シンリズム×クラウド・ルー スペシャル対談 [前編]

クラウド・ルー×シンリズム | 2017.09.15

【特集】
台湾の音楽チャート上位に何度も輝き、台北アリーナでの単独公演を4回経験しているなど、本国で圧倒的な人気を確立しているクラウド・ルー。サマーソニックを含む日本の音楽フェスへの出演を既に果たし、昨年行った日本での初ワンマンライブも大成功。最新アルバム『What a Folk!!!!!!』の日本盤をリリースしたタイミングで来日した彼と、シンリズムの対談が実現した。
作詞作曲、プログラミング、様々な楽器の演奏を自ら手掛け、多彩なエッセンスを吸収した独自の世界を生み出しているシンリズムと、クラウド・ルーの間で繰り広げられた音楽談義とは? 前編となる今回は、お互いのルーツ、創作を始めたきっかけ、ソングライティングについての話をお届けします。

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シンリズム:僕の曲を聴いてくださっている方のツイートで「シンリズムと外見が似ているアーティストがいる」というのを見たのが、クラウド・ルーさんを知ったきっかけです。YouTubeのリンクが貼ってあったので楽曲を聴いて、すごく好きになったんです。メロディラインが気持ちよくて、アレンジとコード進行の流れにグッと来るものがあって、「いい曲を書く方だなあ!」と思っていました。今年の5月の来日公演も観させて頂きました。
クラウド・ルー:ありがとうございます。こうして知り合うことができて、とても嬉しいです。たしかに、僕たちの外見は似ていますね。髪型も同じような感じですし。髪の毛が伸びるのが早いんじゃないですか?
シンリズム:早い方です。
クラウド・ルー:やっぱり(笑)。
シンリズム:髪型は長年ずっと今のままですか?
クラウド・ルー:小さい時からずっとこれです。
シンリズム:僕はパーマを当てて、全然違う感じだったことがあるんですけど、最終的には、今のこの髪型に落ち着いた感じです。
クラウド・ルー:なるほど(笑)。僕もシンリズムさんの音楽を聴かせて頂きました。曲のメロディがとても滑らかで聴きやすいですし、いろんな楽器をシンリズムさんが演奏しているというのを知って驚いたんですよ。まだお若いのに、将来性がとてもあるアーティストだと感じています。
シンリズム:ありがとうございます。僕はスティーヴィー・ワンダー、スタイル・カウンシル、スティーリー・ダンが好きなんです。僕の父は音楽をすごく聴く人なので、その影響が大きかったです。クラウド・ルーさんは、いかがでした?

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クラウド・ルー:僕も小さい頃にスティーヴィー・ワンダーの曲をよく聴いていましたよ。小さい頃は、母と一緒にラジオで音楽を聴くのが好きでした。その頃はホイットニー・ヒューストンとか、マライア・キャリーをよく聴いていましたね。そして、大きくなるにつれて自分でレコード屋さんに行くようになって、プリンスとか、自分自身で曲を作るアーティストに興味を持つようになったんです。ソウルとかブルースは、とても影響を受けています。
シンリズム:僕は山下達郎さんとか、大貫妙子さんとか、キリンジさんとか、日本のアーティストを聴いて、曲作りに興味を持つようになりました。日本語で歌モノを作ってみたいと思ったのは、それがきっかけだったのかなと思っています。クラウド・ルーさんは、大学1年生の時からギターを始めたんですよね?
クラウド・ルー:はい。大学1年生の時でした。
シンリズム:僕はクラウド・ルーさんの音楽を聴くと、ジャズ的なアプローチとか、ソウルミュージック的な雰囲気を感じるんですけど、そういう曲のカバーはしていましたか?
クラウド・ルー:ギターを始めた大学1年生の頃は、ちょうどYouTubeが流行り始めた時期なんです。僕にとっての先生は、YouTubeにアップロードされている様々な有名なアーティストたちでしたね。スティーヴィー・レイ・ボーンとかのブルースを真似しながら弾いていました。
シンリズム:僕も楽器を始めた頃はYouTubeでいろいろな動画を観て、弾いている手元に注目しながらカバーをしていました。
クラウド・ルー:この時代に生まれたミュージシャンは、本当にラッキーですよね。インターネットでいろいろな情報を得て学ぶことができますから。僕、ギターを始めた大学1年生の時は足を骨折していて、全く動けなかったんです。だからひたすらパソコンの画面を観て、ギターを弾き続けるしかなかったんですよ。
シンリズム:ひたすら毎日ギターを弾き続けていたんですか?
クラウド・ルー:おそらく、毎日、最低でも6時間以上は弾いていました。
シンリズム:退院された翌年に大学の音楽コンテストで優勝して、それがきっかけで音楽プロデューサーの方に声をかけられたとプロフィールで読んだんですけど、その時点で既にギターのテクニックはかなりあったんですか?
クラウド・ルー:今でもギターのテクニックは徐々に進歩していると思っているんですけど、デビューした頃は「まあ、お客さんの前で披露はできるかな」というくらいでした。デビューを約束された時にプロデューサーに「1stアルバムを出すまでにライブを100回やりなさい」ということを要求されたので、それがとても練習になりましたね。だから、僕の1stアルバムのタイトルは『100種生活』なんです。100回のライブをしながらギターと歌の技術を磨くことができました。
シンリズム:歌声もとても素敵ですけど、ギターを始める前から歌は歌っていたんですか?
クラウド・ルー:物心がついた頃から歌うのが好きでした。そもそもギターを始めたきっかけも、「ギターが弾ければ自分で伴奏ができる」というものでしたから。
シンリズム:僕は「音楽を自分で作る」というところから始めて、歌モノを作りたかったから歌い始めたんです。だから今になって歌がどれだけ楽曲にとって重要なのかを感じるようになっています。歌の表現次第で楽曲の印象が大きく変わるというのが、どんどん分かってきたんですよ。
クラウド・ルー:歌を通して魂をお客さんと分かち合うことができますし、人それぞれが持っている唯一無二の楽器が歌なんですよね。歌声って、とても大事なものだと僕は思っています。だから僕は曲を作る時、楽器を使わずにアカペラで録ったりもするんです。その状態で「良い」と思えれば、それは「良い曲」なので、その後にスパイスとしてアレンジを考えたり、楽器を加えるようにしています。

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シンリズム:浮かんだメロディが確立された状態で、加える楽器とか伴奏やアレンジについて考えるんですか?
クラウド・ルー:メロディを聴きながら楽器について考えたり、歌詞の意味と照らし合わせて「どういう楽器が合うのか?」と考えたりもします。だから喩えるならば、歌が曲にとっての大統領で、その下に将軍のような楽器があるイメージですね。
シンリズム:歌詞を先に考えるのとメロディを先に考えるのとでは、どちらが多いですか?
クラウド・ルー:今の自分は、そのどちらもあるというような感じです。でも、曲を作り始めた頃は、曲先行でした。ラジオで音楽を聴いていた子供の頃は英語が全く分からなくて、メロディだけが僕の中に入ってきていたんです。だから、その感覚と同じようなイメージで、最初に曲を作っていましたね。シンリズムさんの曲を聴いた僕の印象では、最初にメロディを作ってその後に歌詞を書いているように感じるのですが、いかがですか?
シンリズム:その通りです。1曲だけ歌詞先行で作ったことはありますけど。「歌詞先行で作った方が、歌詞の雰囲気に合った楽曲を作れるな」というのを感じました。
クラウド・ルー:シンリズムさんは、ご自身で様々な楽器を演奏されますし、それぞれの楽器のバランスが素晴らしいですよね。それが大きな魅力の1つになっていると僕は思っています。
シンリズム:ありがとうございます。楽器は「やってみたい」という興味からいろいろ演奏するようになって、楽曲作りはパソコンのソフトウェアを使うところから始めました。そして「楽器もいろいろ自分でできた方が良いのかな?」と思うようになったんですよね。
クラウド・ルー:楽器がいろいろできるというのは、とても羨ましいです。
シンリズム:1つ1つの楽器のパートを考えるのは、すごく時間がかかりますけど、考えるのは楽しいです。僕の父は音楽が好きで、楽器もよく買っていたんです。「あの楽器をやってみたい」と言ったら「だめ!」と言われる家庭環境ではなかったので、とても恵まれていたなと思っています。
クラウド・ルー:僕も音楽をやるということに関して、両親に反対はされませんでした。「自由にしなさい。悪いことさえしなければいい」という教育方針でしたので(笑)。
シンリズム:僕と一緒です(笑)。
クラウド・ルー:両親に反対されたミュージシャンは、僕の周りにたくさんいますけどね。「収入が不安定なのでは?」とかいうのを心配されたみたいです。やはり、ミュージシャンは公務員とかに比べると、いろいろ不安定なのはたしかですから。
シンリズム:親が心配をするのは、台湾も日本も同じですね。
クラウド・ルー:世界中どこでも親は子供を心配するものなんですよ。今、母は僕の一番のファンになってくれています。
シンリズム:その点も僕と一緒ですね(笑)。地元でライブをやる時は、毎回来てくれますから。来ているのがステージから見えると、変な気持ちになりますけど。なるべく目線を合わさないようにしています(笑)。
クラウド・ルー:親と目が合うと、集中できなくなってしまうんですよね(笑)。

【取材・文:田中 大】
【通訳:星原 宣子 】

tag一覧 クラウド・ルー シンリズム 対談

リリース情報

クラウド・ルー『What a Folk!!!!!! 』

クラウド・ルー『What a Folk!!!!!! 』

2017年08月23日

Team Ear Music

1.Happy Chakra
2.一坪半 ~4.95m2 Dream~
3.携帯(一)
4.夏の歌
5.ムーンライト備忘録
6.今日はここで眠ろう
7.善良なメガネ
8.携帯(二)
9.Wedding Ring
10.星座の愛情物語~蟹座は愛し続けられるのか
11.自分を信じなきゃ
12.いつも信じて(「自分を信じなきゃ」日本語Ver.)

※(M2:m2は平方メートル)

リリース情報

シンリズム『Have Fun』

シンリズム『Have Fun』

2017年05月10日

FAITH MUSIC ENTERTAINMENT INC.

01. 彼女のカメラ
02. FUN!
03. 春の虹
04. ラジオネームが読まれたら
05. ATTACK! ATTACK! ATTACK!
06. Pure
07. 話をしよう
08. 遊びロック
09. ショートヘア
10. 長く続く道
11. Music Life

プロフィール

クラウド・ルー
(盧廣仲 ルー・グワンチョン)


1985年台南生まれ。大学1年の時、交通事故に遭ったきっかけで、入院中にギターを独学で始める。退院後の翌年、大学の音楽コンテストで優勝、現在の所属事務所にスカウトされる。
3枚のシングルを経て08年にアルバムデビュー。発売初週は台湾の多くのチャートで1位を獲得。その自然体と音楽性の高さで大ブレイク。
最も権威ある第20回金曲奨(ゴールデン・メロディ・アワード)では最優秀新人賞および最優秀作曲賞を受賞、その後も数々の音楽賞を総なめに。
これまでに、2016年など4度にわたり台北アリーナでのソロ・コンサートを開催。日本ではサマーソニック(2015)など日本のフェスにも参加。
2016年11月に初の日本でのワンマンライブ(東京、大阪)を開催、東京公演はチケット先行発売1時間で即完となる。
日々の生活からふと感じたことを純粋かつシンプルに表現するその音楽スタイルは台湾内外で反響を呼んでいる。



シンリズム

1997年7月17日生まれの神戸出身20歳。
作詞・作曲・編曲はもちろん、Vo,Gt,Ba,Key,Dr,Syn,Tb,プログラミングまでをひとりでこなすマルチプレーヤーにしてシンガーソングライター。
2015年5月、1stアルバム『NEW RHYTHM』をリリース。リード曲の『心理の森』がFM802、cross fmをはじめ、全国のFM・AMラジオ局で5月度最多となる33局のパワープレイ、スペースシャワーTVでは「Power Push!」にも選出された。
高校在学中に東名阪クアトロを含むワンマンツアーを成功させ、2016年春、音楽大学へ通う為上京。
2017年5月10日に、CM曲として話題になった「FUN!」を含む全11曲を収録した、2nd ALBUM「Have Fun」をリリース! そして、8月には2nd Tour「Have Fun」を東京・大阪にて開催し大盛況に終えた。

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