a flood of circle、10周年のスタートは初のベスト盤『THE BLUE』、初回盤には新曲も

a flood of circle | 2016.02.23

 今から10年前。a flood of circleの歴史は、何かに取り憑かれたように《未来未来》と繰り返す、黒い鳥の歌で始まった。そんな彼らが今掲げるのは、とびっきり鮮やかな青。この10年、一体何があったのか。違う。むしろこの青さこそが、本来のあるべき姿だったのだ。お世辞にも順風満帆とはいえないバンドの歩みに気を取られて、少し誤解をしていたのかもしれない。10年の歴史を詰め込んだベストアルバム『"THE BLUE" -AFOC 2006-2015-』を聴いて驚いた。形は様々だが、どれも希望の歌ばかりだ。そしてこのアルバムはただのベストアルバムではない。随所に佐々木亮介(Vo・G)のこだわりと愛が詰まっている。その聴きどころを語ってもらった。

EMTG:改めてどんな10年間でしたか?
佐々木:もがいてたなって感じかな。でも、一番大事な部分は変わらずに来れたと思います。それは誇りだな、と。
EMTG:一番大事な部分とは?
佐々木:音楽に対しての欲望が変わってないんです。どういう局面でも、こういう曲を作りたい、こういう歌を歌いたい、って毎回はっきりしてる。だから俺は音楽をやめる才能がないな、って(笑)。
EMTG:なるほど。このベスト盤、リードトラック中心のDisc1はもちろんのこと、初回限定のDisc2(新曲+レア曲)、Disc3(弾き語り)の内容がとても豪華ですよね。
佐々木:俺たち10年のバンドにしては、曲がめちゃくちゃあるんですよ。だから、どのCDから買ったらいいか、分からなくなりそうだなって。それでDisc1はシンプルにリード曲が並んでいる盤にしたかったんです。で、Disc2やDisc3は既にフラッドを知っている人に面白がって欲しいって気持ちが強くて。1がベスト盤、2がニューシングル、3がボーナスディスク、って感じです。
EMTG:ではDisc2の新曲、「青く塗れ」にはどんな思いを託しましたか?
佐々木:10年やってきて、ロックンロールというジャンルに所属したくてロックンロールをやってるんじゃなくて、ロックンロールで色んなものを飛び越えて行きたいっていう気持ちの方が強いことに改めて気づいて。既にある枠とか、誰かが用意してくれたものに所属するより新しい環境や場所を作るためにやっていきたい。自分のテイストに染めるんだ、っていう気合が「青く塗れ」っていう言葉になっているので、そういうところかな。
EMTG:あとDisc2にはメンバー紹介曲としてライヴの定番でありながら、一度もスタジオ録音されていなかった「プシケ」が収録されていますよね。
佐々木:元からメンバー紹介ありきの曲なので、メンバーが色々変わったり、ライヴだとサポート含めてやっているので、スタジオで録る意味を見いだせなかったんですよ、今までは。でも去年Duran(G)が抜けて3人になって、「もうこの3人で行こうぜ」って、すごく強くなったんですよね。それで今録れたっていうのはあるかもしれない。
EMTG:録ってみていかがでしたか?
佐々木:メンバー紹介のところをカットして、新しいアレンジが入ってるんですけど、今スタジオで録るならライヴではできない面白いことをしようと思って。すごく苦労してノイズがハーモニーを作るっていうのをやってるんです。フラッドって音楽的なトライアルもすごくやっていて。色んなリズムとか和音とか。ただ自分たちの気持ちをぶちまける以上に、音楽的にちゃんと面白かったりカッコイイものを作ろうという気持ちがあるので、それを込められて気に入ってます。
ETMG:「プシケ」は10年かけて、ようやく1曲として完成の時を迎えたんですね。
佐々木:その言い方、いただきます!(笑)。「この曲10年かけてやっと録れました」って。
EMTG:(笑)。そしてDisc3は佐々木さんの弾き語り。どんな基準でこの11曲を選びましたか?
佐々木:弾き語りで作った曲っていうのがベーシックかな。あと俺の中でDisc1、2はフェスティバルとかでロックDJがかけてもガツンといける盤にしたいっていうのがあって、あんまりバラード入れてなかったんです。だからDisc3は、たとえば俺の部屋に来て聴いてもらうとか、俺が人の部屋に行って歌う感じで表現したかったので、マイクの置き方とか細かいトライをいっぱいやって、一番ここ(耳元)で歌ってる感じに聴こえるようにしたんです。寝る前にコーヒーとかウィスキーとか呑みながら聴いてほしいですね。
EMTG:それにしても、バンドのベスト盤に弾き語りを入れるって、斬新ですよね。
佐々木:去年30歳になる前に、何かやったことないことをやろう、と初めて弾き語りのワンマンツアーをやって。その時「俺、フラッドだな」と思っちゃって。自分が。
EMTG:と、いうと?
佐々木:『ベストライド』って作品にも弾き語りを入れたんですけど、姐さん(HISAYO/B)とナベちゃん(渡邊一丘/Dr)が、フラッドとして究極に引き算した形が弾き語りっていう話をしてくれて。それがすごい嬉しくて。「エゴでやってるだけじゃなくて、フラッドのやり方を引き算しただけなんだ」って思うようになったから、弾き語りが入っていてもいいなと思ったし、ベスト盤に対して積極的なバンドとしては、人がやってないことやりたかったんですよね(笑)。ヴォーカルの弾き語りが入ってるベスト盤ってなかなかないでしょ?
EMTG:はい。
佐々木:だから、「おもしれえだろ?」って(笑)。
EMTG:アルバムのタイトルは『THE BLUE』、新曲も「青く塗れ」。佐々木さんにとって「青」ってどんな色なんでしょう。
佐々木:普段から青い服を買うでもないし、晴れやかな男でもないので(笑)。自分らしい、というよりは憧れている色なのかもしれない。長く続けているミュージシャンって、渋さや熟練した魅力もあるけど、ずっとフレッシュなんですよね。でもフラッドも、どんどんフレッシュになっていると思っていて。
EMTG:その理由は?
佐々木:最初は初期衝動って絶対あると思うんです。人とセッションするときも思うんですけど、最初の2回くらいはめっちゃ勢いがあるんですよね、出会った歓びと、こうすれば楽しいっていう歓びで。それはギターのサポートが変わる度にあって。その時期を過ぎると、今度は目標が無いとダラダラになっちゃうので、こういう曲を作ろうとかこういうライヴをやろうって考える。それがすごく大事なんです。初期衝動ってそれに任せちゃってあんまり考えてないから。でも色々考えだすと、やりたいことがどんどん出てくるんです。
EMTG:「音楽をやめる才能がない」たる所以はここにあり、ですね。
佐々木:俺はやりたいことが基本的に減らないんですよ。増えちゃうんですよね。その情熱が増えるから、どんどん青臭くなっていくのかも。

【取材・文:イシハラマイ】

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リリース情報

オレンジスパイニクラブ『非日常』

オレンジスパイニクラブ『非日常』

発売日: 2020年11月04日

価格: ¥ 1,800(本体)+税

レーベル: primitive

収録曲

01.リンス
02.スリーカウント
03.駅、南口にて
04.コーヒーとコート
05.またあとで
06.Finder
07.ドロップ
08.たられば

ビデオコメント

リリース情報

“THE BLUE”ーAFOC 2006-2015ー(初回限定盤 CD3枚組)

“THE BLUE”ーAFOC 2006-2015ー(初回限定盤 CD3枚組)

2016年02月24日

Imperial Records

[Disc1]
01.花
02.シーガル
03.Buffalo Dance
04.博士の異常な愛情
05.Human License
06.I LOVE YOU
07.Blood Red Shoes
08.The Beautiful Monkeys
09.理由なき反抗(The Rebel Age)
10.Dancing Zombiez
11.I’M FREE
12.月面のプール
13.KIDS
14.GO
15.Golden Time
16.ベストライド
17.ブラックバード

[Disc2]
01.青く塗れ
02.Miss X Day
03.プシケ
04.God Chinese Father

[Disc3]
01.象のブルース
02.SWIMINNG SONG
03.ノック
04.月に吠える
05.コインランドリーブルース
06.Yu-rei SONG
07.オーロラソング
08.The Cat Is Hard-Boiled
09.ホットチョコレート
10.花
11.ファイト!

お知らせ

■ライブ情報

Deep Blue Night -AFOC vs 佐々木亮介-
2016/03/04(金) 新宿LOFT
出演:a flood of circle、佐々木亮介

AFOC 10th Anniversary “THE BLUE TOUR -青く塗れ!-”
2016/04/02(土)千葉LOOK
2016/04/03(日)水戸LIGHT HOUSE
2016/04/09(土)郡山HIPSHOT JAPAN
2016/04/10(日)盛岡the five morioka
2016/04/14(木)金沢vanvanV4
2016/04/15(金)新潟CLUB RIVERST
2016/04/17(日)長野J
2016/04/22(金)宇都宮HEAVEN’S ROCK VJ-2
2016/05/01(日)岡山PEPPER LAND
2016/05/03(火)鹿児島SR HALL
2016/05/05(木)大分club SPOT
2016/05/07(土)松山W studio RED
2016/05/08(日)高松DIME
2016/05/13(金)札幌cube garden
2016/05/15(日)仙台CLUB JUNK BOX
2016/05/19(木)高知X-pt.
2016/05/21(土)広島SECOND CRUTCH
2016/05/22(日)大阪なんばHatch
2016/05/27(金)名古屋DIAMOND HALL
2016/05/29(日)福岡CB
2016/06/04(土)新木場STUDIO COAST
2016/06/11(土)沖縄Output

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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