SUPER BEAVER、バンド史上最も強靭な意志の宿った1枚『愛する』

SUPER BEAVER | 2015.03.31

 SUPER BEAVERがバンド史上最も強靭な意志の宿ったニューアルバム『愛する』を完成させた。昨年、シングル『らしさ / わたくしごと』をリリースして、年末のツアーやフェスでもこれまで以上の手応えを掴んだ彼ら。その裏では、ギター柳沢亮太の緊急入院という危機もあったが、それでもバンドは止まらずに走り続けた。ビーバーは本当にタフなロックバンドだ。今回のアルバム『愛する』に至るまでの想いを、ボーカル渋谷龍太と、作詞・作曲を手がける柳沢に訊いた。

EMTG:まずは柳沢くん、復活後初めての取材ということで。少し経緯をお話しいただけますか?
柳沢:そのときは外に向けてはあんまり言ってなかったんですけど。というのも、思ったよりもディープな感じだったんです。最初は熱が出たから、ふつうの町医者に解熱剤をもらって様子を見てて。でも『らしさ / わたくしごと』のプロモーションの時期だったので、大きな病院に行って点滴でも打ってもらおうと思ったら、その血液検査で、医者も見たことないぐらいの危険な数値が出て。そのまま緊急入院でした。
EMTG:かなり深刻な状態だった?
柳沢:正直、自分ではよくわかってなかったんですけどね。
渋谷:親御さんとかも駆けつけてましたからね。
EMTG:あの時期、何ヵ月かのライブはサポートギタリストを入れて3人で乗り越えていったわけですが。それはどういう気持ちだったんですか?
渋谷:いま思えば、疑似体験でしたね。仮に失うことを体験してしまったという感じ。当時はヤナギが戻ってくる保証もなかったですから。その状況で、僕と上杉(研太[B])と藤原(“26才”広明[Dr])の3人で、どこまでSUPER BEAVERを体現できるのかを考えていたんです。本当は、僕ら4人集まることはプラスだったのに、だんだん4人に慣れてきて、4人でいることがゼロの状況になってたと改めて気づきました。だからひとつが欠けると一気にマイナスになっちゃう。これが本当におっかないことだなと思いましたね。
柳沢:選択肢はいくらでもあったと思うんですよ。それこそ一時バンドを止めることもそうだし。でも、どうあれ転がり続けることが大事だったんです。そしたら3人は、「俺たちこういう風に先に進んでるから、後でダッシュで追いかけてこい。行き先はちゃんと切り拓いておくから」って。そういう雰囲気になってた。それはやっぱり10年同じメンバーでやってきた賜物だなと思いましたね。
EMTG:それで年末のツアーには柳沢くんが復活して、また4人に戻ったわけですが。それは終えてみて、どんなツアーでした?
渋谷:やっぱりバンドとして強くなっているんだなっていうのはすごく感じました。その柳沢の境遇を……たくさんの人にご迷惑をかけて言うのもおこがましいんですけど、ひとつのドラマにできたというか。
柳沢:僕が落ち着いてきたころから、メンバーがいまの状況を逆手にとることができ始めてるっていうのを聞いて。さっきも渋谷が言ったとおり、彼らはサポートのギターを入れてもSUPER BEAVERの100%を出せる状況を作れるようになっていた。だから、僕が戻ったときにも100%だとあんまり面白くないんですよね。だから4人に戻った最新のビーバーはちゃんとジャンプアップしてる状況にしたいっていうのは考えて。そういうのもあって本当にバンド自体が強くなったとは思いますね。
EMTG:その強くなったSUPER BEAVERの現状が、まさにこのアルバム『愛する』にも表現されていると思います。まず、ツアーでも披露された「証明」は、ライブで初めて聴いたときからすごく力強いメッセージを発信してたし。
柳沢:「証明」はまさに僕が退院して最初にメンバーに聴かせた曲ですね。まず、今回の病気があろうがなかろうが、「らしさ」という曲で、《自分らしさって何だ》って提示した、その明確なアンサーソングを作りたかったんです。と思ってる矢先に僕がアレしちゃったので(笑)。はからずとも、「らしさ」に対して、一歩俯瞰的な目で見ることができた。「人から見られる自分」、その集合が自分を形成するというか。それも大事なことなんだなって。「らしさ」の答えはこれかもしれない、と思ったんです。それは一人きりじゃ成り立たない。それが今回のアルバムのスタート地点でしたね。
EMTG:曲順的にもまず「らしさ」「証明」と3曲目まで決着がつくわけですが。アルバムでは最終的には、その一歩先まで踏み込んでいきますね。
柳沢:まさに。
EMTG:で、次にくるのが、明日という日が今日とは同じように来るかはわからないっていうようなテーマで。
柳沢:そうですね。でも……それは無意識に入ってるんです。僕もそういうことは前からなんとなく考えてはいたんですけど。今回ちょっと視点がひっくり返ったというか。いつ終わりがくるかわからないから、悔いを残さないっていうのも、あんまりおもしろくないと思い始めた。結果としていつ終わってもやれることの最大限をやってきたよね。だから最高を継続していけたらなっていうのは、今作では強く出たかなと思ってます。
EMTG:それは明らかに病気の影響だと思うけど……?
柳沢:と思います。デカいですよね、やっぱり。今回、一番実感したのはやっぱり余計なフィルターがいらないんだなってことですね。本当に言いたいときの「ありがとう」を改めて実感したから。「ごめんね」が、どういう気持ちを含んでるのか。向こうは「ごめんね」っていう言葉を待ってるわけじゃないのに、それでも言いたいのは何なのか。渋谷が常々言ってるように、言葉に対してどんな気持ちがのるかが大事だってことを異常に実感したんです。だから、シンプルでいいと思った。愛したいとか、愛されたいってことじゃなく……なんかもう「愛する」なんです。
EMTG:それが、このアルバム全体のテーマにもなっていくんですね。
柳沢:実際に、そうですね。僕はメンバーが全てとは思わなかったし、音楽が全てとは思わなかった。周りにいる仲間、家族、恋人、もちろんバンド、お客さん、大事なものっていっぱいあって、そのとき大事なものに優先順位をつければいいって、偽りなく言えるようになったんです。だから、《「あなただけが僕の全て」とは言えない理由が嬉しい》っていうのは、本当にそのままの言葉です。やっぱり“君は僕の全てだよ”って言いがち。だけど、絶対にそんなことがないし、そのほうが嬉しいなって思ったんです。これも大事だし、これも大事って言えるほうが幸せ。なんだかアホみたいですけど……。
EMTG:いや。なかなか言えることじゃないと思います。渋谷くんから見ても、柳沢くんのソングライティングの変化って感じる部分はあるんじゃないですか?
渋谷:キャパはすごく大きくなってますよね。人と同じことを見て、それに対して深く考えて発信することをずっとヤナギはやってきたと思うんですけど。今回は人がふだん見えないところが見えたと思うんで。
柳沢:心霊現象じゃないかよ(笑)。
渋谷:ま、三途の川じゃないけど(笑)。でも本人にその自覚はなかったって言ってますけど、やっぱり生きるか死ぬかを経験してしまったから。だけど、そういうことを経験した人にしかわかんないことを書くんじゃなくて、そういうことを経験したからこそ見え方が増えたことが大事だと思うんですよ。だって、三途の川がどうだったって書いても、「俺、見たことないからわからないや」ってなる。ヤナギは三途の川を見たうえで、自分の生活にもう一回戻ってきた。その生活の色がどういう風に変わるのかっていうところにフォーカスを当てられたから、こういう曲たちが揃ったと思うんです。確実にソングライターとしての懐は深くなったと思いますね。
柳沢:三途の川は見てないけどね(笑)。
EMTG:で、10曲目で「愛する」というひとつの結論があったうえで、ボーナストラック的な曲として、最後にくるのが「ILP」。これがバンドの決意表明のような曲ですね。
渋谷:楔ソングですよね、ある意味。
EMTG:ある意味、逃げ道をなくすというか。
柳沢:どういう人たちが、どういう想いで、どういう考えでこのアルバムに至ったのか。このバンドはどうやって10年続いてきたのか。これから続けていくのか。それを最後に入れておきたかったんです。無責任に言葉を言いたくなかったし。その誠実さがSUPER BEAVERである。そういう曲ですね。

【取材・文:秦 理絵】

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リリース情報

遥か遠くに見えていた今日

遥か遠くに見えていた今日

発売日: 2017年05月17日

価格: ¥ 3,000(本体)+税

レーベル: ポニーキャニオン

収録曲

1. Rainy day
2. 恋のはじまり
3. 愛という宝物
4. プロポーズ
5. 彼女
6. 365日の花束
7. キミの花
8. ほのぼの行こう
9. 思い出になれ
10.最後のキス
11.Mail
12.アイスクリーム
13.スタンプラリー
14.遥か遠くに

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ビデオコメント

リリース情報

愛する

愛する

2015年04月01日

[NOiD]/murffin discs

01. 誰か
02. らしさ
03. 証明
04. 結果論
05. わたし
06. Q&A
07. おかげさま
08. 言えって
09. 生活
10. 愛する
11. ILP

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お知らせ

■ライブ情報

SUPER BEAVER「愛する」Release Tour 2015 ~愛とラクダ、10周年ふりかけ~
2015/04/11(土)千葉LOOK
出 演:SUPER BEAVER / MEANING
2015/04/12(日)club Lizard YOKOHAMA
出演:SUPER BEAVER / sumika /(O.A)Amelie
2015/04/17(金)長崎STUDIO DO!
出演:SUPER BEAVER / テスラは泣かない。 / and more...
2015/04/18(土)熊本Django
出演:SUPER BEAVER / テスラは泣かない。 / and more...
2015/04/30(木)金沢vanvan V4
出演:SUPER BEAVER / ircle / My Hair is Bad (※NEW!!)
2015/05/10(日)札幌COLONY
出演:SUPER BEAVER / 撃鉄 / Vianka
2015/05/13(水)KYOTO MUSE
出演:SUPER BEAVER / THE ORAL CIGARETTES / 忘れらんねえよ
2015/05/14(木)岡山CRAZY MAMA 2nd Room
出演:SUPER BEAVER / THE ORAL CIGARETTES / 忘れらんねえよ
2015/05/16(土)高知X-pt
出演:SUPER BEAVER / Nothing’s Carved In Stone
2015/05/17(日)高松DIME
出演:SUPER BEAVER / and more...
2015/05/18(月)MUSIC SPACE 鈴鹿ANSWER
出演:SUPER BEAVER / and more...
2015/05/22(金)仙台PARK SQUARE ※ワンマン
2015/05/23(土)HEAVEN’S ROCK Utsunomiya VJ-2
出演:SUPER BEAVER / D.W.ニコルズ / Rhythmic Toy World
2015/05/24(日)mito LIGHT HOUSE
出演:SUPER BEAVER / Rhythmic Toy World / and more...
2015/06/04(木) 豊橋club knot
出 演:SUPER BEAVER / 04 Limited Sazabys
2015/06/05(金) 浜松MESCALIN DRIVE
出演:SUPER BEAVER / 04 Limited Sazabys / Northern19
2015/06/11(木)music zoo KOBE 太陽と虎
出 演:SUPER BEAVER / LOST IN TIME / and more...
2015/06/12(金)広島Cave-Be
出演:SUPER BEAVER / LOST IN TIME / and more...

2015/06/14(日)福岡Queblick ※ワンマン
2015/06/20(土)新潟GOLDEN PIGS BLACK STAGE ※ワンマン
2015/06/27(土)梅田CLUB QUATTRO ※ワンマン
2015/07/03(金)名古屋CLUB QUATTRO ※ワンマン
2015/07/11(土)恵比寿LIQUID ROOM ※ワンマン

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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