水曜日のカンパネラ メジャー1stフルアルバム『SUPERMAN』

水曜日のカンパネラ | 2017.01.20

 誰もが知っている偉人、有名人、架空のキャラクター=スーパーマンにスポットを当てたメジャー1stフルアルバム『SUPERMAN』。刺激的なサウンドと想像力を掻き立てる世界が、ダイナミックに広がっている一枚だ。そして、すでに発表されているとおり、水曜日のカンパネラは、3月8日に初の日本武道館公演を行う。今回のインタビューは、最新アルバムに関することはもちろん、豊富なアイデアに裏打ちされているライブについても、コムアイ(主演 / 歌唱)に語ってもらった。水曜日のカンパネラというユニットの独自性や、コムアイの表現の背景についてもよくわかる内容になったと思う。

EMTG:スーパーマンにスポットを当てたアルバムですね。
コムアイ:はい。世の中を動かしたり、人のイマジネーションが豊かになることに尽くした人に焦点を当てています。私は偉人、スーパーマンがいる同じ時代に生きていたいと思いますし、そういう人の何かに関わりたいということを考えています。
EMTG:ご自身がスーパーマンになりたいというのとはまた別の感覚?
コムアイ:そうですね。私の役割はスーパーマンを支えたり、芸のパワーで応援することなのかなと。私もいろんな仕事をする中で、何が得意なのかわかってきていて。力づくで何かを動かすよりも、シンボルのような形でイメージを発信して、それを誰かにくんでもらったときにうまくいくんです。それが水曜日のカンパネラのMVだったり、アートワークだったりするんですよね。シンボル、アイコンとして私をイメージしてもらった上で誰かに頑張ってもらえるようなことが、自分が人生でできるいちばん大きな仕事だと思っています。
EMTG:ケンモチヒデフミさん(サウンドプロデュース)が作る曲も、そういう中から生まれているわけですね。今回もサウンドはもちろん、歌詞のぶっ飛び具合も最高でした。例えば「オニャンコポン」ってガーナの神様らしいですけど、ニャホ・ニャホ=タマクロー(ガーナのサッカー協会の元会長)が出てきたときには、腰が砕けるくらい笑いましたよ。
コムアイ:ありがとうございます。曲名を決めるときは結構私が提案することがありますけど、歌詞の中に出てくるものに関してはケンモチさんに委ねていることが多いです。ケンモチさんが困っているときに、「こういうのはどう?」って言うくらいですね。あと、微妙だな、詰めが甘いなって思ったときに「こっちはどうですか?」って提案したり。
EMTG:ダメ出しすることは、よくあるんですか?
コムアイ:そうですね。でも、今までに比べたら今回は少なかったような……いや、結構しているかも。ケンモチさん、つらそうでした(笑)。
EMTG:全力を注いで良い曲を作ってくださるケンモチさんは、スーパーマンみたいな存在?
コムアイ:いや。一休さんだと思います。
EMTG:とんちが利いている人だから?
コムアイ:そうそう(笑)。
EMTG:(笑)変な質問かもしれないですけど、こういう歌詞を歌っているときって、どんな気持ちなんですか?
コムアイ:歌うとき、実はあまり歌詞の内容は気にしていないんですよ。歌のフロウみたいなことを主に気にして歌っています。
EMTG:コムアイさんの歌のスタイルはラップとは、またちょっと違いますからね。
コムアイ:吉 幾三さんの「俺ら東京さ行ぐだ」スタイルだと、(OKAMOTO’Sの)ハマ・オカモトさんに言われたことがあります(笑)。言葉を置いていって、あんまり跳ねない感じなんですよね。
EMTG:そういう歌がダンスと合わさって、何とも言えず幻想的な空間が生まれるのが、水曜日のカンパネラのライブの醍醐味だと思います。
コムアイ:踊っているときは真剣ですよ。“綺麗な景色を見られるといいなぁ”って思いながら踊っています。動きが偏らないことも心がけていますね。アドリブで気持ちよく踊りながらも、違いをちゃんとつけたいんです。
EMTG:ライブは、いつも何が起こるかわからないのが楽しいです。この前のツアー初日の川崎CLUB CITTA’も観させていただきましたが、樽の中にお尻から落下していましたよね?
コムアイ:“こういうことがあるからライブって楽しいなぁ”って、樽の中に引っかかりながら思っていました(笑)。
EMTG:ライブの衣装とか、大道具とかも毎回楽しいですけど、アートワーク関連には元々関心があったんですか?
コムアイ:私はビジュアル方面の興味のほうが先だったんです。でも、今は歌うのも楽しくなってきています。歌いながら、“人の脳みそに不思議な形で届いてる”みたいな感覚になる瞬間が度々あるんですよ。歌とか声って周波数みたいなものが作れるじゃないですか。だから“面白いことをやれてる”って感じています。もっと歌の力を信用して、踊りの力もつけたいですね。技術的なことというよりは、もっと原始的な部分に歌と踊りが徹していくようなイメージというか。
EMTG:“原始的”っていうワードが出ましたけど、本能的な部分に訴えかけるシャーマン的なところがコムアイさんにはあると思います。
コムアイ:“これができる人”っていう現実的な技術というよりは、“存在してるだけのエネルギー”みたいなのが強いのが、ライブをやる上で面白と思うんですよ。ステージに立つ人をたくさんのお客さんが見つめていて“歌上手いなぁ”って感じるよりは、“どういう人なんだろう?”とか、不思議な何かを感じ取れるほうが自然なのかなと。でも、まだまだですね。ほかの皆さんがやっているようなことも越えていきたいですから。私は“全部できるようになりたい”っていう欲張りな気持ちがあります。
EMTG:ライブで「ナポレオン」を歌うときに乗るのが定番になっているお神輿とか、小道具、大道具のデザインもすごいですけど、ああいうアイデアはコムアイさんから出しているんですか?
コムアイ:ツアーのときはそうですね。私がやるのは参考資料を集めて、写真をプリントアウトしてお見せしつつイメージを伝えるとか、「こういうライティングがいいです」とかいう感じのことです。でも、結局、叶えてくれるのは関わってくださる皆さんなんです。私がいろいろほかのことをしている間に、実験をしたりしながらライブの当日までに詰めてくれるんですよ。私の想像を越えるものが生まれると、すごくうれしいです。
EMTG:透明のウォーターボールでお客さんの上を転がるのは、ザ・フレーミング・リップス(アメリカのロックバンド)からの影響なんですっけ?
コムアイ:はい。予算がハマったので、スタッフが買ってくれました(笑)。
EMTG:(笑)面白いアイデアを得るアンテナはつねに敏感にしています?
コムアイ:そうしたいんですけど、最近、時間が足りなくて追いついていないのが良くないなと思っているんですよ。でも、休みの日にいろいろ観に行ったりします。2016年は歌舞伎を観に行くことが多かったですね。女形が持っている“ゾッとする力”みたいなのが好きなので、歌舞伎は惹かれるものがありますね。あと、盆栽の展示を見に行ったのも楽しかったです。本屋さんや図書館へも行ったりするし、面白い人に会ったりも。そうやって頭の栄養をつけたいんです。
EMTG:今回のアルバムに「世阿弥」という曲もありますが、これもいろいろ吸収する中で出てきたんでしょうね。
コムアイ:能は2016年に好きになったもののひとつです。1月頃は能の本ばかりを読んでいました。世阿弥の『風姿花伝』という本(能の理論書)があるんですけど、ステージングについていろいろ書いてあって面白かったです。舞台が始まる前にお客さんの状態を確認して、“どういうふうに出るか?”を決めるっていうことが書かれていたり。あと、“昼の演目と夜の演目、それぞれをどういうテンションで出るのか?”とか。そういう感覚ってライブをやっていると、わかるところがいろいろあるんです。すごくためになっているので、バンドマンに超オススメしたい本です。
EMTG:「アマノウズメ」みたいな日本の神話からモチーフを持ってくるのも、そういうコムアイさんならではなんでしょうね。
コムアイ:“次に生まれるスーパーマンを応援する”みたいな点で、アマノウズメ(またはアメノウズメ)ってまさにそうだなと思ったんです(岩屋の中に隠れてしまった天照大神をアマノウズメの踊りで外に誘い出す“岩戸隠れ”のこと)。今回のアルバムのコンセプトにいちばん近い気がします。
EMTG:今後のライブに関しては、やはり3月8日の日本武道館が楽しみです。現時点で、どんなことを考えています?
コムアイ:具体的なことは全然まだまだなんですけど、“八角宇宙”っていうタイトルにしました。これは、日本武道館が八角形だからです。座席表が方角毎に色分けされているのが面白いと思ったんですよ。東洋神話には“東の青龍”“西の白虎”“南の朱雀”“北の玄武”っていう各方角に生き物の神様がいるんですけど、方角の色も決まっているんですよね。座席表はそれに対応していたので、“この会場はすごいところだな”と感じました。私にとっての武道館でやる理由を見つけた感覚にもなりましたね。
EMTG:大きな会場でライブをすることが目的ではないということですね。
コムアイ:そうです。たくさんのお客さんにあの会場に来ていただくことによって、それが何か大きな儀式の一部みたいになったら面白いなと思っています。あと“八”は末広がりで、“一点からいろんな要素が広がっていって、世の中が生まれる”っていう数字でもあるので、何かそういう壮大なイメージはしているところです。来てくださったお客さんにはとにかく楽しんでいただきたいんですけど、私にとってはいろんな意味を持ったライブになりそうです。
EMTG:その会場ならではの要素を活かしたライブは、これまでも追求してきましたよね。
コムアイ:はい。京都の萬福寺でやらせていただいたときも面白かったですよ。あそこは中国の様式を採り入れているお寺で、“普度勝会(ふどしょうえ)”という華僑の人たちのご先祖様の供養もしているんですよね。だからライブのときは5色の幕を吊るしたりとか、普段とは違う感じでやりました。“その場所でやる理由”みたいなのを見つけて作っていくのが、武道館でも私たちの仕事になると思います。楽しみですね。
EMTG:武道館は、何か思い出があります?
コムアイ:子供の頃にバイオリンの教室に通っていたんですけど、そのイベントでステージに立ったことがあります。だから3月8日は、初武道館じゃないんです(笑)。
EMTG:(笑)では、最後に2017年の抱負をお願いします。
コムアイ:歌が上手くなりたいです。でも、それは“声を張り上げられるようになる”ということではなくて、“手が届かなかったところに届けられるようになる”という意味で。自分に合った豊かな表現を広げられるようになりたいです。だからじっくり自分を育んで、恐ろしいミュージシャンになりたいと思います。

【取材・文:田中 大】



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リリース情報

SUPERMAN

SUPERMAN

2017年02月08日

WARNER MUSIC JAPAN

1.アラジン
2.坂本龍馬
3.一休さん
4.オニャンコポン
5.チンギス・ハン
6.チャップリン
7.オードリー
8.カメハメハ大王
9.世阿弥
10.アマノウズメ

お知らせ

■マイ検索ワード

アフリカ 神様
今回のアルバムに収録されている曲名になっている人を、世界中にバラけさせたいなと思って調べたんです。でも、アフリカに関してこれだというものがなかなか出てこなかったんですよね。
だから“神話”とか“神様”というくくりで調べたら、“オニャンコポン”を見つけることができました。“アフリカ 神様”で検索したら、最初に出てきたんですよ。

■ライブ情報

水曜日のカンパネラ 日本武道館公演~八角宇宙~
2017/03/08(水) 日本武道館

St. Jerome’s Laneway Festival 2017
2017/01/21(土) The Meadow,Gardens by the Bay(Singapore)

NO NUKES 2017
2017/03/18(土) 豊洲PIT

Output 5th ANNIVERSARY SPECIAL
2017/03/25(土) Live House Output・ナムラホール

ARABAKI ROCK FEST.17
2017/04/29(土・祝) みちのく公園北地区 エコキャンプみちのく
2017/04/30(日) みちのく公園北地区 エコキャンプみちのく

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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