Dragon Ashの新たな道筋を照らす、ニューシングル「光りの街」インタビュー

Dragon Ash | 2016.11.02

 自他ともに認める最高傑作・アルバム『THE FACES』から約3年。Dragon Ashのニューシングル「光りの街」が完成した。本質的なメッセージ性をたたえたリリカルな歌とヘビィかつドラマティックなバンドサウンドが、Dragon Ashの新たな道筋を照らすように響いている。近年、サポートベーシストを務めているKenKenが今作から制作段階で参加。2017年にデビュー20周年を迎えるDragon Ashのニューフェイズがここから始まる。

EMTG:昨日が店着日で、ハイスタ(Hi-STANDARD)のニューシングル『ANOTHER STARTING LINE』がいきなりCDショップでリリースされましたけど。めっちゃ痛快ですよね。(※本インタビュー取材日が10月5日だった)
Kj(Vo&G):ヤバいよね。俺らは前々からハイスタに話を聞かされていて。「ノープロモーションで出すよー!」、「すごいねー!」とか言ってたんだけど。ハイスタらしいよね。今の時代のアンチテーゼにもなるし。店頭に行ってなんぼっていうね。もちろん、こういうことはあの人たちが勝ち戦できるからやれることでもあるんだけど、ハイスタだからこそできるスペシャルな提示だよね。さすが兄貴たちって感じです。
EMTG:現時点ではAmazonでも買えないっていうね。
Kj:へえ、通販もしてないってことか! すごいね! あと、みんなの倫理観も素晴らしいよね。アーティスト同士ではこの話題はだいぶ前からバズっているけど、それを一切他言しないアーティストの倫理観であり、レコ屋の店員もみんなハイスタに対する倫理観があって。海外だったら愛のないやつがマスタリング前の音源を捌いて売っちゃう始末じゃん。だから、日本の音楽業界はいいなとも思ったけどね。
EMTG:曲も当然のごとくバリバリ現役感があって。16年ぶりのリリースとは思えないっていう。
Kj:16年も空いてるの!? すごいね。オリンピック4回分じゃん。ズリいなとも思うけどね(笑)。ここまで溜めに溜めたバネがハンパじゃないからキッズも大喜びだし。それが何より素晴らしいよね。
EMTG:本題に入ると、Dragon Ashは数字的に約3年ぶりのリリースですけど。この間隔は必然だったという感じですか?
Kj:うん。まあ、『THE FACES』は死に物狂いぎみで作ったアルバムだったから。音楽に対してというよりは、Dragon Ashの制作とすぐ向き合いたくないっていうところがあって。ライブは週に1回くらいのぺースでずっとやってるから、現場の数は間違いなく普通のバンドよりは多いからね。バンド内の温度自体は上がったり下がったりはしてないんだよ。俺個人はソロもやってたし、プロデュースもやってたし、曲は作っていたし。
EMTG:でも、Dragon Ashの制作と対峙して、『THE FACES』を更新するためにはフレッシュなモードである動力が必要だし。
Kj:いや、『THE FACES』を更新するという感覚は全然ない。このバンドにおいては、『THE FACES』に賭けた気持ちは超えられないから。これから何年やっても、絶対。だから、あのアルバムであそこまでのDragon Ashは終止符って感じ。ここからはホントにフレッシュな感じというか、前と比べるものでもない感覚でやってる。
EMTG:それはメンバーの共通認識として捉えていいですか?
BOTS(DJ):いや、俺はそこまで考えてないですけどね。制作のイニシアティブを握ってる人間はそこまで考えてやってたんだなって後から聞いて思ったというのが正直な意見です。
EMTG:Kjからそういう言葉を聞いて理解はできるんですか?
BOTS:理解はできますけどね。『THE FACES』をリリース後もワンマンツアーをやって、すぐフェスにも出て、今も年がら年中ライブをやってるので。建志(Kj)がソロをやるってなったけど、ライブとしてはDragon Ashでも動いていて。それで、今年の春にまたワンマンのツアーを回ることになったタイミングで制作に入って。生活の一部としていいタームで動いてるなという認識のほうが俺は強いですね。もちろん、曲を作ってる人の葛藤がいろいろあるのは俺の計り知れる部分ではないけど。このバンドを20年近くやってきて、それくらい生活の一部になってるんですよ。歯磨きをする、風呂に入るくらいの感覚で活動できているのはすごく幸せなことで。そのうえでそこに到達するための日々の努力は必要なんだけど、20年やってきた証を実感してるんですよ。だから、俺はあんまり深く考えないようにしてるのかな。誤解を恐れずに言えば、バンドが終わってもいいやっていう熱量を捧げるほど深く考えてないというか。それは決してネガティブな意味ではなくて。
EMTG:桜井さんはどうでしょう?
桜井誠(Dr):俺もそこまで深く考えてないですけどね。でも、制作する人間は自分の身を削って曲を作ってるわけですから。詞曲を生む作業はアイデアとかやりたい方向性とかいろんなことを考えるわけじゃないですか。俺らはできあがった曲に対してサポートをしていく立場なので。その疲弊感は俺らには想像できないというか。だから、建志が「疲れた、今は曲を作りたくない」というのであれば待つしかない。こっちは原稿を待っている担当編集者みたいなもので(笑)。
一同:(笑)。
EMTG:「サザエさん」でいうところの伊佐坂先生とノリスケみたいな(笑)。
Kj:「先生、どうですか!?」ってか(笑)。
桜井:「先生、そろそろどうですか!? 中身をきれいに作ってもらえばいい表紙を作りますよ」みたいな。そういう感じで曲を待ってる。その点に関しては、建志が曲を作りたいと思ってできたら楽曲をよりきれいに装飾できるように日々準備をしておくのが俺らの仕事なのかなと。
EMTG:その言葉を受けてKjはどうですか?
Kj:まあ、そうだね。同じバンド内でも立場が違えば役割が違うわけで。でも、そのすべてがなければバンドにならないから。そういうもんだよ。
EMTG:たとえば今後、Kjがデモを100%構築するところのパーセンテージを低くして、他のメンバーがアイデアを集うとか、そういう発想の転換をする可能性はないんですか?
Kj:今後はそういうことがあってもいいんじゃない? KenKenも今回から制作の時点で参加してるからね。あいつはコンポーザーとしても優れてるし。それこそジャムセッションのなかで俺がひとりのボーカリストとしている場面があってもいいだろうし。でも、そうすると曲は大幅に変わるだろうけど。凝った編成の曲は大きい音でジャムってたら絶対にできないから。
EMTG:ただジャムセッションで作った曲に緻密なプロダクションを施すこともできますよね。
Kj:ありだね。過去にはそういう曲もあるし。そこはこれからって感じ。どうなるかわからないね。
EMTG:時系列でいうと、まず2曲目の「Headbang」は春のツアーでも披露されていて。
Kj:うん。ツアーのリハのときにできたのかな。Dragon Ashの制作を始めたのが2月くらいで。レコーディングは3月、4月くらいから。ツアーが始まってからレコーディングしだしたんだよね。そもそもDragon Ashにはツアーで新曲をやるという決めごとがあって。「Headbang」はツアーに間に合うように作ったという感じだね。
EMTG:「Headbang」はライブでの即効性をかなり実感していると思うんですけど。
桜井:かなりライブ向きの曲ですからね。
HIROKI(G):個人的にも大好物ではあるので。こういう曲が好きでバンドをやっているというのもあるし、ライブの武器になる曲がきたなと思いましたね。
桜井:こういう曲をシングルのリードにもってきてもいいわけで。実際、そういう話もあったんですけど、プロダクトのなかで、日本語詞で、こういう曲調でという話し合いがあって。その流れで建志が「光りの街」をもってきて。
ATSUSHI(Dance):個人的には「光りの街」が大好きなんですけど、「Headbang」はすごく人間っぽい衝動が前に出ている曲だなと思いますね。ライブでやっていても楽しいですよ。最近は「光りの街」と「Headbang」を2曲続けてやってるんですけど、すごくパワーを使うんですよ。それだけ人間力の強い2曲だと思います。
DRI-V(Dance):「Headbang」を初めて聴いたときからフロアでお客さんが頭を振っているイメージがすぐに浮かんで。実際にライブでやってみてもそういう光景がフロアに広がってるし。「Headbang」と「光りの街」は対極のようでいて、きれいな線でつながってるなって思います。
EMTG:音源上でもシームレスにつながってるんですよね。
Kj:それは音楽的に計算してやってるよ。キーを同じにしたりね。耳が気持ちいいピッチでそのまま曲がつながるように。ミックステープのBPMを合わせるような感じだよね。そういう感覚でキーを合わせてる。あと、「光りの街」はドラムの音作りやターンテーブルの役割にもかなり変化があって。ターンテーブルから出してる音と見せかけて、HIROKIくんが出してたり。その逆も然りで。
EMTG:それはサウンドプロダクションの面でフレッシュな風を吹かせたいからですよね。
Kj:そうだね。また新しくバンドを動かすなら、自分たちでDragon Ashのコピーをやっても楽しくないから。それこそそんなことしてたら絶対に『THE FACES』を超えられないから。だから、ここから新しい基準を模索していけばいいと思ってる。久々にBOTSくんとスタジオでサンレコ(音楽専門雑誌「サウンド&レコーディング・マガジン」)を読んだりしたからね(笑)。「この機材は何をするものだ!?」とか言いながら。
EMTG:「光りの街」は光量に富んだイントロの美しいアルペジオと歌い出しのメロからKjのリリシズムが存分に発揮されてるんだけど、ヘビィなバンドサウンドとナチュラルに融合していて。これもDragon Ashの黄金バランスですよね。間奏を経てゴスペル的なセクションもそうだし。そこから今度は2ビートになってパンクになるっていうね。
Kj:こういう構成ってDragon Ashのお家芸だからね。熟考して作るという方法論でやってるから。だから、Dragon Ashの曲って大袈裟なんだよね。そうしたいというのもあるし。
BOTS:建志とは学生時代からの同級生で。母校の青山学院はキリスト教の教育がベースにあって。俺は高校から入ったんだけど、小中学校から青学に通ってる建志とサク(桜井)は音楽に賛美歌的な感覚が染みついてるんだよね。
Kj:ああ、そうだね。
BOTS:高校から入った俺は全然染みついてないんだけど(笑)。建志の作るメロディはそこからの影響が多大にあるって客観的に聴いていて思うし。歌詞の“let there be light”というフレーズも聖書にある言葉だし。
桜井:ええ、そうですね(笑)。
Kj:解説すんなや!(笑)。“光になれ~”言うてな(笑)。確かに俺とサクには賛美歌のメロディや歌詞がDNAに刷り込まれてるだろうね。それが自分を形成する大きなものになってるだろうし。
EMTG:歌詞の内容についてはいろんなところで話してると思うんですけど、石巻の――。
Kj:その話は俺がこの曲の歌詞を書いたきっかけにすぎないから。それを語りすぎるとリスナーそれぞれの歌にならなくなる。Dragon Ashのファンやフェスに来てくれたロックファンの善意で集まったお金で石巻の子どもたちの遊具を作って協力させてもらった。そこで子どもたちの笑顔がまるで氷が溶けるように増えているのを見て、人は喜ぶために生きてるんだなって思ったんだよね。それを見て俺らもうれしかったし。人はやっぱり喜ぶために我慢したり、努力したり、耐え凌いだり、歯を食いしばったりするんだよね。最終的に喜びたいという意志でありそのためにすがりつくという意志が、無理だと思っても一歩前に足を踏み出す力になるわけで。
EMTG:つまり、それは市井に生きる人々にとって普遍的なテーマでもあるし。
Kj:そうそう。
EMTG:当然、次のアルバムに向けた制作が続いてると思うんですけど、現段階で言えることはありますか?
Kj:制作自体は順調だし、レコーディングも楽しくやってるんだけど、「時間をください」みたいな感じだね(笑)。ライブもずっとやってるし、他の現場もこなしてるし、今はプロモーション期間だしね。でも、KenKenが初めてアー写から参加したり、MVで7人の演奏シーンがあることもすごくフレッシュで。馬場さん(IKUZONE)がベースを弾いていたところから、俺がベースを弾くようになって、それで今KenKenが弾くようになってね。KenKenが制作から参加してくれることで曲の理解度も高まると思うし、ネガティブな要素がない。ポジティブなことだけが積まれてるから、またいいロックバンドになってると思うよ。

【取材・文:三宅正一】

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リリース情報

光りの街[通常盤]

光りの街[通常盤]

2016年11月09日

ビクターエンタテインメント

1.光りの街
2.Headbang

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お知らせ

■ライブ情報

MONGOL800 ga FESTIVAL
『What a Wonderful World!! 16』

2016/11/06(日)沖縄県 豊見城市 豊崎 美らSUNビーチ 特設会場

『ポルノ超特急2016』
2016/12/24(土)京都パルスプラザ

『KenKen presents 俺 "等" パルーザ 2016』
2016/12/30(金)Zepp Tokyo

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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