安藤裕子×プロデューサー・末光篤、新作「クリスマスの恋人」スペシャル対談

安藤裕子 | 2014.11.18

 安藤裕子が書き下ろしの絵本付きのスペシャルシングル「クリスマスの恋人」をタワーレコード限定で発売する。彼女にとって初となるクリスマスソングの作曲とプロデュースを手がけるのは、デビュー前からの知り合いだという末光篤。演奏もSUEMITSU&SUEMITHのレギュラーメンバーが参加し、全員によるコーラスや鈴、管楽器などが入った、賑やかで華やかなポップソングとなっている。モータウンビートを基調にした古き良き時代のアメリカンポップスを今日的な感覚でアップデイトした、新たなクリスマスソングの定番。15年以上前になるというふたりの出会いから、クリスマス気分を盛り上げてくるスタンダードナンバーが誕生するまでの過程を聞いた。

EMTG:おふたりはデビュー前からの知り合いなんですよね?
安藤:そうなんですよ。私がまだ大学生で、某レコードメーカーの新人発掘の部署の方に気に入っていただいていた時期に、末光くんはディレクターの助手をやってて。その後、紆余曲折もあり、ようやくavexでデビューが決まって、会社にプリプロに行ったら、エレベーターで偶然、再会したんです。
末光:当時、僕はavexの社員としてディズニーのコンピレーションとかを作ってたんですよね。
安藤:その頃からすでに不思議な立ち位置でお仕事をしてたんですけど、今度は知らない間にミュージシャンとしてデビューしてて。
末光:3段階あるんですよね(笑)。いちばん最初は、裕子ちゃんがアーティストの卵みたいな状態で、僕も音楽業界に入ったばかりのペーペーの頃。2回目は、僕がA&Rとして音楽業界でキャリアを積んだときで、彼女はアーティストとして活躍してて。最後は、同じような立ち位置でお会いすることになり、今回のようなこともできるようになったっていう。
EMTG:2008年にリリースされた安藤さんの4枚目のアルバム『chronicle.』に収録されていた「HAPPY」以来、2度目のコラボレーションになります。
安藤:当時はずっともっさん(山本隆二)と曲を作っていて、ほかの方の曲を歌うことがなかったので、誰かに曲をもらってみたいねっていう話から、末光くんのSUEMITSU&SUEMITHとしての音楽が、すごくキャッチーで好きだなと思って、お願いすることになりました。
末光:裕子ちゃんの音楽性は知ってたから、そんなに悩まずに、彼女に歌って欲しい曲っていう感じで書いたんですけど、仕上がりもすごく良くて。
安藤:末光くんの曲をもっさんがアレンジすることで、なんの違和感もなくバンドサウンドになってたし、可愛い曲に仕上がりましたよね。今回はまず、「クリスマスという素敵な季節を蘇らせたい! そのためのクリスマスソングを作りたい!」っていう思いが一番にあって。そこには、安藤裕子のパーソナルとか、安藤裕子の楽曲っていうイメージはいらなくて。純粋にクリスマスの曲が作りたいなって思ったんですよね。そういう普遍的なサウンド作りは末光くんが上手なんじゃないかっていう話が出てお願いしたんです。
末光:クリスマスやファンタジーをテーマにした女性ヴォーカルが歌う曲っていうのは、僕が最も得意としているところで。しかも、今回は、シュープリームスやクリスタルズ、シフォンズのようなアメリカのガールズポップ。モータウンビートでクリスマスっぽい雰囲気でっていう、これまた得意としてるところばかりを言われたので(笑)、お話を聞いてる中で、アイデアがすぐにバッと浮かんだんですよね。
安藤:早かったですよね。
末光:楽しかったんですよ。しかも、一発OKをもらって。
EMTG:楽曲を受け取って、どんな風景が思い浮かびました?
安藤:フラインドチキン(笑)。ま、それは冗談としても、世間の人がクリスマスがきたぞっていう予感を運んでくれる曲だなって思って。もともと、私は、自分の曲は歌いながら作るので、人様からいただいた曲に言葉をあてるのが苦手なところがあるんですよ。でも、この曲は、自分のなかですぐにフィットして、書き始めたらすぐにできて。子供が「明日はクリスマスだ! プレゼントなにかな? ご飯のあとにケーキがあるかな?」ってワクワクするようなサウンドにあふれてるなと思って。クリスマスへの期待感をすごく感じたんですよね。だから、「クリスマスの恋人」というタイトルで、歌詞も恋人を待ってるストーリーなんですけど、実際はもうちょっとファミリー全体のクリスマスをイメージしてて。普段はそんなにベタベタな英語を使わないようにしてるんですけど、クリスマスの曲だし、サウンドやサビの感じも洋楽のポップスを彷彿とさせるし、いわゆるクリスマスっぽい音の言葉にしてますね。
EMTG:使ってるワードが違うせいか、安藤さんの発声もいつもとは違う雰囲気になってますよね。レコーディングはいかがでした?
安藤:普段は日本語が多いから音を伸ばす箇所が多いんだけど、英単語は言葉が細かく切れる。だから、倍音というよりは、裏あごに音節をあてる感じになって、いつもより尖った声になってるかもしれない。レコーディングは楽しかったですね。アレンジも末光くんで、いままでやったことのなかったmitoくんたちにも会えたし。
末光:SUMITSU&SUEMITHのレギュラーメンバーであるmitoくん(クラムボン)、柏倉隆史くん(toe)、鈴木俊介くんにお願いして。
安藤:自分たちのチームとは違う、末光チームみたいな空気があって、見てるだけでもおもしろかった。末光くんが作るサウンドだけど、mitoくんが仕切ってたりするのもおもしろかったし、末光くんと柏倉くんが鈴を鳴らす姿もおかしかったし。
末光:あれ? なんか間違ってた!? ああやるって教わったんだけど……。
安藤:いや、私も、ライブで真似しましたよ。ただ、手首をひねりながら小さくかがんでいく姿が変身するみたいに見えて(笑)。この大きな体で鈴を鳴らしているだけでおもしろかったので、ずっと映像を撮ってました(笑)。あと、会話の仕方も違ってて。team Andyは昼間から飲兵衛みたいな匂いが強いんだけど、末光チームはしゃべりかたが理系ぽいというか、すげーいい大学に行ってそうな気がして。
末光:それはよくわかりません(笑)。
安藤:あはははは。もっさん(山本隆ニ)は長考派で、末光くんはテキパキしてるっていうことですね。
EMTG:(笑)ここで、突然ですが、おふたりのクリスマスの思い出を聞いてもいいですか?
安藤:うちは小さいころ、父親が割と怖かったので、そんなにいい思い出がないんですよね。みんなでデパートに行ったときに大きなクマのぬいぐるみを見つけて。「かわいい! あれが欲しい」って言ったら、めっちゃキレられて(笑)。「あんなにでかいのどーすんねん! アホか!!」って、デパート内に響き渡るような声で怒鳴られたことがあって。すごく悲しかったんですけど、その年のクリスマスの朝、家の居間にサンタさんからプレゼントが届いて。すごく大きな箱を開けたら。そのクマが出てきて。それはすごく嬉しかった。
末光:僕は大学生のときに付き合ってた女性とディズニーランドに行ったんですけど、気合を入れてサンタの仮装をしていたら、入り口で突っ返されて(笑)。当時、仮装して入っちゃいけないっていうのを知らなかったんですよね。
安藤:うそ!? 入り口で?
末光:そう、いい話でしょ(笑)。
安藤:へ~、寂しいね。そのあと、よくあんなにディズニーのコンピを作り続けたね。
末光:ほんとだよね!
安藤:その悔しさがバネになったのかもしれないね。
EMTG:カップリングにはユニコーンの「雪が降る町」のカバーも収録されてます。
安藤:せっかくだから、絵本も含め、クリスマスらしい1枚を作ろうって思って。カップリングもクリスマスソングの有名なカバーを入れようってなって。私はポール・マッカートニーの「ワンダフル・クリスマスタイム」がいいんじゃないか? っていう話をしてたんですけど、もっさんが、「これはどうかな?」って、ユニコーンの曲を出してくれて。目から鱗とういうか、これがいい!ってなったんですよね。
EMTG:どんなアプローチで挑もうって考えてました?
安藤:キー合わせは結構、悩んで。低い設定でも歌えたんだけど、地声で朗々と歌うのでは民生さんには勝てないなと思って。せっかく私が歌わせてもらうのであれば、安藤裕子らしく歌いたいということから、キーを高めに設定して。ファルセットで歌えるような、違和感のない音にしつつ、優しさや寂しさが強く出てる感があるかな。年の瀬っていう。
EMTG:サウンド的にはシティ感がありますけど、聴いてると実家に帰りたくなるんですよね。
安藤:でしょう(笑)。まず、「クリスマスの恋人」を聴いて、街に出かけて、クリスマスプレゼントを購入して。イブにはレストランで高級なディナーを食べ、家に帰ってプレゼントを渡して、買っておいたケーキを食べて、国産ワインを飲みあかし。「雪が降る町」で親の顔を見たくなって、それぞれ故郷に帰っていくっていう。クリスマスがあったら、お正月があるっていう。そういう季節をちゃんと思い出す雰囲気作りにぜひ活用していただけたらなと思いますね。
EMTG:最後に、改めてお互いをどんな存在と感じてるかを聞きたいんですが。
安藤:古くからの知り合いですけど、ふたりだけで飲み食いしたことはないんだよね。
末光:不思議だよね、縁って。ご飯を食べに行ったことはないけど、やっぱり僕にとっては特別な感じがありますよ。新しいリリースを目にしたり、音を聴いたりすると、ああ、裕子ちゃんの新しい歌だっていう意識があるし、目にしたり耳にしたりする機会があると、すごく嬉しいんですよね。あのとき……裕子ちゃんもいろいろあったけど、僕もいろいろあったので、そういう時期に少しでも一緒にいた感じがよみがえってきて。
安藤:わりと暗黒時代なんでね、お互いに(笑)。私にとっては、いいスパイスっていう感じですかね。末光くんは、楽曲から漏れる空気というか、色彩がすごく明るい。私は、なにかと重くなりがちだから、末光くんのサウンドが入ると、例えばアルバムがいい立体感をもつようになるなって思ってます。
末光:僕、裕子ちゃんの曲はいくらでも、どうにでも書けるなって思いますよ。ポップなものはもちろん、パンクだって、バラードだって書ける。裕子ちゃんのアルバムはよく聞いてるし、音楽性にも共感するものがあるので、今後どういうオファーがきても、すぐに書けるなって思いますね。

【取材・文:永堀アツオ】

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リリース情報

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発売日: 2016年04月12日

価格: ¥ 1(本体)+税

レーベル: 1

収録曲

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ビデオコメント

リリース情報

クリスマスの恋人

クリスマスの恋人

2014年11月26日

cutting edge

<TOWER RECORDS限定発売>
収録曲:
1. クリスマスの恋人
2. 雪が降る町

タワーレコード限定発売絵本付きスペシャル・シングル 
本人描き下ろしクリスマス・ストーリー絵本(20P)

取扱店:タワーレコード全店、タワーオンラインで
※12月3日からiTunesをはじめとするサイトで楽曲のみ一斉配信

お知らせ

■ライブ情報

安藤裕子2014 ACOUSTIC LIVE~北海道編~
2014/11/21(金)札幌コンサートホールKitara(小ホール)
2014/11/24(月祝)函館金森ホール

YEBISU GARDEN PLACE 20th Anniversary presents L’ULTIMO BACIO Anno 14 “December’s Calling”
2014/12/23(火・祝)恵比寿The Garden Hall
出演:安藤裕子/TK(凛として時雨)

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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