ハルカトミユキ、47都道府県を回った旅のマイルストーンとも言える新作完成

ハルカトミユキ | 2016.08.16

 ハルカトミユキが新作『LOVELESS/ARTLESS』をリリースする。2年9ヶ月ぶりのセカンド・フルアルバムだが、その間にミニ・アルバム2作、EP1作、今年1月まで13ヶ月連続で毎月新曲を発表。また昨年9月の日比谷野外音楽堂でのフリーライヴには3000人が結集、1年後の再会を誓った。そこから始まり、今も続く47都道府県を回るツアー・ファイナルは、9月24日に再び日比谷野音で迎える。その旅のマイルストーンとも言える新作、濃密な活動の先に生まれた『LOVELESS/ARTLESS』に込めた思いを2人に語ってもらった。

EMTG:『LOVELESS/ARTLESS』はドラマチックな作品ですね。欠落感によって人間味を表そうとしているように思えました。
ハルカ:「ARTLESS」という言葉は、飾らないとか自然のままという意味をつけたくて私が思いついて。そしたらミユキが「LOVELESS」という言葉を出して。この2つの言葉に共通する「LESS」について考えたら、音楽をやっているハルカトミユキとしても何か欠けているイメージがある。100%満たされていたり完璧な人なんていないし、完璧な人は歌を聴きたいとか歌を聴いて救われるとか、あまり思わないんじゃないかなと思って。だからライヴに来てくれる人とか、私たちの曲を聴いてくれる人って、何か欠けてると思う、悪い意味じゃなくて。そういう人たちのために歌はあって欲しいし、自分が書く歌も、そういう歌を歌いたいと思って。私自身が歌を聴いて救われてきた人間なので」
EMTG:確かにそういう力のある作品だと思います。ハルカさんの他の人との距離とか、いろいろな面が見える。
ハルカ:それは今年5月と7月に経験した演劇の舞台の影響もあると思います。フィクションも書けるようになったというか。実体験が軸にはなっているけれど、そこから広げられる幅が大きくなった。
EMTG:舞台経験が曲作りにも生かされてるんですね。
ハルカ:すごくあると思います。今回は、舞台をやりながら制作してたんです。前回の舞台の稽古の合間に曲を作って、ライヴしてる合間に稽古して、また曲を作って。舞台が全部終わってから歌を録って。だから意識はしてなかったけど、知らず知らずのうちに表現方法への影響とか、変化は出てるなって思います。
EMTG:そういうハルカさんの変化をミユキさんも受けて、変わったりしましたか?
ミユキ:歌詞が乗るのは後なので、曲は曲で作っているから直接は関係ないと思うんですけど、ハルカが舞台に挑戦するっていう時点で、自分も何かやらなきゃっていう気持ちはありましたね。去年いろんな楽曲を作って、自分の中で大好きな80年代の音楽が、ひとつの自己表現になったり、ライヴでのお客さんとの一体感を作るきっかけになったりとか発見はあったけど、果たして遠くまで届いているのかってふと思った。ハルカトミユキをもっと多くの人に知ってもらうために、自分は改めて何ができるんだろうと考えたら、ハルカの声が最大限に活かせるメロディーを作ることだって。それはハルカと違った感覚で作れるものだし。自分が好きなものは、いわゆる大衆向けのキャッチーなもので、ちゃんと多くの人に受け入れられるものが多かったから、それを自分なりに表現できたらいいなと思って作っていったら、結果的にいっぱい曲ができたんですよ。このセカンド・フルに最初は既存曲も入れようとしてて。でもどんどん曲ができたから、潔く新しいのだけにしようってなりました。
EMTG:シングルや配信でこの1年に出し続けてきた曲が全く入ってないのは、そういうことだったんですね
ハルカ:1stフルアルバムから2年9ヶ月経っていて自分でもびっくりしたんですけど、改めてハルカトミユキがセカンド・フルアルバムを出すとしたら、やっぱり全部新しくしたい。今までと違うものにしたいという意味ではなくて、現状の素直なものを出したい。デビューした時から根本的に歌いたいこととか軸にある気持ちは変わっていないんですけど、今を素直に描きたいなと思って。正直ライヴをやったり曲を書いたりしてても、技術的にじゃなくて気持ち的に今の自分とずれてることがけっこうあって。それは大人になったりとかだと思うんですけど、これは絶対更新していかなきゃと思って。
EMTG:サウンドも今までになく変化に富んでいますね。バンドサウンドがあればミユキさん得意の4つ打ちやヒップホップ調もある。
ミユキ:ハルカが持ってくるのはギターが中心になってくるので、最初はそういう曲が出来やすくて。だから違うものをという視点で、シンセサウンドだったり、全面的に分かりやすく盛り上がれる曲を1曲入れようと思ったり。でも歌詞は全く別なんですよ。楽曲は楽曲で作って最後に歌詞が出てくる。シンセサウンドの曲を作ると、ハルカはいつもストレートじゃない、言葉遊びを楽しんでるようなものをぶつけてくるから、すごい面白い。文学的な言葉とは正反対なものが書けるのもハルカの歌詞のいいところだと思うので、今回はそれが引き出せるような曲も作ろうと思ったり。
EMTG:それが「奇跡を祈ることはもうしない」ですか。
ミユキ:とにかくハルカの声が生かされるようなメロディーを作ろうと。それは歌詞が乗る前から強いものじゃないといけない。言葉は少ない方が強いだろうとか、音の高低差ではっとさせる仕掛けを作って。自分は歌わないから、これぐらいはできるだろうとか、今まで作ってきた曲でこのファルセットは綺麗だから、この低音綺麗だからって入れていったら結構な感じになって(笑)。その時点で歌詞が乗るということをあまり考えてなかったですね(笑)。最初にできた曲なのに、歌詞は最後までかかった。でも多分やってくれるんじゃないかって思ってた。すごくすごく、今の最大限を尽くした曲になったと思っています。
ハルカ:本当に大変だったんですけど、「奇跡を祈ることはもうしない」で書いてることって、1st e.p.「虚言者が夜明けを告げる。僕達が、いつまでも黙っていると思うな。」で「僕達が、いつまでも黙っていると思うな」と言ってる人と、一緒だろうなと思う。ちょっと時間が経って大人になっているけど、その時の感覚にすごく近いのを、今改めて書けた。醒めてる世代とか言わない世代とか、私たちは言われてきたんですけど、それにも違和感があるし、一括りにされちゃうのは嫌だというのを、デビュー時に描いてたんですよ。何も言うことがなくて黙っているんじゃないんだぞ、みたいな。今回も一括りにしてレッテル貼られたくないし、黙ってても醒めてても、群れずにバラバラにいるだけで。今って、これが正解です、みたいな風潮があって、それに賛同できるかといったらそうでもない。それぞれの意思で選んでいくしかないんじゃないかって。そこを覚悟とか決意として書きたかったし、それは今回セカンド・フルを出す私たちの決意表明でもあって。人に責任転嫁もしないし、奇跡も祈らないから、自分で選んでいく。ハルカトミユキとしても、決意の曲であって、決意の作品ですね。

【取材・文:今井智子】

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リリース情報

LOVELESS/ARTLESS[初回限定盤]

LOVELESS/ARTLESS[初回限定盤]

2016年08月17日

SMAR

01. 光れ
02. DRAG & HUG
03. 奇跡を祈ることはもうしない
04. Pain
05. Are you ready?
06. 見る前に踊れ
07. トーキョー・ユートピア
08. 永遠の手前
09. you
10. 夜明けの月

お知らせ

■ライブ情報

LIVE TOUR 2016 ’LIFE’
2016/08/29(月) 福岡ROOMS
2016/09/10(土) 大阪umeda AKASO
2016/09/11(日) 名古屋SPADE BOX

LIVE TOUR 2016 FINAL
― 約束の地・野音!―

2016/09/24(土) 日比谷野外大音楽堂

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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