「ドレスコーズが鳴りやまない」。志磨遼平ひとりで作り上げたニューアルバム『1』

ドレスコーズ | 2014.12.03

 「本当の哀しみとは、自分の中で耐え忍ぶものでしょう」。かつてこう語っていたドレスコーズのフロントマン・志磨遼平。こちらからは想像もつかない哀しみを知ったであろう彼は、静かにひとり新作アルバム『1』を完成させた。
 あまりにも短く衝撃的なバンド・ヒストリーなど知らなくても、いつか忘れてしまっても、この情けないほどに寂しく、よろめきながら「とめどもない未来」へ顔を上げた男の歌は、いつまでも残り続ける。本作はドレスコーズの最も新しく、最もピュアなポピュラーミュージックアルバムだ。

EMTG:8月の野音でのワンマンライヴ「ゴッドスピード・サマー・ヒッピーズ」が4人のドレスコーズを観る最後の日になってしまいました。
志磨:時系列で言いますと、後に「Hippies E.P.」となる曲を7月に録り終えて、その翌日にみんなと話をして、今録り終わった5曲を最後に4人での活動を終えましょうって僕から伝えて。その後に8月17日の野音があり、9月のリリースと同じ日で、活動終了の発表をし、っていうことですね。
EMTG:4人での活動を終えようと思ったのは、個人的には、志磨さんが1/4であろうとするあまり、逆にメンバーが苦しくなったんじゃないかと思ってはいたんですが。
志磨:それもきっとたぶん、そこに至る経緯のひとつだと思うし。というかね、僕がこうやって話できるのも、僕から見たドレスコーズのストーリーだし。だから、4人それぞれのドレスコーズのストーリーがあっただろうし。だからそれをほかの人に伝えることが、ものすごく難しい。というのは、僕ら、皆さんの目に触れている何十倍もの時間を4人で過ごしましたので。
EMTG:はい。
志磨:という前提で、まあ、そうですね、さっきおっしゃっていただいた、僕が自分の我を殺して、なんとかバンドのバランスを整えようとしたっていうこと。じゃ、それを回避する方法があったかというと僕にもわからなくて。たぶん、「More Pricks Than Kicks TOUR」の後ですよね。とるべき道として、まあ、わかりやすく言えば、『バンドデシネII』みたいなものを作るか、また新しい何かを模索するかですが。あのアルバムの最後に「ゴッホ」って曲を作って、それが非常に、いろんな側面を持った曲で。で、「ゴッホ」の流れを汲むのは危険やと思ったんですよ、僕は。当時『「ゴッホ」は2.5枚目の曲』みたいなことを言ってたんですけど、だから2.5枚目を1曲でストップさせたって感覚ですね。
EMTG:なるほど。
志磨:4人で作り上げたアルバムが2枚あって、その2枚目のアルバムの表題曲として、限りなくひとりで作ったに近い曲が「ゴッホ」で。それはやっぱり『バンド・デシネ』っていう本来のアルバムとは素性が違うというのは僕も思ったし、メンバー全員も思ったと思うんです。『こういうふうに制作していくの?これから』っていう。『きみが書いた曲に僕らが最後に何か付け加えるの?』っていうような。で、「ゴッホ」の何が問題かっていったら、あれ、いい曲やから問題なんですよ。
EMTG:確かに。
志磨:『やっぱり、ひとりだと、あんまりよくないよねえ、ごめんね』っていうふうになりゃいいんですけど、あれはすごくいい曲やし。で、選択肢がふたつあったとして、「ゴッホ」的な制作方法でバンドを転がしていくのか、今まで通りのやり方で、今までにない音楽をやるのか、どっちかってなった時に、僕は後者を選びました。じゃないと、もう、バンドが、たぶん崩壊するなって思いました。で、次に作るものはまったく違うものである必要があるなと。それが「Hippies E.P.」というか、春に言うてた『ダンスミュージックの解放』っていうスローガン。
EMTG:ここまでだと、ただ自分たちの意志を貫いてきただけのことにも思えます。
志磨:うん、そうですよね。だから途中何があったのかっていうのは、恐らく説明が不可能なので省きますが、というのはね、演奏してただけなんですよ、僕らは。でもそれだけで十分なわけですよ、わかるわけです。今、何を思ってるか、とか、今、バンドがどういう状況か、とか、喋るよりも残酷にわかりますね。つまり僕は納得してしまったんですよね、少なくとも僕は。恐らくみんなも。正しいと思う道を選んだ。が、回避できないっていうこと。『恐らく僕らはやるべきことをやったんだ』ってこと。すごく当然のことのようにも思えます。アルバム2枚と、シングル2枚、で、「Hippies E.P.」を出して、30曲あまりを2年半で書いて、2年半、一度も集中力を切らすことなくやったっていうのは、納得してしまいますね、僕は。いいものをたくさん作ったなあって。
EMTG:なぜ“解散”じゃなかったんですか。
志磨:解散するかどうかは、いつかまた考えようって思ったんですよ。というのは、作るべきものを作ってないから、ってことですね。まずは3枚目を出さないといけないと思ってたし、僕は。で、それは『バンド・デシネ』より当然、素晴らしいものであるべきだし。そういうものを年内に発表するっていうのが、ドレスコーズの活動の決定事項のような。僕はポピュラーミュージックを作っている者として、自分の気が済むまで贅沢に時間を使って、自分が納得できるまで作品を発表しない自由なんてないと思ってますし。これはすべてのポピュラーミュージックをやってる人にいえますが。
EMTG:ある程度の速度、数。
志磨:ですね。じゃないと僕、たぶん2曲くらいしか作れないですよ、生涯で。僕はそのお陰で、これまで曲をこんなにたくさん書けたってことになるんです。だから作家としてだけで考えれば、曲がなかなか完成に至らないっていうのは、こたえましたしね。僕ら4人は曲をあらゆる角度からものすごく検証しますからね。
EMTG:ひとりで作った今回の『1』は、“ソロ・アルバム”ってことではないですよね?
志磨:そうです。でも『そうです』って言ってる僕は、だいぶ危ないってことも、なんとなく伝わりますか?ベビーカーに人形乗せて押してる人っぽい感じ、伝わりますか?(笑)。うん、そうそう。バンドのつもりで作ったし、って言いつつ、圧倒的にひとりであるっていうのがこのアルバムのいちばん面白いところなんですけどね。
EMTG:4人のドレスコーズが忘れられない。でも素晴らしいアルバムだと思います。ただ、これは4人で録りたいと思う曲ではないわけですよね。
志磨:うん。ないないないない。
EMTG:4人の演奏で聞きたかったとは思わなかったですね。
志磨:やっぱり!なんかね、このアルバムはたぶん引き算で作ってて、4人でやらないことだけで作った気もしますね。だからあの3人は間接的にものすごくこの作品に影響を与えてるんですよ。当然、4人でいればこんな作品、作らなくてよかったわけだから。だから、そういう意味でも“ドレスコーズ”っていうべきやと思うし、志磨遼平の力だけでできたものでもないし。すごい逆説的な言い方になりますけどね、そういうふうにあの3人が関わってもいるし。
EMTG:確かに。
志磨:だからね、ドラム叩きながら思うわけですよ。『あ、これ菅さんが嫌いなヤツや』とか思いながら録ってました。それはたぶん、マル(丸山康太)も(山中)治雄もそうで。『この進み方は回避するだろうな』っていうことを僕はやっていますね、今作では。その理由は全部『時間がないから』っていうのに逃げられるから。だから僕は急いで作ったし。もうとにかく作曲を含めて1ヶ月しかなかったですもん、レコーディングの完パケまで。
EMTG:リリースをもっと先にすることはできなかったんですか。
志磨:そうしたら僕はもう立ち直れないと思ったから。この現実を受け止めた今の状況が辛すぎるし。何年先になるかわかんないですよ、そうしたら。だから、今、僕が1ヶ月でアルバム作れって言われたら、どういうのができるかなっていうのを自分に課した結果、引き算としてこれが出てきたっていう。
EMTG:ただ、このアルバム出したら、後戻りできないですよね。
志磨:そう、これ全部僕ですもん。僕はたとえば『ジョン・レノンみたいに歌いたいから、こういうふうにやろう』とかね。そうやっていろんな知識を身につけてきたんです。『あいつはどうやってこの音を録ってるんやろう』とか。でも、今回はそういう作為がまったく入ってないです。入る時間がなかったんですね、つまり。僕ら4人だったらついつい編集してしまうところを、しないで録ってしまうように追い込んだっていうかね。もう、そのせいにできるじゃないか、っていうね。
EMTG:「1954」っていう志磨さん自身のことを書いた曲も1stにありましたが。
志磨:たとえば「1954」をドキュメンタリー映画だとするなら、これは“ニコ生”ですよね。「1954」っていうのは確かに僕のあの時の赤裸々な表現でありながら、やっぱりそれはものすごく練って作ったものであったから。すごく使いたいけど使っていないカットとかもたくさんあっただろうし。ニコ生はカットができない分ね、それこそ言ったら最後、後戻りできない。
EMTG:ですよね。演奏に関してもひとりきりで?
志磨:できるところは、っていうか、つまり僕は早く仕上げたかったんですよ。だからドラムとギターは僕がやったし、でもベースは僕が弾くより、絶対ベーシストが弾いたほうがよかったから友達に頼んだんですね。ただとにかく、曲は2週間であげましたから、あと2週間で全部録るには、どうしたらいいかっていうと、人に伝えてる時間はない。
EMTG:これまで尋常じゃない時間かけて作ってきたのに、できるものなんですか。
志磨:そう、それもマイナスして。全然できますよ、どっちも。
EMTG:今回は特にメロディと歌が際立ちましたね。
志磨:そうなんですよ。でもこのアルバムにはロックンロールは入ってないし。でもね、これまでもメンバーはみんな僕のメロディを優先して扱ってくれてたんです。僕のメロディをなるべく飾るようにっていうのかな、もうほんとに、たとえば品のいい人が、ほんとにちょこっとだけ宝石つけるみたいなね。
EMTG:メンバーの皆さんはもうこのアルバム聴いてるんですか。
志磨:えっとね、渡して感想が返ってきてないっていう(笑)。
EMTG:(笑)。自分に課した3枚目ができました。これからどうするんですか。
志磨:・・・どうしますかね。
EMTG:バンドはまた作ります?バンドはもういい?
志磨:・・・うん、もういい。ドレスコーズ最高だから。最高じゃないのやっても意味ないし。でもきっといいですよ、たぶんね、ここからの僕。

【取材・文:篠原美江】

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リリース情報

[Blu-ray]UVERworld 15&10 Anniversary Live LIMITED EDITION(完全生産限定盤)

[Blu-ray]UVERworld 15&10 Anniversary Live LIMITED EDITION(完全生産限定盤)

発売日: 2016年06月08日

価格: ¥ 9,900(本体)+税

レーベル: Sony Music Records

収録曲

Disc 1 :2015年9月3日に行われた周年記念ライブ
UVERworld 15&10 Anniversary Live 2015.09.03

Disc 2 :2015年9月6日に行われた「女祭り」
UVERworld 15&10 Anniversary Live 2015.09.06 Queen’s Party
三方背ケース+Special Booklet 「THE WORDS」付き。

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リリース情報

1(初回限定盤)[CD+DVD]

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2014年12月10日

EVIL LINE RECORDS

[CD]
1. 復活の日
2. スーパー、スーパーサッド
3. Lily
4. この悪魔め
5. ルソー論
6. アニメみたいな
7. みずいろ
8. 才能なんかいらない
9. もうがまんはやだ
10. 妄想でバンドをやる(Band in my own head)
11. あん・はっぴいえんど
12. Reprise
13. 愛に気をつけてね

[DVD]
「スーパー、スーパーサッド」MUSIC VIDEO
「ワン・マイナス・ワン」DOCUMENTARY VIDEO
※「ワン・マイナス・ワン」DOCUMENTARY VIDEOは志磨遼平の過去と現在を知る周囲の人物へのインタビューが収録される予定

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デュラン・デュラン
「手首がぶらんぶらん」ってツイートしたら、どうしても「デュラン・デュラン」が、こらえきれなくなっちゃった。これがたぶんオッサンっていうことなんやと思うんですけど。あ、デュラン・デュランじゃなくて“ブラー”にしとけばよかったかな。「手首がブラーブラー」のほうがわかりやすかったかも。しょうもないもので、スミマセン。


■ライブ情報

Tour 2015 “Don’t Trust Ryohei Shima
2015/01/17(土)大阪 umeda AKASO
2015/01/18(日)名古屋CLUB QUATTRO
2015/01/25(日)新木場studio COAST

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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