“ピアノの秦 基博”が楽しめる、ニューシングル「水彩の月」。

秦 基博 | 2015.05.29

 ニューシングル「水彩の月」は、“ピアノの秦 基博”が楽しめる。イントロからピアノが中心となって歌を導いていく。素直だが、やや翳りのあるメロディは、“ギターの秦”とはまた違った魅力にあふれている。
 この曲をオーダーしたのは、日本人監督としてはカンヌ国際映画祭最多出品で知られる世界的監督の河瀨直美。彼女の最新作『あん』(第68回カンヌ国際映画祭正式出品)の主題歌として、秦が書き下ろした。♪言葉じゃ足りなくて♪というフレーズが、言葉を使いながら表現する映画と音楽の本質を衝いていて、両者の絆が見えてくる。
 カップリングの一つの「アイ」は、KANを迎えてアコースティック・セッションでカバーしている。自身の代表曲であるこの曲もKANのピアノがいい味を醸し出し、“ピアノの秦”のアナザーサイドが堪能できる。特にサビでKANが歌うハーモニー・ボーカルが抜群で、「アイ」という楽曲の素晴らしさを改めて噛みしめることができる。初夏の必聴シングルだ。

EMTG:「水彩の月」を作ったきっかけは?
秦:昨年12月に大阪で僕が「ひまわりの約束」や「鱗(うろこ)」を歌弾き語って、河瀨監督が撮り下ろしの映像をドーム型の会場の天井いっぱいに映し出すというコラボ・イベントがあったんですが、その打ち上げの席で河瀨さんから「今、映画を撮っているんだけど、何か一緒にできたりしないかな?」という話がありまして。年明けに主題歌書き下ろしの正式なオファーがあったんですよ。もうその時点で撮影は仮編集作業が終わっていて、その映像を見て感じるままに書いて欲しいということでした。で、見終わってみたら、「ピアノが合うな」と思ったんです。なので、ピアノを弾きながら作りました。デモテープもピアノを中心にギターとドラムとベースで録って、監督に聴いていただきました。
EMTG:秦くんていうと、アコースティック・ギターのイメージが強いけど、河瀨監督はピアノの曲が出来上がってきて戸惑わなかったの?
秦:それはなかったですね。ただ、「ドラムとベースが入ると強過ぎる」と言われたので、ピアノとストリングスだけの最小限の編成で“シネマ・バージョン”を作り直しました。
EMTG:楽器よりも、サウンド全体のニュアンスが優先だったんだ。
秦:河瀨監督もフランス人のサウンド・デザイナーも、シンプルな音にこだわっていらっしゃるようだったので、ストリングスは映画のサウンドトラックの音のニュアンスに近づけました。僕としては、バックの楽器に対して“歌のスペース”を大きく取るようにしましたね。
EMTG:歌詞は監督から何か要望があったのかな?
秦:テーマというより、映画自体が風景や情景描写が中心で、特に月が印象的だったんですよ。暮れていく途中の青みがかった空に、月が浮かんでいる。監督はそこに生きている意味を込めたのかなと思って。セリフになってはいないけど、思いを景色に託している。言葉にならない情感って、普段の生活の中にもたくさんある。そういうものが、歌や映像になっていくと思うんですよね。歌詞の♪話せなかったことがたくさんあるんだ♪は、そのあたりから書きました。
EMTG:河瀨監督は、秦くんのそういう部分に共感して、歌を書いて欲しかったのかもね。
秦:もちろん映画からインスピレーションを受けて書いたんですが、河瀨さんも「主人公の気持ちを歌ってくれている気がする」って言ってくださって。映画のキャッチコピーは“やり残したことはありませんか?”っていうんですけど、それも「水彩の月」とリンクしているのかなと思ってます。
EMTG:“水彩”っていうのは?
秦:陽が沈んで、でもまだ暗くなる前の空の潤んだ感じ。わかっているけど、できないことってありますよね。この曲がもっている手触りも、そういうものだと思います。今回、「水彩の月」のMVを河瀨さんに撮っていただいたんですが、ビデオではなくフィルムを使ってその場にあるリアリティを大事にされていました。思いついたカットを、その場で閃いたように撮っていく。それがすごく僕のライブの感覚に近くて。河瀨さんは映画もこうやって撮ってるのかなと思いましたね。
EMTG:こうやってっていうと?
秦:映画『あん』では永瀬正敏さんがどら焼き屋さんの店長を演じるんですが、永瀬さんに実際に主人公が暮らす部屋で生活してもらったり、何日間も店でどら焼きを焼いてもらってから撮ったそうです。僕のMVのときも、「歌詞のことを思いながら歩いて」って言われて、それを奈良の原生林の朝陽が射し込む中で撮ってました。たぶん河瀨さんの中で見えていた世界があったんでしょうね。僕の内面を引き出すというより、“そこにいる秦 基博”をただありのままに撮ってくれていたんだと思います。
EMTG:いいコラボだったね。ところでカップリングの「サインアップベイベー」は、「水彩の月」と対照的なにぎやかなロックだね。
秦:「水彩の月」を書き終わって、さてカップリングはと考えたときに、ちょうどアルバムに向けて曲のストックがたくさんあったんですよ。その中からロックのこの曲を完成させました。
EMTG:ちょっと意味深な歌詞が面白い!
秦:いろんな場面で、世の中が形式的なサインを求めるようになっている。僕も新しい音源を取り込むときとか、うんざりするほどサインさせられる。きっとしつこいくらい正式なサインを求めるのは、みんなが抱えている不安の裏返しで、これは歌になるなと思って作りましたね。
EMTG:そしてもう1曲は、KANさんとの「アイ」のアコースティック・バージョン。これもピアノ中心だよね。
秦:KANさんが前からこの曲を好きで、「カバーしたいんだけど、アコギの曲だからな…」って仰ってたんですよ。で、いよいよKANさんがご自身の弾き語りツアーで「アイ」をカバーしてくださることになって。「秦くん、どこかに歌いに来てよ」って声をかけてもらったので、「いいですよ。でもせっかくだからレコーディングもしましょうよ」って持ちかけました。ピアノの和音や音色が明るく抜けてきて、すごくKANさんらしくてよかったです。
EMTG:特にサビのハーモニーが、すごくいいね。
秦:そうなんですよ。今までもいろんな人にいろんな場面でハモを付けてもらう機会があったんですけど、初めてハマったと思いました。コーラスっていうより、2人で歌ってる感が強かったので、ミックスは普通よりハモを大きくしています。
EMTG:レコーディングにも、KANさんはいつもの格好で来たの?
秦:そうです。ブレザーにボタンダウンにネクタイで。
EMTG:あはは、やっぱり!
秦:スタジオの作業は楽しかったですよ。
EMTG:仕上がりも最高で、よかったね。ありがとうございました。

【取材・文:平山雄一】

tag一覧 シングル インタビュー 男性ボーカル 秦 基博

関連記事

ビデオコメント

リリース情報

水彩の月(初回生産限定盤)[CD+DVD]

水彩の月(初回生産限定盤)[CD+DVD]

2015年05月27日

オーガスタレコード/アリオラジャパン

[CD]
1.水彩の月
2.サインアップベイベー
3.アイ~Acoustic Session with KAN~
4.水彩の月(Cinema ver.)
5.水彩の月(backing track)

[DVD]
・河瀬直美監督が16mmフィルムで秦 基博を撮り下ろしたスペシャル映像他収録

このアルバムを購入

お知らせ

■マイ検索ワード

ポップガード
ウインドスクリーンとも言うんですが、歌入れするときにマイクの前に付けて、“ポ”とか“パ”とかの破裂音のノイズを防ぐアイテムです。あるエンジニアさんが誉めてたポップガードがあって、それを検索して買いました。普通は2?3千円なのに、1万円もしましたけど、性能に満足してます。


■ライブ情報

沖縄からうた開き!うたの日コンサート2015
2015/06/27(土)沖縄県嘉手納町兼久海浜公園

NUMBER SHOT 2015
2015/07/25(土)福岡県・海の中道海浜公園野外劇場

SUNSTAR presents J-WAVE LIVE SUMMER JAM 2015
2015/08/08(土)国立代々木競技場第一体育館

音楽と髭達2015 -MUSIC STADIUM-
2015/08/29(土)HARD OFF ECO スタジアム新潟

YAMAZAKI MASAYOSHI in Augusta Camp 2015 ~20th Anniversary~
2015/09/26(土)横浜 赤レンガパーク 野外特設ステージ

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

トップに戻る