TRICERATOPS、ニューアルバム『SONGS FOR THE STARLIGHT』完成!

TRICERATOPS | 2014.12.10

 ロケットに例えると、宇宙空間を慣性で進むのではなくて、ジェットエンジンを燃焼させて、重力と空気抵抗に立ち向かって一気に上昇していく瞬間のパワーにも似たものを感じた。TRICERATOPSの最新アルバム『SONGS FOR THE STARLIGHT』は画期的で圧倒的なエネルギーが渦巻く傑作だ。バンドサウンドを大胆に解体し、自在に再構築して、新しいダンスロック&ダンスソウルを生みだしている。胸がときめく、腰が動くというのに加えて、皮膚がヒリヒリしてきたりして、細胞レベルで揺さぶりをかけてくる。強靱な音はより強靱に。繊細な音はより繊細に。光はよりまばゆく。闇はより深く。これまで「ライヴを観れば、一発で彼らの凄さがわかる」と言い続けてきたが、今後はこう言うべきだろう。「最新作を聴けば、一発で彼らの凄さがわかる」。

EMTG:4年3か月ぶり、11枚目のアルバムということになります。かなり間隔があきましたが、時間をかけただけのことはある素晴らしい作品ですね。
和田:前作『WE ARE ONE』を作った時は充実感はあったけれど、行けるところまで行ききった感があって、次にどこに行ったらいいか、見えなかったんですよ。今回はレコーディングが楽しかったし、手応えもあった。この感覚をまた味わいたいという気持ちが強いので、多分、次はそんなに間をあけずに制作に入ると思いますよ。
EMTG:作ることでまた新しい可能性を切り拓いた作品ということになりそうですね。
吉田:新しいところを目指せて、しかもクリア出来たところがいっぱいあったので、良かったですよね。
EMTG:新しいところというと?
吉田:目標として掲げていたのは洋楽の音像に勝ちたいということ。日本で普通のやり方で作っていると、どうしても枠の中に収まったきれいな音になってしまう。洋楽のあのバカみたいにデカいキックに勝つには、今までみたいに3人でせーので録るやり方では難しい。音像を徹底的に追い込むために、あえてひとつひとつの音を別々に録る方法でやりました。キックひとつとっても音がいっぱい重なっていたりする。今回はギタリスト、ベーシスト、ドラマーというよりも、3人それぞれがプロデューサーという感覚で作った作品ですね。
和田:今までのは極端に言うと、ライヴを録音していたのに近いんですよ。それがロックバンドのあり方だろうというこだわりもあったんですが、ライヴは大音量と視覚があるので、結果、「ライヴの方がいいじゃん」って言われたりする。ライヴと同じようにレコーディングしていたら、ライヴには勝てないところがあったんですが、今回はそこもクリアしていこうと。
林:音の細部にまで徹底的にこだわって作っていったんですよ。エンジニアも森川裕之君(oganic stereo)というミュージシャンで。本職のエンジニアの人と作ると、わからないことがあった時、お任せしてしまったりするんですが、今回は「ここをこうしたら、もっといい音になるんじゃないの?」って話し合いながら一緒に作っていった。普通とはかなり違う音作りになったと思います。
和田:アンチ・オーソドックスで行こう、異質なものをぶつけて普通じゃなくはみ出していこうというのがテーマでしたね。考えてみると、1stと2ndの頃って、まだそんなにレコーディングの知識がなかったこともあって、アンプをフルボリュームで鳴らして歪んだ音で録ったり、常識的じゃないやり方をしてたんですよ。経験を積み、演奏技術が向上し、知識も増えてきて、ロックバンドとしてどんどん洗練されてきて、はみ出す部分が少なくなってきた。今回は常識に縛られるのはやめようと。
EMTG:このタイミングでそう思ったのはどうしてですか?
和田:今、ビンテージの生のナチュラルな音を追求しても、そういう音を再生できる環境で聴いてもらえる可能性は低いんですよ。PCのスピーカーやイヤホンで聴く人が多いわけで、小さいスピーカーで聴いた時に、今流行りのバリバリの打ち込みの音に負けてしまうのは悔しいですから。オレらはそういうところでも勝っていきたい。となると、今の環境に合わせる部分と突っ張っていく部分、うまくバランスを取りながら作っていくべきだなって。他とは違う異質な音を鳴らしたいという気持ちも強かった。同じような音があふれている時代だからこそ、オリジナルな存在でいようって。はみだした音って、実はキャッチーだと思いますし。
EMTG:そういう音楽を作っていくには結束力の強さも必要だったのではないですか?
吉田:自分たちだけでやってると、つい枠の中に収まってしまったりする。エンジニアの森川くんやプロデューサーの木崎さんの力も借りて、チーム力で完成したアルバムだと思います。
EMTG:楽器の音を別々に録っていくのは難しいところもあったのではないですか?
林:ノリを出していく部分では難しさはありました。機械で刻まれたリズムに正確に合わせていけばいいというものじゃない。きっちり弾くだけじゃ気持ちいいものにならないので、聴いてノリのいいものを目指しました。
吉田:ドラムに関しても生で叩いているフィーリングに打ち込みの音を足したりもしていて。グルーヴのあるものになったと思います。
和田:今回のはキックとベースのアルバムと言っても、過言ではないですね。
EMTG:曲を作る上では考えていたことは?
和田:今までにない曲を作れたらということ、今までにないTRICERATOPSを開拓したいということですね。集中してアルバムの制作をやったのはここ数カ月なんですが、後半になるほどに、どんどん今のモードになっていって、クリエイティヴになってきた。「GOOD ENOUGH」は最後の最後で出来てきた曲ですね。
EMTG:この曲、サウンドも歌詞もグッときました。
和田:本来は予定にない曲だったんですが、もっと攻めるアルバムにするにはもう1曲、アップテンポの曲が必要なんじゃないかってことで、時間もないけど、やれるだけやってみようってやっていったら、出来ました。
EMTG:「スターライト スターライト」もバンドの新たなアンセムになっていきそうな素晴らしい曲ですね。
和田:家で最初のアイディアを録音した時から、これはキタかもなって思いました。シンプルな骨格でFメジャー7とAm7という2つのコードしか使ってないんですが、ドリーミーでせつない感じが生まれる魔法のコード進行で。その中でいい感じでメロディを変化させていけた。
EMTG:ゴスペル、A&M、バカラック的な雰囲気がありながら、大サビで躍動感あふれる展開になる「ふたつの窓」とか、モータウン的な明るいテイストがありながら、実は悲しい内容が歌われている「恋するギターとガーベラの花」とか、深みと広がりを備えた歌も目立ってます。
林:曲で色々遊んだりもしていて。「恋するギターとガーベラの花」は銀のバケツを叩いたらいいんじゃないかって言ってたら、スタジオに本当にあったんですよ(笑)。
和田:イメージは金属の缶のゴミ箱なんだよねって言ってたら、本当にスタジオのオフィスにあって、佳史がドンドンって叩きました。
吉田:あたかも騒音おばさんのようにね(笑)。
EMTG:『SONGS FOR THE STARLIGHT』というタイトルはどんなところから?
和田:ドライヤーで髪の毛を乾かしている時に思い付きました(笑)。宇宙好きというのがまずあって。「スターライト スターライト」や「FLASH!!!」もそうなんですが、星空に向けて、偉大なものに向けての歌という意味もあるし、踊れる曲がいっぱい入っているので、ダンスフロアのミラーボールに向けてという意味もある。あと、聴いてくれる人たちへという意味もありますね。リスナーが僕らにとってのスターライトでもあるので。
EMTG:「ポスターフレーム」はラブソングですが、再生するイメージが湧いてくるし、「ふたつの窓」も再出発の歌で。困難を乗り越えて進むバンドの状態と重なるとこもあると感じました。
和田:裏テーマはそこかな。終わらせることは簡単だけど、そこを乗り越えて見えてくるその先の世界も悪くないんじゃないかってことですよね。終わらせてたら、今の景色は見えないわけだし。諦めずに続けていったら、その先に可能性があるんじゃないかなって。でもこの曲は『MADE IN LOVE』のころからあったんですよ。サビ以外は新たに書き直したんですが、サビの歌詞も含めてその頃からあった。変なもんで、時がたってフィットする歌詞もあるんだなって。
EMTG:“果てしない物語にしよう”ってところにもグッときてしまいました。
和田:「やり尽くした」なんて簡単には断言出来ないと思うんですよ。『WE ARE ONE』を作った時、個人的には次が浮かばないところまで行ってたけれど、こんな作品を作ることが出来たし、次が楽しみだし。
EMTG:次のことは考えてますか?
林:マスタリングで最後の最後まで粘って、それが終わったばかりなので、まだ次のことは考えられないんですよ。しばらくしたら色々と感じると思うんですが。
吉田:今はツアー中なので、まずライヴですよね。CDを時間をかけて作った分、その曲をやるにはこれまで以上に演奏力が問われる。最近、ドラムに関してもさらに突き詰めるようになってきました。
和田:今回はヘタなライヴをやると、今までと逆の現象が起きるかもしれない。「CDの方がいいじゃん」って。これは望んでいたことでもあるんですが、そこで「ライヴもいいよね」って思わせることが出来たら、オレらはまたひとつ、上に行けたってことになるんじゃないですかね。

【取材・文:長谷川誠】

tag一覧 アルバム 男性ボーカル TRICERATOPS

リリース情報

Squall

Squall

発売日: 2016年07月13日

価格: ¥ 1,300(本体)+税

レーベル: YAMAHA MUSIC PUBLISHING

収録曲

1.林檎
2.一秒先は未来
3.Loop
4.急行都市の夜
5.眠る街
6.Silly as love

関連記事

ビデオコメント

リリース情報

SONGS FOR THE STARLIGHT

SONGS FOR THE STARLIGHT

2014年12月10日

Trinity Artist

1. GRRR! GRRR! GRRR!
2. HOLLYWOOD
3. スターライト スターライト
4. ポスターフレーム
5. GOOD ENOUGH
6. PUMPKIN
7. 僕はゴースト
8. 虹色のレコード
9. FLASH!!!
10. 恋するギターとガーベラの花
11. ふたつの窓

このアルバムを購入

お知らせ

■マイ検索ワード

●和田唱
心斎橋 うどん

ツアーで大阪に行ったとき、行きたいうどん屋があったので行ったら昼休み中だったので、他のお店を探すために検索。結局そこは場所が遠かったので行かなかったです(笑)。


■ライブ情報

FM802 25th Anniversary 802GO! ROCK FESTIVAL RADIO CRAZY 2014
2014/12/27(土)インテックス大阪

TRICERATOPS WINTER TOUR 2014 “FOR THE STARLIGHTS” 追加公演
2014/12/30(火)赤坂BLITZ

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

トップに戻る