自由で大胆なチャレンジ精神が生んだ楽曲が詰まった、SHE’S初のフルアルバム『プルーストと花束』

SHE’S | 2017.01.24

「このアルバムを出すまでは死ねない」。昨年、メジャーデビューを果たしたピアノロックバンドSHE’Sが完成させた1stフルアルバム『プルーストと花束』は、結成から5年、メンバーが燃やし続けた情熱を全てぶつけた作品だ。洋楽のエッセンスを滲ませたドラマチックなバンドの持ち味はそのままに、自由で大胆なチャレンジ精神が生んだ、輝きに満ちた全11曲。ソングライティングを手がける井上竜馬(Vo)の過去を辿ることをテーマにした今作は極めてパーソナルな1枚でもある。だが、晴れやかに歌い上げるラストナンバー「プルースト」に辿り着いたとき、《全てが一部となって 僕を作っている》と、そこには普遍のメッセージがあった。どんなに時間がかかっても人は必ず前に進むことを選ぶのだ。

EMTG:インディーズ時代からメジャーでフルアルバムを出すことをひとつの目標にしてたバンドだけに感慨もひとしおだと思いますけど、本当に素晴らしい作品になりましたね。
全員:ありがとうございます!
EMTG:まずは完成した手応えから訊かせていただけますか?
広瀬臣吾(Ba):いまのベストは尽したかなっていう感じはしてます。レコーディングは去年の8~9月ぐらいやったので、そこから少し時間も経って。いまはだいぶ落ち着いたから、もう次の作品を作りたいんですよね。まだアルバムは出てもいないんですけど(笑)。
木村雅人(Dr):かなりバラエティに富んだかたちで、より進化した11曲が出来上がったと思ってます。いままで積み重ねたものを出し切った感じです。
服部栞汰(Gt):1個の音作りに関しても時間をかけましたし、みんなの意見も取り入れながら、アレンジも凝ったというか。新しい名刺代わりになる1枚ができたんじゃないかなと思います。いままでとは比べ物にならないぐらい進化しましたね。
井上:本当はもっと入れたい楽曲はあったんですけど、理想のアルバムを追求したら、この11曲になりました。すごいエネルギーを使ったから、作り終えて1ヵ月間は曲を作る気にもなれなくて、何もできんかった。それぐらい達成感はありました。
EMTG:アルバムを作ったあと、旅に出たんでしたっけ?
井上:リフレッシュしにめっちゃいろんなところに行きましたよ。ずっと、1stフルアルバムを出すまでは死なれへん、「プルースト」っていう曲を世に出すまでは死にたくないと思ってたんです。でも、これを作ったら、早く2ndアルバムを作りたくて、それまでは死なんとこと思う(笑)。たぶん、ずっとこれを繰り返すんでしょうね。
EMTG:「プルースト」はアルバムの最後に収録されてる曲のことですよね?
井上:この4年間ぐらいずっと同じ人のことを考えてきたことに、この曲でケリをつけたかったんです。自分では全部認めて前に進んでたつもりだったけど、実際には進めてなかった。それこそ“失われた年月”じゃないけど。それを心ではわかってたから、俺はケリをつけたかったんやろなって。けっこう前……2015年の夏ぐらいに断片だけ書いたんですけど、この曲ができたとき、絶対に出したいなと思ったんです。
EMTG:プルーストっていうのは、フランスの文学者マルセル・プルーストの小説『失われた時を求めて』から生まれた“プルースト効果”から取った言葉だそうですね。
井上:そうなんです。まず、「プルースト」っていう曲ができたことで、自分の過去にまつわることを思い返してアルバムの曲を作っていくことにしたんです。でも、それが、こんなに精神的にくるんやなっていうのはあって。未来に希望を抱くのは簡単やし、エネルギーだけで行けるんですけど、過去はそうでもない。整理するのに時間もかかりました。
EMTG:メンバーから見ても、普段の曲作りと比べて井上くんは大変そうに見えましたか?
広瀬:まあ……でも、できんもんはできんから。「早よ、曲作れ」とかも言えませんからね。ただ、ボツになる曲が多かったから、大変なのかなと思ったけど。
木村:それこそ「Freedom」も最初はボツだったもんな。
EMTG:リード曲なのに?
井上:あんまりパンチがないかなと思って、やめようと思ってたんです。
木村:僕は個人的に最初から好きだったんですけど……。
井上:言わんかったやん!マジで思うんですけど、メンバーからのリアクションがなさすぎて(笑)。結局、レコーディングをするときになって、栞汰も「俺も好きだった」とか言うんですよ。なんで、最初に聴いたときに言わへんの!?
木村:作ってる本人が納得いかなかったら、なかなか言えないんです(笑)。
EMTG:結果として「Freedom」は、アルバムをリードするのに相応しい曲になりましたよね。ダイナミックな曲調も、自由をテーマにした歌詞の強さも含めて。
井上:いざ、レコーディングをして聴いたときに、すごく勢いのある曲になったんです。ミュージックビデオを出すのが、(前作シングルの)「Tonight」以来やったから、バンドのイメージ的に(次のリード曲は)バラードにはしたくなくて。そっちがメインのバンドにはなりたくないから。アップテンポでSHE’Sらしいのは「Freedom」かなと思ったんです。あとは「海岸の煌めき」も良かったんですけど、夏(の曲)だからダメって(笑)。
広瀬:季節感が合わなさ過ぎるからね。
EMTG:この曲では《選べる僕でいたいだけだった》っていう18歳の自分と、さらにいまの視点から《求めた居場所を作れ》って歌ってる。井上くんの自由観が出てますね。
井上:自由って無責任に求めがちなんですけど、いまの俺にとっての自由って何なんやろうって考えたところからこの曲はスタートしたんです。学生の頃はひとつの集団で生活をすることに対して縛られてるって感じるのは当たり前かもしれないけど。いま24歳になって考えたら、自由ってそんなに大きな目標にするものでもなくて、単なる自分の可能性なだけやから。結局、自由はそういうものやと思ったのを歌いたかったんです。
EMTG:いま、SHE’Sは自由だと思いますか?
井上:うん、自由。自分たちがやりたい曲を書けるし、チームのなかにはアドバイスをくれる人もいるし、導いてくれる人もいる。全然窮屈はしてないですね。
広瀬:あと俺たちは余程のことがない限り、SHE’Sっぽくないからやめようみたいなことにならないんです。インディーズの頃から、(昔の自分たちの曲と)かぶらないように、それだけを考えて作ってきたので、音楽に関しては、ほんまに自由なんですね。
EMTG:それは今回のアルバムに関しても同じ意識ですか?
井上:僕が作曲をするうえで永遠のテーマな気がするんです。自分が次に作る曲が(昔の曲に)似てしまったら、行き詰まってる証拠やし、それを感じれんくなったら、作曲家として終わりやと思うんです。これまで5年間やってきて、楽器がどんなにハチャメチャなことをしたとしても、メロディと歌詞で、必ず最後はSHE’Sらしくなるっていうのは理解してるから。それは8割は良いことなんですけど。2割はもっと曲の幅を広げることで、SHE’Sらしくないところにも手を出せたら面白くなると思うんですけど。
EMTG:その考え方でいくと、今回のアルバムはSHE’Sらしくない2割を探す作業というよりも、むしろSHE’Sらしい8割を追求した作品なのかなと思いましたけど?
井上:うーん……そもそもSHE’Sらしさなんて無いんですよって言いたいアルバムだと思います。たとえば、いままでの曲で言うと、「Voice」とか「Night Owl」「Change」みたいな、わりと透明度が高い路線がSHE’Sなんだっていうことはやりたくなくて。SHE’Sってこうなんだってことを1曲や2曲で決められたくない。インディーズのミニアルバムのときからバラエティっていうのは意識してたから、その延長線上でアルバムも作ったんです。
EMTG:1曲1曲に違う色合いをつけて作るのは大変じゃないですか?
広瀬:色合いが変わってくれるほうがラクなんですよ。同じ感じでこられると、逆に「えー、どうしよう?」ってなりますね。振り幅があるほうが気持ちが切り替わるので。
服部:自分もそっちのほうが良いんです。たとえば今回のアルバムだったら、「Running Out」っていう激しい曲もある。そういうのを全部まとめてSHE’Sやから。
EMTG:この曲はこういうイメージでとか、井上くんが伝えたりするんですか?
井上:けっこうイメージは言います。「パレードが終わる頃」は、軍隊のパレードのイメージなんです。華やかな感じというよりも、馬を連れて、花吹雪が舞って、みたいな。
服部:この曲のギターは「クイーンのブライアン・メイみたいな感じ」って言われたから、フレーズもそれをオマージュしてるんです。
井上:俺、ギタリストで好きな人はいないんですけど、唯一、ブライアン・メイは好きなんですよ。あのクイーンの広大なスケール感をもう少しポップにできないかなと思って。
広瀬:服部がブライアン・メイしてるので、ベースもUKの汚い感じが出てるかな。 
井上:あれ、良いよな。土臭くて好きです。
EMTG:良いですよね。「パレードが終わる頃」は、アルバムの7曲目にさりげなく入ってるけど、とても意味のある1曲だと思ってて、制作ではどの段階でできましたか?
井上:この曲は……。
広瀬:いちばん最後や。
井上:ああ、最後やったんか。祝祭感のある曲を書こうと思って。
EMTG:最後かぁ、わかる気がする。自分が何を大切に生きて、どういうふうに死にたいかっていうことを歌った曲じゃないですか。
井上:うん。ふつうパレードに関する曲を書こうとしたら、もっと華やかになると思うんですけど、終わりを意識してるところが、めっちゃ俺の性格が出たなと思います。このアルバムを書いてるころは、「このフルアルバムを出すまで死ねない」とか「出したら死ねるかな」とか思ってたから。その命が尽きるときに「よし、やり切ったぜ」って思いながら死ねるか。曲を愛してくれる人がいてくれたら、それだけで十分かな、とか思ってたんです。絵画とかもそうですけど、音楽は死んでから評価されたりするじゃないですか。
EMTG:そうですね。そういう意味では幸せな職業かもしれないですね。
井上:本当にそう思います。
EMTG:さっきクイーンの名前が出たけど、昔のロックンローラーのエッセンスを意識した曲は他にありますか?
井上:他にはあんまりないんですけど、「グッド・ウェディング」は、ダニエル・パウターみたいなニュアンスを出したいなと思いましたね。
EMTG:なるほど。たしかに多幸感のある温かい曲ですけど、歌詞が……。
井上:そうなんですよ。アルバムの曲をサビだけApple Musicで先行視聴できるんですけど、続々と「SHE’Sの結婚ソング、聴きたかった」とか「結婚式で流したい!」ってコメントをもらったりして、うわ、ヤバい、ヤバい!ってなってます。
EMTG:あははは。これ、結婚式で流したらダメなやつだから。
井上:そう、絶対に流したらあかんと思いながら、あえてコメントを返してないんですけどね。フルで聴いてもらえればわかるから。1行目で《耳を塞ぎたい ベルの音と歓声》って歌ってるので、思い直してもらえると思います(笑)。
EMTG:これは実体験?
井上:実体験です。特定の人に向けての皮肉ソングですね。「どうぞ、良き結婚式を」っていう。この曲では言いたいことは最初に決まってたから、これをバラードでやるんじゃなくて、めっちゃハッピーに歌いたかったんです。でも、サウンドにちゃんと、その歌詞の主人公…まあ、僕ですよね、僕が抱いてる“くそったれ感”が出てて、面白くなったかな。各パートでソロを回すドタバタ感は「もう、ええわ!」っていう、やけくそな気持ちです。
広瀬:この曲はスウィング感が良いよね。
EMTG:そういう実体験も含めて、今回のアルバムは井上くんの過去を辿ることで、伝えたいことが浮き彫りになるような“ザ・井上竜馬”なアルバムだと思うんですよね。
井上:うん、すごくパーソナルな部分に特化してるアルバムだし、テーマとして自分を辿ったアルバムだから、すごく恥ずかしくもあるんです。でも、未来のことはわからないから、ここからどう変化していくかは楽しみ。曲を書くことで、僕も自分が何を考えてることがわかるから、それを一緒に知っていけたらと思います。
EMTG:いま、こういうアルバムを作ったということは、SHE’Sとして曲を作り続ける原動力も変わってきてるんじゃないかなと思いますけど、どうですか?
井上:もちろん『She’ll be fine』の頃と同じように、いまも感謝の気持ちはあるけれど、あのころと違うのは、音楽が人生の一部になっていることを意識できたことですね。そのうえで、自分の人生観を歌って、僕と同じようにいろんなことに考え込んじゃったりする人のひとつの指針になる音楽であれば、ホッとする場所であれば嬉しいなと思います。あとは僕らの音楽を信じてくれる人に対して、ライブでは絶対に裏切りたくない。
EMTG:SHE’Sがライブにかける想いの強さは知ってるつもりだけど、このアルバムを引っさげてまわるツアーはキャパシティも大きくなるし、意気込みも違いますか?
井上:でも、いつも通りかな。去年より回る場所が増えて、新しい場所でもワンマンができるから、忘れられへんツアーになるんやろなとは思ってますけど。アルバムを出したあとの次の曲も大事になってくるやろうし、今年はたぶん勝負の1年なりますね。
EMTG:SHE’Sの2017年は勝負の年。
広瀬:まぁ、勝負やと思うけど、俺はそんなに不安はないかな。
井上:俺のプレッシャーは半端ない(笑)。
EMTG:2017年もメンバーにはこのまま良い曲を作り続けてくれることを願ってます。
井上:俺はもっと洋楽を日本語でやるっていうスタンスを追求したいな。
EMTG:今回のアルバムの曲だと「Say No」みたいな曲とか?
井上:そうなんです。けっこう全曲で洋楽っぽさは意識してるんですけどね。それは曲げずにやっていきたいです。売れなくなったから日本っぽい曲を、とかは絶対にやらない。そうなったら、終わりやし。それをどこまで追求できるかは自分自身の楽しみですね。

【取材・文:秦 理絵】

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リリース情報

プルーストと花束

プルーストと花束

2017年01月25日

ユニバーサル ミュージック

1.Morning Glow
2.海岸の煌めき
3.Stars 
4.Say No
5.Tonight
6.グッド・ウェディング
7.パレードが終わる頃
8.Freedom
9.Running Out
10.Ghost
11.プルースト

お知らせ

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■ライブ情報

SHE’S One man Tour 2017 "プルーストの欠片"
2017/03/04(土) 広島・セカンド・クラッチ
2017/03/05(日) 岡山・イマージュ
2017/03/11(土) 福岡・DRUM Be-1
2017/03/17(金) 札幌・KRAPS HALL
2017/03/19(日) 仙台・MACANA
2017/03/20(月・祝) 新潟・CLUB RIVERST
2017/03/22(水) 金沢・vanvan V4
2017/03/24(金) 大阪・BIG CAT
2017/03/26(日) 名古屋・NAGOYA CLUB QUATTRO
2017/04/09(日) 東京・赤坂BLITZ

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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