新世代ロックバンド・パノラマパナマタウンが追及してきた音楽のスタイルとは?

パノラマパナマタウン | 2016.04.05

 神戸に最高にかっこいいロックバンドが現れた。パノラマパナマタウン。ヒップホップやファンク、ガレージロックや00年代の邦楽ロックなど、メンバーが大好きだという音楽の影響を本能の赴くままに飼い慣らす新世代ロックバンド。そのライヴパフォーマンスは不敵の一言だ。結成わずか3年、平均年齢21歳だが、すでに有名オーディションで優勝を果たした実績もある。その評価以前に、彼らは自分たちが鳴らす音楽に絶対的な自信を持っていた。まずは彼らが3月2日にリリースした初の全国流通盤『SHINKAICHI』を聴いてほしい。その剥き出しの感性にはロックの未来を託したくなる何かを感じるはずだ。

EMTG:パノパナの作品からはジャンルを超えた音楽性を感じますけど、それぞれが影響を受けた音楽、衝撃を受けた音楽はどんなものでしたか?
岩渕想太(Vo・G):ナンバーガールです。あとは、くるり、ゆらゆら帝国、中村一義とかスーパーカーみたいな00年代の邦楽ロックですね。高校の時はそういうのが大好きでした。やっぱり向井秀徳っていう人が衝撃で。それこそ向井さんにもピクシーズとか由来はあるんだろうけど、向井さんはそういうバンドをよりポップに咀嚼してる。邦楽ロックに落とし込んでるっていう印象を受けてるんです。それはナンバーガールからZAZEN BOYSへの変化もそうですけど。よりポップになっていくのがすごい好きですね。だから、僕はそういう音楽をもっとポップにしたいと思って作ってるんです。
EMTG:まずナンバーガールがあって、そこから洋楽を掘り下げる聴き方をしたんですか?
岩渕:そうですね。ジョイ・ディヴィジョンとか、2000年代のリヴァティーンズとかストロークスはすごく好きです。
EMTG:そのあたりは今回のミニアルバムの表題曲「SHINKAICHI」によく出てる。
岩渕:「SHINKAICHI」は、今回のミニアルバムでいちばん新しい曲なんですけど、ガレージロックに寄せてるんですよ。昔の曲のほうが、ゼロ年代(2000年代)邦楽ロック寄りなフェイクな展開とか変え方をしてて。2曲目の「いい趣味してるね」もガレージロック寄りですね。
EMTG:「いい趣味してるね」はそれ以外にも、ハードコアっぽい展開にもなるし。
岩渕:ヒップホップの感じもありますよね。日本のラップが好きなんですよ。BUDDHA BRAND(ブッダブランド)とか、いとうせいこうさんとか。日本語ラップが始まりたてのよくわからない空気感というか、ナード感みたいなものを入れたいんです。でも、意識して何かを取り入れてるという感じではないと思います。あらゆる音楽のこことここを引っ張ってっていうよりも、聴いてきた音楽がそのまま出てるって感じですね。
EMTG:他のメンバーはどういう音楽を聴いてきましたか?
田村夢希(Dr):僕はNICO Touches the Wallsです。「そのTAXI,160km/h」とか「泥んこドビー」とかインディーズ時代の曲を中学高校ぐらいの時に聴いてて。その前はミスチル(Mr.Children)とかが好きだったんですけど、(NICOは)サビもないし、無茶苦茶やなと思って。でもキャッチーなところもあって、かっこよくて衝撃でしたね。あとはACIDMANとか。初期衝動みたいなものを感じるバンドが面白いなと思ってました。
EMTG:浪越くんは?
浪越康平(G):僕もガツンときたのはナンバーガールです。最初、高校の時に聴いた時は何も思わなかったんですけど、大学に入った時にもう1回聴いてみたら、「なんだこれは!」って衝撃を受けました。たぶん高校生の時にナンバーガール単体で聴いた時に何も思わなかったのは、基準がなかったから。高校時代にギターを始めて、ロックの主流みたいな歌ものとか踊らせる系とかをいっぱい聴いて、それからナンバーガールに帰ってきた時に、「これはおかしいぞ」ってすごい衝撃を受けたんですよね。
田野明彦(B) :僕はアジカン(ASIAN KUNG-FU GENERATION)とかバンプ(BUMP OF CHICKEN)とかを小中ぐらいで聴いて、バンドに興味を持ったんです。それで、中3の終わりぐらいに最初はギターを始めたんですけど。高校の最初にクラムボンを聴いた時に、めちゃくちゃ衝撃を受けて。クラムボンの実験的なところ、あの3人編成で、すごくいろいろなことをやってる。掴めないんですよね。ベースのミトさんが、ポエトリーリーディングをやってる曲とかもあって、ベーシストという存在の固定観念が自分の中で崩れたんです。それが興味をを持ち始めたきっかけでした。
EMTG:他のメンバーが楽器を持ったきっかけは?
田村:僕は(ドラムが)余ってたから。
EMTG:ドラマーにありがちな(笑)。
岩渕:BUMP OF CHICKEN で有名なやつですね(笑)。
浪越:僕は『けいおん!』。
岩渕:僕も『けいおん!』です。
EMTG:基本ルーツはバラバラなバンドだけど、岩渕くんと浪越ふたりは似てますね?
岩渕:バンド内ではいちばん趣味が似てると思います。逆にたぶん夢希が好きな音楽、NICO Touches the Wallsとかミスチル、ACIDMANはあんまり聴いたことないんですよ。
EMTG:じゃあ、メンバーとして一緒にバンドをやってる共通点って何だと思いますか?
岩渕:やっぱり他にないことをしたいってことかな?
田野:最近聴いて良いと感じるものは似てるんよね。
岩渕:対バン相手の曲でも「良い」って思うのは絶対に4人同じ。
田野:大体、変なことしてるバンドっていう。
岩渕:でも変な部分に尖り過ぎて、前衛的過ぎると、俺だけ「良い」って言っとって、メンバーは「良くない」って言う時もたまにある(笑)。
浪越:たぶん、僕らには「変なこと」っていうのがキーワードにはなってるけど、僕らは変なことをやりたいって言うよりは、普通のことをやるのはダサいと思うんですよ。だから、変なことをやるのが普通っていう気持ちなんです。
岩渕:うん。奇を衒いたいってことは一切思ってないよな。
EMTG:わかりました。いまメンバーは全員大学生?
岩渕:3回生です。大学の軽音部で出会ってバンドを組みました。
EMTG:まだ、結成して3年目だそうですけど、すでにロッキングオンとかMASH A&Rのオーディションで優勝している。この状況はどう思ってますか?
岩渕:びっくりしてます。優勝するとは思ってませんからね。でも、これはあんまり言うと怒られるかもしれないけど、優勝っていうところに辿り着くとは思わないんですけど、他にエントリーしてるバンドの音源を聴けるじゃないですか。あれを片っ端から聴いてると、「これならいける」と思うんです。メンバーともよく話してたんですけど。
田野:「俺らがいちばんかっこいい」ってね。
EMTG:誰よりも自分たちがかっこいい自負があるのに、優勝するとは思わないって、自信があるんだか、ないんだかわからないね。
岩渕:相対的に見ると自信は出てくるんですけど、優勝するとは思えなかったですね。
EMTG:で、今回リリースされる『SHINKAICHI』は初の全国流通盤ですけど、どういう意気込みで作りましたか?
岩渕:僕たちの名刺代わりの1枚になるから、いまの自分たちを端から端まで出したいと思って作りました。コンセプトでまとめたくない、というか。雑多なことがコンセプトですね。1枚目に1個の側面しか出さないよりも、いろんな面を出したほうが次に何が起きるんだろうっていう面白さが出ると思ったんです。だから、「SHINKAICHI」っていうタイトルも、(神戸の)新開地っていう街がいろんなものが混じってるところだから、そういう雑多なものを肯定したいっていうところからつけたんです。
EMTG:そこはメンバーの故郷とか思い入れのある場所なんですか?
田野:いや、地元はバラバラです。いま下宿してるところの近くですね。神戸の端にあるんですけど、関西に住んでる人なら誰でも知ってる場所なんですよ。
岩渕:神戸の都会って言ったら、三ノ宮だけど、三ノ宮が都会になる前に都会だったところなんです。だからいまは衰退してきてて、競艇場があって飲み屋があって……。
田野:漢字は「新」なのにね。
EMTG:新しく開拓した当時の名残なんでしょうね。
岩渕:そこが面白いところですよね。いまは廃れてて錆びれてるけど、「新しく開く土地」っていう。僕らがやろうとしてるのも、昔の音楽とか、いま流行ってるものじゃないものが、新しいロックになるのかなっていうことなので。1周まわった回帰感も合うなと思ったんです。都会的に洗練される前の、廃れてる新しさ。そういう表現が良いんですよ。
EMTG:それが、まさにパノパナがいまやりたい音楽であると。
岩渕:そうですね。
EMTG:すでに発売から1ヵ月が経ちますけど、全国流通を出してみて反応はありました?
岩渕:日本全国の、たとえば北海道の端のほうの人とかも反応してくれるのがすごくうれしいです。全国流通のスゴさを思い知ってます(笑)。めちゃくちゃ良いアルバムができたので、いろんな人に聴いてほしくて。別にみんなに届けたいとは思わないんですけど、届くべき人には届てほしい。きっと今回の作品を求めてる人がいると思うんです。
EMTG:求めている人……、そのヒントは歌詞にありますね。「いい趣味してるね」に《いかんせん単純な歌》ってフレーズがあったり、「クラリス」に《くだらない音楽を》って出てきたり、既存の音楽に少し退屈を感じてる人に届いてほしい?
岩渕:やっぱりいまってジャンル分けしたがるなと思うんです。シティポップっていう流れに括りたがる、とか。邦楽4つ打ちロックに対するアンチテーゼとしてのシティポップ。ただ踊りたいだけの人と、ただ踊りたいだけじゃない人、みたいな。わかりやす過ぎる二項対立みたいなのがすごく苦手で。そうなると聴く人も自分がどっちなのか選択せざるを得なくなるんですよね。でも、どっちになる必要もない。雑多でいいんだよ。その雑多な、なんとなくこれが好きっていう気持ちにズバッとハマれば良いなと思ってるんです。
EMTG:ちなみにパノパナって、「自分たちはこういうバンドなんです」っていう時は、どういうふうに名乗ってるんですか?
岩淵:さっき下北沢のクレープ屋さんのおばちゃんに「何のバンドやってるの?」って聞かれたんですけど、「ラップみたいなの」って答えたんです(笑)。
EMTG:あはははは!それだいぶ違うの想像されちゃうね。
田野:難しいよな。
岩渕:ラップとロックの融合って言ったら、Dragon Ashみたいな、ミクスチャーが念頭に来ると思うんですけど、それとも違うんですよね。何て言ったらいいのな、ガレージロックを基調としながら、日本語ラップ的なフローを使いつつ……みたいな感じ?
田野:だから、聴いてもらわんとどうしようもないんです。

【取材・文:秦理絵】

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ビデオコメント

リリース情報

SHINKAICHI

SHINKAICHI

2016年03月02日

JACKMAN RECORDS

1. SHINKAICHI
2. いい趣味してるね
3. とりこまれる
4. クラリス
5. 世界最後になる歌は

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お知らせ

■ライブ情報

COMIN’KOBE16
2016/05/07(土) 神戸ワールド記念ホール、神戸国際展示場1号館、2号館、3号館の4会場同時開催

VIVA LA ROCK 2016
2016/05/29(日) さいたまスーパーアリーナ

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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