CIVILIAN、あらたなスタートの第一歩となるメジャーデビューシングル「愛 / 憎」を語る

CIVILIAN | 2016.11.24

 2016年7月にバンド名を改名。より自由に、より幅広い表現をめざして活動を続けているCIVILIANがメジャーデビューシングル「愛 / 憎」をリリースする。放送中の日本テレビ系ドラマ「黒い十人の女」主題歌として制作された表題曲は、“人はなぜ欲望に抗えないのか?”をテーマにした歌詞と、鋭く攻撃的なサウンドがぶつかり合うアッパーチューン。この曲を聴けば、3人の創造性とプレイヤーとしてのセンスがさらに奔放に発揮されていることがわかるはずだ。
今回EMTG MUSICではメンバー3人にインタビュー。バンド名の改名以降の活動、本作「愛 / 憎」の制作などについて語ってもらった。

EMTG:2016年7月にバンド名をLyu:LyuからCIVILIANに改名。発表当初は強いリアクションがあったんじゃないですか?
コヤマヒデカズ(Vocal、Guitar):そうですね。発表した瞬間は「なぜ改名するのか」がよく伝わらなかったというか。Lyu:Lyuという名前に愛着を持ってくださってる方もたくさんいたし、「なぜなんだ?」という反応もすごくありましたね。
有田清幸(Drums):発表時のライブ会場の雰囲気も何とも言えなかったしね。ざわめきというか、どよめきというか。深読みして解散するのかと思っていた人は「よかった」という反応だったし、「え?」という人もいて。
純市(Bass):実はバンド名を変えるのは2回目なので「またか」という人も少数いましたね。
有田:ライブを重ねるなかで、少しずつ受け入れてもらってる感じですね、今は。
EMTG:そもそもなぜバンド名を変えたのか、改めて教えてもらえますか?
コヤマ:理由としてはいくつかあるんですけど、Lyu:Lyuというバンドで表現していた音楽とか目指してた方向、そこで歌詞を書いている人間として、ある意味、決着を見た瞬間があったというか。「ディストーテッド・アガペー」「メシア」などがそうなんですけど、バンドを始めたときに表現したかったことが具体的に形にできたという達成感があったんです。そういう曲がたくさんの人に届いたというのも肌で感じていたし。ただ、その後の2年は、自分たちにとって空白の2年間だったんです。そこでバンドのこともいろいろと考え直して、自然と“もっとたくさんの人に音楽を聴いてもらうためにはどうしたらいいか”という方向になっていって。そのなかで“バンド名を変えて、新しいバンドとしてやりたいことを100%自由にやろう”という意思に着地したんですよね。
有田:うん。
コヤマ:今までやってきたことを捨てるつもりは毛頭ないし、これまでに培ってきたものも全部持っていくつもりですけど、無意識のうちにタブーにしていたこともあると思うんです。自分のことで言うと、今まで書いてこなかった歌詞――たとえば恋愛の歌とか――もあるし、使うことを避けてきた言葉もあって。それを取っ払って、フラットな状態でやりたかったんですよね。
EMTG:「3人で音楽を続けるためにはどうしたらいいか?」ということに焦点を当てた、前向きな決断だったわけですね。
有田:たしかに。準備期間の2年間もめちゃくちゃポジティブでしたからね。まったく後ろを向いてなかったし、「戦うための会議をしよう」みたいな状態で。バンドの名前を変えたのは、腹を括るっていう意志表示でもあったと思います。
コヤマ:自分たちも新鮮な気持ちでやれますからね。
有田:CIVILIANとしてワンマンツアーをやったときも、初心に返った感がやばくて(笑)。準備のときからバタバタしてたし、緊張感もあって。最初の頃のワンマンに近い気持ちだったんですよね。
純市:うん。リリースがなかった2年間で失ったものもあったし、今は初心に戻って、またイチから頑張ろうという気持ちで励んでます。
有田:別に守るものもないからね。
EMTG:Lyu:Lyuの音楽には、コヤマさんの人間観、人生観といったものが色濃く反映されていましたが、CIVILIANになってもそこは変わらないですか?
コヤマ:そうですね……。「これから新しいことをやる」といろんなところで言ってるんですけど、歌詞を書いている人間が自分である以上、バンドの名前がCIVILIANになったからと言って、別人のような歌詞が書けるわけではないので。自分の価値観、生と死に対する考え方とか、良くも悪くも変えられない部分がありますからね。バンドの演奏もそうで、今まで培ってきたもの、積み重ねてきたものに対する信頼は確実にあるんです。自分たちは何があってもブレることがないという根本的な信頼感があるからこそ、新しいことを自由にやろうと思えるんじゃないかなって。
EMTG:メジャーデビューシングル「愛 / 憎」もまさに“らしさ”と“新しさ”が共存した曲だと思います。最後のフレーズは♪さあ 素面(シラフ)に戻ってしまえ!♪ですが、ロックバンドが“素面に戻れ”と歌うのはすごいですよね。多くのバンドがライブで「日常を忘れて楽しんで」みたいなことを言ってるのに、コヤマさんは真逆のことを歌ってるので。
コヤマ:そうかもしれない(笑)。たしかにみんな言いますよね。「日常を忘れて」って。
有田:この曲はむしろ日常を思い出させてるからね(笑)。


コヤマ:「愛 / 憎」のMVを撮ってくれた監督と歌詞の話をしているときに「コヤマくんはものすごくモラリストで、良い意味でも悪い意味でも自分に酔ってない。モノの見方がいつもフラットだよね」って言われたんで。普段「自分はこういう人間だよな」って考えることはあまりないですけど、今、話題に出ている“素面”にも自分の考えが集約されている気がしますね。この曲は「黒い十人の女」というドラマの主題歌なんですが、そのドラマは不倫がテーマになっていて。「なんで人はそういうことをするんだろう?」とか「悪いことだとわかっていて、なんで止められないんだろう?」っていろんな人が考えると思うんですけど、自分としては、それは呪いみたいなものだと思っていて。
EMTG:呪い?
コヤマ:はい。人間が持ったまま生まれてきて、死ぬまで逃れられない呪いみたいなものだなって。ふだんは理性でコントロールしていても、抗い切れない瞬間もあると思うんです。たとえば、ダイエットを頑張って」るのに食べちゃうとか。それはある意味、酔っぱらった瞬間みたいなものだし、素面じゃないんですよね。
EMTG:そう考えると♪素面に戻ってしまえ♪には、すごく深い人間観が潜んでますよね。3人に演奏が有機的に絡み合うようなサウンドも印象的でした。
コヤマ:アレンジを固めているときやレコーディングのときもそうなんですけど、今は一つひとつの曲に手間と時間をかけられる環境があって。そのおかげで、前よりも歌詞やメロディ、サウンドの方向性についても、今までより中身を詰められている実感があるんですよね。
有田:以前はメンバーの間に不可侵条約みたいなものがあって、自分のパートはそれぞれで考えて、そこに対しては踏み込まないという感じがあったんですよ。それでうまく噛み合っていたのはラッキーだったんですけど、今はちゃんとサミットも開かれるというか(笑)、「こういうふうにしたいけど、どうだろう?」という意見交換が格段に増えてるんです。新しいサウンドのイメージを作りたいという気持ちもあるし、しっかり話し合いを持てるようになったのはすごく良いことだなって。そのことによって、ライブにも良い影響が出てますね。
EMTG:ライブの雰囲気も変化してきた?
有田:今がいちばん攻撃的だと思います。以前は“しっかり聴かせる”というところが大きかったんだけど、さらにもうひとつ武器が増えたというか。お客さんが手を挙げる光景も増えてますからね。カバーできる領域が広がってるというか。お客さんと一緒にライブを作るきっかけになるようなものが会場に散らばっていて、それをピックアップできるようになってるんですよね。演奏、パフォーマンスにも磨きが掛かってると思うし。
純市:視野が広がっているし、お客さんにもさらに近づけている感じがありますね。前よりも自然体でやれているというか。「愛 / 憎」はライブでやり始めたばかりだから、まだちょっと演奏が大変ですけど(笑)。
EMTG:今回のシングルには、コヤマさんがナノウ(ボカロP)名義で発表した「3331」も収録。ボーカロイド楽曲をCIVILIANがカバーするのも新しい試みですよね。
有田:根本には「コヤマが書いた曲を演奏したい」という気持ちがあるし、そういう意味ではナノウの楽曲も同じですからね。この曲をやろうという話になったときも「やりましょう。もっとカッコよくしますよ」という気持ちになれたんですよ。3人でやるからには原曲を上回らないと意味がないし、結果的にウチららしい仕上がりになったと思います。
純市:以前はナノウとバンドの活動を分けてたんですけど、そういう感じもなくなってきて。(「3331」は)アレンジは変わってないんですけど、バンドのパワーはしっかり出せていると思いますね。
コヤマ:ボーカロイドで曲を作るときはブレスを考える必要がないし、いくらでも歌詞を詰め込めるんですよね。それを人間の歌唱に変換して、自分で歌うのはかなり大変でした。
純市:ライブでやったときも言ってたよね。「どこで息吸ったらいいかわかんねえ」って(笑)。
EMTG:12月16日(金)には下北沢GARDENでワンマンライブを開催します。メジャーデビューというタイミングを迎えて、さらにスケールアップしたライブを見せてくれそうですね。
有田:個人的には超強気なんですよ。「負けねえよ」という気持ちでやってるので、ぜひライブに来てほしいですね。
純市:そうだね。
コヤマ:3人とも見ている方向は同じだと思います。今後やらなくちゃいけないことは案外シンプルで、来る球を全部ホームランにするような気持ちでやるってことなんですよね。そのための準備をしっかりして、どんどん進んでいきたいと思います。

【取材・文:森 朋之】

リリース情報

愛 / 憎

愛 / 憎

2016年11月23日

Sony Music Records

01.愛 / 憎
02.LOVE / HATE / DRAMA
03.3331

お知らせ

■コメント動画



■ライブ情報

CIVILIAN ONE MAN LIVE 2016 “Ai to Zou”
2016/12/16(金) 東京・下北沢GARDEN

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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