18歳のシンガー・ソングライター Anly メジャーデビューシングル「太陽に笑え」

Anly | 2015.11.20

 生々しく響くギターの音に乗せ、飾らない素直な歌声を聴かせる現在18歳のシンガー・ソングライター、Anly(アンリィ)。メジャーデビュー曲「太陽に笑え」がフジテレビ系ドラマ『サイレーン刑事×彼女×完全悪女』の主題歌となり、大きな注目を集めているところだ。沖縄の離島・伊江島で生まれ育った彼女はどのようにして音楽表現に目覚め、いまどんな気持ちでうたっているのか。その背景と、デビュー曲「太陽に笑え」に込めた思い、そしてガブリエル・アプリンとロンドンで録音したカップリング曲についても聞いた。

EMTG:出身は沖縄の離島の伊江島なんですよね。上京してどのくらい経ちましたか?
Anly:もう少しで9ヶ月くらいですね。でも沖縄と東京とを行ったり来たりの生活なので。これからも沖縄と東京の両方を活動の拠点にしてやっていくつもりなんです。やっぱり沖縄のひとにも歌をいっぱい聴いてもらいたいので。
EMTG:なるほど。東京の印象はどうです?
Anly:うーん、ちょっと空が狭いかな(笑)。
EMTG:沖縄からしたらそうですよね(笑)。Anlyさんはどのように音楽を好きになって、どんな音楽をよく聴いていたんですか?
Anly:父が趣味でギターを弾いていたので、ちっちゃい頃から父のうたう歌を真似してうたってました。父はエリック・クラプトンとかCCR(クリーデンス・クリアウォーター・リバイバル)とかZZトップとかが好きで、そういうロックやブルースのCDを本島から持ち帰ってよく聴いていたので、自分もそういうのを好きになって。J-ポップは家に流れてなかったので、あまり聴いてなかったですね。あ、あと、ノラ・ジョーンズも好きでした。
EMTG:自分でCDを買いに行ったりとかは?
Anly:伊江島にはCD屋さんがないんですよ。コンビニが島に2件あるぐらいで。あと、インターネットも繋がってなかったから、ただただ父の好きな音楽を聴いてました。島には洋服屋さんもないので、本島に出ていかないと服も買えない。でもみんなファッションにはそんなに興味がないから、いつも体育着で走り回ってました(笑)。
EMTG:ははは。で、ギターを始めたのは何歳ですか?
Anly:6歳のときに父が本島に渡ってギターを買ってきてくれて。で、コードを教えてもらって、それからは暇さえあればギターを触ってましたね。遊び道具がギターしかなかったから(笑)。ノラ・ジョーンズのCDを聴いて、それに合わせてギターを弾いて遊んだりとかしてました。
EMTG:初期のノラ・ジョーンズの曲はピアノ曲が多いから、ギターは難しくなかった?
Anly:難しかったですね。でもそれでコードを探して覚えたりとかして。それから自分でも歌詞やメロディを書くようになったんですけど、それが中学3年くらい。ちっちゃい頃から歌手になりたいと思っていて、そのためにはやっぱり自分で歌を作れるようにならないといけないのかなと思って書き始めたんです。
EMTG:ずっとアコギですか?
Anly:はい。でも最近になってエレキをちょっとずつ練習しようと思って、よく触ってます。エレキを弾くとエレキに合ったメロディが出てくるので、弾いたほうがいいなと思って。
EMTG:今回のデビュー・シングルの曲はそういう感じですもんね?
Anly:そうですね。
EMTG:曲はどんなときにできるんですか?
Anly:父が夕暮れ時にいつも窓辺でギターを弾いてうたっていて。私もそうやって歌ってます。だから夕暮れ時に曲が浮かんでくることが一番多いですね。
EMTG:東京だとなかなか窓辺で弾く感じにはならないでしょ?
Anly:そうですね。やっぱり沖縄で過ごしているときが一番リラックスして歌がうたえる。でも東京は見たことのないものがいっぱいあって、それはそれで刺激を受けたりもしますけど。でも基本的には沖縄にいるときのほうが曲もできますね。沖縄で作ると優しい曲がよくできます。デビュー・シングルに入ってる3曲目の「Come back」のような曲とか。あ、でも、(表題曲の)「太陽に笑え」も沖縄にいるときに作ったんですけどね。太陽が燦々と輝いているのを見て、そこから作った曲なので。
EMTG:そのメジャーデビュー曲「太陽に笑え」は、ドラマ『サイレーン刑事×彼女×完全悪女』の主題歌として流れるそうですけど、ドラマのイメージに合わせて書き下ろしたものなんですか? それとも、もともとあった曲?
Anly:曲自体は高3のときに作りました。1年半前くらいですね。自分が落ち込んだときに、元気になれる曲を作ろうと思って。あと、自分は本当に歌でやっていくんだぞって宣言するような気持ちも込めて作ったので、この曲でメジャーデビューできるのはすごい嬉しいです。この曲はインディーズのCDを出したときのワンマンライブでもアンコールでうたったんですけど、私は知らなかったんですが、それを(ドラマで主演を務める) 松坂桃李さんが観に来てくださってて。楽屋にも来てくださって「かっこいい曲で、感動しました」って。嬉しかったですね。
EMTG:この歌でAnlyさんは、変わっていくことの不安と、でも揺るがないで自分を信じてやっていこうという決意感の両方を表現していますね。それは自分自身の環境の変化に伴って思ったことなんでしょうか?
Anly:大好きな歌がうたえるのは、当たり前のことではないんだって確認してる感じですね。歌がうたえることを当たり前に思いだしてた自分に気づいて、そうやって変わってしまったら怖いなっていう気持ちと、「でもうたい続けていきたいと思っているのは本当でしょ?」っていう気持ち。そこで自問自答して、やっぱり揺るがないでこれからも自分を信じて歩いていこうって気持ちを書いたんです。
EMTG:こうやって話していると、すごく意志が強そうだし、簡単には揺るがなさそうですけどね。
Anly:でも意外とこう、へこんだりもするんです(笑)。
EMTG:友達からは、どんな性格だと思われてるんですか?
Anly:「まっすぐだね」ってよく言われる。「ホントに歌が好きなんだね」って。教室でもギター弾いてうたってばかりいたので、「歌のひと」って思われてましたね(笑)。先生に送る歌を作ったり、友達のために歌を作って聴かせたりもしてたので。歌でひとを癒したり励ましたりできればいいなって、ずっと思ってるんです。「太陽に笑え」も落ち込んだり不安になったりしたひとが聴いて「もうちょっと頑張って前に進もう」って思ってもらえる曲になればいいなって思ってます。
EMTG:それにしても「太陽に笑え」ってタイトル自体にインパクトがありますよね。
Anly:沖縄感もちょっとあるかなって、あとで思いました(笑)。
EMTG:アレンジを(CoccoやGRAPEVINEをプロデュースした)根岸孝旨さんが手掛けていて、かなり激しくて荒々しいロック・サウンドになっています。Anlyさんがもともと曲を作ったときから大きくイメージが変わったのでは?
Anly:いえ、最初からこの曲は力強いアレンジにしたいと思っていたので、イメージ通りですね。というか、イメージ以上にかっこよくなったなって思います。根岸さんは曲のことをすごく理解してくださって、のびのびとうたうことができました。
EMTG:どんな気持ちでうたったんですか?
Anly:「歩け 歩け」ってワードが自分にもすごく響いてくるので、これを聴いて本当に歩きたくなるような歌い方をしたいなと。
EMTG:強くエモーショナルにうたってるところもありますけど、サビとかは切ない歌い方にもなる。1曲のなかで感情の動きがありますよね。
Anly:そうですね。「忘れないで この気持ちを 幼い夢を 見ていたいの」というところは、自分のなかにある少女的な部分、純粋に夢を見続けている自分をそのままにしておきたいという気持ちがあって、それを表現するようにうたいました。厳しい現実もあるかもしれないけど、夢を見ることは原動力にもなることなので、その気持ちを忘れないようにって。太陽は夢とか目標とかの象徴かもしれなくて、そこに向かって歩き続けたい、歩き続けてほしい、という気持ちです。
EMTG:背伸びして大人になったつもりで振る舞わないで、大人になりきれない自分のことも大切にしたい、あるいは大切にしてほしいということですね。
Anly:そう! よく回りのひとに「そのままのAnlyでいてね」って言われるんですけど、そのままのAnlyはやっぱり歌が大好きでまっすぐ生きてる自分なんだろうなと思うので、そのままでいたいっていう、そんな気持ちですね。もちろんちょっとずつ変わっていくかもしれないけど、それでも根っこは変えたくないし、変わってく自分に対して不安になったら、この歌を思い出そうっていう気持ちもあります。だから、自分の原点になる曲。メジャーデビューの曲がこれでよかったです。
EMTG:それからカップリング曲の「Don’t give it up!」ですが、この曲はロンドンでガブリエル・アプリンと一緒にレコーディングしたんだそうですね。
Anly:はい。私がインディーズで出したシングルのなかでアプリンさんの「Please Don’t Say You Love Me」をカバーしたことがきっかけで。それをアプリンさんが気に入ってくれたところからお会いできることになったんです。それで9月にロンドンに行ったんですけど、まさか一緒にレコーディングもできるなんて思ってなくて……。
EMTG:スタジオで会ったんですか?
Anly:はい。しかも私の作った「Don’t give it up!」だけじゃなくて、アプリンさんの新曲もそこで一緒にうたったり、「Please Don’t Say You Love Me」もうたったりすることができて。アプリンさん、それを日本語でうたってくれたんですよ。日本が大好きらしくて、日本語の歌詞をつけていて。もう、びっくりしたんですけど、すごく嬉しかったです。
EMTG:アプリンはこの前出た新作でガラッとイメチェンして、すっかりクールなビジュアルと音楽性になってましたよね。
Anly:そうですね。だから実際もそういうクールで物静かな女性なのかと思ったら、キラキラオーラがすごく出てて(笑)。アプリンさんもフリートウッド・マックとか昔のロックが好きだそうで、すっかり意気投合しました。
EMTG:この曲もロックなモードだし、歌詞のメッセージも「太陽に笑え」に通じるところがあるように思います。
Anly:ありますね。信じることが難しくなったり怖くなったりすることってあるじゃないですか? でも疑ってる自分も嫌だなって気持ちがあって。やっぱりまっすぐに流されることなく行きたいって思いを書いたんです。
EMTG:疾走感があるし、イントロからしてかっこいい。
Anly:あ、嬉しい! これ、イントロから自分で作った曲なんですよ。慣れないエレキで(笑)。
EMTG:疾走感がありつつも、根底にはブルージーな感覚もある。
Anly:そうですね。それは父の影響もあると思います。
EMTG:そしてもう1曲の「Come back」ですが、これはロックではなくアコースティックのフォーキーな曲ですね。優しくてちょっと切ない。懐かしい気持ちにもなる曲です。
Anly:はい。伊江島には高校がないので、私は進学と共に島を出て那覇市内の高校に通っていたんですけど、その日々のなかで楽しいこともあるけど、落ち込むこともあった。そうやって毎日過ごしていくなかで、ふと那覇の人込みのなかに同級生を探してしまったりすることがあって。そんなとき、島に帰りたいと思っている自分に気づいて、それを歌にしてみようと思ったんです。
EMTG:そうやって島のことを思い出して書いた曲だから、懐かしさが漂ってくるんでしょうね。
Anly:そうかもしれないですね。うたうときも伊江島の景色や雰囲気を思い出してうたいました。でも、これもレコーディングしたのはロンドンなんですよ。
EMTG:あ、そうなんですか?! ちょっと意外。
Anly:ロンドンで伊江島のことを思い出してうたったんです。まあ、向こうも島国だから(笑)。
EMTG:この曲には歌い回しにも少しだけ沖縄っぽさが出てますね。
Anly:意識したわけではないけど、確かに出てますね(笑)。でもこの曲がデビューCDに入ったことは伊江島のひとも喜んでくれると思うし、「Anlyは東京で頑張りながらちゃんと伊江島のことも思ってるんだな」って感じてもらえると思うので、よかったです。だから早く伊江島のひとにも聴かせたいですね。
EMTG:どうですか? ロンドンにも行ったことだし、最近は聴く音楽の幅も広がっているのでは?
Anly:はい。イギリスの音楽を向こうでたくさん聴いて、最近はイギリスのアーティストをよく聴くようになりましたね。あと、レポートのお仕事でフジロックにもサマーソニックにも行けたので、本当にいろんな音楽を聴くようになってきてて。いつか伊江島でフェスをやりたいという気持ちも出てきたところなんです。最近エド・シーランさんも大好きなんですけど、いつかああいうふうにアコースティック・ギター1本で、大きな会場でうたえるようなアーティストになるのが夢ですね。

【取材・文:内本順一】

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リリース情報

太陽に笑え(初回生産限定盤)

太陽に笑え(初回生産限定盤)

2015年11月25日

ソニー・ミュージックレコーズ

[CD]
1. 太陽に笑え
2. Don’t give it up! feat.Gabrielle Aplin
3. Come back
4. 太陽に笑え -instrumental-
5. Don’t give it up! -instrumental-

[DVD]
「太陽に笑え」Music Video+Coming Soon Movie~伊江島~

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お知らせ

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ブルース・ウェーバー(Bruce Weber)
写真家さん。教えてもらって調べてみて、モノクロの作品で本当にかっこ良かった。


■ライブ情報

Anly Debut Live「太陽に笑え」
2015/11/28(土)東京・渋谷・eggman

Act Against AIDS 2015 LIVE in Centrair
2015/11/29(日)愛知・中部国際空港 セントレア 4Fイベントプラザ 特設ステージ

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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