志磨遼平が語るドレスコーズ最新シングル「人間ビデオ」スペシャルインタビュー

ドレスコーズ | 2016.10.11

 今のドレスコーズはフレキシブル極まりない。その都度メンバーが替わるライヴをやり、2本の映画の主題歌を手がけ、それをシングルとして発表するという、多忙をきわめるドレスコーズ。今回発表されたシングル「人間ビデオ」、その表題曲は、フル3DCGアニメーション映画『GANTZ:O』の主題歌だ。クールでヘヴィーかつユーモアが共存する異色の作品である。その新作と【GANTZ:O盤】のカップリングに収められた『2MC & 3次元』、【R.I.P.デラックス盤】、【溺れる盤】に収録の毛皮のマリーズの名曲「コミック・ジェネレイション」について、さらに現在のドレスコーズの在り方について志磨に訊く。

EMTG:タイトル曲は映画『GANTZ:O』の主題歌になっていますが、まず志磨さんはこの漫画のどこに魅力を感じるのでしょうか。
志磨:僕が好きになる漫画に共通しているのは、だいたい途中から話の本筋を離れて、むちゃくちゃ壮大なテーマに挑む、みたいなやつで。「なんで自分らがそうやって生まれて死んでくのか」とか、「なぜ別れるのに誰かと出会うんだ」とか。「何のために自分らは戦わされてるんだ」とか。そこから「人間の命の質量は何グラムか」とか。なんかそういう、どんどんすごく壮大な、哲学みたいなところに入っていく。『GANTZ』もまさにそんな漫画でした。
EMTG:楽曲制作には、どう臨んだのですか。
志磨:ばかに大きいテーマというか「人間ってなんだ」みたいな、僕もそういう曲をたくさん書いた気もするし、だから最初にお話をいただいたときはもう、だいたい言わんとしてることがわかるというか、すぐイメージが沸きましたね。『GANTZ』のファンががっかりしないものを、『GANTZ』ファンに向けて「こういうことでしょ?」っていうものが作れた気がしてます。だからドレスコーズらしいかと言われると僕はそうでもない気もするし。ただ『GANTZ』っぽいというのはすごくわかる。
EMTG:ドレスコーズのファンの人にはどう捉えられていると思いますか。
志磨:ライヴのメンバーがコロコロ変わるというのが今の僕にとっては利点で。それと同様、音楽の形態にまったく囚われないっていうのが、今の僕の強みなんです。だから今回、和嶋さん(和嶋慎治/人間椅子/Gt)とかね、ピ様(ピエール中野/Dr/凛として時雨)とかに頼んで。でも僕はいいけど、「ファンのみんなはどうかな?」って思ってたんですよね。だってローリングストーンズとか聴いてた人がね、急にプログレッシヴなハードロックをやってるんですから。でもみんな「カッコイイ」って言ってくれてるから「意外と柔軟なのねー」と思って…僕よりみんなのほうが柔軟でした(笑)。
EMTG:メンバーはどのように選ばれたんですか。
志磨:最初、ギターのリフを考えたときから、自分の中では和嶋さん風に弾いてたんですよね。この『GANTZ:O』の舞台が大阪の道頓堀で。そのターゲットとして、日本の妖怪が出てくる。だからちょっと日本的な香りがするような響きがいいなと思ってたんです。和嶋さんのプレイスタイルって独特で、津軽三味線みたいにギターを弾くでしょ?それでギターは絶対、和嶋さんって決めてて。和嶋さんじゃなかったらダメだったでしょうね、この曲は。そうなったらドラムは絶対ピ様だろうし。和嶋さんとピ様が一緒にやるっていうのも、これはたぶん僕以外にブッキングできない組み合わせだろうなと思ったし。
EMTG:テーマとしては『GANTZ』そのものといっていいんでしょうか。
志磨:まあそうですね。『GANTZ』のテーマみたいなものは僕が今まで歌ってきたようなことだから、頑張って『GANTZ』に寄せるってこともなく。ただ、原作を読んでる人にしかわからないような部分を作ろうとは思いました。映画を観た後で「なるほど」ってなるような。大事なところでは、そういう根本にあるテーマみたいなことを歌ってはいるんですけどね。
EMTG:そうですね。
志磨:ループというか繰り返し繰り返しのストーリーなんですよね。とりあえずクライマックスでなんとかミッションをクリアしたけど、それでハッピーエンドってわけじゃなくて、また巻き戻すんです、最初から同じことを。ラストだけ残して、ずーっとテープを巻き戻してるみたいな。で、ラストの手前でまた最初に戻って、みたいな。そういうのを音楽的に表現できたら面白いなあと思って。僕はポップスってそういう仕組みだと思ってるし。
EMTG:カップリングの『2MC&3次元』については?
志磨:今回、せっかく『GANTZ』の主題歌をやらせてもらうんだし、もう1曲くらい一緒にできませんかね、みたいな話になって。『GANTZ』のストーリー全部を総括するみたいな、大阪編以外のところも曲にしてみたーいと思ったんですね。簡単にいえば『GANTZ』のあらすじ、総集編みたいな曲なんですけど(笑)。それで映画に入ってないセリフの中で好きなセリフを抜き出して、今回の劇場版の声優さんに歌ってもらったんですよ。だから言い方としていちばん適切なのは、『GANTZ』の主人公がふたりいて、そのふたりがヴォーカルとしてドレスコーズに加入するっていう感じ。作品の中で彼らが実際口にした言葉っていうのは、彼らから出てきた言葉なわけだから作詞になるでしょ?と思って。だから実はそれも僕じゃないですよね。僕の言葉ではない。
EMTG:なるほど。
志磨:言葉というよりも、和嶋さんにギターを頼むとか、そっちの方が大事やったかな、今回は。和嶋さんはヘヴィーな音楽の中でも、いい意味で新しいスタイルではないというか、僕もそうだけど、イギリスとかの伝統的なハードロックのスタイルだから。そういうものをどんな風に聴かせるかっていうことが大事やったんです。それにはピ様のドラムも必要やったし。たぶんうまくいくだろうっていう勝算があったんですよね。
EMTG:新しいことにチャレンジした、ということではなく。
志磨:そうそう。僕、チャレンジとかしないですから(笑)。この曲の存在は“点”なんですよ。「これからの方向性」ってことじゃない。“線”にならないから今、すげえ面白いんですよ、ドレスコーズって。「今回は和嶋さんとピ様とやーろう!」っていう。言ってみれば“かりそめの”みたいな、“架空の”みたいな。「もしもドレスコーズがこんなメンバーだったら…」っていうね。そこにまったく方向性なんてないんですよ。そこに点があるだけっていう。これは逆にナチュラルなことだと思いますね。そう、僕らはそんな風に毎日音楽を聴いているわけですからね、リスナーとして。10年20年音楽やってて「自分、これだけは負けないっす」みたいのは素晴らしいことなんだけど、昨日今日の僕が新しいことをやるなんていうのは浅はかでしかないわけで。だからリスナーに戻って、レコード棚からあれこれ持ち出して聴いてるっていう感覚に近い。そういう感じで音楽をできてるっていうことは、とてもいいことだなあと思うんです。
EMTG:ほかに誰もやってない。
志磨:そう。ソロの人がね、バックとかアレンジャーをつけるのともまた違うし。バンドをやってる!たくさんやってる!って感じ。だから、「メンバーおらんのやったらバンドやーめよ」じゃなくて、「メンバーおらんのやったら、めちゃくちゃバンド組めるやん!」っていうね(笑)。
EMTG:(笑)。こちらとしては面白い音楽が毎回聴けるという。
志磨:そう言っていただけると助かるかなという感じ。だからこの活動をあまり歴史として捉えたくはないんですよ。ドレスコーズっていうバンドがいました。毛皮のマリーズっていうバンドがいました、でいい。だから「バンドを組みまくる新しいオッサンが出てきた」くらいに捉えてもらえれば。だから“GANTZの人”でいいんです。
EMTG:そうすると、カップリングの「コミック・ジェネレイション」がまさに「毛皮のマリーズというバンドがいました」になるわけですね。
志磨:そう、まさに。だから「学校やめてみよー」とか「東京行ってみよー」とか「バンド組んでみよー」とか、あるいは「バンド解散してみよー」とか、そういう人格っていうのは、僕じゃなくてたぶん毛皮のマリーズっていう人格なんですよ。毛皮のマリーズ的な行動っていったら変ですけど自分の中にそういうやり方があるんです。だからすごいスピードで飽きて、すごいスピードで新しいことをやるっていうのは相変わらずだなあと思う。
EMTG:なるほど。この曲は映画『溺れるナイフ』の山戸監督からのリクエストだったんですよね。
志磨:そうです。男の子と女の子がボーイ・ミーツ・ガールして、ほかのことはどうでもよくて、っていうのはすごく好き。ツボの設定というかね(笑)。映画とかでも駆け落ちモノみたいなのはすごく好きですね。いわゆる10代の男の子と女の子が、自分のことと相手のことにしか興味がないっていう。10代ってやっぱり自分にいちばん興味があるから(笑)。僕もそうでしたね。で、ちょっと大人になると好きな子のことを考える。あの歌もそういう歌だし。
EMTG:新録にしようと思ったのは自分から?
志磨:そう。あの曲は自分のこと、そのふたりだけのことを歌っているわけだから、あの歌の僕っていうのは志磨遼平のことだし、ほかの誰でもないから「それで大丈夫ですか?」って監督に相談して。思い入れがあるなら、そっちを使ってもらってもいいし、「でも今は、これを主役のふたりのために歌うってことができます。そういう選択肢もありますけど、どうですか?」って。僕は、僕が僕のために歌うっていうんじゃなくて、「映画のストーリーに出てくる男の子と女の子、そのふたりのためにこの歌を歌うよ」っていう風にこの歌を歌ってみたーいと思ったんです。志磨遼平がそこには一切関係ない。ふたりを祝福するような歌を歌う人、として存在するっていう。
EMTG:ドレスコーズとして毛皮のマリーズの曲を歌うことに関しては?
志磨:僕はね、忌野清志郎ファンでもあるんですよ。だから歌いたいとも思う。RCを見たことがないから。「雨上がりの夜空に」とか「トランジスタ・ラジオ」「スローバラード」、そういういろんな曲をいつも清志郎さんは歌ってくれてたから。どんなスタイルの時でも。
EMTG:なるほど。
志磨:やる、やらないの選択権は誰にもないというか。お客さんが「やれー!」って言うからやるもんでもないし、お客さんが「やらないで」って言うから「じゃあ、やめとこー」っていうもんでもないし。TPOくらいの感じですよ。今日歌ったら喜んでくれるかな、くらいの。今日は歌わない方がいい日とかもあるんですよ(笑)。そういうときはやらないと思うし、今日やったらダセえなっていうときもあるんですよね。
【取材・文:篠原美江】

tag一覧 J-POP 男性ボーカル インタビュー ドレスコーズ

リリース情報

人間ビデオ[通常盤]

人間ビデオ[通常盤]

2016年10月12日

キングレコード

[CD]
1. 人間ビデオ(フル3DCGアニメーション映画「GANTZ:O」主題歌)
2. コミック・ジェネレイション(映画「溺れるナイフ」主題歌)
3. 人間ビデオ(off vocal ver.)
4. コミック・ジェネレイション(off vocal ver.)

お知らせ

■ライブ情報



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学祭JACK2016 IN 早稲田祭
2016/11/06(日)早稲田大学 15号館402教室

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2016/11/07(月) 大阪 umeda AKASO

おとぎ話ニューアルバム「ISLAY」リリースパーティ
<New Moon,New Moon 〜ドラマとドラマ〜>

2016/11/15(火) Shibuya WWW

12月24日のドレスコーズ
2016/12/24(土) 恵比寿 The Garden Hall

※その他ライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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