パスピエ2015年第一弾シングル「トキノワ」インタビュー

パスピエ | 2015.04.27

 アニメ『境界のRINNE』のエンディングテーマとして書き下ろされた「トキノワ」。思わず口ずさみたくなるメロディ、身も心も軽やかに弾むリズムやハーモニーの数々が眩しい。
 緻密に構築されたサウンド、イマジネーションを刺激する言語表現の数々は、パスピエの音楽の独創性も鮮やかに示している。斬新さとポピュラリティが絶妙に結晶化したこの曲は、どのような経緯で生まれたのか? バナナマンの単独ライブのオープニングテーマとなった「Love is Gold」、コーネリアスのカバー「NEW MUSIC MACHINE」、カップリングの2曲についても成田ハネダ(Key)と大胡田なつき(Vo)に語ってもらった。

EMTG:「トキノワ」は、エンディングテーマのお話を頂いて書き下ろしたんですね?
成田:はい。こういう機会は初めてなんですけど、パスピエを知らない人が聴いても好きになって頂けるような曲を作りたいと思っていました。アーティスト側としては曲全体を聴いてもらいたいし、知ってもらいたいというのがあるのですが、まずはアニメで流れる1コーラスを聴いて「いい曲だな。面白い曲だな」と感じて頂きたいと思って制作に入りました。
EMTG:歌詞を書く上でも今までと違う部分はありました?
大胡田:「自分の中にあるストーリーから歌詞を書く」というのではなく、『境界のRINNE』のストーリーを原作を読んで考えた上で歌詞を書いたんです。原作やアニメのストーリーを踏まえるというのは「決まったものの中で自分をどう出していくのか?」っていう作り方だと思うんですけど、それは新鮮な体験でしたね。
EMTG:この曲、オープニングの学校のチャイムっぽいギターのフレーズを聴いた時点で、すごく引き込まれます。
成田:エンディングテーマって、アニメーションが終わってから流れるじゃないですか。だからアニメーションと繋がるようなものになればいいなということも考えていたんです。だからあのチャイムっぽいようなチャイムじゃないようなフレーズにしました。『境界のRINNE』は登場人物が学生で、学校のシーンがたくさん出てきますので。
EMTG:『境界のRINNE』は、この世に未練を残している幽霊を輪廻の輪に乗せてあげるストーリーですけど、過去と未来が繋がり合って連なっていくようなこういうイメージって、パスピエがいろいろな曲で描いてきたものとも通じる部分がありますよね。
成田:そうですね。「過去と未来」というようなテーマは、大胡田がこれまでも描いてきたことだと思います。
大胡田:この歌詞は、アニメの中に出てくる「輪」というものに私は一番フォーカスしました。歌詞の中で「輪廻」っていう言葉は使っていないですけど、「生まれ変わってまた、何かしらの形で会う」っていうことを描いているんです。「輪廻」っていう言葉をそのまま使うのではなく、それが持っている雰囲気みたいなものを表現したいと思っていました。
EMTG:この曲を聴いて改めて思ったんですけど、「輪廻」っていう発想、ものすごいですよね。初めてこの概念を思いついた人は、偉大な発明家だなと。
成田:そうですよね(笑)。誰にも確認しようのないことを言っているわけですから。
大胡田:私はそういう類のお話が元々好きです(笑)。
成田:「輪廻」って、人が昔から持つ夢的なものですよね。「こうなったらいいな」っていうような。「輪廻」って複雑なテーマですけど、それをどう伝えるのかを今回じっくり考えました。僕らもサウンド面で細かく見ると複雑なことをやっていますし、歌詞も様々なことが絡み合っているんですけど、最終的に勝負しているのはポップスやロック。つまり、パスピエって対照的とも言えるものの間で葛藤しながらやっているバンドなんです。「トキノワ」はそういうことをじっくり考えるきっかけにもなりました。「今までやってきた自分たちの表現は、エゴだけで終わっちゃっていないか?」についての自己確認の機会でしたね。
EMTG:成田さんはクラシックをずっと勉強してきた方ですし、理論的なしっかりした裏付けに基づいた発想で創作できるアーティストですよね。だからこそ抱く葛藤もあるんじゃないですか? 「頭で考え過ぎているんじゃないか?」というような。
成田:たしかに、僕は「感性」だけではなく「思考」で勝負している部分もあるんだと思います。それに関して昔は自分のウィークポイントなのかなとも思っていたんですけど、今は強みにしていけるのかなと考えています。
EMTG:明らかに強みになっていると思いますよ。思考や理論が感性を思いっきり羽ばたかせる翼になっているのが、パスピエのサウンドだと思いますから。ポピュラリティやキャッチーさを理論やスキルという骨組みがしっかり支えているじゃないですか。
成田:ありがとうございます。聴いてくれる人の数が広がっているのも感じているので、それは嬉しいことですけど、記憶に残るものをやるっていうことに関しては、もっともっとハングリーでいなければいけないと思っています。
大胡田:私、もし1人だけで音楽をやっていたら自分の好き勝手な方向に行っていたと思います。いろんな人に広がっていく音と、歌を作って、今、活動できているのが嬉しいです。それを考えると、パスピエは運命ですね。
EMTG:「トキノワ」、パスピエの音楽がさらに広まるきっかけになるんじゃないですかね。アニメを観た子供たちも歌ってくれそうだし。サビの《くるりくるり隣り合わせ》とか、口ずさみたくなる気持ちよさがありますよ。
大胡田:ぜひ歌って欲しいですね(笑)。
EMTG:電車の中とかで歌っている子供を見かけたらどうします?
大胡田:ちょっとニヤニヤしちゃうかも(笑)。
成田:アニメーションと共に、この曲がいろんな人の記憶に残る作品になったらいいですね。過去の作品も含めて音楽が世の中にたくさん溢れている中で、パスピエがいろんなものを繋ぐ架け橋になったらいいなとも思っています。それが音楽を発信している側が背負っていく責任でもあると考えていますので。
EMTG:パスピエって、古今東西のいろんな音楽に橋が架かりまくっているバンドとも言えるんじゃないでしょうか? ルーツにある特定の音楽の色が出過ぎず、様々なエッセンスの旨みを絶妙に料理しているバンドでもあると思いますので。
成田:それはメンバーそれぞれのフェイバリットがバラバラというのもあるんでしょうね。だから曲によってロックテイストになったり、ニューウェイブテイストになったり、はたまたポップスになったり……っていうことになるんだと思います。こういう僕らの曲を聴いて、音楽に興味を持ってもえたら本望ですよ。
EMTG:何年後かにパスピエをきっかけに音楽を志したというミュージシャンが出てくる可能性も、少なからずあるわけですよ。
成田:そういう風に繋がっていくのが、バンドとしての輪廻なんだと思います。パスピエがそういう輪廻のピースになれたら嬉しいです。
EMTG:「バンドとしての輪廻」って、いい言葉です。
成田:バンドに限らず、カルチャーって全部そうなんだと思います。延々とリバイバルしつつ、新しい大きいフォーマットみたいなものが100年に一度とかで出てきたりしながらグルグル回っている感じなんだと思うので。
EMTG:パスピエもそういうグルグルの中にいるバンドですね。
成田:曲を作っている側としては、「何か新しいものを作ってやろう」というよりは、自分が培ってきたもの、自分自身の歴史が音楽に出たらいいなあっていうのを常に思っているんです。僕は小さい頃からクラシックをやっていて、音楽と触れ合ってきた時間は長いので、そういうものから出るものもあるでしょうし。
EMTG:では、カップリング曲のお話に移りましょう。「Love is Gold」は、何処か懐かしくなる和テイストを感じます。《歌舞いてなんぼ まいどあり!》っていうフレーズも出てきますし。「はいからさん」とか「とおりゃんせ」とかを聴いても感じるんですけど、大胡田さん、時々チャキチャキの江戸っ子っぽさが出ることがありません?
大胡田:本当ですか?(笑)。
成田:それは大胡田が持ってはいないけど理想としている部分なのか、実は持っている部分なのか? メンバーの僕らも想像するしかないんですけど(笑)。
EMTG:ズバリ、大胡田さんの中に江戸っ子町娘気質は存在するんでしょうか?
大胡田:どうなんですかね?(笑)。でも、そういう言葉が好きな部分はあるんだと思います。それをロック、J-POPで表現すると、町娘っぽさが出るのかも。
EMTG:この曲はバナナマンの単独ライブのオープニングテーマでしたね。
成田:そうなんです。僕自身、バナナマンさんが大好きで。バナナマンさんも何かのきっかけで僕らのことを知ってくださったらしく。それで曲を作らせて頂くことになったんです。
大胡田:歌詞に関しては、バナナマンさんの単独ライブのタイトルだった『Love is Gold』から考えていきました。歌詞の中に出てくる《黄金色の果実》って、私の中ではバナナのことなんです(笑)。自分の書きたいことを書きつつ、『Love is Gold』とリンクしたことを書けたと思います。
EMTG:3曲目の「NEW MUSIC MACHINE」も楽しかったです。コーネリアスのカバーですけど、「こう来たか!」と。
成田:カバーのハードルはどんどん上げています(笑)。今までに大野方栄さんと電気グルーヴのカバーをして、今回はコーネリアス。「パスピエがこの曲をやったか!」という驚きの部分プラス、音楽をすごく聴いている人たちに「そこ行ったか!」って思ってもらえるものにしたいので、今回は悩み抜いた末にこの曲のカバーをしました。
大胡田:オリジナルのものに逆らわずに歌うようなアプローチでした。バンドのアレンジが割と派手なものになりましたし、オリジナルが持っている気だるい雰囲気に寄せています。
EMTG:音のコラージュっぽい要素を加えて醸し出しているサイケな雰囲気も印象的です。
成田:そこはコーネリアスのファンとして、『POINT』以降の感じを入れてみました(笑)。
EMTG:なるほど(笑)。このシングルを出した後のパスピエに関しては、どんな活動をイメージしていますか?
成田:リスナーやオーディエンスのみなさんが、「今年はパスピエのターニングポイントだったな」と判断するかどうかは、2015年が終わってからのことだと思うんですけど、僕ら自身は今年がターニングポイントになるだろうなと思っているんです。やっぱり武道館のライブ(12月22日に初の日本武道館公演が予定されている)って、どう考えても1つの節目になるものでしょうから。その成功に向けて突き進んで行きたいです。そのためにも今年は「色濃く色濃く」っていうことだけじゃなく、幅広い人たちに届くこともやっていかなきゃいけないと思っています。今回のシングルがそういうものに繋がったらいいですね。
EMTG:大胡田さんは、いかがでしょう?
大胡田:新しい面を今まで聴いてくださったみなさんにも届けたいですし、パスピエに興味を持って頂けたみなさんが過去の私たちの作品に興味を持つような。そういうものを作っていけたらいいなと思っています。

【取材・文:田中 大】



【TOKINOWA(RIN-NE ver.)ミュージックビデオ】

tag一覧 シングル 女性ボーカル パスピエ

リリース情報

TALENT

TALENT

発売日: 2017年09月06日

価格: ¥ 2,500(本体)+税

レーベル: STROKE RECORDS

収録曲

1.未来ワンダー
2.JIGOKU
3.フラッシュバック
4.ミュージックマン
5.大丈夫
6.ポエトロジーライド
7.バベル
8.ドンシンフィー
9.メインアクト
10.涙の使い道
11.いつか (TALENT Ver.)
12.ユメイロ (TALENT Ver.)

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リリース情報

トキノワ(初回限定盤)

トキノワ(初回限定盤)

2015年04月29日

ワーナーミュージック・ジャパン

1. トキノワ 
2. Love is Gold 
3. NEW MUSIC MACHINE

※初回限定特殊パッケージとなります。

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お知らせ

■マイ検索ワード

●成田ハネダ(Key)
肩甲骨はがし

僕は肩こりがひどくて。ストレッチの方法をYouTubeとかで調べるために、「肩こり ストレッチ」で検索すると、「肩甲骨はがし」って、そりゃあもうたくさん出てくるんです。肩甲骨をよく稼働させるということが、肩こり解消のカギらしいので。だから肩甲骨はがしに関するストレッチ動画をすごい調べています(笑)。マッサージに行ったりもするんですけど、自分自身でも解消していきたいと思っています。

●大胡田なつき(Vo)
「アルビノ」とは? 「やおら」の意味

私、アルビノの古代魚を飼っているんですけど、「アルビノって色素がないんだっけ? 何だったかな?」って思ったんです。「先天的にメラニンが欠乏している疾患のある個体」っていうことらしいです。「やおら」は歌詞に使いたいと思ったんですけど、最近は「突然」っていう意味で使われることが多いみたいで。本来の意味の「だんだん、ゆっくりと」みたいなことは生きているかどうか調べました。私、ちょっと昔っぽい言葉を使いたいことがよくあるので、調べるようにしています。


■ライブ情報

パスピエ presents「印象D」
2015/06/24(水)東京・新木場STUDIO COAST
出演:パスピエ / レキシ / DJ: DJ UPPERCUT
2015/06/26(金)大阪・なんばHatch
出演:パスピエ / Base Ball Bear / DJ: tofubeats
2015/06/28(日)名古屋・DIAMOND HALL
出演:パスピエ / YOUR SONG IS GOOD / DJ:PARKGOLF

日本武道館公演
2015/12/22(火)日本武道館

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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