感覚ピエロ、初めて外部エンジニアを迎えた新作『等身大アンバランス』リリース

感覚ピエロ | 2017.03.17

 感覚ピエロが2月22日にリリースした3rdミニアルバム『等身大アンバランス』は、バンドのターニングポイントとなる一枚だと思う。その理由のひとつが初めて外部のエンジニアを迎えたこと。ふたつ目がストリングスのアレンジに初挑戦したこと。結果、リード曲「等身大アンバランス」は、バンド史上かつてないほどストレートなJ-POPな楽曲として完成した。あらゆる点で革新的な今作について、今回もメンバー全員に話を聞いたが、そこで見えてきたのは、真面目も、おふざけも、感覚ピエロであるという揺るぎない二面性だった。今回はどちらかと言えば、真面目サイドに振り切った印象だが、次にどう出るかは予測不能。聴き手を惑わし、ひたすらDIYな道をゆく、それが感覚ピエロというバンドだ。

EMTG:ついに感覚ピエロも恵比寿LIQUIDROOMでワンマンするようになりましたけど、相変わらず自分たちだけでバンドを動かしてて。正直、大変でしょ?
秋月琢登:大変ですね(笑)。でも、最初から全部やっていただくと、感謝ができなくなると思うんですよ。まずはバンドとして全部自分たちでやってみる。そういうなかで、自分たちだけでできることと、できないことを判断をしていきたいんです。だから、今作では初めてエンジニアさんを招き入れたんですけど、今まで自分たちだけでやってたぶん、“こんなに幅が広がるんや!”っていう新しい発見もあるんですよね。
EMTG:今までは横山(直弘/Vo、G)くんがエンジニアをやってたんでしたっけ?
秋月:そうなんですよ。でも、今回はリード曲の「等身大アンバランス」を作るなかで、健ちゃん(西尾健太/Dr)が「ストリングスを入れたい」って言ってきたので。ほんなら、俺らはわからんし、エンジニアに弦アレンジができる人を探してもらって、お願いすることにしたんです。でも、やっぱり人に譲るのは勇気がいりますよね。
EMTG:よっぽど信頼できる人ではないと、ということですよね。
横山直弘:僕たちが作り上げてきた3~4年間があるわけじゃないですか。そこに新しい人が入ったときに“悪い方向に崩れちゃったらどうしよう?”っていう思いがあったんです。
秋月:だから変な話、プロの仕事を1回やってもらって、僕らの曲がどれぐらい変わるかを体感したいと思ったんですよ。もっと言ったら、その人とやってみて、違う感じやったら、前のスタンスに戻せばいいっていう。でも今回、初めて外部のエンジニアとやってみたことで、一度MVで出してた「加速エモーション」もめっちゃ変わったんですね。自分では100点だと思ってたのが、50点に見えるようになったというか。
横山:エンジニアさんが僕らのことを理解してくれて、僕らの用意したものを何倍も良い方向に高めてくれたので。良いパートナーと巡り合えたなと思ってます。
EMTG:西尾くんは、どうして今回はストリングスを入れたいと思ったんですか?
西尾健太:僕はジャニーズとかアイドルの曲も聴くんですけど、そういう音楽ってストリングスとかホーン隊が結構入ったりするんですよね。それを僕らも使いたいなと思って。
秋月:でも俺、ストリングスって何か知らなかったんです。“スト……ストリングスって何?”ってなりましたから。で、調べたら、バイオリンのことか、と。
西尾:最初はパッとこうへん顔をしてましたね(笑)。
秋月:ちなみに、このストリングスは生(演奏)で入れてるんですよ。
EMTG:えー、贅沢!でも、そんなにストリングスは強く主張してないですよね。
秋月:そうなんですよ。いきなりストリングスを打ち出すと、それこそバンドの色が変わっちゃうから。生なのにもったいないんですけど、あくまでロックサウンドにしたかったんです。ストリングスがないと成り立たない曲にはしたくなかったんです。
横山:世の中には“ロックバンドが弦を入れるなんて”って思う人もいるかもしれないけど、このストリングスがなかったら、この曲が持ってる彩りもなかったと思うから。まだ自分たちが踏み込んでいける世界があるんだなって思えたことは貴重な経験でした。
EMTG:アレンジの広がりプラス、「等身大アンバランス」は、今までにないぐらい歌がポーンと抜けて聴こえるし、すごくポジティブなメッセージも乗せてますよね。
横山:完全に歌が真ん中にある曲になったなと思います。今回は、SNSの受験生応援プロジェクトのために書くっていうところもあったので、わかりやすく歌詞で応援メッセージを届けるっていうところにフォーカスを当てて作ったんです。
EMTG:感覚ピエロって、それこそ「O・P・P・A・I」みたいなふざけた曲が話題になって、知名度が上がったバンドじゃないですか。でも、実はちゃんと熱いメッセージを届けられるバンドでもあることが、最近ではしっかりと伝わるようになってきましたよね。
横山:それこそ「O・P・P・A・I」とか「Japanese-Pop-Music」みたいな、うるさい音でバーンとやるような、ライブハウスで“好きに踊ってくださいよ”っていうだけのバンドではないですからね。それもやっぱり「拝啓、いつかの君へ」(ドラマ『ゆとりですかなにか』主題歌)ができて、ちゃんと世の中に音楽として聴いてもらえたからこそ、今回の「等身大アンバランス」ができたんですよ。だって、“OPPAI OPPAI”言ってるだけのバンドだったら、受験生の応援ソングの話もくるわけがないじゃないですか(笑)。でも、今は僕らの二面性が、どっちかに偏るわけじゃなく、どっちも出せるようになったと思います。
秋月:「O・P・P・A・I」みたいな曲が嫌い、とかじゃないんですよ。たぶん今後もああいう曲はガンガン作るし。アホさもありつつ、ときに真面目なっていうのも出せればと。最近はね、「等身大アンバランス」みたいなのを出したら、「感覚ピエロ、また真面目なのがきた」みたいのことも言われたりするんですよ。いやいや、でも、俺らはそもそも……。
全員:真面目や!
EMTG:声が揃った(笑)。
秋月:っていうのもありながら、両方の軸を出していきたいですよね。
EMTG:なるほど。「等身大アンバランス」を筆頭にして、今回のアルバム全体としては、これまでの作品と同じようにコンセプトは立てて作ったんですか?
秋月:実は去年ぐらいから、3枚目のアルバムのタイトルは“加速する”って決めてたんです。“2017年の一枚目として駆け抜けていきましょう”っていう意味で。それでギリギリまでジャケットも作ってたんですけど、なんかしっくりこなくて。途中からタイトルを『等身大アンバランス』に変えたんですよ。だから「TELL ME WHY」なんかは、元々は“加速する”っていう題材のもとであった曲なんです。
EMTG:じゃあ、当初思い描いてた“加速する”のアルバムイメージとは違う方向になったと。
横山:そうですね。包み隠さずに言うと、まず、「CCC」が「ワンナイト・ラヴゲーム」(2016年10月28日 配信リリース)を作った頃からあった曲で。それはアルバムに入ることは決まってたんです。それで、スタジオでセッションしていくうちに、今度は「チェシャ」みたいなグルービーな感じの曲が出てきて。この2曲ができた時点で、たぶん今の自分たちはスタイリッシュな音楽を求めてる気がしたんです。
EMTG:なるほど。「CCC」と「チェシャ」はブラックミュージックのエッセンスも強く感じるから、“加速する”という言葉で表すと違和感が出てきたんですね。
秋月:そう、“加速する”の意味合いとしては、疾走感溢れる爽やかな一枚みたいに思ってたんですけど。そのなかに感覚ピエロらしい気持ち悪さもあるっていうのを想定したのが、最後に「チェシャ」みたいな小洒落た曲も入ったことで変わりましたね。
EMTG:でも、それが今のバンドのモードなら無理して変える必要もないですもんね。
秋月:そうなんです。
EMTG:“加速する”のテーマに沿ってたっていう「TELL ME WHY」に関しては、初期の感覚ピエロっぽい感じがしました。作詞作曲も横山くんだし。
秋月:これは実際に初期の曲なんです。東名阪でワンマンをしたときに、それぞれの会場で未収録曲を1曲ずつ入れたCDを配布したんですけど。その1曲ですね。
滝口大樹:ライブでやると、結構好評の曲やったりして。「なんで、あの曲は音源になってないんだ?」っていう声も多かったんです。
秋月:それを、満を持して、アルバムに入れましょう、と。
横山:それも、今の感覚ピエロの形で、どうしたらかっこよくなるかを考えながら録ったから、惰性で昔の曲をアルバムに突っ込んだわけじゃないんです。僕らは昔作った曲もないがしろにするわけではないっていう気持ちで。今まで感覚ピエロを応援してくれてて、「全曲知ってるよ」って言ってくれてる人にも進化したところを見せたいし、これから感覚ピエロを聴く人にもフラットに楽しんでもらえたらと思います。
EMTG:ところで、「TELL ME WHY」って、直訳すると“あんたがなぜか教えてよ”ですけど、これはどういう意味なんですか?
横山:わかりづらいですよね(笑)。これは……ライブで、ステージにいる側とフロアの側って離れてるようで、どっちも対等な立場で音楽をしていたいっていうところからなんですけど。ライブのとき、君らは僕らを感覚ピエロだって知ってるかもしれないけど、僕らは君らを知らないから。影でコソコソ隠れて見てるようじゃ、フェアじゃない。ちゃんと“自分が誰か教えてくれよ”っていうふうな想いで書いた曲ですね。
EMTG:“君たちは、何者なんだ、なぜ、そこにいるんだ?”っていう問いかけなんですね。
横山:そう。“俺たちはこういう者だってことを胸を張って見せてみろ”と。
EMTG:横山くん、ライブでもそれは言ってますもんね。
横山:せっかくライブハウスに来てるんだったら、大勢のなかにポツンといるひとりであってほしくないんですよ。“俺が来てるぜ!”ぐらいの感じで来てほしい。逆に、僕らもフェスとかサーキットとか、多くのバンドが出演するところで出るときには、大勢のなかのいちバンドじゃなくて、“俺たちが来てやったぜ!”っていう感じでいたいんです。ライブはお互いがちゃんと主張し合うことで、楽しめる空間になったらいいなと思うんです。
EMTG:そう言えば、前回観たLIQUIDROOMのライブでは、横山くんは「日本一のロックバンドになりたい」とも言ってましたけど。
横山:言いましたね(笑)。漠然と考えてるんですよ、何が大事かっていうことを。やっぱりセールスなのか、とか。もちろん、そこは僕らも商売をやってるわけですから、絶対に見過ごしたらいけないけど。でも、僕が思う日本一のロックバンドっていうのは、例えば、「ミュージックステーション」にミッシェル(THEE MICHELLE GUN ELEPHANT)が出たときに、t.A.T.u.がドタキャンして、急遽1曲演奏したじゃないですか。それを観たときに、俺は熱く燃えたぎったわけですよ。“すっげえ!これが日本一のロックバンドだ”って。そういう衝撃をリスナーに残したいんです。自分たちのスタイル、ポリシー、音を全部ひっくるめて、“こいつら、マジでハンパない”って、鳥肌がブワーッて立つようなバンドになりたい。ゆくゆくはこの4人で誰にも負けない日本一のロックバンドになりたいって思ってるんです。

【取材・文:秦 理絵】

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リリース情報

等身大アンバランス

等身大アンバランス

2017年02月22日

JIJI RECORDS

1. 等身大アンバランス
2. 加速エモーション
3.CCC
4.TELL ME WHY
5. チェシャ

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