Anly、待望の1stアルバム『anly one』完成

Anly | 2017.04.25

 シングル「太陽に笑え」でメジャー・デビューしてから約1年半。最近はスキマスイッチとコラボレーションした5thシングル「この闇を照らす光の向こうに」における豊かな歌唱表現力に高い評価が集まっている沖縄・伊江島出身のシンガーソングライター、Anlyが、待望の1stアルバムを完成させた。タイトルは『anly one』。彼女にとっての第一歩であるのと同時に、世界にひとつだけ…つまりonly oneの個性であることも同時に示している。Anlyに話を聞いた。

EMTG:遂に初のアルバムができましたね。
Anly:はい。遂に。ぎっしり詰まったアルバムになりました。
EMTG:やりきった感でいっぱいなのでは?
Anly:そうですね。「やっとできたー!」って感じです。
EMTG:「もうヘトヘトだ~」って感じ?
Anly:あ、それはないです。疲れたというよりは、これまで積み上げてきたものをやっとこうして並べて届けられる嬉しさのほうが大きいですね。
EMTG:既発のシングル曲が全て収録されているとはいえ、新曲もたくさんある。曲作りもたいへんだったのでは?
Anly:でもシングル曲のほうが難産だったものが多くて。アルバム用に入れたのは高校生のときに作った曲がほとんどですし、アレンジも私のなかでイメージがかたまっていたので、たいへんさはなかったですね。楽しんで作れました。
EMTG:まさにデビューしてからこの1年半の集大成のようなアルバムですね。
Anly:というか、音楽活動を始めてから今日までの私って感じがします。デビュー前からの私が詰まってますね。
EMTG:あ、そうですよね。音楽活動を始めたのが……。
Anly:16歳。いまは20歳だから、4年分の私のベスト・アルバムみたいなものです。
EMTG:タイトルがいいですね。『anly one』。only oneみたいな。
Anly:(スタッフと)みんなで考えました。最初のアルバムだから、やっぱりAnlyって入ってたほうがいいよねってことで。わかりやすく。
EMTG:作り始める段階で、どんなアルバムにしたいと思っていましたか?
Anly:いままでは主にロックのシングルばかり出してきたんですけど、私の根っこにはロックとブルースと、あと伊江島を感じさせるようなゆったりした曲もあるので、そういうのも絶対入れたいと思ってました。そういう曲は真ん中らへんにかためて、そこで素の自分を見せている感じですね。
EMTG:確かにロックじゃない曲が真ん中あたりに集まっている。
Anly:私的には意外と伊江島の人たちのことを考慮してるんですよ。伊江島のオジイとオバアが聴いたときにビックリしない曲を真ん中らへんに集めて、島に帰ったときには「ここらへんは優しめですよ」って話してから聴かせたい(笑)
EMTG:はははは。年齢層的に幅広く聴いてもらえる作りになってるわけですね。じゃあ、曲順もかなり練って。
Anly:曲順は本当にこだわりましたね。スタッフみんなで何回も入れ替えて聴いてみて。でも、結果的に私のイメージ通りの順番になりました。真ん中に優しめの曲を集めて、最初と終わりのほうに盛り上がる曲をもってきて、最後は伊江島を思って書いた「Come back」で締める。そこは絶対そうしようと思っていたんです。
EMTG:「Come back」で終わるのはすごくいいですよね。「EMERGENCY」で終わったらトータルとしての印象もまったく違ったと思う。
Anly:“やっぱりロックの人だった”っていう終わり方ではなく、“やっぱり伊江島の人だった”ってところで終わりたかったので。だから最後はこう、「蛍の光」みたいな。
EMTG:ああ、わかります。放課後感がありますよね。この曲聴いて「いい1日だったな~」って思いながら家に帰る、みたいな。
Anly:はい(笑)
EMTG:ズバリ、「このアルバムのテーマは?」と訊かれたら、なんて答えますか?
Anly:「Anlyです」って。名刺代わりというか、『私はこういう人ですよ、こういう音楽してますよ』っていう。
EMTG:とりあえずこのアルバムを聴いたらAnlyがどういう人かがわかると。でも、“これまでのAnly”だけじゃなく、“ここからのAnly”も感じられるのがいいですね。
Anly:はい。シングル曲の「カラノココロ」では、これからの私の方向性のひとつを示すことができたと思っているんですよ。この曲はかなりチャレンジした曲なので。2ndアルバムの入り口になりそうな曲というか。
EMTG:なるほど。さて、シングルで発表してきた曲についてはこれまでのインタビューで訊いているので、ここからは初めて収録される新録曲について訊いていきますね。まず「FIRE」。これはいつ頃書いた曲なんですか?
Anly:「太陽に笑え」が出る前ですね。本を買って読んで、それにインスパイアされて書きました。『ほんとうの花を見せにきた』(桜庭一樹・著)という本なんですけど、カラダの成分が竹でできているお化けが、人間の子供を育てるっていうファンタジーで。そのバンブーというお化けは太陽の下に行くと燃えてしまうので夜しか行動できないんですけど、男の子を守るために太陽の下に出て行かなきゃならなくなる。その強さと切なさがいいなと思っていたらFIREという言葉が自然に浮かんできて。その本の主題歌を作るイメージで書きました。
EMTG:じゃあ、もしそれが映画化されるようなことになったら……。
Anly:「主題歌はもう作ってあります!」って売り込みたいですね(笑)
EMTG:歌詞のなかに「夢を見たっていいじゃない 大人の都合にはまったく興味ない」とあって、その言い切る感じがかっこいい。
Anly:主人公の気持ちを書いたんですけど、私のなかにある尖がった部分が反応してそのフレーズが出てきたんだと思います。
EMTG:それから、これはアルバム用として新たに書かれた曲ではないですけど、スキマスイッチのおふたりとコラボレーションした「この闇を照らす光のむこうに」。この曲の話はまだ訊いてませんでしたね。詞曲の段階から3人で一緒に作ったんですか?
Anly:はい。データのやり取りとかではなく、3人で一緒にスタジオに入って作りました。普段私はギターで曲を作るんですけど、このときはあんまり触らないピアノをポロポロ弾きながら、いいなと思ったフレーズを3つくらい持って、スキマスイッチさんがいつも使っているスタジオに行ったんです。そこで常田(真太郎)さんの使っているピアノを弾かせてもらいながら「こんなのどうですか?」って訊いたりして、一緒に膨らませていって。大橋(卓弥)さんも「続きはこんな感じでどうかな」って重ねてくださって、そんなふうにして2日くらいでメロディが完成したんです。でも、歌詞をどうするかが難しくて。一旦分担して、それを混ぜ合わせていく作業をしたんですけど、本当に一言一言、こだわりぬいた。暗闇から抜け出せずにいる人を振りむかせることのできる言葉はどういうものだろうって、考えに考えて。おふたりも“このテーマならここはこうしたほうがいい”って議論されていて、それをすぐ近くで見ていたので、すごくいい勉強になりました。
EMTG:得るものがたくさんあったコラボレーションだったわけですね。
Anly:本当にたくさんありましたし、ありがたくて貴重な経験でした。私にとってこの曲が10代最後のレコーディングだったんですけど、大きなターニングポイントになった気がしますね。
EMTG:続いて5曲目の「サナギ」。ゆったりしていて、心地よく聴ける曲。これもだいぶ前に書いた曲なんですか?
Anly:高校生のときに書いたんですけど、私自身のことではないんですよ。年上の人に恋をしている友達がいて、そのコから話を聞いていて、エールを送る気持ちで書いたんです。
EMTG:Anlyさん自身にとっても、それはリアルに感じられたことだった?
Anly:ああ、どうですかねぇ。まったく一緒ではないですけど、思っていても振り向いてくれない人がいるっていうのはよくわかる……という意味では自分の気持ちも入ってますね。私っぽいと思います。
EMTG:6曲目の「傘」。これはどんなときに書いたんですか?
Anly:沖縄はスコールがあるんですけど、このときも急に雨が降ってきて、「ええっ?! 嘘でしょ?!」って思ったときに、いろんなことが頭に浮かんで。それをそのまま書きました。「こういうとき、誰かが傘にいれてくれたらいいのに」とか、「しかも、それが自分の好きな人だったら、もっといいのに」とか(笑)
EMTG:相合傘は実際にしたこと、あります?
Anly:1回あります。小学生のときに(笑)
EMTG:あははは。これはでも、とても爽やかなポップソングになってますね。
Anly:アレンジャーの河野圭さんと話しているなかで、高校生が覚えたてのドラムを一生懸命叩いているかのような必死感を出したいねってことになって。それがこの曲のフレッシュさに繋がっているんじゃないかな。
EMTG:青春っぽさみたいなもの?
Anly:そう、青春感。だからこれは笑顔で歌ってましたね。
EMTG:8曲目「Enjoy」。アップテンポのロック・ナンバーで、ライブでは絶対盛り上がる。
Anly:はい。いつもライブで歌っているお馴染みの曲で、これも高校生のときに作ったものですけど、歌はもちろん録り直してます。タイトル通り、楽しむための曲ですね。高校生の頃って、やたらテンションが高いじゃないですか。“いえ~い、盛り上がろ~”みたいな(笑)。その感じですね。ギターも一番暴れている。目が覚めるくらい。
EMTG:10曲目「レモンティー」。アコースティックのバラードですが、これも高校のときに作った曲?
Anly:そうです。神無月に作った曲ですね。これはバックの演奏も全部自分でやってるんですよ。アコギとエレキとベースとドラムと。河野さんと一緒にこの曲にとりかかったときに、「宅録っぽくしたいんです」と言ったら「じゃあ、全部自分で演奏してみたらいいんじゃない?」って言われて。そのとき、ドラムとかベースもちょっとやってみたい気持ちがあったので、「やります!」って返事して、そこから猛練習(笑)。家でずっと練習してました。
EMTG:ドラムはそれまでやったことあったんですか?
Anly:遊びで教えてもらってやったことはあったんですけど、そのときはスティックで、今回はブラシだったから。家でずっとシャカシャカやってました(笑)
EMTG:演奏もいいけど、何よりヴォーカルがすごく素直でいいですね。
Anly:この曲は座って歌って録ったんですよ。声を張らないほうがいいってことで。レモンティーではないけどティーをいれたカップを持って、震えてそれがこぼれないように歌ったんです。ラク~な感じで。
EMTG:そのように声の出し方も曲によってだいぶ違う。
Anly:確かに曲調だけじゃなくて、声の出し方もバリエーションのあるアルバムになったかもしれないですね。
EMTG:高校生の頃からすると考えられないような歌い方も獲得できているんじゃないですか?
Anly:そうですね。高校生のときは合唱とかイタリア歌曲をやっていた影響で、ポップよりの声じゃなかったんですよ。もう少し深めの声で、ポップを歌う声ではなかった。デビュー曲「太陽に笑え」の頃からですね、Anlyの声というものが形成されていったのは。
EMTG:そこから1年半の間にもずいぶん声が変化したし、歌唱に幅が出ましたよね。
Anly:確かに「太陽に笑え」と「カラノココロ」では、だいぶ違います。声の明るさが違う。以前は明るい曲でも暗めの声に聴こえるところがあったのが気になっていたんですけど、いまでは明るい曲は明るい声で歌えるようになってきたかなって思いますね。
EMTG:声の表情をつけることに関して、だいぶ自分で練習したり研究したりもしたのでは?
Anly:研究しましたね。東京に来てデビューの準備をしているときには、1日9時間くらい歌っていて。
EMTG:そんなに?!
Anly:はい。どうやって出したら、自分が好きになれる声になるかなって思いながら、毎日歌ってました。
EMTG:もともと自分の声は好きじゃなかったんですか?
Anly:あんまり。みんなが「いいね」って言ってくれるから歌うのは好きだったんですけど、自分の声を録音して聴いたりするとショックを受けてましたね。でも経験を積み重ねていくうちに、こういう声を出したかったっていうのがわかってきて。「この闇を照らす光の向こうに」のレコーディングのときには、大橋さんと常田さんが「Anlyちゃんはその声がかっこいいんだから自信を持っていいんだよ」みたいなことを言ってくださって、それでコンプレックスが全部溶けました。
EMTG:スキマスイッチの偉大な力がそこでも働いたと。
Anly:偉大です、スキマパワー(笑)。一生ついていきます!
EMTG:このアルバムが、聴く人にとって、どういうものであってほしいですか?
Anly:「これを聴くと、なんだか元気になるなぁ」とか「癒されるなぁ」とか、そういうふうにその人の生活に溶け込むアルバムになったらいいですね。今日は情熱的にいきたいから「FIRE」を聴こうとか、雨が降ってるから「傘」を聴こうとか、そうやってそのときに聴きたい曲だけ聴いてもらってもいいし。その人の一瞬一瞬に寄り添えるアルバムになればいいなぁと思います。
EMTG:わかりました。因みにアルバムのジャケットもいいですね。このスカートに描かれた絵は……。
Anly:デザイナーさんが私の故郷のいろんなものを取り入れてくださったんです。よく見るとわかるんですけど、伊江島に行くフェリーがあったり、そのフェリーがくぐる橋があったり、ギターがあったり、私の家によく来る鳥がいたり。この絵からもAnlyを感じ取ってもらえたら嬉しいですね。

【取材・文:内本順一】

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リリース情報

anly one

anly one

2017年04月26日

ソニー・ミュージックレコーズ

1. 太陽に笑え
2. FIRE
3. 笑顔
4. この闇を照らす光のむこうに
5. サナギ
6. 傘
7. カラノココロ
8. Enjoy
9. だから
10. レモンティー
11. いいの
12. Don’t give it up!
13. EMERGENCY
14. Come back

お知らせ

■コメント動画



■ライブ情報

Anly 1st Live Tour 2017 "anly one"
06/09(金) 名古屋ell.SIZE
06/10(土) 大阪南堀江knave
06/17(土) 原宿アストロホール
06/18(日) 沖縄桜坂セントラル
06/23(金) 原宿アストロホール[追加公演]

第14回 はいさいFESTA 2017
05/03(水祝) -07(日) 野外フリーライブ
ラ チッタデッラ アレーナチッタ特設ステージ

FM802 FUNKY MARKET
05/03(水祝)
万博記念公園自然文化園お祭り広場・下の広場

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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