大切なものは自分の中にある。森山直太朗のニューアルバム『黄金の心』

森山直太朗 | 2014.11.20

 最近では、テレビのバラエティ番組でも、その機知に富んだトークでお茶の間を賑わせている森山直太朗。過去には演劇舞台の経験もある森山だが、いずれにせよ『まず音楽ありき、その上で知らない自分に出会えるような面白そうな匂いのするものには率先して出たい』と意欲をみせる。
 そんな中、発表されたニューアルバム『黄金の心』は、シンプルで聴きやすく馴染みやすいものの、後から考えさせられる“気付き”のある作品に仕上がった。時を経ても色褪せることのないメロディ、物語に秘めたメッセージ性、表情豊かなキャラクターとが相まって、唯一無二の個性を放ち続ける音楽家・森山直太朗が、共作者である詩人の御徒町凧と共に作り上げた最新作。誰も知らなかった森山に、そして自分に出会える1枚となることだろう。

EMTG:シンガーソングライターとしてデビューして早12年目ですね。
森山:どこからがシンガーソングライターとして、というか、今もなんだかふわふわした感じといいますか。振り返るとね、なんかいろいろ気にしながらやってたなあと思いますね。「さくら」以降は、もう必死でしたよね。曲の認知度が自分のキャパシティを超えているのが火を見るより明らかだったので。どうにかして恥ずかしくないように、と力んでましたね。でも、自分なりに一生懸命で、自分なりに足掻いた結果だったから、今となっては受け入れられるんですけど。
EMTG:その当時の曲が好きだという方も多いと思うんですけど。
森山:そうですね。当時の印象っていうのは今でも拭いきれないものはありつつ・・・でも、気にしても仕方がない。僕と御徒町の関係もそうですし、変わらないことの良さと危険性の中で、どう自分たちで切磋琢磨して自分たちなりに新しい面白さを見つけていくかっていうことの連続ですからね。
EMTG:今回のアルバム『黄金の心』は、どんなモチベーションから制作にかかっていったんですか。
森山:僕自身、いちばん面白い活動って、やっぱりライヴなんですよね。路上での弾き語りが根底にあるから、こういう曲やこういうテーマでどうこう、っていうよりも、ただ歌いたい、ただ誰かと触れあいたいっていうところから始まってる。だけど、アルバムを聴いて、自分の世界観を知ってもらってライヴに来ていただけるのは、本当にうれしいことなので、これは来年のツアー前にアルバムを出さなきゃ嘘だ、みたいな(笑)。今回は新曲と、あとは過去に作った「洪積性ボーイ」とか「運命の人」とか、ちょっと消化できてない曲を、この際だからラインナップに組み込ませて。「こんなにも何かを伝えたいのに」はこの7月?8月くらいにポロンと出来上がったんです。それほど派手な曲ではないけれども、アルバムのひとつの遠心力となる曲だなと感じて、そこでようやくアルバムの全体像がみえてきました。
EMTG:トータル性のあるコンセプチュアルな作品ですね。
森山:相対的にといいますか。そこを失ったらもう勝負できない、という感じでしたよね。『全体的にいいね』『トータルでいいね』っていうのは目指すところではありますね。自分たちのもってる世界観、そして個人的にもっているソウル、こぶしの部分が、自分の物差しで計ってみて、ですが、非常にバラエティに富んだアルバムになったんじゃないかなと思います。
EMTG:収録曲の中でも特に「することないから」は、直太朗さんでなければ歌えない曲だと思うのですが、もしかしたら問題作として捉える向きもあると思うんですね。
森山:この曲もずっと自分の引き出しの奥に眠っていた曲のひとつで、まだまだ不完全なところはあっても、ようやく歌える自分のスタンスや受け皿ができてきたのかなって思いますね。この曲がアルバムに入っているっていうことは、後々振り返った時に重要なポイントになると思うし、自分の分岐点になる決断だったんじゃないかと思います。
EMTG:上辺だけを捉えられて、ある部分だけをピックアップされてしまうという危険性もあると思うんですね、こんな時代ですし。
森山:うーん・・・でも、どう捉えるか、ですよね。まさに一行の中にすべてがあるし、さっき言った相対的な中に、アルバムの中にすべてがあると思っているので、すべてが誤解なく伝わればいいんですよ。すべては僕次第っていう、それはすごく怖い。
EMTG:怖いですか。
森山:怖いですよ。以前、「生きてることが辛いなら」の時にも賛否あって、“否”の人ももちろんいて。詩は悪くない、曲も悪くない、じゃあ僕の表現や、僕の佇まいが、その混沌とした賛否を呼び起こしているんだと思って。この「することないから」も目立とう精神でそういう表現をしてるわけではないし。この曲ができてしまったのは、僕たちの責任なんだけれども、でもきっと心の根底にあるもの、みんなが思っていることにタッチできた時に、フワッと詩が立ちあがるって御徒町は言うんですよ。それで僕がその響き、波長にフワッと引っ張られて曲ができるんですね。僕も人間だし、下心はあるから『こんな曲、歌ったらカッコイイかな。褒められるかな』なんてことも思うわけですよ。でもみんなで話し合って、そういう余計なものを全部排除して残ったものが、この作品なんです。『そんな次元で作ってないから!』っていうのは実際あるんだけど、でも、本意じゃない形で伝わったときに、いちばんの責任は自分の表現が至ってない、ってことに尽きるんですよ。
EMTG:うーん・・・・。
森山:母(=森山良子)が「さとうきび畑」っていう反戦歌をちゃんと歌えるようになったの最近だって言ってましたから。じゃあ自分がまだまだ不完全でも、リリースするのは悪いことじゃないなって。歌い続けることで、どう完全に近づけていくか、だと思うんですよね。逆に、これが自分の中でパーフェクトな表現だと思ったらリストから外れると思うし。
EMTG:なるほど。
森山:実際、「夏の終わり」とか「さくら」っていう何千回歌った曲でさえ、答えは見つからない。だから今日も歌ってみようって思うんですよね。だから「することないから」も、もしもここで摩擦が起きても、それを聴いて違和感や不快感をもってくれても、そこで語り合うキッカケになればいい。『なんでそう思ったの?』っていう。それは別に言葉じゃなくてもいいんですよ。それさえあれば、賛だろうが否だろうが、音楽ってものが背負わされてきた役割?今、残ってる数少ない役割のひとつかなと思って。お互いの使わない筋肉を使うようなこと、というか。嫌いなもの、遠ざけてるものにこそ、意外に本質が紛れてたりしますからね。
EMTG:最後にタイトルについて伺っていいですか。
森山:最後に御徒町がこの『黄金の心』という詩を書いてきた。御徒町は言ってました。いわゆる、“Go West”だと。開拓時代の話をずーっと僕にしてましたね。そこはあまりよく覚えてないんだけど(笑)。
EMTG:(笑)
森山:ニール・ヤングの「Heart Of Gold」、この曲は我々のバイブルのような曲なんですけど、その影響も「黄金の心」っていうフレーズにはあると思います。『人間はいろいろな文明を発展させて進化させていったけれども、我々にとって金に値するものは、心の中にあるのではないか』みたいなことを話しました。「Heart Of Gold」って“ピュアな心、やさしい心”なんですって、直訳すると。つまり、結局は右往左往して探すものじゃなくて、『じっとしてろ』と。『そこにあるものだから』と。そういうことなんですよね。だからこそ悩むべきだし、考えることだって必要だし、でも探せば探すほど遠くなっていく。『だけど自分がその所有者なんだよ』っていう。その部分にどれだけ遡れるかっていう。だから生きていけるんですよね。自分でいられる、ブレない強さみたいなものが大切なんだと。
EMTG:そうですね。
森山:当たり前のことなんだけど、見えにくい環境であり時代だったりしますしね。みんな他人のことばっかり気にして、自分の名前も公表せずにね、ただ文句言ってるとか。『で、自分はどうなんだよ?』っていうのが抜け落ちてる。そこが必要な時代になっていくんじゃないですかね、これから。

【取材・文:篠原美江】

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リリース情報

kuroki_07_theme_160

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発売日: 2016年03月28日

価格: ¥ 1(本体)+税

レーベル: 1

収録曲

1

ビデオコメント

リリース情報

黄金の心

黄金の心

2014年11月19日

ユニバーサル ミュージック

1. 若者たち
2. 洪積世ボーイ
3. コンビニの趙さん
4. 昔話
5. こんなにも何かを伝えたいのに
6. 運命の人
7. することないから
8. 悲しいんじゃなくて寂しいだけさ
9. 五線譜を飛行機にして
10. 黄金の心

お知らせ

■ライブ情報

森山直太朗コンサートツアー2015『西へ』
〈前半〉
2015/01/30(金)戸田市文化会館(埼玉)
2015/02/01(日)桐生市市民文化会館 シルクホール(群馬)
2015/02/07(土)結城市民文化センター アクロス(茨城)
2015/02/11(水・祝)コラニー文化ホール(山梨県立県民文化ホール)(山梨)
2015/02/13(金)橿原市立かしはら万葉ホール(奈良)
2015/02/15(日)クラギ文化ホール(松阪市民文化会館)(三重)
2015/02/21(土)出雲市民会館(島根)
2015/02/23(月)赤穂市文化会館 ハーモニーホール(兵庫)
2015/03/01(日)栃木文化会館(栃木)
2015/03/07(土)中野サンプラザ(東京)
2015/03/08(日)中野サンプラザ(東京)
2015/03/14(土)山形県県民会館 やまぎんホール(山形)
2015/03/15(日)會津風雅堂(福島)
2015/03/22(日)厚木市文化会館 大ホール(神奈川)
2015/03/28(土)フェスティバルホール(大阪)
2015/03/29(日)フェスティバルホール(大阪)

〈後半〉
2015/04/04(土)三島市民文化会館 大ホール(静岡)
2015/04/11(土)福岡サンパレス(福岡)
2015/04/12(日)宝山ホール(鹿児島県文化センター)(鹿児島)
2015/04/15(水)広島アステールプラザ 大ホール(広島)
2015/04/18(土)サンポートホール高松(香川)
2015/04/25(土)多治見市文化会館(岐阜)
2015/04/26(日)金沢市文化ホール(石川)
2015/04/29(水・祝)神奈川県民ホール 大ホール(神奈川)
2015/05/09(土)守山市民ホール(滋賀)
2015/05/10(日)名古屋国際会議場 センチュリーホール(愛知)
2015/05/15(金)アルカスSASEBO(長崎)
2015/05/17(日)豊後大野市総合文化センター エイトピアおおの(大分)
2015/05/24(日)倉敷市民会館(岡山)
2015/05/30(土)須坂市文化会館 メセナホール(長野)
2015/05/31(日)新潟県民会館 大ホール(新潟)
2015/06/06(土)札幌市教育文化会館 大ホール(北海道)
2015/06/07(日)音更町文化センター 大ホール(北海道)
2015/06/13(土)那覇市民会館 大ホール(沖縄)
2015/06/21(日)東京エレクトロンホール宮城(宮城県民会館)大ホール(宮城)
2015/06/24(水)NHKホール(東京)

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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