い話に見えてしまうんですが、実は僕らの生活と地続きで、身近なところに原因があるんじゃないか、というのがテーマです。
EMTG:「もう一度」では、歌詞のなかに「僕らはいつも雨曝しで」と出てきます。バンド名の由来にも通じる楽曲ですが、改めてこのようなテーマで楽曲を作った理由はありますか?
秋田:今の自分を奮い立たせる曲を作りたいと思いました。amazarashiはどん底から始まったバンドでしたが、理解者も増えたし、力を貸してくれる人も増えたし、それで満足してもいいような気もするんですが、でもやっぱりそこに収まりたくない自分もいて、まだまだ言い足りない事も沢山あるので、自分に対してふざけるなという気持ちで作りました。
EMTG:そして、「雨男」では《そういや いつかもこんな雨だった》、さらに《今日も土砂降り》と出てきます。雨とは、秋田さんにとって何を象徴するものですか? それは“あまざらし”とバンド名をつけた頃と今とで、変わりましたか?
秋田:辛いことの象徴ですね。昔と変わらないと思います。
EMTG:「後期衝動」という曲のタイトルは、バンドの「初期衝動」から派生した造語かと思います。いまのamazarashiは、このような「後期衝動」が原動力になっているのですか?
秋田:初期衝動は一瞬の輝きですし、今更僕らがそれを求めてもしょうがないですし、じゃあ今の僕の原動力ってなんだろうって考えた時に生まれた歌詞です。ライブを意識して作ったポエトリーリーディングなんですが、自己紹介的な意味合いが大きいです。
EMTG:「ひろ」は美しいメロディが切なさを掻き立てる、名バラードだと思います。すでにライブでも披露されていますが、いつ頃つくった曲ですか?
秋田:去年くらいだったと思います。ずっと書きたかったテーマで、何度も作って何度もボツにして、今回ようやく形にできました。
EMTG:また、「ひろ」のなかで《お前》と語りかけているのは、秋田さん自身のことですか?
秋田:ひろというのは僕の友達です。一緒にバンドをやってたんですが19歳の時に事故で死んじゃって、彼に宛てた手紙の様な気持ちで作りました。同時に今現在の僕の立ち位置を確認するような歌です。確かに、19歳の友達に語りかけるのは19歳の僕自身に語りかけるのと同じかもしれませんね。
EMTG:今回のアルバムを通じて、秋田さんがリスナーに一番伝えたかったメッセージは何ですか?
秋田:何かを伝えたいというよりは、ただの僕の意思表示かもしれません。そこから何か感じてもらえたらそれは嬉しいんですが、それよりも今の僕の気持ちを詰め込めるだけ詰め込んだ、というアルバムだと思います。
EMTG:11月からは今回のアルバムを引っさげた全国ツアーもスタートします。どんなツアーになりそうですか?
秋田:アルバムは僕の意思表示と書いたんですが、ライブではお客さんと相対するわけですから、もう一歩踏み込んだメッセージを投げかけられたらなと思ってます。

【文:秦 理絵】

tag一覧 アルバム 男性ボーカル amazarashi

リリース情報

Puzzle[通常盤]

Puzzle[通常盤]

発売日: 2016年05月11日

価格: ¥ 1,200(本体)+税

レーベル: ワーナーミュージック・ジャパン

収録曲

01 Puzzle
02 Take me higher
03 Be my love
04 Puzzle (Instrumental)

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リリース情報

夕日信仰ヒガシズム(初回生産限定盤)[CD+DVD]

夕日信仰ヒガシズム(初回生産限定盤)[CD+DVD]

2014年10月29日

SMAR

【CD】
1.ヒガシズム
2.スターライト
3.もう一度
4.夜の一部始終
5.穴を掘っている
6.雨男
7.後期衝動
8.ヨクト
9.街の灯を結ぶ
10.生活感
11.ひろ
12.それはまた別のお話

【DVD】
1.空っぽの空に潰される(2014.09.09 LIVE 千分の一夜物語 スターライト)
2.つじつま合わせに生まれた僕等(2014.09.09 LIVE 千分の一夜物語 スターライト)
3.美しき思い出(2014.09.09 LIVE 千分の一夜物語 スターライト)

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お知らせ

■ライブ情報

amazarashi LIVE TOUR 2014
「夕日信仰ヒガシズム」

2014/11/01(土) なんばHatch
2014/11/03(月、祝) Zepp Nagoya
2014/11/15(土) Zepp Tokyo
2014/11/23(日) 新潟Lots
2014/11/24(月、祝) 仙台Rensa
2014/11/29(土) Zepp Sapporo
2014/12/21(日) Zepp Fukuoka

amazarashi LIVE TOUR 2014
「夕日信仰ヒガシズム」追加公演

2014/12/24(水)渋谷公会堂

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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