メジャーデビュー=“朝焼け”。 SHE’Sがメジャー第一弾シングル『Morning Glow』に込めたメッセージとは。

SHE’S | 2016.05.27

 大阪出身の4人組ピアノロックバンド、SHE’Sがいよいよ6月8日にメジャーデビューを果たす。ソングライティングを手がける井上竜馬(Vo)による卓越したメロディセンスもさることながら、何よりも洋楽に大きな影響を受けてきたという、美しくも躍動感のあるサウンドスケープが魅力の彼ら。メジャー第一弾シングルは、日本語で“朝焼け”を意味する「Morning Glow」と名づけた。《変わらずに変わってきたんだ》という歌詞は、バンド結成から悔しさを噛みしめながら歩み続けた5年間への想いを馳せて綴ったもの。「信じたものは間違ってなかった」「朝焼けはきっと来る」。いまだからこそ胸を張って伝えられるという熱いメッセージを携えて、ここからSHE’Sの夜明けの旅が始まる。

EMTG:ついにメジャーデビューです。3月に開催された渋谷クアトロのワンマンライブでは、お客さんの前でメジャーデビューを発表したときに泣いてましたけど?
井上:いやー、気のせいですよ(笑)。
EMTG:泣いてましたよ(笑)。ちょっと意外だなと思いました。
井上:うん、「泣くんだ、俺」って感じでした(笑)。
EMTG:どういう涙だったんですか?うれし涙?
井上:うれしさ……ではないんですよね。「ありがとうな」ですね、完全に。目の前にいたお客さんがめっちゃ良い顔をしてたし。バンドを始めた5年前から、ずっと応援してくれてた人たちが目の前にいて。その愛情のデカさに、ぐっとき過ぎたというか。あの場所ではもう「ありがとう」でしかなかったし。(気持ちを)持って行かれましたね。
EMTG:改めてSHE’Sのインディーズ時代を振り返ってみて、どう感じてますか?
井上:パッと見は順風満帆な活動に見えるんかなとは思うんですけど、そのなかでも、もどかしい日々が多かったですね。とくに「閃光ライオット」に出て、少し知名度があがったころは(結成の翌年に出場した「閃光ライオット 2012」でファイナリストに選出された)、それで引っこ抜かれてデビューできたわけでもないし。ずっと会場限定のCDを売って、車中泊でライブしてっていうのは当たり前のようにやってたので。もちろん楽ではなかったけど、でも信じるしかないなと思って進んできたんです。
EMTG:それでも信じるしかないってやってこれた理由は何でしたか?
井上:いちばんはお客さんですけど、あとは単純に自分が自分の音楽のファンだっていうのも大きくて。自分の曲に励まされる部分もあった……と言うか、最初はそれ目的でしか曲を書いてなかったんです。すごく内省的でしたね。それが、少しお客さんが少しずつ増えていくなかで、書くことも変わってきて。何回も辞めようと思ったけど、まだメジャーデビューもしてないのに諦めるなと思って、やってこれた感じです。
EMTG:今回のメジャーデビューシングル「Morning Glow」には、まさにそういう不安とか悔しさもあったバンドのヒストリーを彷彿とさせる歌詞だなと思ったんですね。
井上:やっぱりメジャーデビューって自分たちのなかでも待望やし、ひとつの指標としてがんばってきたものだから、ここでちゃんといままでのことを歌いたかったんです。自分が信じてきたものは間違ってなかったということを歌いたかった。同じように、そのときに辛くても、なんとなく信じられるものがあったら、絶対に信じてやったほうがいいよってことをここで伝えられたら、いちばん伝わるんじゃないかなと思ったんです。これを3枚目(のシングル)で歌っても、「いま!?」ってなってしまうので(笑)。
EMTG:歌詞の話から訊きましたけど、サウンドのほうも「Morning Glow」の意味そのままに、朝焼け、夜明け、「ここから始まっていくんだ!」っていうのが伝わってきます。
井上:僕のなかではメジャー一発目がイコール朝焼けって勝手に認識してたんですよね。だから、この曲はイントロからケツまで、ドラムのリズムにしてもシンセにしても、すごくイメージがあったんです。無意識のうちに、Morning Glow(朝焼け)を描こうとしてたんですよね。こういうのって、「あ、こういうふうに思ってたんだな、あのときの俺」っていうのは、あとになって気づくことが多くて。じんわり開けていく感じっていうのを書きたいんやろうなって、あとから気づいたんです。それが朝焼けだった。最初はメジャーシングルだけに景気よくアッパーでいこう、ぐらいのテーマだったんですけどね。
EMTG:SHE’Sの曲って、もちろん日本語で歌ってるから歌詞もすごく大切にしてるのはわかるけど、そもそも音だけでもすごくイメージが湧きますよね。
井上:そうですね。この曲の場合だったら、歌詞がついてない状態でメロとバックの演奏だけ聴いても、きっと朝焼けを想像できると思うんですよ。逆に、歌詞を先に読んで、音を聴いても違和感がないと思います。とくにイントロなんかは、早送りのタイムラプスの映像でどんどん太陽があがっていく様子を全部音で表現していく感じですからね。
EMTG:そういう音作りは意図的にやってるんですか?
井上:この曲の場合はやってますね。たとえば、「Evergreen」(『WHERE IS SHE?』に収録)だったら、絶対に歌がなくても、「森におるんやろうな」って思わせなきゃなあかんと思うし。実際に、森を歩きながら作った曲なんです。洋楽を聴いてると、「この曲は何を歌ってるんやろ?」と思ったときに、言葉はわからなくても、何か情景が思い浮かぶ曲って圧倒的に多いんですよ。それはサウンドメイクとフレーズでしかないので。そういうものを作り出せたら最強やなと思ってるので、そこは意図的に出していこうと思ってます。
EMTG:わかりました。では、2曲目の「日曜日の観覧車」の話を。ミディアムテンポで歌い方も落ち着いた感じで、表題曲とは違う表情を見せますね。
井上:この曲はミディアムポップで、ちょっと海外っぽいポップスを作ろうと思って始めた曲ですね。でも、こんなに自分のなかで真っ直ぐなポップスになると思ってなかった。もっと、いつも通りのつもりだったんですけど。作りながらリズムも変わって、オルガンも入ったりして、どんどんブラッシュアップしていったので面白かったです。
EMTG:レコーディングも楽しみながらできました?
井上:楽しかったです。テイクはめっちゃこだわりましたけどね。2番の最後の間奏部分に珍しくキメがあったりする曲やったんで、メンバーもみんなこだわってましたよ。ベースなんか200回くらい録ってましたから(笑)。
EMTG:何かイメージする正解の音があって、それにみんなが向かっていく感じ?
井上:そうなんです。僕のイメージはいつもメンバーに言っても、ほんま当てになんないんですけど……(笑)。おおまかに言うと、おもちゃ箱にしたいっていうイメージがあって。情景的には、外国人でも、日本人でも、小っちゃい女の子から大人までが、みなとみらいの街路地を楽しそうに歩いてるような感じ。でも、そこには、その都市の人たちのドラマがあって、各々の記憶の観覧車がまわっていくっていう、そんな感じです。
EMTG:すごく景色が思い浮かびます。歌詞に観覧車をモチーフにしたのは?
井上:僕、観覧車にすごい憧れがあったんですよ。それで、去年初めて乗ったんですけど。なんて言うか……記憶の仕組みと観覧車って似てるなと思ったんですね。1個乗ると、1個出ていく。そのなかに、大きな記憶とか小さな記憶とか、感情を伴った思い出がずーっと何周も回っていくんじゃない?っていう……。で、逆に眠った記憶も、ふとした音楽とか言葉で一気にバーッて蘇って、もう1周することもある。そうやって何回も周るうちに、記憶が思い出に変わっていくっていう。観覧車を見て、そんなふうに思ったんです。
EMTG:観覧車を見ても、わたしはそんなこと考えたこともない(笑)。
井上:あ、でも、こんな曲の作り方をしたのは初めてです(笑)。他のものを見ても、「何々みたいやな」で終わっちゃうし。でも、観覧車には、ずっと昔から惹かれる理由は何かあるのかなと思って、掘り下げていった感じですね。
EMTG:そして、3曲目「Time To Dive」には、表題曲の「Morning Glow」と似た、熱くて前向きなメッセージを感じました。
井上:そうですね。この曲はアッパーで、ライブで盛り上がるようなっていう、ちょっと前のSHE’Sで始めたことを、そのまんまシングルでも入れたくて作った曲です。歌詞は「Morning Glow」と「日曜日の観覧車」を作ったうえで書いたんですけど、その2曲が過去と現在の曲なんですね。それで、「あ、時間軸がふたつある」と思って。それで、どうせなら、その双方で歌ってることを踏まえて、「Time To Dive」では、これからのやり方とか生き方っていう未来に繋がるような歌にしようと思ったんです。それが、《後悔しない選択なんてないよ》とか、《衝動的で根拠もないけど “なんとなく”を信じよう》っていうフレーズに詰まってるかなとは思うんですけど。どうせ未来のことなんて、わからへんまま、いままで足掻いてきたし、足掻いてきた結果、こうやってうまくいったこともあるし、いかへんこともあるから。「まあ、恐れずに何でもやんなさいや」っていう曲ですね。
EMTG:サウンド的にはピアノとギターとベースとドラムだけっていう、3曲のなかではいちばんシンプルでロックな感じですね。
井上:イメージとしては、ロードオブメジャーみたいな曲にしたかったんですよ。直球で、めっちゃ清々しく、アニソン級にみんなで歌えるっていうテーマもありましたね。
EMTG:それにしても、さすがインディーズ時代に三部作を残したSHE’Sらしい、きれいにまとまったシングルじゃないですか。
井上:本当ですね。なんか(三部作に)捉われてるんですかね(笑)?
EMTG:作品にいろいろと意味づけするのが好きなんじゃない?性格的に。
井上:そうですね。自分でいちばん気持ち良いんやろなと思います。これがちゃんと伝わればうれしいですね。あとは、ライブでどれだけ良い演奏をするかで、たぶん、この曲たちもどんどん変わっていくと思ってます。
EMTG:メジャー1年目はどんな年にしたいと思っていますか?
井上:単純に応援してくれる関係者が増えて、良いものを一緒に作ってくれる人が増えたので、あとは僕たちは良いライブをするしかないなと思ってます。聴いてる側は1年目とかも関係ないですしね。よく言うじゃないですか。「ご飯を食べに来てる人たちには、調理するのがバイトだろうが、コックだろうが一緒や」って。そういう感覚ですね。いま前線で活躍してる人のライブをもっとたくさん見て、いっぱい吸収して、1年目だろうが2年目だろうが、負けず劣らず「良いライブをしたな」って思わせられるようにがんばりたいです。

【取材・文:秦 理絵】

tag一覧 シングル 男性ボーカル SHE’S

ビデオコメント

リリース情報

Morning Glow(初回生産限定盤)[CD+DVD]

Morning Glow(初回生産限定盤)[CD+DVD]

2016年06月08日

ユニバーサル ミュージック

[CD]
1. Morning Glow
2. 日曜日の観覧車
3. Time To Dive

[DVD]
Live Footage “She’ll be fine -chapter. 0- at Shibuya Club Quattro, 3.14.2016”
メジャーデビューを宣言した感動のMCを含む東京公演を収録したダイジェスト・ライブムービー(全5曲収録予定)

お知らせ

■ライブ情報

SHE’S Major Debut Single「Morning Glow」RELEASE TOUR
〜The Everglow -chapter.1-〜

2016/07/20(水) shibuya CLUB QUATTRO
2016/07/26(火) NAGOYA CLUB QUATTRO
2016/07/28(木) UMEDA CLUB QUATTRO

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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