Anly 3rdシングル「EMERGENCY」を発表

Anly | 2016.06.15

 沖縄の離島・伊江島出身のシンガー・ソングライター、Anlyが、あたたかさと切なさの混ざり合ったスローなシングル「笑顔/いいの」からわずか3ヶ月で、早くも3rdシングル「EMERGENCY」を発表する。この曲はフジテレビ系ドラマ『僕のヤバイ妻』のオープニングテーマに使われて既に話題になっているハードなギター・ロック。Anlyの伸びやかなハイトーンボイスにスリルと野太さを持ちながら絡むギターは、The Birthdayの藤井謙二が弾いている。彼女自身のルーツが滲み出ているこの曲に加え、2曲のカップリングのうち1曲ではレッド・ツェッペリン「天国への階段」を弾き語りでカヴァーしているのもトピックのひとつと言えるだろう。Anlyに話を聞いた。

EMTG:「笑顔/いいの」から3ヶ月で早くもニューシングル。いいペースですね。
Anly:まだ始めたばかりなのでこのペースが自分に合ってるかわからないですけど、自分の曲がどんどん世の中に出ていくのはやっぱり嬉しいですね。
EMTG:2ndシングル「笑顔/いいの」の反響はどうでした?
Anly:「笑顔」は未だに聴いて好きになってくれる人がたくさんいて、ジワジワ広がっていく曲なんだなって思いました。私自身もどんどん「いい曲だな」って思えてくるんです。「いいの」は、私の高校時代の想いに学生さんたちが共感してくださって。嬉しかったですね。
EMTG:2曲ともジワジワ広がっていって、聴くほどに味わいが滲み出る曲なんでしょうね。それに対して今回の新曲「EMERGENCY」は、ジワジワというよりはガツンとくる感じで。
Anly:はい。ガツンと。「笑顔」を歌ってた人だとは思われないかもしれない(笑)
EMTG:ヒリヒリするような粗くてハードなギター・ロック・サウンドの曲で。かなり振り切ってますよね。
Anly:そうですね。自分が小さい頃から聴いてきた60年代や70年代のロック、例えばZZトップとか、そういうバンドの影響が滲み出てる楽曲だなと思います。もともとZZトップみたいな曲を書きたいというところからデモを考えていたんですよ。
EMTG:あ、そうなんですね。それはスタッフにも伝えていたんですか?
Anly:言ってなかったんですけど、デモを聴いた人に「Anlyちゃんの好きそうなロックの音だね」と言われていたので、「この雰囲気で完成させたいんです」って話をして。
EMTG:前々から思っていたことを早くも実現させることができた。
Anly:はい。思い描いていたビジョンを形にすることができたというか。実際、フェスでもエレキギターを弾きながらこの曲を披露していたので。エレキギターを弾いてる姿を見せること自体、そのフェスが初めてだったのでドキドキしたんですけど、みんな盛り上がってくれて嬉しかったです。エレキギターでやる曲はこれからもっと増やしていきたいですね。
EMTG:この曲「EMERGENCY」はドラマ『僕のヤバイ妻』のオープニングテーマとして流れている曲ですが、歌詞はそのドラマに合わせて書いたわけですよね。
Anly:そうです。ドラマの台本をいただいて書き下ろした歌詞で。19歳の私には理解し難い夫婦間の話のドラマなので、すごく悩みましたね。奥さんはただただ自分を愛してほしい。でも旦那さんはちょっと違うことで愛をはかっている。私は本当の自分を愛してほしいんだという奥さんの心情を、どうにか19歳の自分らしい言葉で表現できないかと考えてやってみたんですけど。
EMTG:かなり特殊な関係性だから、なかなか想像し難いでしょ?
Anly:想像できなかったですね。私の回りにいた沖縄のご夫婦はみんなほのぼのしてたし(笑)。でも、ドラマのために歌詞を書き下ろすのは、自分が絶対に会えない人のことや、経験できないことを書けて、それがまた自分に戻ってくる面白さがあるなと思ってて。
EMTG:そうですよね。でも、なかなか想像し難いそういう主題を、どう自分らしく捉えようと思ったんですか?
Anly:奥さんの愛に対する考えを、自分の夢に置き換えてみたらどうかなって。歌に対してひたむきな気持ちで頑張ってた自分の気持ちが、いつのまにか状況に慣れてしまって薄らいでいくみたいなことって、なくはないと思うんですよ。例えば夢じゃなくても……。
EMTG:情熱とか?
Anly:そう、情熱。情熱がいつのまにか薄れてきてしまって、誰かに文句を言うようになったり。いまの自分には考えられないことですけど、でもそういうのってありうることだなって。それは自分にとっての非常事態なわけで。そんなことを想像して書きました。
EMTG:「どうして気づかないの?  Why Why Why Why can’t you see?」って苛立つようなことは、Anlyさんも過去にあったりしました?
Anly:ああ、ありましたね。私は学校でよくリーダーをすることが多くて。文化祭的なもののまとめ役をしていて、“どうして気づいてくれないの?”って思うことが多かった。“いま話してるんだけどなぁ”“またあとから聞きにくるのかなぁ”みたいな(笑)。いま考えると小さなことですけど、そのときは一生懸命だったから“なんとか気づいてもらいたいな”って思っていたんですよね。
EMTG:なんらかの方法で、とにかく気づかせようと。
Anly:そう。でもなぜか悪者になる私、みたいな(苦笑)
EMTG:そういう経験も反映されているわけですね(笑)。あと、このフレーズが書けてよかったなって思えたところとかはあります?
Anly:英語なんですけど、「why don’t you come back?」って3回続いて、「I’m gonna give you」って続くところ。そういう部分は自分でも歌っていて楽しいというか。レコーディングのときも自然に歌ってたんですけど、英語の発音がなんだか南部訛りみたいになって。面白いからそのまま残したんですけど、そこが自分でこの曲を聴くときの楽しみのピークになってますね。最近、インストアイベントでもこの曲を歌ってますけど、歌っていて、ここが一番楽しいです。
EMTG:どうして南部訛りっぽくなったんですかね?
Anly:わからないです(笑)。なぜか、そうなっちゃって。でも、この前も(エリック・)クラプトンを聴いていて思ったんですけど、だいたい自分が好きだなって思う音楽は南部寄りのブルーズだったりするから、そのせいかも。
EMTG:なるほど。何気にAnlyさんのルーツがそうやって出ているのが面白いですね。で、この曲は野太いギターのリフも耳に残る。The Birthdayの藤井謙二さんが参加してギターを弾いてますが、プロデューサーの根岸(考旨)さんの紹介なんですか?
Anly:そうです。根岸さんが「今日はかっこいいギターを弾く人を連れてきたから」って言うから、「誰ですか?」って言ったら、「この人!」って紹介されました(笑)。ギターソロの部分は何度か弾いていただいたんですけど、やっぱり何も考えずに自由に弾いてるファースト・テイクが一番いいねって根岸さんも私も思って、それを選びました。型にハマってないソロで、昔のロックみたいに、いい感じで後ろにずれてる。その、もたり具合がいいなって。
EMTG:ルーズな感じ。
Anly:そうそう、ルーズな感じ。そこが私好みだったんです。
EMTG:全体的にドライブ感があって、かっこいいバンド・サウンドになってますよね。
Anly:はい。バンド・レコーディングで、せーの!で録ったので、そのよさが出たかなと。
EMTG:ヴォーカルに関してはどんなことを意識しましたか?
Anly:サウンドがかっこいいので、それに合わせて気持ちをガーっと。っていうところもあるんですけど、自分もちょっとルーズな雰囲気で歌ってみようというのもあって。メロディにハメすぎず、ちょっと後ろめというか。昔のロックの人が歌うような雰囲気を意識しましたね。
EMTG:ジャニス(・ジョプリン)とか?
Anly:あ、そうそう、ジャニスのことは考えました。ああいう雰囲気で、ロックのなかにあるソウルを込められたらいいなと。あと、レッド・ツェッペリンのロバート・プラントとか。最後の盛り上がりのところは、どこまで自分の声が出せるか、実験的な感じでやってみました。ノッてきたら想像してたよりも声が出た(笑)
EMTG:「そう信じたーーい。イエ~~」っていうシャウトですね。
Anly:あれは出しながら自分でもビックリしましたね(笑)。こんなに出るんだ?!って。
EMTG:これを歌うにあたって大事なのは、思いきって狂うことですよね。“良い子のAnlyちゃん”だとリアリティがないわけで。
Anly:あ、そうそう。ちょっとネジを外さないと。狂いたかったんです(笑)
EMTG:いい感じで狂えました?
Anly:一回目に歌ったときはネジが外れなくて、もっと自由に歌えばいいんだって思って歌い直しました。“本当は真面目なんだろ”って思われちゃダメですからね。“意外と狂うんだな”って思わせないと(笑)
EMTG:ミュージックビデオもかっこいい。“やばい”表情を見せてますよね。
Anly:はい。ちょっと頭振ってみました。あははは。
EMTG:続いてカップリングに収録された「虹」ですが、こちらはまた「EMERGENCY」とはうってかわって、ウエストコースト・ロックのような爽やかなタッチですね。
Anly:そうですね。イーグルスっぽい感じの。この曲も根岸さんにプロデュースしていただいたんですけど、根岸さんの中にイーグルスの「テイク・イット・イージー」のようなサウンドがイメージとしてあって。
EMTG:なるほど。
Anly:実はこの曲、自分がシンガー・ソングライターを目指して最初に作った曲なんです。それでこの爽やかさなんですけど(笑)。16歳で、シンガー・ソングライターでやっていくって決めたときに、自分の背中を押せるように書いた曲なんですけど、聞いた人が元気になるといいな、と言う気持ちも同時にあって、その両方からこの歌詞を書いたんです。だから“君”っていうのは自分に置き換えることもできるし、文字通り“君”という誰かに向けて歌ってもいるし。
EMTG:16歳で書いて、レコーディングはしないでこれまでとっておいた曲なんですか?
Anly:いえ、その頃にmiwaさんのフロントアクトを沖縄でさせていただいたんですけど、その時にスタッフさんが「東京に来てレコーディングしてみない?」って言ってくださって、それで東京に初めて来たときにレコーディングしたのがこの曲のもともとの音源なんですよ。それは17歳のときでした。
EMTG:じゃあ、Anlyさんにとっての始まりの歌なんですね。
Anly:はい。だからいろんな思いが詰まってる曲で。それをもとにして今回は新たにヴォーカルを録り直したんですけど、でもコーラスの部分の声は17のときの自分の声なんです。だから、いまの自分と昔の自分がコラボレーションしてるような感じで。
EMTG:曲を作り始めた当初に何も意識することなく書いたからこそ、こんなにも自然で清々しいんでしょうね。作ってる感じがしないですもんね。
Anly:そうですね。そのときに思ったままを書いたというか。私は中学生の頃から歌詞を書き始めたんですけど、付箋紙にいっぱい言葉を書いてたんですよ。その中で一番輝いて感じられたのがサビのフレーズで。「君の足音は止まることのない 明日へのメロディちゃんと聞こえてる」ってところ。最初に自分で「いいかも!」って思えたところですね。
EMTG:「虹を追いかけてたころは もっと素直に言えていた」というフレーズでこの曲は始まりますが、Anlyさん自身、よく虹を追いかけたり、落ち込んで空を見上げたりしてたんですか?
Anly:はい。高校1年の頃に曲を書きためていたんですけど、それを発表する時間と場所がなくて。部活が忙しすぎて、自分のやりたいことをやれてないという葛藤があったんですね。そういうときに、“自分がちょっと勇気を出せばどこへでも歌いに行けるのに、なんで一歩踏み出せないんだ?!”って自分に対する怒りを感じていたんですけど、でも怒ってばかりいちゃ自分がかわいそうだから、自分を励ませる曲を作ろうと思って作ったんです。虹を追いかけてた頃のように素直になりたくて。
EMTG:実際、虹を追いかけたり……。
Anly:してましたね。伊江島だと虹がほぼ全部見えるので、「あの虹の足元のほうまで行ってみよう」って話して、ドライブしたり。追いかけても追いかけても辿りつかないんですけどね(笑)。でもそんなことをしてた頃って、本当に素直に「ありがとう」とか「ごめんね」とか言葉にできた。それが大人になるにつれて素直に言えなくなってしまうのはなんか悲しいなって思って、その気持ちを虹に象徴させながら書いたんです。
EMTG:それからカップリングのもう1曲は、なんとレッド・ツェッペリンのカヴァー「STAIRWAY TO HEAVEN」(「天国への階段」)。ビックリしましたよ。この曲はお父さんがお好きだったんですか?
Anly:そうですね。でも、この曲を私が歌おうと思ったきっかけは、私はインディーズの頃からいろんな洋楽をカヴァーさせてもらってて、次は叫ぶような曲をカヴァーしたいと思ったからなんですね。で、スタッフさんも「いいね」って言ってくださったんですけど、「でもギターが難しいよ」って。だけどそれでもロックを好きなら一度は通っておくべき道じゃないかなって思って、頑張ってみました。
EMTG: 昔からコピーしてたというわけではなく?
Anly:ではなかったので、二日で猛練習して覚えて。でもギターのレコーディングがやっぱりたいへんでした。一発録りにこだわったのでクリックを鳴らせなくて、徐々に終盤に向かってテンポを速めていくのも自分のなかで考えながらやって。バンドじゃなく、私のアコギ1本と歌だけなので、どうやったら自分らしい表現になるか考えながらガシガシ弾きましたね。
EMTG:歌に関して言うと、なんといっても最後のロングトーンが凄い。
Anly:どこまで息が続くかなっていうところで、自分なりに闘いを繰り広げてみました(笑)。ちょっと伸ばしすぎかなって思ったけど、それも自分が頑張った証拠だから。
EMTG:この曲を弾き語りでカヴァーしている日本のアーティストは僕が知る限りいないですし、そもそもロックの大名曲なので、かなり思い切ったなと最初は思いましたよ。でも、聴くとちゃんとAnlyさんの歌になっているのが素晴らしいですね。
Anly:ありがとうございます。いろんなことを勉強させてもらいましたね、この曲には。自分の声の使い方とか、中音域がこんなふうに出るんだっていうのも発見だったし。繰り返し歌っていくうちにもっとイメージがハッキリして、浮かんでくる映像も強くなっていくと思うので、これからもっと自分にフィットするようにたくさん歌っていきたいと思ってます。
EMTG:デビューして半年で3枚のシングルをリリースして、その度にいろんな発見をしながら、自分の可能性を広げていって。すごく充実した半年だったのでは?
Anly:本当にそうですね。早い気もするけど、すごい濃密。いろんな場所にも行かせてもらえたし。北海道にも初めて行って、積もった雪も生まれて初めて見て。テーマパークかと思いましたけど(笑)。そうやっていろんなところに行って初めて会う方々に歌を届けられるというのは、自分のなかでずっと夢見てたことだったので、それが叶えられてきて、とても充実した気持ちです!

【取材・文:内本順一】

tag一覧 Anly シングル 女性ボーカル

リリース情報

EMERGENCY(初回生産限定盤)

EMERGENCY(初回生産限定盤)

2016年06月15日

ソニー・ミュージックレコーズ

1. EMERGENCY
2. 虹
3. STAIRWAY TO HEAVEN
4. EMERGENCY -instrumental-
5. 虹 -instrumental-

ディスク:2
1. EMERGENCY (Music Video)
2. EMERGENCY (Music Video Making)

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プラバン
「プラスチック版に絵を描いてトースターに入れて小さくするプラバンに最近すごく興味があって。 友達がいろいろ作ってくれたので、自分もやってみたいと思って、よく調べてますね。 絵を描くことにハマってるので、それをプラバンでアクセサリーにしたい。 なので、材料を買ってきたりしてるんですけど、まだ肝心のトースターがないんです(笑)」
■ライブ情報

Anly〜“EMERGENCY”LIVE at SHIBUYA eggman
2016/06/28(火) SHIBUYA eggman

PEACEFUL LOVE ROCK FESTIVAL2016
2016/07/09(土) 沖縄市野外ステージ

『GIRLS’ FACTORY 16』
2016/07/30(土) 国立代々木競技場第一体育館

ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2016
2016/08/13(土) 国営ひたち海浜公園

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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