活休中とは思えないほどの進走性を伴った、GEZANのNew Album 『NEVER END ROLL』

GEZAN | 2016.09.22

備忘録のつもりが、気づいたら、これからのことばかりが綴られていた…。GEZANのニューアルバム『NEVER END ROLL』は、私にとって、そんな1枚だ。
GEZANは2009年に結成されたロックバンド。2012年頃より、そのインパクト大なライブパフォーマンスや印象深い現代詩的な歌詞で周囲を賑わせ始める。近年は、その強靭さと文學性にますます精度や鋭度を上げながらも、より伝わりやすい曲調へと移行。そして、その結実が今作と言える。

とは言え、残念ながら8月31日を以て、結成以来のドラマーのシャーク・安江が脱退。と、同時に彼らは活動休止に入ってしまった。言わば今作は、そんなドキュメントも経た、多少ラブチャイルド的な側面を擁した作品でもある。
しかし、何だろう…この作品全体や各曲から漂う、<俺らはビバークなんかしてられない、まだまだ先へと走り続ける!!>感は…。とても活休中とは思えないほどの進走性だ。
現在、再びになっていくべく新ドラマーを求め、新しい登頂準備中の3人に、今作の存在意義、そしてこれからのGEZANについて訊いた。

EMTG:まずは、どうしてこの時期にニューアルバムを発表したか?から教えて下さい。作品全体が極めて前向き、明日向きで、とても活休中に出すとは思えないほどの進走を感じたんです。
マヒトゥ・ザ・ピーポー(Vo&Gt/以下マヒト):無意識に続けたがっていたり、次に進みたがっている作品だなと自分でも感じます。ゴールテープを切る為の作品が、結果、テープを切ってもなお、失速せずに更に速度を増して走り続けている印象が今作では自分たちにもあって。
EMTG:今作はドラムのシャークさんが抜けると決まってから録り始めたんですよね?
マヒト:そうです。ここ最近に出来た曲は、やはりこの4人でしか出来ない曲だし、出せない音だと自負していたんで。当初は、いわゆる<記録する>意味合いで始めたところ、自分たち的にも途中からは、<この4人でのラストアルバム>って感覚が無くなっていって。
EMTG:気づいたら未来へと向かっていくモチベーションでやっていたと。
カルロス尾崎サンタナ(Ba/以下カルロス):録っている時は、全く後ろ向きなところが無かったですからね。むしろ、そんなことすら忘れてGEZANとして今の音を出していただけになってたし。
イーグル・タカ(Gt/以下イーグル):シャークが辞めると決まってからの1本1本のライブもやけど、そこからの練習やそれこそヤツが抜ける最後のライブですら感傷的にならなかったのが、今振り返ると不思議で。自分、最後の日は泣くかなと思ってたんやけど(笑)、そういった感傷も一切なくて。まだまだやり続けたい!!やり続けなアカン!!そんな気持ちの方が勝ってたんでしょう。
マヒト:音を出したり、鳴らしている時って、いつもそうなんですけど、余計なことを考えてないんです。加えて今作は、それこそ1stを作った時と同様、フラットな気持ちで挑めましたからね。
EMTG:より無心になれたと。
マヒト:そうそう。あと、しいて言えば、聴き手にも想い出のアルバムとして受け止めて欲しくなかったし。確実に次を示唆しているところも示したかった。ジャケットにしても、締める意味も含め通例だったら赤色を基調にしたんだろうけど、今回は無意識に、今や今後とも取れる<蒼(あお)>を基調に選んでいたり…。その辺りからも、やはり、これからの1枚にしていきたいと、自分の意思よりももっと深いところで思ってたんでしょう。それは、タイトルの『NEVER END ROLL』、これはカルロスがポロッと言っていた言葉を使ったんですけど、そこにも表れてますから。
EMTG:これまでで一番ライブを感じさせる作風にも驚かされました。
マヒト:ここ2~3年のムードや意識の変化に伴って、それらが曲となって表れたところはあります。いわゆる、以前の”自分ひとりが楽しければいい”から、段々と自分の大切にしている周りに集まってくれる仲間たちと楽しい空間を作りたい、時間を作りたいという感覚に移り出していて。その辺りが各曲調にも表れたんでしょう。
EMTG:確かにシンプルとは違った意味で、伝わりやすい作風に移ってきたのも、ここ数年のGEZANの新曲の特徴ですもんね。
イーグル:それは歌詞からの影響も大きいです。歌詞が段々伝わりやすくクリアになってきたんで、それを活かす演奏に自然と向かっていった結果というか。あとは余計なものが削ぎ落とされて、それでも勝負できる自信が出てきたところもあるかな。
カルロス:それと単純に音へのこだわりや各人の出す音のバランスにも関係してるかなって。これまでは単純に”俺が!俺が!!”で各人が音をワーッと出していたのが、自分の役割も分かり出して。あと、自分の最も気持ちいい音、それをバーンと外音でも出したらええんや、そんな気持ちで鳴らし出したのにも関係があるのかも。どっちにしろ、自分の理想の音が余計なもん無しに真っ直ぐ届き出したからかなって。
EMTG:そう。歌詞にしろ、サウンドにしろ、最近のGEZANの楽曲は、全体的に視界良好に移ってきているんです。
マヒト:歌詞に関しては、自分の中でのパンクの定義が変わってきたところも関係していて。これまではアンチテーゼや政治的に刃向かったり、強いことを言うのがパンクだと思ってたけど、それだけじゃないんだなって。いわゆる恥ずかしいと思えるぐらいの言葉を、これまで同様の芯を持ち続けたまま、あえて歌うことの方が俺にはパンクのように映って。歌の価値観が変わってきたとでも言うか…。それが歌詞のクリアさに繋がったのかも。
EMTG:僕、今作を一聴した時に、”これは推敲していない真夜中に書いたラブレターだ!!”と称したんです。真夜中に書いたラブレターって、気持ちの高揚も手伝って、ワーッと書いちゃって、次の日読み返して赤面したりするじゃないですか。本音や自身の深い部分から何かが溢れ出て、それがペンに乗り移って書いちゃう、みたいな。あれに近い印象を持ちました。
マヒト:それ、まさしくビンゴです!見たものや感じたものをそのまま言葉にしたり、伝えることに最近あまり色気を感じなくなって。正直、今って、ややもすると、”本当に幸せな人っているのかな…?”って考えちゃうぐらいの世の中じゃないですか。だけど、それをそのまま、「世知辛いよな…」とはつぶやきたくなくて。俺にはまだ信じたい嘘があるし、その綺麗な嘘をついている方が自分自身にはリアリティがあるんです。だって今、自分の目に映るものを歌っても、タクシーの運ちゃんのボヤきのようなものにしかならないだろうから(笑)。もしかしたら、嘘を突き通せば、最終的には自分自身さえも騙し切れるんじゃないかとさえ思ってます。
EMTG:それにしても今作は、これまでで最も一丸性があって一緒感があるように映りました。
カルロス:俺もむっちゃ一丸性があると思います。歌を聞かせたい、それが中心に各人が一丸となって音を鳴らしている、そんな感じなんです。
EMTG:分かります。M-3の「spoon」なんて、きっとこれまでのGEZANだったら、後ろで鳴っているシューゲイズっぽい音がもっと前に出て、歌とぶつかっていたでしょうからね。
イーグル:俺、この曲がムッチャ好きだし、そこが意図でもあったんで、その感想はスゲエ嬉しいです。全てがいいバランスでハマって。偶然にもこんな名曲が出来ました!
EMTG:これらからは、それこそ活休するバンドとは思えない<今後>を感じました。
マヒト:まっ、活休の意味もそんなに深く考えずに使っちゃいましたからね(笑)。自分的には、次に続く為のちょっとしたカンマ(,)みたいな意味合いで使ったんだけど、みんな予想以上に重く受け止めちゃっているようで(笑)。だけど、これだけ強いドキュメントがありながらも、音楽が前を向いていて、自分たちの意思よりも、音や歌は前に進みたがっていたし、綺麗なところがあったのを見つけられたのが、この作品を作って最も嬉しかったところで。逆に、”止まっちゃいけない!!””進み続けなくちゃ!!”と思わせてくれた作品にもなりました。
EMTG:では、ここからは今後のGEZANの話を。
マヒト:新しいドラマーを見つけて、早く戻ってきます。一応、”この3人だけで出来るかな…?”と思い、スタジオに入ってみたんですけど、終わってからの第一声が、「こりゃ、話にならんわ」でしたから(笑)。で、新ドラマーを公募することにしました。
EMTG:メン募!?
マヒト:自分、中学や高校の頃、バンドを演りたくても周りにやるヤツが居なくて、ヤキモキしていたんです。その頃の自分みたいなヤツと是非一緒にやりたくて。GEZANに入るために上京してくる。そんなタフなヤツと出逢いたい。で、今後、また一緒にGEZANをいちから作り上げていきたいなと。
EMTG:それこそピンキリの応募が来そうな…。
マヒト:基準はこの3人とのハモリ具合です。GEZANもここまで7年をかけて、今のGEZANになったわけだし。究極を言えば、そこまでの自分をかけてバンドを作り上げて行く覚悟のあるヤツ、一緒にGEZANを作っていく、GEZANになっていく、そんな意思と気概を持ったヤツに出逢いたいですね。
EMTG:いつ頃までに出会いたいですか?
マヒト:もう即!活休なんて言ったものの、やはり体は走り続けていたいようなので、見つかったら即、動き出します!

【取材・文:池田スカオ和宏】

リリース情報

NEVER END ROLL

NEVER END ROLL

2016年09月22日

十三月の甲虫

1 〜after the end of the world〜
2 blue hour
3 spoon
4 言いたいだけのvoid
5 wasted youth
6 light cruzing
7 MUーMIN
8 feel
9 OOO
10 ghost ship in a scilence(Do you hear that?)
11 GOLDEN TIME IS YOURS
12 待夢
13 END ROLL

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・実年齢より精神年齢が重視されます。
・テクニックは問いません。死ぬほどスタジオ入りましょう。
・他のバンドの掛け持ちも可能なら可能です。可能なら。
・一緒に環七をママチャリで爆走できる奴。
・どでかいことをぶちかましたい奴。
まずは電話で話した後、ミーティングなどできたらと思います。
もし電話に出なかった場合は留守電にメッセージと連絡先を入れてください。

090-6654-1364(マヒト)
gezan.drummer@gmail.com

※詳細はこちら
http://gezan.net/2016/09/post-750


「wasted youth」MV
(3rd Full Album『NEVER END ROLL』より)

https://youtu.be/Ew62DzIoWDc

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