a flood of circle新メンバーDuran加入後初のアルバム『GOLDEN TIME』

a flood of circle | 2014.11.25

 47都道府県ツアー、持ち曲全てを披露した3Daysライブ、そして新ギタリストDuran(デュラン)の加入――。a flood of circleの6枚目のアルバム『GOLDEN TIME』には、わずか1年の間にこれだけの濃密な時間を過ごしてきたバンドの全てが詰まっている。そのくせトータルタイムは11曲39分。佐々木亮介(Vo・G)はそれを「今まで一番潔いアルバム」と言っていたが、この“過渡期”すら作品に閉じ込めようとしたバンドマンとしての心意気が本当に潔いと思う。いま、その出会いを「奇跡」と呼び、バンドの未来を「黄金時代」と予言するa flood of circle。その衝動はもう誰にも止めることができない。

EMTG:さっきDuranさんと一緒にやった渋谷のインストアライブ見させてもらって。「新しいギタリストいいだろう?」って自慢したい感じがすごく伝わってきました。
佐々木:「友達なんだけど、どう?」って、紹介したい気分ですね。見た目があんな(長髪に入れ墨)なので、普通だったら話しかけにくいじゃないですか。だからなおさら(笑)。
EMTG:なんかいい相棒って感じで。
佐々木:年は俺の2個上なんですけど、俺もすごく尊敬してるし。彼も大事にしてくれてるし、めちゃくちゃ良い関係だと思ってます。去年の10月に初めて一緒に飲んだんですけど、その日はDuranが前のバンドを脱退するのを発表した日だったんですよ、たまたま。それで「あ、これは縁かもしれない」と思って。その2ヵ月後の俺のアコースティックライブに誘って一緒にやったんです。それがめっちゃ楽しかった。ギターが上手いし。上手すぎて、もっと下手くそでいいと思ってるんですけど(笑)。
EMTG:そもそもDuranさんと一緒にバンドをやろうと思った理由は?
佐々木:Duranもブルースとかロックンロールが好きで、それで俺と趣味がはまったんですけど、それだけじゃなくて。どうやって2014年のロックのど真ん中にそれを持ってくるのかってことで闘ってる同士だったんですよね。俺らはそれまでは全然違うところで闘ってたけど。「まだまだいけるよね」っていう希望も同じように持ってたから、こいつとなら何かできるかもってぼんやり思ってたんです。
EMTG:それが具体的にメンバーに加入するっていうのは?
佐々木:その時にやってた全県ツアーが今年の2月ぐらいに折り返し地点がきたんですよ。ちょうど24本やったところで、「この先どうやっていったらいいんだろう?」っていうのを、メンバーと話してたんです。その時にメンバーにDuranを紹介したいなと思って。電話で呼んだんですよ。で、4人で飲んでたら、めっちゃ盛り上がって、そのままスタジオに入ったんです。それで1時間ぐらいセッションして、いま思えば録っとけばよかったと思うぐらい良かった。で、その後、俺が気持ち悪くなってきて、吐いて。そしたらDuranが介抱してくれて(笑)。それで、すっきりして、「バンドやろう」って言っちゃったんですよね。そしたらデュランも「俺もそう思ってた」って。
EMTG:酔った勢い(笑)。
佐々木:そうなんです。で、次の日が「Tequila Club」っていう曲のプリプロの日だったんですけど、そのままスタジオに連れてって、レコーディングしちゃったっていう。だから付き合った期間は短いのに、スピード婚で、事後報告で、しかも熟年婚っていう(笑)。
EMTG:熟年ってほどじゃないじゃないですか(笑)。でもそれでツアー半分やった頃の「今後どうしよう?」っていうムードは解消されていったんですか?
佐々木:そうですね。Duranが入る入らないに関わらず、このアルバムで絶対に進化するんだっていうのは自分のハードルを課してて。前作『I’M FREE』が初めてメンバーチェンジなしで作ったアルバムで、俺はそれがすごく嬉しかったし、自信があった。だからもっと売れればいいのに思ってたんですけど(笑)。それがあったから、進化しなきゃいけないと思ってたんですよね。そこで奇跡的にDuranが入ってきて、一気にブーストされて曲ができたので大きかったですね。
EMTG:なるほど。
佐々木:それプラス、全県ツアーやって、全曲ライブをやって、これまでの活動を全部振り返る時間があったんです。「この時、こういうコード進行好きだったな」とか、「これ俺のクセだな」とか思いながらやってた。それで、じゃあ何をやってないか?とか、これをやったらまた同じになるな、とかも確認できたんです。その流れも切りたくなかった。失踪とか脱退とかあっても止まらなかったa flood of circleに、Duranにそのまま乗っかってきてほしかったから、仕切り直す必要はなかったんですよね。
EMTG:つまり佐々木さん自身が活動のなかで得たものがまずあって、そこにDuranさんが加わるっていう、ふたつの出来事がアルバムに反映されている。
佐々木:そうですね。だから「KIDS 」「アカネ」っていうシングル曲を含めると、今年の3月ぐらいから実はアルバムはスタートしてたとも言えて。その直後に全県ツアーが終わって。このアルバムはこの1年間のドキュメントって感じですね。
EMTG:全県ツアーを通じては、どういうことを思いましたか?
佐々木:47都道府県まわるってなかなか無いチャンスだから、これで成長しなかったら俺逹はクソだなと思ってました。逆に言うと、ぼーっとやってたら、そういうことが起きちゃうとも思ったから敏感になってましたね。それで「2014年のロックンロールにできることは何だろう?」って悩んでたことが、まさに体感できたというか。
EMTG:2014年に必要なロックが何かって答えはあったんですか?
佐々木:一言で言えないから、このアルバムを作ったって感じなんですけど。あえて言うなら、「GOLDEN TIME」っていうタイトルがまさにそうで。俺は今の世の中が閉塞的というか、あんまり良いふうに転がってないと感じてて。いろんなものに監視されてる気がするし。でも、そんなヤバい時代だけども、せめて俺逹が音楽を鳴らしてる時間、朝でも夜でも、日本中どこでも、俺逹のロックンロールが鳴っている時間ぐらいは、聴いてくれる人達にとっての“GOLDEN TIME”にするからって思いで名づけたんです。
EMTG:その表題曲の「Golden Time」は、生きていくことと、歌うこと、音楽をやること、ロックンロールを鳴らすことがイコールになってる、すごく開放的な曲で。歌詞には《生き延びたい》って言葉も出てきて、これはただの「生きる」とは違うなと思いました。
佐々木:あ、それで俺いま思い出したんですけど、穂村弘さんっていう現代短歌を代表する歌人がいて、俺はめちゃくちゃその人の詩が好きなんですけど、穂村さんの話によると、「生きる」と「生き延びる」はやっぱり違うんですよ。「生きる」は、飯食ったり生活することじゃないですか。でも「生き延びる」っていうのは、もっとハミ出てること。ライブは「生きてる」っていう瞬間だと思うんだけど、ツアーはそこに矛盾があって、毎日毎日死ぬ気でやってるんだけど、スケジュールが決まってる。それが俺は面白いんです。これが最後かも?と思って毎日生きてるのに、これを続けなきゃいけない、それを俺は“ロックンロール”と呼びたくて。ローリング・ストーンズとか、同じレーベルの先輩で言うと怒髪天とかね。そういう人たちが好きだから、俺もそうなりたい。毎回ギリギリを求め合い続けることは本当に大変だし、すり減るし、4人の人間関係も難しいけど。そのギリギリを求めた感覚こそが俺逹にとっては「生き延びる」っていうことじゃないのかなと。
EMTG:その、今日を本気で生きてるギリギリの感じは、この6枚目のアルバムなのにすごく出てて。それがフラッドだよなぁってすごく思います。
佐々木:いい加減落ち着けよって感じですよね(笑)。
EMTG:あと今回は例えばバラードっぽい「アカネ」とか「ホットチョコレート」みたいな、今までにないような曲もあって、いろんなタイプの曲にトライしてますね。
佐々木:もちろん、ブルースとかロックンロールとか自分の根っこにあるものは絶対にはずしたくないんですけど、今回は自然とこうなりました。たぶんいまのオープンな気持ちと曲の幅は繋がってると思いますね。「ホットチョコレート」とか「アカネ」ができた時に、もうこれはフラッドっぽくないなとも思ってないっていうか。もともとスピッツが好きでバンドを始めてたりするし、自分の引き出しを閉じ込める必要がないなといまは思ってるんです。
EMTG:そういうものを11曲39分でちゃんと収め切れてるっていう。
佐々木:今までで1番潔いアルバムだと思いますよ。しかも俺が全県ツアーが終わった時に想像していた到達点を、Duranが入ったら余裕で超えていった。
EMTG:ゆっくりですけど着実にここまであがってきてますね。しかも1年に1枚アルバム出して、フラッドらしいやり方でここまで来た気がするし。
佐々木:そうですね。俺は最近よく思ってるんですけど、スピードが速すぎると、情報が流されるって言われるじゃないですか。それは確かにあるけど、結局、俺たちはそこに左右されて曲を作ってるんじゃなくて、ツアーをやってるから曲を作って出してる。だから年に1回アルバムを出すのが大事だと思ってるんですね、バンドとして。そういう意味で、Duranと腰据えて作るのは次のアルバムだと思ってます。いまは正直、早く曲を作りたくて。ついさっきもDuranと「こんな曲どう?」って作ってたんですけど。そういうなんか、中学生の時のバンドを組んだ時みたいな。
EMTG:初期衝動で動いてる感じ?
佐々木:そう。だから期待していてほしいし、いま見ておかないと損しますよ、と言っておきたいです。本当に俺たちの黄金時代が始まるんじゃないかって思ってるので。だからいま俺たちを聴いておくと、「私、Duranが入った時から見てるから」って言えると思いますよ(笑)。

【取材・文:秦理絵】

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リリース情報

09_280

09_280

発売日: 2016年04月02日

価格: ¥ 1(本体)+税

レーベル: 1

収録曲

1

ビデオコメント

リリース情報

GOLDEN TIME【DVD付き限定盤】

GOLDEN TIME【DVD付き限定盤】

2014年11月05日

Imperial Records

CD:
01. GO(Album ver.)
02. Golden Time
03. スカイウォーカー
04. STARS
05. ホットチョコレート
06. Cigarette Roll
07. Black Eye Blues
08. Rodeo Drive
09. KIDS
10. アカネ
11. Party!!!

DVD:
Golden Time
STARS
KIDS
8th Anniversary Oneman Live “レトロスペクティヴ” Document Movie
ナイスサポート曽根巧ドライブデート風インタビュー

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お知らせ

■マイ検索ワード

●佐々木
アンプ BadCat

最近BadCatという目玉が飛び出るくらい高いギターアンプを買いました。ツアーでも見せたいと思います!それ調べたら、Arctic Monkeysが使っていましたね。それくらいしか若手はあんまりいなかったんで、珍しいと思います。

地名(神戸や仙台など・・)
Duranにどこに何があるか教えてあげるっていうことをしていますね。神戸がどこにあるかわかっていなかったり、仙台も県だと思ってたり、メチャクチャなんで(笑)彼が間違えていても、優しい目で見守ってあげてください。ぜひ、検索して教えてあげてください!


■ライブ情報

AFOC Tour“Golden Time Rock’n’Roll Show” ※全て2マン

2014/11/29(土)水戸ライトハウス
w/ TOTALFAT
2014/12/05(金)盛岡club change
w/ Keishi Tanaka
2014/12/07(日)石巻BLUE RESISTANCE
w/ Keishi Tanaka
2015/02/12(木)長野 LIVE HOUSE J
w/ TBA
2015/02/14 (土) 仙台 CLUB JUNK BOX
w/ TBA
2015/02/21 (土) 札幌 CUBE GARDEN
w/ TBA
2015/02/27 (金) 大阪 BIG CAT
w/ TBA
2015/02/28 (土) 名古屋 ダイアモンドホール
w/ TBA
2015/03/07(土) 東京 EX THEATER ROPPONGI
w/ TBA
2015/03/08(日) 東京 EX THEATER ROPPONGI
w/ TBA

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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