HY初のコンセプト作品、テーマはずばり“ラブソング”

HY | 2014.12.03

 HYから届いた新作『LOVER』は記念すべき10枚目にして、なんと初のコンセプトアルバムだった。テーマはすばり“ラブソング”。これまでも多くのラブソングを手がけ、多大な共感を呼んできた彼らだが、今作はその集大成と言っていいかもしれない。現在、大ヒット公開中の映画『想いのこし』主題歌である「あなたを想う風」を筆頭に、さまざまな愛の形を丁寧に紡いで作り上げられた珠玉の全7曲は誰の心にも寄り添って深く温めてくれるはず。来年にバンド結成15周年を控えた彼らの新たなチャレンジに刮目するうえでも必聴だ。

EMTG:全曲“ラブソング”をテーマにして作られた今回のアルバム『LOVER』ですが、映画『想いのこし』の主題歌「あなたを想う風」を手がけられたことがそのきっかけでしょうか。
名嘉 俊:たしかにそれはありましたね。『想いのこし』からスタートして、アルバム出したいねっていう話が具体的に始まったので。ただ、もともと今回で10枚目のアルバムだし、来年の15周年に向けてどうしたいかとか、いろいろ考えている中でのことだったんですよ。僕たち、これまではコンセプトを立てずにアルバムを作り続けてきたんですけど、『想いのこし』の主題歌をきっかけに10枚目のチャレンジということで“ラブソング”、“あなたと私”をテーマにして1枚作ってみようと。
新里英之:ラブソングがテーマなので落ち着いた雰囲気の歌が多いんですけど、でも全然バラードだけに縛られない、すごくバラエティ豊かな作品になったと思いますね。今、自分たちも30代を迎えて、愛に対する想いもどんどん変化してきて。たくさんの出会いや別れ、悲しみ、そして悲しみを克服したからこそ得られる喜び……そういうものを知ったうえで、さらに深く愛について考えながら作っていった歌たちなので、今回の7曲は。
名嘉:誰もが必ず通る愛の形がこの7曲に集約されてると思いますね。
仲宗根泉:私は最初、今までコンセプトを決めて作ったことがなかったから、どういうふうに書けばいいのか、ちょっと考えてしまったんですけど。でも愛というものに対して俊やヒデがわりと自由に大きな捉え方をしているのを見て“ああ、それでいいんだな”って。家族愛でもペットへの愛でもいい、愛っていろんなものに生まれる感情だし、男女だけでなくてもいいんだなって思ったら、逆に素直に男女の愛情を書いてましたね(笑)。
名嘉:相変わらずど真ん中で痛いヤツをね(笑)。これはもうイズの十八番。今回もまたボディブローを喰らっちゃいましたから。
EMTG:許田さん、宮里さんは3人から上がってきた曲を聴いてどんな感想を?
許田信介:自分自身、愛に飢えてるといいますか、心がスカスカだったものですから……。
名嘉:そうだったの!?(一同爆笑)
許田:そんなスカスカな気持ちをこの曲たちが埋めてくれたので、ホント曲に寄り添って作っていくことができました。だからこの冬は大丈夫!
新里:大丈夫、って(笑)。
許田:この1枚があれば乗り越えていける、そういうアルバムだと思います。背中を押すとかではないんですけど、聴いてくれた人ひとり一人に寄り添って温めてあげられるような曲たちになってると思いますし。
仲宗根:すっごい真剣な顔で言ってる(笑)。
EMTG:でもホント、そういう懐深い温かさを感じます。では宮里さんは?
宮里悠平:ひとつに偏ることもなく、いろんなジャンルの曲があったし、打ち込みが多用されてる曲もあったりして勉強になる部分が多々ありました。ゆったりとしたバラードはどうやって強弱を付けていこうかとか、自分のプレイを改めて見つめ直せるレコーディングだったし、その結果、いろんな愛があることを音からも感じられるアルバムになったと思いますね。
EMTG:ラブソングがテーマではありながら、けっしてハッピーなだけではなく、別れとか、むしろ切ない要素が多く詰め込まれている気もしたんですよ。例えば名嘉さん作詞作曲の「木漏れ日かざるこの道を」は誰もが直面する死を前提において、だからこそ、そのときまで一緒に“思いきり生きてゆこう”と綴られていますよね。
名嘉:20代のときは結婚式に呼ばれる数が圧倒的に多いけど、30代になるとお葬式も増えてくるじゃないですか。そういう現実を歌にすることも大事だと思って。この曲は自分の犬に向けて書いたんですけど、こういうのもありかなと。
EMTG:ところで映画『想いのこし』の主題歌となった「あなたを想う風」はご先方からのオーダーを受けて書かれたものなんですか。
新里:実はお話をいただく前から少し作ってあった曲で。途中の状態で置いていたんです。その後、オファーを受けまして、映画の台本を読ませていただいたり、まだ完成前の映像を観させていただきながら、その途中まで作っていた曲とは別に作り始めたんですよ。でも、なんだかハマらなくて。で、ちょっと前に手をつけていたその曲を引っ張り出してみたら、曲の世界観や温かさと映画『想いのこし』がすごくマッチしていたんですよね。最初の時点で歌詞も少し付けてたんですけど、どんどん映画の世界に近づけながら書き換えつつ、同時に自分たちのカラーも入れつつ、できあがったのがこの曲なんです。
EMTG:そういう作り方ってふだんはあまりなさらないですよね、きっと。
新里:そうですね。というか主題歌のオファーをいただくこと自体、これが初めてなので(笑)。でも確実に言えるのは『想いのこし』の映像を観たことでこの曲がとてもいいものになったということですね。命の大切さとか、いつ自分の大切な人がいなくなっちゃうかもしれない切なさとか、この映画にはたくさん詰め込まれていて、観ているうちに今まで自分にはなかった感情が生まれてきたんです。そうして生まれた感情を曲に入れながら作っていったので。
名嘉:ホントこの映画に出会わなかったら絶対にできなかった曲。この曲はきっとまたこれから自分たちの歌をいろんなところに連れて行ってくれると思うし、これからいろんな場所でこの歌をうたえると思うとうれしいです、すごく。
EMTG:2曲目の「パタパタ」も新里さんの作詞作曲ですが、すごくアップテンポで明るい曲調なのに歌詞は思いっきり切ない、そのギャップにやられました。
新里:さっき俊が言ったように、自分も30代に入ってこの1~2年、別れの瞬間がものすごく多かったんですよね。なので歌詞も自然とそういうふうになって……でも、ただ悲しいで終わるのは本当にツラいし、やっぱり何かしら希望を前に繋いでいきたかった。この悲しみは悔やんでも悔やみきれないけど、ちゃんと受け入れて進むしかないし、それを乗り越えられたら自分はもっと優しくなれるんじゃないかって。
EMTG:仲宗根さん作詞作曲の「Remember You」「Last Night」の2曲も失恋、別れがテーマになっています。
仲宗根:特に意識したわけじゃないけど結果、そうなってましたね(笑)。冬って出会いよりも別れのイメージがあるんですよ。どこか物悲しいというか、私にとって冬に聴きたいのはハッピーな曲ではないんです。なので今回、テーマがラブソングでリリースする季節が冬だとしたらこういう歌がいいなって、きっと自分の中ではもうできあがっていたんでしょうね。
新里:バラード系が続く中、俊が作った「NIJIKAN TRIP」みたいな、心がパッと開けるような曲がくるのがまたいいんですよね。より爽やかな気持ちになれて。
EMTG:ラストの「結」はまさにアルバムの“結び”にふさわしい、ずっしりと心に響く楽曲ですね。
新里:これも“ラブソング”っていうコンセプトを決めたおかげで生まれたと思うんです。この曲は大きくて、優しく温かくて、でもどこか寂しさを感じるっていうのを表現したかったので、最初からストリングスアレンジをイメージしてました。演奏はシンプルかつ力強く、アレンジはストリングスで壮大に、って。このタイトルは“ゆい”と読むんですけど、本当に強く結ばれた人だからこそ思える感情をこの曲では書きたかったんです。
EMTG:そもそもHYにとってのラブソング、あるいはHYならではのラブソングってどういうものなんでしょう。
新里:今、パッと思い浮かんだのは、ちょっとクサいかもしれないですけど、海かなって。
EMTG:へぇ!
新里:やっぱり沖縄で生まれ育ったし、そんな自分たちが作るラブソングって聴いたら海に行きたくなるような、海で聴きたくなるような歌だと思うんですよ。自分自身、寂しいとき、悲しいときも、ハッピーなときも海に行きたくなるんですよ。海ってどんな感情も包んでくれるから。だからって答えはまったく帰ってこないですし、パワーもまったくもらえないですけど(笑)。
EMTG:え、まったくもらえないんですか!?
新里:パワーをもらうために行くわけじゃないんですよ。海と向き合うこと自体が自分と改めて向き合う時間になるんです。答えは最終的には自分で出すものですから。
EMTG:このアルバムもそういうものかもしれません。さて来年1月にはツアー“HY Kana-yo Premium TOUR 2015”も控えていますが、“Premium”と銘打たれたその理由は?
新里:今までとはちょっと違う感じのライヴをしていきたいと考えてるんです。ふだんのHYのライヴってめっちゃ筋肉痛になるくらいはじけるんですけど、今回は『LOVER』の雰囲気に合わせてちょっと大人っぽいムードで、でも熱量は今まで以上に高いようなツアーにしていけたらなって。そういうライヴも初なんですよ。来年はHYも結成15周年ですし、その瞬間は思いっきりはじけて迎えられるように、まだまだいろんなことにチャレンジしていきたいですね。

【取材・文:本間夕子】

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リリース情報

恋人同士

恋人同士

発売日: 2016年06月10日

価格: ¥ 0(本体)+税

レーベル: ユニバーサル ミュージック

収録曲

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リリース情報

LOVER(初回限定盤)[CD+グッズ+フォトブック]

LOVER(初回限定盤)[CD+グッズ+フォトブック]

2014年12月03日

ユニバーサルミュージック

1. あなたを想う風
2. パタパタ
3. Remember You
4. 木漏れ日かざるこの道を
5. NIJIKAN TRIP
6. Last Night
7. 結

グッズ:オリジナルペア手袋(スマートフォン対応)
ミニブック:オリジナルストーリー&フォトブック

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●名嘉&許田
ミニジープ

名嘉:4輪のバギーをジープに改造したものなんですけど、ふたりともすごく気になっていて。さっきも一緒に見てました。
許田:四駆の4WDの子供版みたいなコンパクトな乗り物で、ちゃんとナンバーつけて公道で走れるんですよ。ちょっといいなと思って。

●仲宗根

最近めっちゃ靴を買ってるんですよ。欲しいと思ったらすぐ買っちゃって。たぶんこの1週間で5足買ったのかな、結構な数で(笑)。基本、そんなに買い物ってしないんですけど、なぜかとっても靴が買いたくて。自分でも深層心理で何かあるのかもしれないと思って調べたら“新しい靴が欲しいのは新しい環境にいきたい気持ちの表われ”って。

●宮里
潮見表

時間あるときにはよく釣りをするので沖縄の干潮・満潮の時間を調べてました(笑)。潮は大事ですからね。

●新里
比嘉愛未さん

東京に来るときに飛行機の中で会ったんです。荷物を取ろうとしたときに比嘉愛未さんが来て“HYさんですよね? 曲、聴いてます”って。比嘉さん、僕らと地元が一緒なんですよ。綺麗な方でしたね。


■ライブ情報

HY Kana-yo Premium TOUR 2015
2015/01/27(火)愛知 名古屋CLUB QUATTRO
2015/01/28(水)愛知 名古屋CLUB QUATTRO
2015/01/30(金)福岡 イムズホール
2015/01/31(土)福岡 イムズホール
2015/02/03(火)大阪 梅田CLUB QUATTRO
2015/02/04(水)大阪 梅田CLUB QUATTRO
2015/02/07(土)宮城 仙台CLUB JUNK BOX
2015/02/08(日)宮城 仙台CLUB JUNK BOX
2015/02/18(水)東京 渋谷CLUB QUATTRO
2015/02/19(木)東京 渋谷CLUB QUATTRO
2015/02/21(土)沖縄 ミュージックタウン 音市場

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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