吉澤嘉代子が愛してやまない音楽家たちと作り上げた初のコラボレーションミニアルバム 『吉澤嘉代子とうつくしい人たち』

吉澤嘉代子 | 2016.07.28

 今年2月、表現者としてのセンスと才能を最高の形で閉じ込めた2ndアルバム『東京絶景』をリリースした吉澤嘉代子。その世界観を具現化したワンマンライブも大盛況となり、耳の肥えた音楽ファンはもちろん、各方面のアーティストたちをも虜にしている今注目のシンガーソングライターだ。そんな彼女が、ミニアルバム『吉澤嘉代子とうつくしい人たち』をリリース。自身を音楽の道へと導いてくれたサンボマスターをはじめ、岡崎体育やザ・プーチンズなど、彼女が愛してやまない音楽家たちと作り上げた初のコラボレーション・アルバムだ。その人にしか見えない吉澤嘉代子や、その人との時間が作り上げた吉澤嘉代子など、実に興味深い彼女の表情が引き出されている。

EMTG:アルバム、素晴らしかったです。素晴らし過ぎて、逆切れしそうでした(笑)。
吉澤:(笑)。でも今回は変り種というか、今までやったことのないことをたくさんやっているので、みなさんの反応が楽しみでもあり、恐ろしくもありなんですよね。
EMTG:このようなコラボレーション・アルバムを作ろうと思ったのはどうしてだったんですか?
吉澤:リリースが夏なので、もともとは夏をテーマとしたアルバムを構想していたんですが、何かの形で参加してもらえないかなと思って相談していたサンボマスターから届いた「ものがたりは今日はじまるの」がとっても素敵だったので、この曲を大事にしたアルバムにしようと思ったんです。コラボレーションのアルバムというのは提案してもらっていたので、じゃあ、今までご縁のあった方々と一緒に作りたいなと。
EMTG:サンボマスターはもともとお好きだったんですか?
吉澤:はい。当時私はあまり学校に行ってなかったんですが、それでも何か挑戦をしようと思ってた時にたまたまサンボマスターの曲がテレビから流れてきて、「あぁ、この人は私のことを知らないけど、確実に私めがけて歌ってきている」って思ったんです。たぶん音楽に救われた経験がある人は共有できる感覚なのかもしれないですけど、自分の中のヒーローというか、心の恋人と思って当時は生きてました。サンボマスターのライブを初めて見た時に、ステージの向こうでお話をしたいっていう下心が芽生え(笑)、私も音楽を仕事にしようって自分の中で勝手に決めたんです。
EMTG:じゃあ今回曲が届いた時は…。
吉澤:思わず奇声を発しました(笑)。この曲の内容が、まるでサンボマスターに出会った頃の自分、音楽を始める前の自分から手紙をもらったような感覚だったんです。思いが廻り廻ったような、不思議な気持ちというか。私はいつも曲を作る時、自分の等身大というよりも物語(と)主人公を設けて書くというのを芸風にしてきたんですね。だけどこの曲には、自分が書く曲よりも自分自身がそこにいたんですよ。自分ではここまで素直に書けないし、サンボマスターからいただかなかったらきっと歌えなかっただろうなと思いました。
EMTG:山口さんとはそういうお話もされたんですか?
吉澤:先日初めてお会いして「すごく苦痛だったけど、義務教育最後の卒業式に出るために、サンボマスターを聴きながら頑張って学校に行った」ってお伝えしたら、偉かったねって褒めてくださったんです。褒められるようなことじゃないんですけど、もうそれだけで、全肯定されたような気持ちでした。自分の人生の中で、本当に大きな、歴史に残るような経験。出来れば、いつかライブでもご一緒出来たらなあって思ってるんです。きっと、大好きだって気持ちがだだ漏れになっちゃうと思うけど(笑)。
EMTG:サンボマスターの他には、以前吉澤さんがとても好きだと言われてたザ・プーチンズと岡崎体育さんも参加されています。
吉澤:私はザ・プーチンズの「ナニコレ」っていう曲が好きなんですけど、初めて聴いた時に号泣したんです(笑)。「こんな曲本当は歌いたくない、踊りたくないんだけど、恥を捨てることによって人は楽になれるから歌います」みたいな歌詞。私も、自分が滑稽さを体現することによって、誰かと重なる部分があったらと思ってやってるところがあるので、そういう感じの曲がいいですってお願いしました。
EMTG:その「じゃじゃじゃ」はかなりの問題作というか、権利関係をいろいろすり抜けてきた感じの歌詞ですよね(笑)。
吉澤:すり抜けられたのか、まだわからないですけど(笑)。でも最初に聴いた時には笑いましたね。これを私が歌うのかと(笑)。
EMTG:「えーと」とか「え?」とか、吉澤さんの発するひと言の表現力が凄すぎて震えました(笑)。
吉澤:レコーディング中、マチオさんがボーカルディレクションしてくださったんですけど、自分がどこに向かってるのかも、マチオさんが何を言ってるのかもわかんなくなるくらい自分を見失ってました(笑)。何回も何回もやるんですよ。「こうじゃない、ああじゃない、もっと元気よく、もっとイラついた感じで!」とか(笑)。これはマンガのヒーローを恋人にする曲ですけど、夢の世界に夢を抱いていたところから、自分だけが現実的になっていくっていうところが「あぁ、”女の人”だなぁ」「いい落とし所だなぁ」と思いました。
EMTG:岡崎体育さんとの「ゆりかご」は、ちょっと予想外でした。
吉澤:たとえば「MUSIC VIDEO」のような、ご自身が「ネタ曲」っておっしゃってる仕掛け要素の強い曲、プロモーションとしての曲というのが看板になってると思うんですが、そうじゃない側面の曲もすごくかっこいいので、そういう部分を出してもらいたいなと思ったんです。
EMTG:色っぽいムードもあって、すごく引き込まれる曲ですよね。
吉澤:それぞれ曲を持ち寄ったんですが、私が作ったデモ曲をアレンジしてもらって、詞は初めて共作で作りました。ラップもあるんですけど、母音と子音の関係性とかノリみたいなものを重要視するような作り方はやったことなかったので、とても新鮮でした。あと、ボーカルでここまで入ってもらうのも初めて。かなり踏み込んだ感じの1曲になりました。
EMTG:伊澤一葉さんとの「アボカド」は、80年代のムードが可愛いですね。
吉澤:伊澤さんはツアーのバンマスとしてもお世話になってます。キャリアも年齢も違うけど、ひとりの人間として尊重してくれるのですごい好きなんですよね(笑)。この曲は2日間ぐらい、2人でお菓子を食べながらピアノとギターで作っていきました。初めてお願いした冨田 謙さんのアレンジが素晴らしいです。
EMTG:私立恵比寿中学がコーラスで参加した曲のタイトルは、「ねえ中学生」。
吉澤:私立恵比寿中学には、今年「面皰」という曲を提供させていただいたんですが、あの曲があったからこそ生まれた曲です。私はあまり中学生というものを経験してないので、正直中学生の実態がわからなかったんですね。なのでこの曲は、今大人になっている自分と、経験していないはずの記憶や妄想みたいな中学生が交錯していくっていう物語になっています。実態のない中学生、匿名性のある中学生にしたいと思ってたんですが、私立恵比寿中学のみなさんの声が加わることで、実態のない少女の群れみたいなものが音に出たのですごく満足しました。
EMTG:そして吉澤さんの前作から、「綺麗」のリミックスと、タイトル曲「東京絶景」を曽我部恵一さんと歌ったバージョンも収録されています。
吉澤:今回はコラボレーションという企画だったので、リミックスという形があってもいいかなと思い、作曲に関わってくださった小島くん(=小島英也(ORESAMA))にお願いしました。最初に作った時どんなイメージがあったのかなとか、作者に回帰したらどうなるんだろうと思っていたんですが、もともとやろうと思ってたオマージューー「君の瞳に恋してる」のメロディーをサビの前に少し入れてくれたりして、すごくわかりやすくなったし、想像してたよりも面白くなりました。曽我部さんは原曲ではギターだけになってますけど、もともとコーラスもお願いして録ってたんですよ。曽我部さんの声、この曲とすごく合ってたので、このテイクをぜひ聴いてもらいたかったんです。
EMTG:こんなに素晴らしいコラボレーション・アルバムが完成したんですから、ライブでの共演もぜひ見てみたいです。
吉澤嘉代子:10月に、東京と名古屋と神戸でワンマンライブもあるんですよ。せっかく今回コラボレーションさせていただいたので、何かスペシャルなことが出来たらなと思ってるところです。キネマ倶楽部などとても雰囲気のある場所ばかりなので、そういう場所に合う楽曲を選んでお届けしたいなと思っています。

【取材・文:山田邦子】

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リリース情報

吉澤嘉代子とうつくしい人たち[初回限定盤(CD+DVD) ]

吉澤嘉代子とうつくしい人たち[初回限定盤(CD+DVD) ]

発売日: 2016年08月03日

価格: ¥ 2,315(本体)+税

レーベル: 日本クラウン

収録曲

<CD>
01.ものがたりは今日はじまるの feat.サンボマスター
02.ねえ中学生 feat.私立恵比寿中学
03.ゆりかご feat.岡崎体育
04.アボカド feat.伊澤一葉
05.じゃじゃじゃ feat.ザ・プーチンズ
06.綺麗 remixed by 小島英也(ORESAMA)
07.東京絶景 feat.曽我部恵一
<DVD>
・ものがたりは今日はじまるの feat.サンボマスター(Music Video)
・手品 live at 東京国際フォーラム 2016.4.30
・movie live at 東京国際フォーラム 2016.4.30

ビデオコメント

お知らせ

■ライブ情報

吉澤嘉代子とうつくしい人たちツアー
2016/10/14(金)名古屋ボトムライン
2016/10/16(日)東京キネマ倶楽部
2016/10/22(土)神戸クラブ月世界

SWEET LOVE SHOWER 2016
2016/8/28(日)山梨県 山中湖交流プラザ きらら

ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2016
2016/08/07(日)ひたち海浜公園
12:50~HILLSIDE STAGE

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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