レキシ、80年代ロックの薫りを纏った新曲「KATOKU」制作秘話

レキシ | 2017.04.26

 昨年夏には二度目の日本武道館ワンマンを大成功させたレキシが、「SHIKIBU」(2015年)に続くセカンド・シングル「KATOKU」をリリース。すでに本人も出演する自動車のCMソングとして耳にした人も多いであろう、80年代ロックの薫りを纏ったこのゴキゲンなナンバーの制作秘話をレキシこと池田貴史に訊いた。

EMTG:「KATOKU」は、池ちゃん自身も出演している自動車のCMソングとして作られた曲なわけですが、同じCMも当初は「きらきら武士」が起用されていましたよね。
池田:6年前に出した曲をなぜ今!? みたいなところはあったけど、「きらきら武士」を好きな制作スタッフがいたみたいでね。反響も大きかったし、ありがたかったよね。
EMTG:そこで次はぜひレキシの新曲で!ということで「KATOKU」が作られた、と。
池田:当初はシングルになるとも考えてなかったし、CM用に曲を作ればいいやって感じで気軽に「作れます!」って返事したものの……これが苦難のはじまりだった(笑)。CM用に何パターンか提出したんだけど、そのうちの1つが平和な家庭のイメージに沿って作ったものが、今回の「KATOKU」のサビの部分で。CMとして使われる分にはすごくいいのよ。だけど、これを1曲として仕上げるとなったら、自分の中で悩んでしまって。
EMTG:そもそも「家督」というキーワードはどこから出てきたものだったんですか?
池田:これはね、昔からアイディアとしてはあったの。響きも面白いし、普通は曲にしないようなテーマじゃん? CMのイメージにも合うかなって思って。
EMTG:たしかに家督や世継ぎ問題っていうのは、日本史の中でもよく出てくるテーマではありますよね。
池田:そうそう。武将モノの作品なんかにも絶対テーマとして絡んでくるじゃん? だから最初はスラッと書けそうなテーマだと思ったんだけど、よく考えると家督や世継ぎにまつわるドラマチックな部分っていうのは、大体が裏切りとか覇権争いみたいな、あんまりアットホーム感じじゃないんだよね。そうなると、CMのテーマともかけ離れてしまうし、自分の中でもストーリーが広がりにくい……それに気づいた時のショックたるや(笑)。いつも曲作りでやってるように「馬鹿だな」って思った先にあるダブルミーニングみたいな部分だったりが、なかなか出てこない。そこから書けなくなって時間だけがすぎていき……ぶっちゃけお茶の間にCMが流れはじめてから、やっと完成したんだから。なんなら、この際カップリングに収録してるオルゴールのメドレー(*レキシの代表曲を池ちゃんがオルゴール調のピアノ演奏でメドレー形式につないだインスト)をM-1にしちゃえばいいんじゃないかって思ったぐらい(笑)、レキシ史上もっとも難産な曲だったね。
EMTG:難産の末に仕上がったという「KATOKU」ですが、そんな苦難を感じさせないぐらいに軽やかで、ホロッと感動を覚えるような素敵なポップスに仕上がっています。歌い出しの「♪世襲制~」というフレーズからして強烈に耳に残りますね。
池田:「♪世襲制~」ってフレーズは最初から出てきた。ちょっと英語っぽいなって思ってね。サウンドのイメージは80年代の産業ロックと言われた音楽のような、あまり重たくない、軽く聴けるようなものにしたくて。
EMTG:そこには、何か理由があったんですか?
池田:「家督を継ぐ」とか「家督を譲る」って言うけど、「督」っていう字は「見張る」とか「見守る」という意味で、つまり継ぐ者が家を見守っていくってことなんだよね。たとえば、うちは実家が商売やってたから子供の頃は漠然と継ぐものだと思ってたし、今でも家がお寺さんだったり長年続く家業をもつ家庭もあちこちにあるでしょ? 跡継ぎの問題って、実は今でも通じる普遍的なテーマなんだよね。それをレキシ的にいうと「KATOKU」になったというか。俺も40代になって、世代的にも家督を親から譲り受けるというよりも、子の世代に譲り渡すっていう目線のほうが大きいというか。そういうメッセージを込めると印象も重くなりがちだし、自分としても私小説風になるのは本意じゃない。だからサウンドは軽快にしたかったんだよね。
EMTG:大事なものを守っていく、その想いを代々に渡って受け継いでいくのが「家督」であり、その積み重ねが「歴史」であると。
池田:おっ、上手いこと言うね。まあこの曲は、いろんな意味でサラッと聴いてほしいんだよね。制作中にあまりにも悩みすぎて「こんな曲!」って思った時もあったけど、出来上がってみれば、誰かにとって一番好きな曲になるかもしれない、そんな作品に仕上がったと思う。そういえば今思いついたんだけどさ、歌舞伎や大衆演劇の役者さんみたく、「レキシ」って名前も別の誰かが継いでいってもいいんじゃないかって。だって初代の俺がずっとやらなくてもいいわけじゃない?
EMTG:たしかに二代目レキシ~三代目レキシと続いていったら面白いですけどね。
池田:二代目はちょっと情に厚いとか。三代目は破天荒で女にだらしなく、名前を汚して短命で終わって……一番すごかったのが、実は四代目みたいな(笑)。そういう風にレキシってプロジェクトが続いていったら面白いかもしれないね。

【取材・文:宮内 健】

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リリース情報

KATOKU

KATOKU

2017年04月26日

ビクターエンターテインメント

1. KATOKU
2. 眠れるレキシ〜オルゴールで聴くリレッキシミュージック〜
3. トロピカル源氏〜レキシ変〜
4. きらきら武士〜Live ver.〜

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レキシツアー2017
不思議の国のレキシと稲穂の妖精たち

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07/21(金) 仙台市民会館 大ホール
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ARABAKI ROCK FEST.17
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阿蘇ロックフェスティバル 2017
05/27(土) 熊本県野外劇場アスぺクタ

FUJI ROCK FESTIVAL ’17
07/30(日) 新潟県湯沢町苗場スキー場

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