後藤まりこ、明るくポップに変貌を遂げた新作『こわれた箱にりなっくす』

後藤まりこ | 2014.11.17

 後藤まりこの新作アルバムのタイトルは『こわた箱にりなっくす』。「りなっくす」とはパソコンOSのひとつLinuxのことで、つまり今作はWindowsやMacが壊れた時にLinuxをインストールして復活させるように、後藤まりこという入れ物に新しいシステムを組み込み、全く新しい後藤まりこに変化させた、そんなアルバムだということだ。最近の後藤の活動を反映するようにアイドル界隈で活躍するアレンジャーを迎え、ロックからアイドルポップ、サブカルまで、2014年の音楽シーンのトレンドをギュっと詰め込んだ今作は、後藤まりこ史上最も明るくポップな1枚になった。
 一体、後藤まりこに何があったのか!? 変化の源を探った。

EMTG:おとといまで3日間連続でシェルターでライブでしたね。
後藤まりこ:そうなんですよ。3日間連続で。今ももう声がガサガサなんですけど。
EMTG:しかも3日間で6公演っていうなかなかないスケジュールで。
後藤:でもアイドルちゃんたちはやってるんですよね。バンドでは見ないけど。
EMTG:アイドルがやってるから自分もって思い立ったところがあったんですか?
後藤:誰かがやってたら「同じ人間やしできるかも」みたいな。単純に良いじゃないですか。2公演って。
EMTG:やっぱり達成感はありましたか?
後藤:「あ、できた」って感じですね。昔やったらそんなん絶対にできなかったと思うんですけど、「自分できるんや、やったー!」みたいな。6公演全部来てくれるお客さんもいて。6公演後のその人たちのtwitterを見てたら「起きれない」とかつぶやいてて。「あ、一緒なんやー」と思った。
EMTG:(笑)。で、『こわれた箱にりなっくす』ですが、目指していたアルバムの全体像はありましたか?
後藤:前作、前々作が、聴く人の気持ちより自分の気持ち…というか、自分が納得できるものができたら良いなっていうのがあって。今聴いたらそれは自分でも聴きにくいんですよ。1曲1曲で聴いたら良い曲もあるんですけど、アルバム全体で聴いたらもうちょっとこうできたな、とか。聴く立場に立ててなかったアルバムやなって見えて。今回は聴く人にちゃんと届けられるアルバムにしたいと思ったんです。
EMTG:そうやって聴く人目線になったきっかけは?
後藤:5月の終わりに渋谷AXでライブをしたんです。その時に事務所、レコード会社なんにもなくて。でもお客さんはそんなことは関係なく、ボクのことを好きでおってくれて。「うわ、めっちゃうれしい、支えられてる」と思って。このアルバムもそっからできたんです。
EMTG:それが具体的に作品にはどう繋がったんでしょう?
後藤:前までは自分で音楽をやってたら、わからなくなるんですよ。音作りに没頭して、曲の細かい細かいディティールに懲りすぎてしまったりとか。実際(リスナーは)そこを聴きたいから音楽を聴いてるわけじゃないんですよね。もっと大枠というか、雰囲気というか、楽しかったら楽しい曲でいい。細かい細かいそれは自己満足であって、時間がある時にすればいい。だから、ざっくりした部分をしっかり作っていきました。
EMTG:それが今作では、「これは躍らせる曲なんだ」「しっとりした曲なんだ」っていう、ざっくりとした個性の強さに繋がってる感じがしますね。
後藤:アレンジャーさんが自分らの個性を生かしてやってくれたんで、嬉しかったです。
EMTG:まさにたくさんのアレンジャーが終結してることが、今作の大きな特徴ですけど、これは後藤さんが決めたんですか?
後藤:Tom-H@ckさんだけは指名しました。あとはキングレコードの人が「この人いいんちゃうか?」って言ってくれて、曲に合う感じの人を連れてきてくれて。
EMTG:いわゆるロック的なところではなく、たとえば「触媒」の生田真心さんはAKBとかを手がけてる人で、アイドル界隈で活躍されてる方が多くなってる。
後藤:結果的にそうなったみたいです。今までと違った人たちとやったら面白いんじゃないかって言ってもらえたんで、結果的にこうなって。
EMTG:実際にアレンジャーさんとの制作で何か変化はありましたか?
後藤:あー……昔から、ボク、1 対1感は変わってなくて。ライブとか、1対100とか1対1,000とか。けど、そうじゃないです。ボクは1対1、1対1、1対1が1,000個あるだけやと思ってて。感情をひとりにしかぶつけられないんです。そういうマインドです。それが作品にも反映されればいいなって。
EMTG:後藤まりこ対ひとり、ひとりがいっぱいある。
後藤:今回やっぱりスタッフさんが大幅に変わって、音も大幅に変わってて、ボクがそういうマインドがあっても、実際のサウンドにはそんなにアウトプットされてないかもです。
EMTG:初めて聴く人も含めてより広く届けるというか?
後藤:そう、今までのボクのやり方だと聴きにくかったと思うから。お、すげー真面目すぎる。この恋愛重い。みたいな。今回はスタッフさんが変わって、後藤まりこっていうものを世の中に対して、聴きやすいものにしてくれた。そやから、1対1感はボクが持ってても、周りからはそれは見えてないかもっていう作品です。根底にはあると思ってますけど。
EMTG:それが最初に言ってた、聴き手に届けるっていうところの答えなんですね。
後藤:そうです。
EMTG:あと最近の後藤さんはアイドルイベントに積極的に出演してますが、それが今作に与えた影響もけっこう大きかったと思うんですが?
後藤:それはなきにしもあらずです。
EMTG:後藤さんは今のアイドルたちをどう見ていますか?
後藤:かわいい、虚像というか偶像というか。すごいと思います。
EMTG:どういうところが?
後藤:正直なところ。音楽をすること、歌うことが目的じゃない、ただ売れたいってだけやってる子とかもいてて、「それはそれで」って言ってるのがすげぇなと思って。売れたい、有名になりたいと思ったら、なんでそれがアイドルっていう選択肢になるんだろうって。そこに迷いがなさ過ぎてすばらしい。いつかその子も「なんで私、アイドルを目指したんやろう」って壁にぶつかるかもしれんけど、それまでの儚い感じというか、期間が短い少女感がボク好きなんだと思います。
EMTG:「れっつきるみ」とか「関東ローム層」はアイドルっぽい曲で。そんなアイドルの姿をそのまま曲にしてますよね。
後藤:そうです。「関東ローム層」はライブでクソ盛り上がればいいなと思って。
EMTG:《こんにちは、後藤まりこです》っていう自己紹介の部分もあって。
後藤:録りのとき面白かったです。
EMTG:その面白がってる感じはアルバム全体にあって、後藤さんが楽しそうに音楽と向き合ってるのがわかる。「I / O」では《さんきゅーふぉーざMusic》っていうフレーズもあるし。
後藤:楽しいですよ。
EMTG:その楽しさって、今回いろんなアレンジャーと関わったからなのか、それとも、みんなのために歌うっていう使命感みたいなものなのか……。
後藤:あ、「みんなのために歌う」っていう言葉、ボクはあんまり好きじゃないです。
EMTG:聴く立場になって考えていく、のと意味が違う?
後藤:っていうか、ちょっと柄じゃないかなって感じです。ちょっとマクロス感(アニメのマクロス)があって。
EMTG:そっか。で、今回楽しいと思えたのは?
後藤:音楽の本来やってる意味に改めて気づけたというか。いま、メジャーレーベルでやらせてもらってるんですけど、音楽の持ってるものってもっと自由で、誰しもができて、力もあるし、でも軽いんです。意味としては。誰でもできる。でもすごい大事なもので。それに気づけた自分もおって。自由っていう側面も知りながら、商業とか産業に向き合える部分を探せたというか。
EMTG:ある種の商業的な制約も許せるようになった?
後藤:そうです。そのなかでやるのも楽しい。(音楽は)ほんまに言葉と一緒やなと思うところがあって、「愛してる」って誰でも言えるやないですか。でも「愛してる」って本来の意味を、その言葉の意味を持って言う人と、意味を持って言わない人って物理的には一緒やけど、その本質は違う。それに気づけてよかったなと思います。
EMTG:じゃあ最後に、今作は後藤まりこ史上どんな作品になったと思いますか?
後藤:一番心配になるアルバム。
EMTG:心配になる?
後藤:自分で自分が。音的なもので言うと、これぐらい無茶してくださいって言ったら、いっぱい無茶してくれて、メジャーで出しても大丈夫かなっていうぐらいの音になったなと自分では思ってます。
EMTG:全然大丈夫ですよ。すごくポップなアルバムだと思いますよ。
後藤:それが自分ではポップだと思えなくて。世の中と自分との違いを見つけられて面白いなと思います。
EMTG:後藤まりこ史上、1番ポップで明るいアルバムじゃないですか?
後藤:暗くないですよね? 暗くはない。それがこのアルバムのすごく良いところです。

【取材・文:秦 理絵】

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ビデオコメント

リリース情報

こわれた箱にりなっくす(初回限定盤)[CD+DVD]

こわれた箱にりなっくす(初回限定盤)[CD+DVD]

2014年11月12日

キングレコード

[CD]
1. 触媒
2. Re:なくす
3. スナメリ
4. 好き、殺したい、愛してる
5. 関東ローム層
6. れっつきるみ
7. 正しい夜の過ごし方
8. シンデレラタイム
9. I / O

[DVD]
<ビデオクリップ>
・スナメリ
・スナメリ メイキング
<ライブ映像:渋谷duo MUSIC EXCHANGE公演>
・Re:なくす
・正しい夜の過ごし方
<ライブ映像:新宿LOFT公演>
・好き、殺したい、愛してる
・触媒

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お知らせ

■ライブ情報

後藤まりこと往く、関東近郊りなくすツアー
2014/11/20(木) 高崎 club FLEEZ
出演:後藤まりこ/HAPPY/小桃音まい
2014/11/21(金) 新潟 Live Hall GOLDEN PIGS RED STAGE
出演:後藤まりこ/HAPPY/Negicco
2014/11/27(木) HEAVEN’S ROCK 宇都宮 VJ-2
出演:後藤まりこ/とちおとめ25/オワリカラ
2014/11/28(金) HEAVEN’S ROCK さいたま新都心 VJ-3
出演:後藤まりこ/ゆるめるモ!/オワリカラ
2014/12/03(水) 水戸LIGHT HOUSE
出演:後藤まりこ/コンテンポラリーな生活/水戸ご当地アイドル(仮)
2014/12/04(木)仙台MACANA
出演:後藤まりこ/コンテンポラリーな生活/Party Rockets

山梨ロックフェス 2014『コロガキ特大収穫祭!』~バンドみようぜ!ガキの頃のように熱くなろうぜッ!~
2014/12/14(日)CONVICTION 甲府

後藤まりこ×LUI◇FRONTiC◆松隈JAPAN<東西決戦前夜合戦>【大阪編】
2014/12/17(水)大阪・宗右衛門町Loft PlusOne West

tricot主催「爆祭-BAKUSAI-vol.10」
2014/12/19(金)大阪府 梅田 Shangri-La

Chikusa THE Museum 2014 ~hate no Fantasia~ 龍宮ナイト×HOIP共同企画『うずうず』
2014/12/21(日)名古屋 ちくさ座

後藤まりこ×LUI◇FRONTiC◆松隈JAPAN<東西決戦前夜合戦>【東京編】
2014/12/24(水)東京・下北沢SHELTER

後藤まりこ 東名阪ワンマンツアー
2015/01/09(金)【大阪】umeda AKASO
2015/01/10(土)【愛知】池下 CLUB UPSET
2015/01/23(金)【東京】赤坂BLITZ

Output 3rd ANNIVERSARY KICK OFF SPECIAL LIVE 「後藤まりこ × FLiP 2マンライブ」
2015/02/06(金)沖縄Output

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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