10周年を迎えたBIGMAMA、バンドの強みを最大限に活かした最高傑作『Fabula Fibula』をリリース

BIGMAMA | 2017.03.20

 現行のメンバーになって10周年を迎えたBIGMAMA。今秋には日本武道館でのライブも予定されている。そんな彼らがこれまで培ってきた、最も得意としている<バイオリンロックの手法>、そして<ここではないどこかへとトランスポートさせる物語的楽曲>といった自身のアイデンティティや武器を更に強化し、全面に出したニューアルバム『Fabula Fibula』が届けられた。
 各曲内にモチーフとなる街やその情景、ルールを設定し、その中に聴き手を漂わせたり、佇ませたり、冒険させてくれるマインドトリップ感たっぷりな今作。バイオリンのロック的な起用やダイナミズム溢れるミディアム曲の比重の増加もリスニングポイントだ。
 そんな今作について、ソングライティングを担当するVo&Gtの金井政人が語ってくれた。

EMTG:7枚目のニューアルバム『Fabula Fibula』ですが、街という物語とテーマを持ちつつも、個人的には、これまでで最も自身のアイデンティティの誇示を感じました。
金井:なるほど。それは当たらずといえども遠からずかな。と言うのも、自分ら的には、今作で「誰にも負けないものを作ろう」というのがあって。同じ3月22日に発売になるCDや、その先、今年、また過去の自分たちの作品も含め、世に出ているCDの中で誰にも負けないものを作りたかったんですよね。
EMTG:ちなみにその勝負の基準は?
金井:枚数では明らかに今のご時世、分が悪いですからね(笑)。ならば、世の中のあらゆるアーティストや作詞家の中で、絶対に自分が負けないフィールドやゾーンに勝負を持ち込もうと。
EMTG:それは?
金井:あえて自分たちが今まで築き上げ、作り上げてきたバイオリンロックの方程式を使った“現実逃避力”かなって。聴いていて最も異世界へと飛べる作品というか。
EMTG:今作は、これまでの作品の中でも、とりわけ物語性の豊かなものが揃ってますもんね。
金井:いわゆるキーワードは「作家性」でした。結果、誰と勝負するところでもないところで勝負した形になったけど(笑)。誰も勝負できないところに勝負を持ち込む。それが必勝の秘訣ですから(笑)。でも、その他人がやりそうもないところを突き詰めていくことで、逆に見えたところもありました。なので今作は、これまでの作品の中で最も労力と怨念と執念が込められた作品でもある(笑)。
EMTG:執念や怨念(笑)。
金井:自分たちの音楽性は誇るべきものだと自負しているんで、やはりそこへの執着はありますよ。その最も良いアウトプットが今作では出来たかなって。
EMTG:では、より表現力や描写力にこだわったところも?
金井:あります。かなり推敲しました。聴いている人に景色をどれだけ明確に見せられるか。どれだけ聴き手が歌物語の中で自身を主人公にして体験してもらえるか。それらの具体性が自分の特性であり、今回の勝負のポイントでしたから。
EMTG:その勝負ポイントというのは制作当初から明確にあったものですか?
金井:2年間の制作期間中、後半1年ぐらいからです。最初はやはり探っている感じで。自分たちにもまだ明確なビジョンが見えないまま、とりあえず曲作りから始めました。
EMTG:あとは先ほど金井さんが挙げていた「バイオリニストのいるロックバンド」。その言葉が気になりました。これまでのバイオリンの使い方、いわゆる優雅性や叙情性、ドラマティック性付けはもとより、今回はより鋭角で攻撃的な起用の仕方も目立っていたもので。
金井:今回はこれまでで最も制作時間がかかったんです。曲を作っている時間はそうでもなかったんですが、レコーディングには物凄く時間をかけました。曲ごと、場面ごとに使っている音色や方法論にもより気を使ったし。バイオリンとロックサウンドとの関係性や有機性はこれまででかなりやり尽くしたので、従来の方程式やセオリーを壊したいところもあったし。適度な好奇心と、これまで自分たちが培ってきて絶対的に自信があるものを信じて突き進む。今作では、その上手いバランスも出せたと思っています。
EMTG:M1の「ファビュラ・フィビュラ」やM5の「BLINKSTONEの真実を」といったダークサイドでやり切っている曲たちの出現も気になります。
金井:実は、このアルバムで欲していたのがこの2曲だったんです。
EMTG:意外です。逆にこの2曲は全体的な作品の雰囲気の中でもスパイス的な役割に映ったもので。
金井:自分の中で必要悪だったんです、この2曲は。なんせ不幸をデザインしないと幸せを表現できないタイプなもんで(笑)。だけどその不幸を強く不幸なままで表現し切ることのできないことに、近年自戒の念があって。今回こそは、そこに強い負のエネルギーを作っておきたかったんです。結果それがこのアルバムのキーになったし、入り口にもなりましたからね。ライブも含め、このダークサイドを強く押し出せる曲を作ること、やり遂げることに多少固執していたところはあります。
EMTG:でも反面、そこまで振り切れたからこそ、今作では特にミディアムで良い曲が映えている印象があります。
金井:そうですね。結果、<自分は生きている!!>ってところなんだと思います。自分で明日が楽しみになることを必死に用意して今がある人間が強い表現を残そうとした結果でもありますから(笑)。僕自身、音楽に何を求めているかというと現実逃避だったりしますからね。
EMTG:聴くことで、ここではないどこかへと連れ出して欲しいとか?
金井:僕はよく音楽を聴きながらランニングをするんですが、何故そこで音楽を聴くかというと、苦しいことを音楽で忘れさせて欲しいからなんです。走っている間って物理的にヒマなので、音楽でその時間をいい時間に変えたいというか。通勤通学や普段の移動時間って、基本手持ち無沙汰じゃないですか。それを音楽に頼ることで有機化させたいんです。その忘れさせてくれる能力を最大限高める。その発想のもと作り込んでいくと、必然的にその現実逃避をさせられるだけの細かい描写やアレンジも必要になっていくし、曲の中に引きずり込んでいくエネルギーも必要になってくるんです。
EMTG:惹き込む力がないと、結局ぼけーっと聴き流すだけに終わっちゃうし、現実逃避にも至りませんもんね。
金井:そうなんです。色々なシチュエーションで曲を書いてきて、徐々に街が見えてきて。街ごとのルールがあるなと思いついた時に、そのルールが凄く歪だったんです。そんな中、きちんとバッドエンドを書かないと、ハッピーエンドも成立しないことに思い当たって。僕自身、ハッピーなものばかり作っていたら、頭がおかしくなっちゃうタイプなので(笑)。そうなるとこのバランスがしっくりきたんですよね。
EMTG:その現実逃避へのビジョンをより明確化する為にも、今回のようなマニュピレーターさんとの共同作業は不可欠だったと?
金井:もちろん全面的にフィーチャーしている曲もありますけど、全体的には隠し味ですね。より陰影をはっきりさせたかったり、これまで培ってきたテクニックやノウハウ、それを更に明確化させ可視化させるために色々と手伝ってもらいました。それらはいわば自分たちとしては、作っている街の下水道のようなものであって。見えないながらも、それらが整備されていないと街としてきちんと機能しないというか。
EMTG:そのインフラが整備されているからこそ街も栄えると。今回もブックレットがかなり充実していますね。
金井:個人によっては、もしかしたら不必要なものなのかもしれません。だけど今作を最大限に表現したかったんで、あえて入れました。歌詞に留めず、今回重要だったのは、その中で繰り広げられる街であり景色でありルールだったので。聴き手をより強く濃く遠くに飛ばす為にも、そして、その自分の思い描いていた景色や情景をより共有してもらいたくあえて入れました。音楽って、その人なりの想い出になってくれることが最も正義だと信じているので。それをあまり押しつけない形で留めたのが、このブックレットの絵や文だったりするんです。
EMTG:そして、今作を引っ提げての全国ツアーも行います。
金井:なるべくボリューミーに行こうかなと。去年は母の日に30曲演ったし、先日のワンマンも2時間弱で24曲ぶっ通しでやり切ったんですが、それってある意味バンドのスキルと体力が育ってきた証拠でもあったんです。なので、アルバムの世界観を踏襲しつつ、このメンバーでの10周年も踏まえ、ここはフルボリュームや大盤振る舞いするタイミングかなと。ニューアルバムの曲をカッコよくやるのは大前提に、自分たちの培ってきたものを惜しみなく出していきますから。
EMTG:10月15日には日本武道館でのライブも決定しています。
金井:これまでこの5人で10年間やってきた集大成、且つ現行を見せたいですね。その先もまた楽しみにしてもらえる、そんな場を用意したいです。この10年、我が道を歩んできたバンドですから、どのタイミングでも良いからBIGMAMAという音楽を人生と共にしてくれた人たちがみんな来やすいライブにしたくて。自分たちの何に自信があるかと訊かれると、やはり10年間のこの歩んできた“道”ですから。その道を上手い形で表現したいと思っています。

【取材・文:池田スカオ和宏】

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リリース情報

Fabula Fibula

Fabula Fibula

2017年03月22日

RX-RECORDS/UK.PROJECT

01.ファビュラ・フィビュラ
02.MUTOPIA
03.ヒーローインタビュー
04.Make Up Your Mind
05.BLINKSTONEの真実を
06.Merry-Go-Round
07.Weekend Magic
08.Heartbreak Holiday
09.737 3rd Ave, RT 10017
10.レインコートになれたなら
11.ALL RIGHT
12.SPOON DIVING
13.SPECIALS(FFver)
14.愛はハリネズミのように

お知らせ

■コメント動画



■ライブ情報

BIGMAMA「ファビュラ旅行記 2017」
05/14(日) ZeppTokyo(母の日)
05/27(土) 福岡DRUM Be-1
06/11(日) 仙台Rensa
06/17(土) 高松MONSTER
06/18(日) 広島CLUB QUATTRO
06/24(土) 大阪なんばHatch
06/25(日) 名古屋Zepp Nagoya
07/01(土) 札幌PENNY LANE24
07/08(土) 金沢EIGHT HALL
07/09(日) 新潟GOLDEN PIGS RED STAGE

BIGMAMA in BUDOKAN
10/15(日) 日本武道館

※その他のライブ情報、詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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