Superflyおよそ3年振りのアルバム『WHITE』

Superfly | 2015.05.21

 これまでのSuperflyの作品は、元メンバーで、その後コンポーザーに転身した多保孝一と、アレンジとプロデュースを手掛ける蔦谷好位置と、志帆の3人によって作られていた。しかし、約3年ぶりのリリースとなるSuperflyの5thアルバム『WHITE』では、その制作体制が大きく変化。多保孝一が手掛けたのは既発のシングル曲「Live」のみで、それ以外はBONNIE PINK、HeavenstampのTomoya.SとSally#Cinnamon、元・椿屋四重奏の中田裕二、元JETのクリス・セスターといった国内外の個性的なアーティストたちの参加によって作られているのだ。そればかりか志帆が作詞も作曲もしていない曲が6曲もある。なぜここにきて志帆は、そのように思い切った制作体制の改革を行なったのか。そのことについて訊いてみた。

EMTG:今回はギリギリまで作業をされていたようですね。いままでのアルバムに比べると……。
志帆:だいぶ難産でしたねぇ(笑)。
EMTG:単純に新曲が多かったというのもあるだろうし、あと志帆さんの精神力と歌唱表現力にかかってる曲も多そうだから。
志帆:そうですね。自分で書くことも精神力がいりますけど、曲を提供してくださるアーティストの方とキャッチボールしながら作るのも、それはそれで精神力がいることなので。今回はみなさんの熱量にかなり引っ張ってもらって完成させられた感じでしたね。
EMTG:今回はかなりの数の曲を集めたなかから絞っていったそうですが。
志帆:はい。このアルバムではいろんなひとの感性に染まりたかったので、最初はとにかく曲を集めたんです。それこそ300曲とか、そういうレベルで集めて。聴いてみて“いいなぁ”と思った曲があっても、歌ってみたらしっくりこないものもあったりして、仮歌だけで過去に例を見ないほど膨大な数になってましたね。そうやって絞っていく作業のなかでわかったのは、ちょっと個性的だったり、クセのある曲だったりするほうが、私は燃えるし、化学反応も起こりやすいということで。
EMTG:なるほど。
志帆:やっぱり私は、個性と個性をぶつけ合いたかったんだと思うんですよ。器用にSuperflyに合わせた曲を書いてもらうよりも、そのひとにしかできないことを私にぶつけてもらいたかった。不器用でもそのひとらしさが出ている曲のほうが、私には愛おしく感じられたんです。
EMTG:確かに個性的な曲ばかりだし、面白い化学反応が起きている曲ばかりが収録されている。しかも、そこから志帆さんの歌唱表現の幅が見えるのが素晴らしいですね。
志帆:おおっ。嬉しいです。
EMTG:意識的だったか無意識だったかわからないけど、そのようにいまの志帆さんの歌唱表現の幅を存分に反映させられる曲が結果的に選ばれたんじゃないかなと思ったんですが、どうですか?
志帆:ああ、そうかもしれないですね。洋服もそうですけど、“着せられてる”のと“着こなしてる”のじゃ全然違うじゃないですか。新しい洋服でも、ちゃんと自分らしく着こなせるものを選ぶのが自分の役割であり、責任でもあるなと思って。例えばBONNIE PINKさんからいただいた「Woman」という曲も、新しい感じがする上に、すごくワクワクする。だからデモをいただいてすぐに歌いたくなったし。
EMTG:ワクワクするかどうかは大事ですよね。
志帆:大事ですね。BONNIEさんからその曲をいただいたとき、“なんだか新しい洋服を身に着けてるみたいな感覚で、すごくワクワクします”ってメールしたんですけど、ほかのどの曲にもそういうワクワク感があるんですよ。
EMTG:似合う曲であっても、似合って当たり前の曲だったら、ワクワクはしない。
志帆:そうなんですよ。それよりも、“あ、こういうのが意外とハマるんだ”っていう発見のあるもののほうが、歌っていて楽しいんです。
EMTG:2012年~2013年の長期間に及んだツアーを通して、志帆さんの歌は明らかに説得力と凄味が増しました。また、去年のファンクラブツアーやフェスでは、志帆さん自身が以前よりも楽しんで歌うようになっていました。そうやってここ2~3年のライブで獲得した歌唱表現の幅が、このアルバムにそのまま反映されているように思います。
志帆:そうですね。それは自分でも思います。もっと声をいろいろ使いたいと思うようになってきたんですよ。
EMTG:そうなんでしょうね。
志帆:うん。あ、それと、昔のシンガーのひとって、すごく大人っぽい内容の歌詞を歌ってたでしょ? 30代くらいの女性が歌うような内容でありながら、実際は10代のひとが歌っていたりとか。
EMTG:そうですね。山口百恵さんしかり、中森明菜さんしかり。
志帆:そうそう。で、いまの私に足りないのは、そこだなとも思って。
EMTG:30代になったことだし、私ももっと大人の歌を表現しようと。
志帆:そう(笑)。あと、いまの音楽業界って、歌うひとが詞も書くのが当たり前みたいになってるじゃないですか。でも、もともとは詞を書く才能のあるひとがそうしていただけだったと思うんですよ。いつの時代からか歌うひとが詞を書くのが普通になってしまったけど、昔はそうじゃなかった。だって、歌うひとがみんな詞を書けるとは限らないわけで。私もいままでは“Superflyは私なんだ。だから自分に向き合って自分で歌詞を書くんだ”って頑なになって、必死で歌詞を書いてきたんですけど、自分のできることはこのくらいかなっていうのが見えたときに、ふと、そういう昔の歌手のことを考えて、もっと歌に集中したいと思うようになって。
EMTG:私は第一にシンガーなんだ、と。
志帆:そう。やっぱり豊かな言葉のほうが豊かな歌になるに決まってるわけだから。っていうことにも気づいたので、今回はいろんなひとに書いてもらうようにしたんです。
EMTG:それにしても、志帆さんが作詞も作曲もしていない楽曲が半数近くもあることには、ちょっと驚きましたよ。
志帆:いや、私としては、これでも書きすぎたと思ってるくらいで(笑)。最初はもっと書かないつもりでいたんですよ。
EMTG:あ、そうなんですか?!
志帆:はい。書くべきじゃないと思ってた。というか、いま無理して書いてもいいものにはならないと思ったんです。というのも、『Force』のときに自分自身に向き合いすぎて、ちょっと精神的に不安定になってしまって。向き合えば向き合うほどネガティブになってっちゃうんですよ、私。いまはそれをやる必要はないと思ったし、ネガティブな考えをポジティブな曲へと昇華させるには時間もかかる。だったら、自分で書くのはやめて、もっと歌うことを楽しもうと。
EMTG:思い切った判断だったと思いますが、それは正解でしたね。
志帆:はい。あと、今回は多保くんだけじゃなく、いろんなアーティストの方に曲提供してもらうって決まったことも、自分ではなるべく歌詞を書かないと決断する後押しになりましたね。昔の曲は多保くんと私と蔦谷さんの3人のバランスで成り立っていたわけで、多保くんがいなかったらあの感じにはならない。それなのに昔の曲っぽく作ろうとしたら、それは単なる真似事になってしまう。昔やってたことの真似事をすることほどダサいことはないと思ったんです。続けていけば、形が変わるのは自然なことだし、いまは形を変えるいいチャンスだとも思って。そうやって、自分で書かないということをポジティブに捉えたんです。
EMTG:要するに、いまいちどシンガーに立ち返ったということですよね。ソングライターとしてではなく、シンガーとしての表現を突き詰めたいと。
志帆:そうですね。ある意味では受け身になろうと思ってましたから。私が自分で発信するというよりは、周りから“こういうの、やってみたら?”と言われたものを、とりあえず受け入れてやってみる。それを歌声で表現する。そういう立場に徹したかったんです。だから、極端に言うなら私らしい歌詞じゃなくてもよかったんですよ。そういう歌詞であっても、いまの私が歌えば絶対に自分が出るだろうと思ったし、流されてやってるようには見えないだろうという自信もあったので。
EMTG:そのことはいつにも増して開放的で伸びやかな歌から伝わってきますよ。こういう歌い方もああいう歌い方もいろいろ試したいという気持ちを強く持っていたんだろうな、と。
志帆:そうですね。それはやっぱり歌うことが前より楽しくなってきてたからだと思います。去年、フェスとかで歌いながら、“私、こんな声も出ちゃうんだ?!”みたいな発見があったので。今の自分ならいろんな歌い方ができるぞって思って。
EMTG:まさしく“こんな歌い方もあんな歌い方もできるぞ”という喜びがたくさん詰まったアルバムだと思います。
志帆:やったー!!(笑)

【取材・文:内本順一】

tag一覧 アルバム 女性ボーカル Superfly

リリース情報

凹凸

凹凸

発売日: 2017年11月11日

価格: ¥ 2,700(本体)+税

レーベル: ユニバーサルGEAR

収録曲

1:凹凸
2:チッ!
3:凹凸(Instrumental)
4:チッ!(Instrumental)

リリース情報

WHITE(初回生産限定盤)[2CD]

WHITE(初回生産限定盤)[2CD]

2015年05月27日

ワーナーミュージック・ジャパン

Disc 1
01. White Light
02. Beautiful
03. 色を剥がして
04. On Your Side
05. A・HA・HA
06. Woman
07. 脱獄の季節
08. リビドーに告ぐ
09. 愛をからだに吹き込んで
10. Live
11. Space
12. 極彩色ハートビート
13. You You
14. いつか私は歌をうたう

Disc 2
邦楽カバーミニアルバム
01. Blue ~こんな夜には踊れない(桑田佳祐)
02. Sweetest Music(竹内まりや)
03. 帰れない二人(井上陽水)
04. スローバラード【Live】(RCサクセション)※RISING SUN ROCK FESTIVAL 2012のLIVE音源
05. 楽しい時-Fun Time(佐野元春)

お知らせ

■ライブ情報

Superfly WHITE TOUR 2015
2015/07/04(土)埼玉・川口総合文化センター・リリア
2015/07/08(水)福島・郡山市民文化センター 大ホール
2015/07/11(土)リンクステーションホール青森(青森市文化会館)
2015/07/12(日)岩手・盛岡市民文化ホール
2015/07/14(火)仙台サンプラザホール
2015/07/16(木)山形・酒田市民会館「希望ホール」大ホール
2015/07/24(金)三重県文化会館 大ホール
2015/07/26(日)岐阜・長良川国際会議場
2015/07/28(火)名古屋センチュリーホール
2015/07/29(水)名古屋センチュリーホール
2015/08/03(月)広島文化学園HBGホール
2015/08/05(水)鳥取・とりぎん文化会館 梨花ホール
2015/08/07(金)岡山市民会館
2015/08/08(土)山口・周南市文化会館
2015/08/12(水)新潟県民会館 大ホール
2015/08/13(木)新潟県民会館 大ホール
2015/08/18(火)福岡サンパレス ホテル&ホール
2015/08/20(木)佐賀市文化会館 大ホール
2015/08/22(土)鹿児島市民文化ホール 第一ホール
2015/08/24(月)宮崎市民文化ホール
2015/09/03(木)静岡・アクトシティ浜松 大ホール
2015/09/05(土)大阪フェスティバルホール
2015/09/06(日)大阪フェスティバルホール
2015/09/09(水)神戸国際会館こくさいホール
2015/09/11(金)和歌山市民会館
2015/09/19(土)群馬・ベイシア文化ホール
2015/09/23(水・祝)山梨・コラニー文化ホール
2015/09/26(土)東京国際フォーラム ホールA
2015/09/27(日)東京国際フォーラム ホールA
2015/10/03(土)石川・本多の森ホール
2015/10/04(日)長野・ホクト文化ホール
2015/10/08(木)北海道・札幌ニトリ文化ホール
2015/10/10(土)北海道・函館市民会館 大ホール
2015/10/12(月・祝)北海道・旭川市民文化会館 大ホール
2015/10/24(土)沖縄コンベンション劇場
2015/10/30(金)高知県県民文化ホール オレンジホール
2015/10/31(土)香川・アルファあなぶきホール
2015/11/02(月)徳島・鳴門市文化会館
2015/11/04(水)愛媛・ひめぎんホール

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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