ARKS初の全国流通盤1stミニアルバム『Image』は、これまでのARKSのストーリーが詰まった集大成の1枚

ARKS | 2016.03.10

 「私はあなたを卒業する」。そのワンフレーズを聴けば、この歌で作り手が伝えたいことが全てわかる。そんな歌を作るのが目標だったという。大阪・堺出身のスリーピース・ギターロックバンド、ARKS(アークス)が3月9日にリリースした初の全国流通盤『Image』に収録されたリード曲だ。実体験をもとに、恋人への想いを綴ったこの曲について、作詞を手がけた吉田明日香(Vo・G)は、「具体的な歌を書くのは苦手だった」と明かした。現在23歳。将来への不安を抱きながら、それでも夢を選びとった3人は、どこか無防備なまま、だが強い意志をもって自分たちが鳴らすべき音楽のかたちを探している。そんな彼らに今この瞬間の葛藤と進化を刻んだミニアルバム『Image』について訊いた。

EMTG:まずは、ARKSの編成の話から。もともと女の子ひとり、男の子ふたりっていう構成でバンドを組みたいという想いはあったんですか?
池辺涼真(Dr):そこは、そんなに意識したことはないですね。きっかけとしては、明日香がチャットモンチーのコピーバンドをやってたのを、僕がライブハウスで見たんです。「恋愛スピリッツ」をカバーしてて。そこで初めて「すごい!」と思ったんですよ。声がビックリするくらい良くて。コピーバンドで初めて良いバンドやなって感じたんです。で、「じゃあ、一緒にオリジナルをやろうや」ってなって。だから男子とか女子とかはあんまり関係なかったですね。
EMTG:わたしも明日香ちゃんの声は一聴してキュートで素敵だなと思いました。明日香ちゃん自身は自分の声はどう思ってる?
吉田明日香(Vo・G):わりと自分の中でも好きな声です(笑)。
池辺:自分の声好きって(笑)!
EMTG:意外とそう答えるボーカリストは珍しいよね(笑)。涼真くんにバンドに誘われた時、明日香ちゃんはどんなふうに思いました?
吉田:涼真さんは軽音楽部の中でドラムがいちばん個性的だったんですよ。すごく背も高いし、むちゃくちゃに叩いてて。自己主張がすごかったんです(笑)。そういうドラマーが誘ってきてくれて、「わたしで良いんかな?」とも思ったんですけど、嬉しくて。それまでカバーしかやったことがなくて、オリジナルをやりたいなと思ってたので、すぐにOKしました。
EMTG:そこに、おっちょ(落合)が加わるわけですね?
池辺:大学生のときに、もともとやってたメンバーがふたり辞めちゃって、サークルにすごい元気なヤツがいたので声をかけました。当時はギターボーカルをやってたんですけど。
落合祐葉(B):実はこのバンドに入ってからベースをはじめました。最初はとりあえず大学の間だけのサポートメンバーやと思ってたんです。それでずっと続けたんですけど、就職活動をする時期に「1回本気でやれへんか?」みたいなことをふたりに言われて。その時に、「このふたり、本気や」っていうのをめっちゃ感じたんです。それで、ぼくも本気で音楽をやってみようって、正式なメンバーになりました。
EMTG:ふたりはいつ頃から音楽で食べていこうって考えるようになったの?
池辺:僕は大学3回生ぐらいですけど、明日香はすごく前からあったみたいですね。
吉田:ずっと言わなかったんですけど……。高校を卒業して、ARKSをずっと続けていく中で、このバンドで食べていけたら幸せだなと思うようになったんです。でも、おっちょには他の夢があったから、ずっと言えなくて。就職活動をする頃に、みんなで話し合いをして、そこで3人の意志が固まりました。
池辺:そういうのは明日香が引っ張ってくれてるんです。その意志の強さはすごく頼りにしてるので。明日香が「やる!」って言ったら「やるんや」っていう感じですね。
EMTG:なるほど。では、メンバーが影響を受けた音楽を教えてください。
落合:僕はブルーハーツだと思います。7インチのレコードが家にあったんです。おとんとおかんが昔バンドをやってたみたいで。青春パンクみたいなのを聴いてましたね。
EMTG:自分から好きで聴いてたようなバンドはありますか?
落合:10-FEETとか。熱いのが好きですね。元気が出るんですよ。
EMTG:明日香ちゃんは、やっぱりチャットモンチー?
明日香:はい。高校の軽音楽部に入った時に先輩が歌ってたんです。それがすごくかっこよくて。その後にチャットモンチーの音源を初めて聴いて、「なんじゃこりゃ」って衝撃を受けました。声が好きなんですけど、ライブ映像を観たら、あんなに可愛らしい女の子なのに、ステージに立つとこんなにかっこいんだっていう。
池辺:僕は木村カエラですね。小学6年生の時に『Level 42』っていうCDを買って、そこから毎回玉手箱を開ける感じでCDを聴き続けてます。中学2年生の時にZepp Osakaにライブを見に行ったんです。なんてロックなんだ!って思いました。バックの人たちもめちゃくちゃかっこよくて。それがドラムを始めたきっかけですね。木村カエラの、お客さんを楽しませることに関しての表現やセンスがすごいから。僕の中では教科書です。
EMTG:その原点が、池辺くんが女性ボーカルに惹かれた理由にもつながるんじゃない?
池辺:そう思いますね。最初は男性ボーカルのバンドとかもやっていた中で、明日香に声をかけたので。根底にそういうものに惹かれる部分があるのかもしれないです。
EMTG:結成当初は、ライブは大阪の三国ヶ丘FUZZを拠点にしたそうですね。
池辺:ツアーのバンドも来ない、地元の若いバンドしか出ないようなところですね。
EMTG:かつてKANA-BOONがインディーズ時代に活動してた場所ですけど。
池辺:そうなんですよ。
EMTG:大阪のあの世代にはキュウソネコカミとかTHE ORAL CIGARETTESとかがすでに全国区になっていて。今の大阪のシーンっていうのはARKSから見てどう?
池辺:僕らの世代で言うと、東京にはLAMP IN TEREENとかHalo at 四畳半とか、僕らの同世代にあたるシーンができあがってると思うんです。でも、関西にはまだこのラインの同い年ではシーンを作れてないんですよ。だから、大阪に南堀江knaveっていうライブハウスがあるんですけど、そこで、みるきーうぇい、ヤバいTシャツ屋さん等、同世代のバンドでライブをしているんです。その中で僕らARKSが最初に全国流通盤をリリースするんですね。だから、そこで何かきっかけになりたいなというのはありますね。
EMTG:KANA-BOONにしても、すごく地元を大切にしながら成長したバンドですもんね。
池辺:僕らも大阪・堺っていう場所を誇りに思ってるし、大事にしたいんです。自分たちはそこで育つべきなんだというか。関西から何かを発信していきたいですね。
EMTG:その第一歩となる作品がミニアルバム『Image』になるわけですけど、初の全国流通盤に向けて、どんな想いで作りましたか?
吉田:今までの自分らの集大成を見せたいなと思って作品を作りましたね。
池辺:3年ぐらい前からやっている「忘れもの」っていう曲含め、新曲「私はあなたを卒業する」以外は全曲アレンジし直して、新録しています。これは狙ってやったわけじゃないんですけど、曲順として、いちばん新しい曲「私はあなたを卒業する」が1曲目にあって、いちばん古い「忘れもの」が最後に入るっていう。結果的に集大成らしい感じになりました。
落合:新しいものを作るっていうよりは、今まで自分がやってきたものを見てほしいっていう気持ちですね。アレンジは変えたりしたんですけど。まずは、今までの僕らはこういうことをやってきたんですっていう自己紹介をして、進んでいきたかったんです。
EMTG:1曲目の「私はあなたを卒業する」はリード曲にもなっていて、ちょっとドキッとするくらいストレートに女の子の気持ちを綴った曲ですね。
吉田:曲を作ってる時に、タイムリーに曲の歌詞のような出来事があって。これ、曲にできるぞと思って書きました。もともと私は、具体的なことを書くのが苦手で、すごく抽象的に書いてしまう癖があって。最初は「私はあなたを卒業する」っていうタイトルじゃなかったんですよ。ふわっとしたタイトルで。それを、メンバーに見せたら「わかりにくい」って言われたんです。それで最初に聴いた時に、はっとする歌詞に書き直しました。
EMTG:より具体的に書いたことで、発見したことはありましたか?
吉田:やっぱりライブでやった時に、お客さんが「私はあなたを卒業する」っていう、その一言がすごい刺さるって言ってくれるので、伝わって作って良かったと思いますね。
EMTG:男性陣は、この曲についてどうですか?
池辺:こんなに苦しそうに曲を作る吉田明日香を見たのは初めてでしたね。でも、そこに救いの手を差し伸べるとかはできないじゃないですか。すごくパーソナルなことなので。「僕ができることは何なんだろう?」とか思うんですけど、今はすごく吉田明日香が進化してる時なんだって考えるようにしてました。
落合:あんまり歌詞のことでアドバスとかしちゃうと、他人の要素が入っちゃうので、それは良くないと思ったんです。それよりも吉田明日香のままのがいい。だからメロディがすごく良かったので、それをずっと褒めてモチベーションをあげてましたね。
吉田:すごく声をかけてもらいましたね。優しく(笑)。
EMTG:さっき吉田明日香の進化という話がありましたけど、そのあたり具体的に言うと?
池辺:歌詞の具体性もそうなんですけど、ちゃんとお客さんに向けてライブをやるようになってきてるんです。それが普通なんでしょうけど、今まではできなかったんですよ。自分をふわっと見てくれたらいいっていうのがあったみたいで。でも、「私はあなたを卒業する」ができてからは、何かを3分で伝えるんじゃなくて、一言で伝えることを意識してるみたいで。たぶん本人もいろいろと悩んだ結果、そこに辿り着いたんだと思うんです。いろんな人に見られる中で、ARKSっていうバンド、吉田明日香っていう人間をもっと見てほしいっていうような、はっきりとした意志が芽生えてきたんだと思います。
吉田:涼真さんが言ってくれたとおり、特に「私はあなたを卒業する」ができてから、大切なことをストレートに言ったら、こんなにも相手に伝わるんだっていうのを知ったんです。そこからMCでも伝えいたいことをバッと言うようにしてますね。
EMTG:ミニアルバムの中では「さよなら三角、夢見た四角」という曲が良かったです。ユニークな言葉遊びの中に夢への葛藤が詰まってて。涼真くんの作詞ですね。
池辺:この曲は就職をするかバンドをやるかっていう時期に書いた曲です。夢の狭間でいられる時間って短いんだなっていうことを感じたんですよね。1番の歌詞で出てくる《夜更けに駅から街まで歩く》ってところは、社会に出て行った人たちと、バンドマンの自分が正反対の時間を生きてる感じを書いたんです。サラリーマンになりたいって言えるぐらい強い人間になれたらなっていう。でも好きなことをあきらめられない、この強い気持ちをどうしたらいいんだろうっていう想いで書きました。
EMTG:ふたりはこの歌には共感できる部分が多いんじゃないですか?
吉田:もらった時に、「あ、きっとこういう気持ちで、こういう時に書いたんだろうな」っていうのがすごく想像できましたね。わかるよって。
落合:人生の中で、正解はないのに答えを出さなきゃいけないことってあると思うんです。でも、悩むことは許されるんですよね。
EMTG:やっぱり高校~大学時代に作った曲だからでしょうね。将来について大切なものは何だろう?っていうのをいちばん悩むときだから。
池辺:そうですね。それは「忘れもの」っていう歌詞にすごく出てて、《大切なものを一つにしぼれたら》っていうふうに、明日香は書いてるんですけど。
吉田:「忘れもの」の歌詞は、短大を卒業してから書きました。わたしはふたりより先に社会に出たので、音楽を本気でやっていく意志も最初に固まってはいたんです。でも、フリーターをやりながらバンドをやってて、友達が社会人になってお金を稼いでたりするのを見てたら、「自分はなにをやってるんだろう?」「でも、バンドをやりたい」っていう葛藤がすごくあって。その想いを曲にできたなと思います。
EMTG:この先、ARKSはどんどん進化していくと思うんですけど、この『image』という作品は、今しかない葛藤と衝動が詰まった作品になりましたね。
池辺:本当にそうですね。ARKSのストーリーが詰まった、その瞬間を閉じ込めたミニアルバムになりました。これで昔のARKSは一区切り。ひとつ終わったので、次のARKSにつなげるスタートができたと思います。たくさんの人に聴いてほしいですし、是非ワンマンライブにも来ていただきたいです!

【取材・文:秦 理恵】

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リリース情報

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2016年03月09日

Village Again Association/respire

1.私はあなたを卒業する
2.you
3.魔法にかかったまま
4.キラキラした街
5.さよなら三角、夢見た四角
6.忘れもの

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お知らせ

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●吉田明日香(Vo・G)
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おっちょしか運転ができないので、移動では何回も休憩しないとダメなんですよ。で、浜松とか海老名はもう何回も入ってるから飽きてきてて(笑)。「新しい良いところはないかな?」と思って探しました。「こんなとこあるんや!」って発見がありました。

●落合祐葉(B)
ベースアンプ

僕ら、まだ機材を揃えられてなくて、アンプとかは一切ないんです。だから未来の自分に投資だと思って(笑)、高くても買おうかなと思って調べてます。

●池辺涼真(Dr)
東京  下北沢  家賃

まだ全然気が早いんですけど。単純に「いくらぐらいなんだろう?」っていう興味ですね。駅から20分ぐらい離れれば、5~6万円の物件もあって。これなら現実味があるかなって嬉しくなりました。「下北に住んでる」って言ってみたいです。


■ライブ情報

ARKS&BAR LOFT企画「MAGIC HOUR vol.1 ~1st mini album『Image』リリース記念~」
2016/03/28(月)東京 新宿LOFT (BAR LOUNGE)
出演:ARKS / ヤバイT シャツ屋さん/みるきーうぇい/waybee
2016/04/08(金)大阪 心斎橋pangea
出演:ARKS / さしすせそズ / リコチェットマイガール

ワンマンライブ「Image」
2016/06/17(金) 東京 下北沢SHELTER
2016/06/26(日) 大阪 南堀江Knave

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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