どんな曲も、ヤギヌマちゃんのひとことで、“カラスは真っ白”フィルターに。

カラスは真っ白 | 2015.09.07

 ファンキーポップなサウンドとコンセプチュアルなアートワークで注目を集める4人組バンド、カラスは真っ白。紅一点の女性ボーカル、ヤギヌマ カナ(Vo・G)が手がけるキュートな歌と、ファンクやジャズをルーツに持つ楽器隊による中毒性の高いポップミュージックで、オリジナリティ溢れる展開を見せる彼ら。新メンバーの加入、上京に伴う環境の変化のなかで生み出された4枚目のミニアルバム『ヒアリズム』は、欲求のままに広がる音楽性のなかで、それでもカラスは真っ白らしさが明確に貫かれている。
 今回のEMTG MUSIC初インタビューでは、そのサウンドの原点と変遷、いま辿り着いた「カラスは真っ白」らしいサウンドの肝とは何かを、メンバー全員に訊いた。

EMTG:まずバンド名が気になりました。カラスが白いなんてバンド名をつけるのは、「どんなひねくれた人たちなんだろう?」って。
シミズ コウヘイ(G):ひねくれバンド名なんですけど、やってることは真っ直ぐなんですよ。斜に構えずに正々堂々とやってるつもりなんです。
タイヘイ(Dr):あの人がああやってるから違うことをやろうとか、奇を衒おうとはしてないし。ド直球です。変化球は持ってないんですよ。直球だけど、チェンジアップから150キロぐらいまで投げる感じですね。いろんなことに挑戦したいとは思ってるので。
EMTG:では、カラスは真っ白の特徴でもあるファンクとポップを融合したサウンドっていうのは、どうやって辿り着いたんですか?
シミズ:経緯としては、2010年に結成したときから楽器隊はファンクだったりとか、ビートが前に出る感じの曲が好きだったんです。で、ボーカルのヤギヌマちゃんはビートとか言うよりも、可愛いものがとにかく好き。だから狙ってやったというよりかは、自然とそういうメンバーが集まったっていうのがスタートですね。
ヤギヌマ:メンバーがみんな飽きっぽいので、そのときにいちばん楽しいことをやってきた結果がいまなんだと思います。
EMTG:たしかに、すでにリリースされているミニアルバムも作品ごとにカラーが違うし、カラスは真っ白は試行錯誤と変化を繰り返してるバンドですよね。
シミズ:そうなんです。特に今回はそのニュアンスが強くて。上京したり、オチ・ザ・ファンク(B)が加入したタイミングなので、新しい体制のカラスは真っ白として、1枚目みたいな気持ちで作ったんです。だから制作も速かったですね。新しいことを取り入れるとか、面白いことをやりたいとか、自分たちの根っこにある欲求を、コンセプトとか関係なしに詰め込んだミニアルバムというか。挑戦、進化、そういう言葉が、この作品にはピッタリだと思います。いままでコンセプチュアルにやりすぎてるぐらいやってきたので。
EMTG:いままでのコンセプチュアルにっていうのは、どんなものだったんですか?
シミズ:1枚目は『すぺくたくるごっこ』からスタートするんですけど、宇宙をイメージして作りました。1枚目ということで、良い意味で音楽を作っていく雑多感とかカラフルさだったりを表現して。2枚目(『かいじゅうばくはつごっこ』)はもう少し世界を凝縮して、地球上での世界旅行みたいな感じで。次(『おんそくメリーゴーランド』)は、遊園地。っていうふうにどんどん世界を凝縮して、前作の『HIMITSU』では、感情まで凝縮してしまおうっていう一連の流れがあったんです。でも、今回はそれを一切せずに、とにかく曲を良くしよう、曲をかっこよくしようってことだけを考えて作りましたね。
EMTG:コンセプトありきでまとめていくものと、とにかく良い曲をっていうのでは、やってみて手応えは違いました?
シミズ:なんでもやっちゃおうっていうほうが、僕は良かったですね。それも、これまでの経緯があったからだと思います。しっかりコンセプトを作って、とにかく風呂敷のサイズ感を決めてやってきたことによって、今回みたいに無意識的に作っても、なにかコンセプチュアルになるというか、曲のまとまりがすごく良くなっていて。いちばんバランスがとれた作り方だったのかもしれないです。
タイヘイ:もっとバカみたいなこともやりたいんですけどね。ぶっこむようなこともやりたいんでけど、自分のなかでは整ってアウトされちゃう部分はありますね。
EMTG:統一感という意味では、今回は夜っぽい曲が多いのかなと思いましたけど?
タイヘイ:それは偶然だったんです。全部の曲ができあがって、みんなでアルバムの順番を決めてたんですよ。そしたら、「あ、これ、全部、夜っぽいイメージになってるな」って気づいて。それで曲ごとに、これは何時って時系列で並べて、今回の曲順になったんです。
EMTG:夜がどんどん深くなっていくんですね。
タイヘイ:最後は朝になるんです。
EMTG:オープニングを飾る「ヒズムリアリズム」はシンセのサウンドも印象的ですが、それこそ夜のクラブをイメージしたような曲ですしね。
シミズ:リードだったり、リフだったりで、シンセサイザー感をあえて出してるんですけど、ギターだけでも表現可能なんです。ドラムとベースの生感をいかしたまま、EDMっぽさをがっつり取り入れて、カラスは真っ白として消化したいなと思ってできたんです。もともとEDMっていうジャンルが得意ではなかったんですけど。あの強制的に巻き込む感じをカラスでもやってみたいなって、そういうジャンルも今回は勉強しました。
ヤギヌマ:Zedd(ドイツ出身のDJ/プロデューサー)、聴いてたよね?
シミズ:そうだね、いちばん聴いてたのは、Zeddかな。いろいろ聴いたんですけど。なんか悪の帝国の教祖みたいなステージに、何万人もいるなかでDJがひとりで立ってて。レーザーみたいなセットと照明と仕掛けで、「そこまでやる!?」みたいな。あのエンターテイメント感がすごいなと思って。それを我々的に解釈したら、こういうふうになりました。ポップスと人力感とバンド感とEDMを全部ひっくるめてやろうっていう。
EMTG:そんな嫌でもアガっちゃう感じが1曲目にあって、2曲目の「night museum」とか「せいじゃくのこうしん」では、テンポも落としめで雰囲気がガラリと変わります。
ヤギヌマ:そうですね。わたしの声は高めで子供っぽいなと自分でも思うんですけど、「night museum」では大人っぽい、アンニュイな自分を出せたかなと思ってます。わたしの声のニュアンスに合わせて、オチくんにもけっこう無理言って歌ってもらいました。
オチ・ザ・ファンク(B):大変でしたね。わりと素敵な声じゃないですか、ヤギヌマさんって(笑)。それに近づける感じで、こういう声の色を出したんですけど、難しかったです。でも、これで曲が成立した感じがしますね。
シミズ:女性メインにコーラスが男だから、ちょっと渋谷系のバンドっぽい感じになりましたね。あと、「せいじゃくのこうしん」は、カラスが真っ白としていちばん静かな曲が作れたので、うれしかったです。歌詞を「全部ぼくの好きなことで書いてください」っていう発注をヤギヌマちゃんにしたので、その歌詞も好きです。
EMTG:好きなことっていうのは?
タイヘイ:それは非公開なんです(笑)。
EMTG:気になりますね(笑)。他にも、「RADIPHONE」では、ラップにも挑戦してたり。
タイヘイ:それはレコーディングの現場でいきなり決まったんですよね。
ヤギヌマ:そうそう。もともと、わたしがひとりでラップの予定だったのが、レコーディングの途中で(オチが)ラップやりたいって言ってきてね。
オチ:使われないと思ってたんですけど、マスターがあがったら入ってる!みたな感じで。サプライズでした(笑)。
タイヘイ:まあ、けっこう……バカっぽいというか。1曲のなかでもジャンルを超えて、いろいろやった曲なんです。ビートも2、3種類あって統一性がないんですよ。ずっとしてみたいと思ってたチャレンジができた曲ですね。
EMTG:そして、ラストの「ニュークリアライザー」はストレートなギターロック。
シミズ:ここまでストレートなのは初めてかな。
タイヘイ:昔からの憧れですよね。学祭みたいな雰囲気というか。
シミズ:純粋にコピーしてもらいたい思って作ったんですよ。
EMTG:YouTubeには、カラスのコピーをしてる動画がけっこうあがってますね。
シミズ:そうそう。でも、「ヒズムリアリズム」とかはコピーするのが大変だと思うんですね。音的にも、ほぼ不可能に近いことをやっちゃってるので。でも、コピーしてもらうのはすごくうれしいから、そうしたいと思わせるために作ったのが最後の曲なんです。
EMTG:なるほど。でも、これだけいろんな種類の曲があっても、どの曲にも、やっぱりカラスは真っ白らしさを感じるんですけど、その理由は何ですかね?
タイヘイ:なんでもやってるように見えて、カラスは真っ白フィルターみたいなのがあって。「それは絶対にやらないよ」みたいな。共通の認識があるよね。
EMTG:カラスは真っ白フィルターとは?
ヤギヌマ:なんというか……わたしがやりたくないことはやらないんです。
シミズ:うん、それが強いかもしれないね。
ヤギヌマ:アレンジだったりとかも「それはダメ」とかきっぱり言っちゃうんです。「ちょっと違う」とか。だから、ヤギヌマ・フィルターだと思います。タイヘイさんがよく、曲のはじまりとかで、「ヤギヌマがひとりでギターと歌だけで始まればいいじゃん」って言うんですけど。言われるたびに「それは嫌だ」って言ってるし(笑)。
EMTG:何か違うものになってしまうセンサーが働くんですね。
タイヘイ:あとは、こんなだけやってもヤギヌマの声で歌うから、カラスは真っ白だって思ってもらえる安心もありますしね。これはちょっとやりすぎかなっていうアレンジでも、ヤギヌマが歌うから、カラスは真っ白になっていくんです。

【取材・文:秦理絵】

tag一覧 アルバム 女性ボーカル カラスは真っ白

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ビデオコメント

リリース情報

ヒアリズム

ヒアリズム

2015年09月02日

SPACE SHOWER MUSIC/CULTIVATE INC.

01. ヒズムリアリズム
02. night museum
03. The xxx
04. RADIPHONE
05. せいじゃくのこうしん
06. フミンショータイム
07. ニュークリアライザー

お知らせ

■ライブ情報

カラスは真っ白4thミニアルバム『ヒアリズム』
レコ発全国ツアー“きこえるゼログラビティ”

2015/10/04(日)沖縄 Output
2015/11/01(日)新潟 GOLDEN PIGS RED STAGE
2015/11/03(火・祝)仙台 PARK SQUARE ※ワンマン
2015/11/18(水)大阪 心斎橋 club DROP ※ワンマン
2015/11/19(木)香川 高松 DIME
2015/11/21(土)広島 BACK BEAT
2015/11/23(月・祝)福岡 Queblick ※ワンマン
2015/11/26(木)名古屋 APOLLO BASE ※ワンマン
2015/11/29(日)渋谷 CLUB QUATTRO ※ワンマン
2015/12/05(土)札幌 PENNY LANE 24 ※ワンマン

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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