OKAMOTO’S、ニューアルバム『OPERA』リリース!

OKAMOTO’S | 2015.09.25

 音楽を良く知っているバンドが誰もが知らない斬新な音楽を作り上げた。OKAMOTO’Sのニューアルバム『OPERA』は新世代のロック・オペラとも言うべき、画期的な作品となった。ロック・オペラと聞くと、音楽ファンなら、イギリスのロックバンド、The Whoが生み出した1969年発表の傑作『Tommy』を連想するかもしれない。もちろん『Tommy』を踏まえた作品でもあるのだが、過去をなぞるのではなくて、ジャンルの枠組みを取り払い、大胆な融合の数々を実現していくことで、みずみずしいパワーがほとばしるポップな作品となった。音楽的に高度でありながら、難解ではないところも素晴らしい。アルバム全体を通して展開されている物語もこの作品の魅力のひとつ。コミュニケーションの不全という身近なテーマも今の時代にリアルに響くに違いない。

EMTG:ロック・オペラという形態のアルバムを作ろうと思ったきっかけは?
オカモトショウ(以下ショウ):いつかロック・オペラを作りたいとここ数年、メンバーで話していたんです。とは言え、そんなにすぐにとも思っていなくて、30歳を越えてからかなと漠然と考えていたのですが、くるりの岸田繁さんと一緒にシングル「Dance With Me」を作った頃から、次作にロック・オペラを持ってきてもいいかもしれないと本格的に思い始めて、今回の制作に至りました。「Dance With Me」は岸田さんから「4人で歌詞を書け」と言われて制作した楽曲なんですが、それが大きかった。
オカモトコウキ(以下コウキ):「歌詞じゃなくてもいいから、思い付いた言葉でいいから書け」って。それで4人それぞれに歌詞の元になるものを書いていきました。
ショウ:バンドのおもしろいところで、それぞれ全く違う言葉でありながら、同じことを書いていて、なおかつ1曲に収まりきらないメッセージがあったので、あふれ出した部分を他の曲に閉じ込めて、物語にして、アルバムを作ってみようと思いました。
EMTG:ダウンロードやストリーミングの普及によって、曲を単体として聴く傾向がより強くなっている今の時代に、アルバムという単位でより強い輝きを放つ作品を作るというのは挑戦的、意欲的でもあるなと思いました。
ハマ・オカモト(以下ハマ):そこまで計画していたわけではないですが、おのずと今の文化へのカウンター的な作品になりましたね。
ショウ:本来、アルバムを聴くという行為は、座ってじっくり1本の映画を観たり、小説を読んだり、それぐらいの集中力を使って楽しむエンターテインメントだったと思うんです。そういうパワーが詰まった作品を作りたくて、この曲はこの流れで聴いてほしい、この曲はここで聴いてほしいというように、物語の展開に沿って制作していきました。
EMTG:ひとつのストーリーに沿った曲を作っていくのは大変ではなかったですか?
ショウ:とにかくたくさん書きました。量はもちろん、辻褄を合わせるために、考え抜いて作っていきました。縛りがあるからこそ、生まれる良さがあるということもわかりました。なんでもいいよって言われると、人はそんないいものを作れないような気がしますね。
EMTG:OKAMOTO’Sは60年代の音楽を熟知したバンドという印象がありますが、この新作は様々な音楽の要素を大胆に融合した刺激的な作品でもあります。そのあたりの意識は?
コウキ:もともと新しい音楽も過去にリリースされている音楽もへだてなく聴いていましたし、そうしたものも反映させたいという意識は以前からあった中で、自分たちで枠にはめていたところもありまして。音楽的な枠組みがあったり、ライヴで再現できないものは避けていたんですが、今回は制約を取り払っていこうと思ったんです。ストーリーがあるので、メチャクチャな展開の楽曲や、様々なタイプの曲が入ってきても、破綻せずにアルバムにまとめられるんじゃないかと。ストーリーという縛りがあることで、逆に自由に作れましたね。
オカモトレイジ(以下レイジ):これまで様々な時期を経てきたことで、今回、聴いたことがないもの、新しいところに挑戦することが出来たのかなと思います。これまでもそれぞれミクスチャー感覚は持っていたんですが、好きなジャンルもバラバラだし、バンドとしての見せ方がわからなかったんですよ。オレはヒップホップが好きだけど、どうやってバンドに活かせばいいのかなって。それが今回、メンバーそれぞれの歯車がうまく噛み合って、アイディアとアイディアが混ざり、このビートだったら、このサウンドはどうだろうとミックスしていくことで、新しい作品を作ることができました。
ハマ:単純に、やったことがないことに挑戦するのはおもしろいことで、ロック・オペラというコンセプトが出てきた時に、こういう発想は大好きだし、今の日本に提示するのはおもしろそうだなと思えたんです。どういうテンションで世間に提示していくのかが重要だなと。ただの懐古的な焼き増しなのか、まったく新しいエンターテインメントとして出すのか、それは僕ら次第だなと思いながら作っていました。
EMTG:斬新な試みがたくさん詰まっていますが、印象に残った曲をあげていただくと?
コウキ:たくさんありますね。
EMTG:コウキさんが作詞して、メインボーカルを取っている「ハーフムーン」もイメージが広がる曲で、なおかつ見事に物語を形成する曲の一つになっています。
コウキ:「ハーフムーン」は「Dance With Me」に繋がる歌詞にしようと思って書いていきました。個人的には、この曲の頭に付いているショウが作った架空のラジオ局“FM OPERA”が気に入っています。
EMTG:レイジさんは?
レイジ:「楽しくやれるハズさ」はバンドとは関係なく、個人的に近未来の音楽を作ろうと思って、2030年くらいの音楽をイメージしてビートを組んでいったんです。ただ、いいものが出来たのでショウにデータを送ったら、ガットギターとベースが入っきた。歌もある曲になって、更に意味がわからない楽曲に進化したのはうれしかったですね(笑)。
EMTG:ハマさんはどうですか? 「うまくやれ」はベースの鳴りが気持ち良かったですが。
ハマ:今回のアルバムでは、基本的にデモを作って、プリプロをするという流れがあったんですが、「うまくやれ」は詞先で曲が全くないという状況から作っていきました。小憎たらしい先輩に会ってしまうシーンが描かれた歌詞だったので、60年代後期くらいのファンクのループ感を出すことで、煮えくりかえらない感じ、それでいてくどくない感じを出せないかと考えながら骨組みを作って、最終的にはジャム・セッションで作りました。個人的にはアルバム制作タイミングでジョージ・クリントンが来日した時に対談する機会がありまして、Pファンクを改めて聴き直した時期だったので、その影響も出ていますね。16ビートで録るロックバンドは僕らの世代ではあまりいないので、そのあたりも意識しつつ、ダンスというキーワードにも掛けつつ。
EMTG:ショウさんはどうですか?
ショウ:1曲に絞るのは迷いますね。
EMTG:「TOMMY?」はアルバムの中でもポイントの曲なので、うかがいたいのですが。
ショウ:俺らがロック・オペラと聞いた時に、真っ先に思い出すのはThe Whoの『TOMMY』なんです。トミーは聞こえない、見えない、しゃべれないという三重苦を背負っているじゃないですか? それには、今の社会が抱いている人ときちんとコミュニケーションが取れない感じや、繋がりあえない感じに通じるものがあるなと感じて。その現代版を作るなら、携帯、鍵、サイフがないというテーマがいいんじゃないかと思い付きました。キャッチーですし、俺らと同じくらいの年齢だったら、やらかした経験もあるだろうし。その3つをなくした状況で、東京のど真ん中に放り出されたら、怖くない? って。もともとはサイフの曲、鍵の曲、携帯の曲で別々に収録しようと思っていましたが、ロック・オペラはそんな悠長にやっていると、ものすごい分数になってしまうことがわかって(笑)。ハマから出た「1曲に詰め込んで、携帯、鍵、サイフが嘆いてる感じにしたらどう?」というアイディアを元にこうなりました。
EMTG:構成も展開も斬新かつポップです。
ショウ:「TOMMY?」はデモの段階ですでに様々なエッセンスが入っていた曲で、電車の音も入れて、車掌の声も自分で吹き込みましたし、みんなこれが送られてきて、何事だって思ったんじゃないですかね。ジェームス・ブラウン、ビートルズ、村八分、たくさんの音楽をごちゃまぜにしてやりました。
EMTG:革新的でありつつ、共感できるポイントがたくさんあるアルバムでもありますよね。
コウキ:作品で描かれているのは同世代の悩みだったり、考え方だったりするので、これは自分も思っていることだと近い距離で感じとってもらって、広がっていくとうれしいですね。
ショウ:音楽を伝える時に、音楽的な濃度を薄くすることで、わかりやすくして、多くの人に伝わりやすくするというやり方もあると思いますが、そうすると、音楽が持つパワーも薄くなってしまう。俺らはやっぱり濃い音楽を作りたい。ただ、誰にも理解されなくてもいいとは思っていない。音楽はこんなにおもしろいんだということも伝えたいですし、アルバムの楽しさも味わってほしい。物語をある程度わかった上で、1曲目から最後まで通して聴くと、ものすごく威力を発揮する作品だと思うので、そこにたどり着く人をひとりでも多く増やしたい。なので、アルバムを小説化して物語を公開していたり、伝え方も工夫していこうと。
ハマ:このアルバムをリリースすることで、どんな反応が返ってくるのか、興味深いですね。それによって、この先の展開も見えてくるんじゃないかな。
ショウ:何年か先に映画化や、完全再現ライヴを開催したり、演劇をやっている人たちがいて、オレたちがBGM的に演奏するなど、総合エンターテインメントとしての新たな可能性はたくさんあると思います。
レイジ:これをどうバンドで合わせるのかも楽しみですね。ライヴで演奏するのは初めてなので、やってみないとわからないこともあるんですよ。レコーディングではドラムをたたいている曲をライヴで打ち込みにするかもしれないし、何が起こるかわからない(笑)。

【取材・文:長谷川誠】

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リリース情報

OPERA(初回生産限定盤)[CD+DVD]

このアルバムを購入

OPERA(初回生産限定盤)[CD+DVD]

発売日: 2015年09月30日

価格: ¥ 3,333(本体)+税

レーベル: アリオラジャパン

収録曲

[CD]
1. OVERTURE
2. Dance With You (Album ver.)
3. アップサイドダウン
4. NOISE 90
5. 夢の中へ…
6. TOMMY?
7. うまくやれ
8. HEADHUNT (Album ver.)
9. エキストラ
10. ハーフムーン
11. ZEROMAN (Album ver.)
12. Knock Knock Knock
13. 楽しくやれるハズさ
14. L.O.S.E.R
15. Beautiful One Day
16. Dance With Me (Album ver.)

[DVD]
「OPERA」レコーディング・ドキュメンタリー映像収録

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お知らせ

■マイ検索ワード

●オカモトショウ(Vo)
家具

「IDEE」という家具屋さんを検索しました。床材なんかも調べています。

●オカモトコウキ(G)
小室哲哉

小室さんがローリングストーン誌の表紙を飾っていて、ふと、どのぐらい楽曲を書いてきたんだろうと思って調べました。

●ハマ・オカモト(B)
うなぎ

単純に食べたいなと思いまして。うなぎは一人で食べに行くことがないですし、きちんとした、いいものが食べたいと思って調べました。おかげでいいお店が見つかりました。

●オカモトレイジ(Dr)
きゃりー、野崎

素人の友達なんですけど、きゃりーちゃんの友達としてテレビに出演していたので、世間の反応を調べました。ちなみに『OPERA』のレコーディングに参加してもらっています。


■ライブ情報

OKAMOTO’S TOUR 2015-2016
“LIVE WITH YOU”

2015/11/01 (日)東京・新宿LOFT
2015/11/03(火・祝)静岡・浜松窓枠
2015/11/05(木)京都・京都磔磔
※バースデイアクト:ジェイクシマコウキ
2015/11/07(土)岐阜・柳ヶ瀬ants
2015/11/08(日)石川・金沢AZ
2015/11/14(土)長野・長野LIVE HOUSE J
2015/11/15(日)新潟・新潟Live Hall GOLDEN PIGS RED STAGE
2015/11/21(土)北海道・札幌PENNY LANE24
2015/11/22(日)北海道・旭川 CASINO DRIVE
2015/11/25(水)北海道・函館club COCOA
2015/11/28(土)岩手・盛岡CHANGE WAVE
2015/11/29(日)宮城・仙台darwin
2015/12/03(木)兵庫・神戸VARIT.
2015/12/05(土)広島・広島CLUB QUATTRO
2015/12/06(日)岡山・岡山CRAZYMAMA KINGDOM
2015/12/12(土)高知・高知X-pt.
2015/12/13(日)香川・高松DIME
2016/01/09(土)福岡・福岡DRUM LOGOS
※バースデイアクト:DJオカモトレイジ
2016/01/10(日)熊本・熊本DRUM Be-9 V2
2016/01/23(土)大阪・ZEPP NAMBA
2016/01/24(日)愛知・名古屋BOTTOM LINE
2016/01/30(土)東京・ZEPP Diver City

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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