藍坊主、諦めかけた心に再び炎を燃やす、種火のような人生讃歌

藍坊主 | 2015.08.05

 藍坊主が新たに立ち上げた自主レーベル“Luno Records”からリリースする初のシングル『降車ボタンを押さなかったら』は、何かを諦めようとしたとき、その心に再び炎を燃やす、種火のような人生讃歌だ。淡々と、しかしエモーショナルなバンドサウンにのせて、かつてないバンドの一体感で紡ぎ出す《立ち上がれ!その先へ!》というフレーズ。そこには、一時はバンドを諦めることを考えながらも、再び前を向いて走り出すことを決めたhozzy(Vo・G)のリアルな叫びが込められている。
 バンドの現状と密接な関わりがある今作について、4人の想いを訊いた。

EMTG:今回は新しく設立した自主のレーベル“Luno Records”からのリリースとなりますが、バンドを取り巻く状況は変わりましたか?
hozzy:フットワークがすごく軽くなったなと思ってます。関わってくれるスタッフが少なくなるので、そのぶんアイディアの共有も身近なスタッフだけでできるし、スピーディなんです。もちろん良いことばっかりじゃなくて大変なことも多いけど、思いのほか良いことのほうが多いのかなと感じてますね。
渡辺拓郎(Dr):新しいことをやろうとするとき、とりかかる間隔が短いっていうんですかね。「いま、これやってるんだな」っていうのが、次に会ったときに「まだ突き詰めてるんだな」じゃなくて、もう次のことをやってる感じなんです。
藤森真一(B):そうだね。それは去年の年末くらいから良い流れができてるんですよ。hozzyも言ってたけど、年末のツアーは、顔が見える身近なスタッフだけで、すげぇ良いチームワークで回れたんですよ。もちろん環境が変わったのも大きいけど、バンド自体がいまそういうモードだったんじゃないかと思いますね。
田中ユウイチ(G):あとは、自分たちの音楽に対する責任の取り方みたいなものが変わりました。いまは本当にライブで目の前にいるお客さんのために曲を作ればいいんだなって、すごくシンプルな図式で考えられるようになったんです。だから自分たちの音楽のあり方が、自分たちのなかでスッキリできたっていうのが変わったところだなと思います。
EMTG:なるほど。では、その変化であったり、お客さんとの向き合い方が、まさに今回の『降車ボタンを押さなかったら』には出てるわけですね?
藤森:そうですね。原曲を作るときも、hozzyとふたりでスタジオに入って、何回か擦り合わせて、ライブでちゃんと届けられるようなものを作ろうって意識したんです。だからアレンジもみんなでスタジオに入って合わせました。普通のことかもしれないんですけど、実は、俺らはあんまりそういうのをやってなかったから。
EMTG:へえ、意外ですね。わりとバラバラにレコーディングをしてた?
藤森:そうなんです。でも今回はライブのサポートで鍵盤を入れてくれてるツタナオヒコさんにも来てもらって、一緒にアレンジをしていったんです。ユウイチが作った土台を詰めて。それもいま思うと届ける人が明確になったからできたんじゃないかなと思います。
EMTG:歌詞では、バスに揺られながら、何か決意を新たにするような、力強い想いも伝わってきますが、いまのバンドの状況を重ねながら書いたものですか?
hozzy:まさに「降車ボタンを押さなかったら」っていうタイトルのとおり……諦めようと思ったら、いつでも諦められるっていう、そんな気持ちで書いたんです。去年くらいかな。でも結局は周りの人たちのサポートもあって、自分たちで独立するっていう話になって。あそこで(降車ボタンを)押さなかったら、いまがあるなと思ったんです。
EMTG:それは一時はバンドを諦めることも考えたってこと?
hozzy:そういう時期もありました。でも、そこでもう1回、藍坊主の良さって何だろうってことを振り返るきっかけになったんです。僕たちは実験的なことも好きで、スタンダードじゃない曲も作ったりするんですけど、でも歌詞が良いって言ってくれてる人がやっぱり多い。『ココーノ』(前作アルバム)を出したときに、それを知ることができたし。だから、もう1回歌詞を中心に。まさに思ったままに書いてみることにしたんです。
田中:hozzyの歌詞はすごくいろんなタイプの曲があって、過去の自分に向けて歌うとか、誰かとの対話のなかでとか、第三者の気持ちで歌うとか、いろんな語りかけ方があるなかで、今回この「降車ボタン~」は、自分が独白していくスタイルなんですよね。それが僕には、すごく生々しく聞こえてきて。この現状でhozzyが、自分が中心になって周りに何かを発していく気持ちを歌詞から感じたんです。それがこの曲の力強さになってると思います。
EMTG:渡辺さんはこの曲についてどう思いますか?
渡辺:ざっくりした言い方なんですけど。まあ、いろいろあるよね、と思うんです。
hozzy:なんだよ、それ(笑)。
渡辺:それ以外出てこないんですよ。やっぱりバンドを長く続けるって、それだけですごいっていうのが、この歳になると強く感じるんです。同世代の友達も諦めちゃったり。でも、その背景にあるものってコレだよって思ったんです。
EMTG:ああ。バンドは“降車ボタン”を押した瞬間に終わってしまうものというか。
渡辺:そう、それについて明確な言葉って出ない。まあ……やっぱり、いろいろあるよねっていう言葉に落ち着いちゃうんです。あとは曲の印象で言ったら、いままでいちばん誰のカラーも突出してない気がします。みんな自分がやろうとすることに気負ってないからなのか、やりたいことに対してフラットだからなのか。なんでそう思うのかは自分でもはっきり答えが出てないんですけど……。
藤森:誰のカラーも出てないということは、藍坊主のカラーが出てるっててことだよね。
渡辺:もちろん曲づくりをやってる人のカラーは出てるんですけど、そこから誰かのカラーが強くなってるっていう過程がなくて、スーッて曲があがってく感じですね。
EMTG:その理由も、まさにいまのバンドのモードが関係しているのでは?
藤森:やっぱり、こういう状況になったとき、誰に向けて曲を書くかをどうしても意識すると思うんです。それが自然とライブで目の前にいる人の顔だった。だから僕たちと、会場の皆さんとの間にあるものが、今回の「降車ボタン~」と(カップリングの)「マタウ」という曲で示されてるような気がします。前は自分たちのことを知らない人にも曲を届けるとか、そういうやり方を模索したりもしたんですけど。今回、このLuno Recordsの一発目としては、待ってくれてる人に向けて、等身大に自分たちの音楽を出せるっていうのが、この2曲を作ったいちばん大きな意味なのかなと思いますね。
EMTG:たしかにカップリングの「マタウ」のほうも、歌詞は抽象的だけど、サウンド全体がポジティヴなエネルギーを発してるという意味で、同じ方向を向いた曲ですし。
藤森:ふだん生活していくなかで、凍らせているようなものがあるなっていう、すごい漠然としたイメージがまずあったんです。たとえば心が冷凍庫だとしたら、プラスの感情、笑うとか、喜ぶとかはすぐ出せるし、解凍できるけど。怒るとか、悲しむとか、泣き喚くとかって、なかなか出せるものじゃない。隠してしまうから、どんどん霜が増えて、いつの間にかドアも開かなくなっていく。そういう溶け出せなくなってしまうものに対して、ものすごい熱いものっていうイメージで「マタウ」っていう言葉をつけました。
EMTG:ネットで検索したら、「マタウ」っていうのはマウイ語で“釣り糸”っていう意味で、そこから豊作とか、とても幸運なことっていう意味らしいですね。
藤森:へぇ~。マウイ語って何だろう。
田中:「へぇ~」じゃねぇよ。ふつう自分で考えたときに検索しないの?
藤森:しない(笑)。
EMTG:……なるほど(笑)。今回この2曲の前向きなエネルギーみたいなものは、Luno Recordsのイメージソングにもなりそうですね。
田中:そうですね。いまのモードで寄せたというよりは、本当に、Luno Recordsも、この曲も、全部が同時進行的にできてるというか。自分たちの立ち位置をしっかり見定めて、そこから前に進んでいこうっていう意志が伝わっていけばいいなと思いますね。
EMTG:最後に、Luno Recordsとはどういう意味でつけたんですか?
藤森:“ルノ”っていうのは、「羽化の月」(2008年アルバム『フォレストーン』収録)っていう楽曲のなかの登場人物なんですよ。すごくゆっくり歩いてく芋虫のイメージなんですけど。そうやってマイペースに、だけど、ちゃんと地に足をつけて進んでいくっていうのが、すごく良いなと思って。イメージも派手すぎず、ちょっと不思議な感じがするじゃないですか。
EMTG:うん、バンドのイメージが芋虫っぽいって認識が藍坊主らしいです(笑)。
田中:みんなが連らなって進んでいく感じとかね。4人がいろんな方向に行ったりもするんだけど、身体は繋がってるからジグザグしながら進んでいくんです。
EMTG:そういえば、前回のアルバム『ココーノ』も虫つながりで“繭”でしたね。
田中:僕たち、孵化するところまでは行くんですけど。飛ぶところまでは、なかなか(笑)。
hozzy:その先に興味がないですね。その後は楽しいだけだから。必要がないんです。

【取材・文:秦理絵】

tag一覧 シングル インタビュー 男性ボーカル 藍坊主

リリース情報

ONE!

ONE!

発売日: 2018年12月05日

価格: ¥ 2,315(本体)+税

レーベル: Necry Talkie

収録曲

01.レイニーレイニー
02.こんがらがった!
03.めっちゃかわいいうた
04.タイフー!
05.許せ!服部
06.オシャレ大作戦
07.がっかりされたくないな
08.だけじゃないBABY
09.ゆうな
10.遠吠えのサンセット
11.明日にだって
12.夏の雷鳴

リリース情報

降車ボタンを押さなかったら

降車ボタンを押さなかったら

2015年08月05日

Luno Records

1. 降車ボタンを押さなかったら
2. マタウ
3. エチカ (Live Take)
(aobozu TOUR 2015 ~時計仕掛けのミシン~ at 渋谷公会堂 )

お知らせ

■マイ検索ワード

●田中ユウイチ(G)
窓付き クーラー

部屋にエアコンが付けられなくて、暑くて作業が全然できないんですよ。自分の作業部屋に外気用の穴がなくて。だから、窓につけられるちょっと簡易的なエアコンがあるらしいので調べました。

●hozzy(Vo)
そば屋

最近、そばにハマってるんです。意外に探すと近所にたくさんあるんですよね。それを1個1個チェックするのに検索してます。味はやっぱり手打ちは違いますね。小田急線沿いにある箱根そばはしょっちゅう行ってます。

●渡辺拓郎(Dr)
藍坊主

昨日のhozzyの弾き語りのライブのスタート時間を調べました(7/13@渋谷O-EAST)。あんまりhozzyの歌を前から見る機会がないので新鮮でしたね。「降車ボタン~」も歌ったんですけど、こういうふうに表現したいんだなっていうのがわかったのが収穫でした。

●藤森真一(B)
ろくでもない夜

下北沢屋根裏(2015年3月31日閉店)の後にできたライブハウスなんですけど。まだホームページができてないんですよ。それで出演者のブログとか、ツイッターで情報を拾ったりして、しょっちゅう検索してます。


■ライブ情報

aobozu LIVE 2015「降車ボタンのかき鳴らしかた」
2015/08/27(木)下北沢LIVEHOLIC

小田原イズム2015
2015/09/26(土)小田原アリーナ

藍空音楽祭
2015/10/11(日)恵比寿LIQUIDROOM
w / tacica
2015/11/18(水)梅田CLUB QUATTRO
w / GOOD ON THE REEL / and more...!!
2015/11/19(木)名古屋CLUB QUATTRO
w / SAKANAMON / and more...!!

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

トップに戻る