シンリズム×クラウド・ルー スペシャル対談 [後編]

クラウド・ルー×シンリズム | 2017.09.22

【特集】
台湾で圧倒的な人気を確立していて、先日リリースした最新アルバム『What a Folk!!!!!!』の日本盤が熱い注目を集めているクラウド・ルー。鋭いセンスに裏打ちされたフレッシュな音楽を次々発表し、今後の活躍もますます期待されているシンリズム。魅力に溢れたシンガーソングライター同士による対談の後編。
アーティストにとってのライブ、創作活動を積み重ねる上で避けては通れないスランプとの向き合い方、止まらない音楽への愛、ふたりにとっての象徴とも言うべきメガネについてなど、今回も幅広い話題で盛り上がりました。

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シンリズム:僕は楽曲を作る上で「メロディをグッとくるものにする」ということに重点を置くことが多いんです。そういうところはクラウド・ルーさんと重なるのかなと感じています。
クラウド・ルー:そうかもしれないですね。僕はよく曲を書きながら泣くことがあるんですよ(笑)。シンリズムさんは、どうですか?
シンリズム:僕も曲を書きながらいいメロディが出てくると、「ああ、涙が出てきた」みたいなことがあります(笑)。僕は曲を作り始めた後にライブをたくさん経験させてもらうようになったので、そこでも課題はいろいろあるんですよね。ライブの数をこなせばこなすほど表現力を磨くことができるのかなと思うようになっているんですけど、クラウド・ルーさんもライブは重要だと思いますか?

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クラウド・ルー:ライブは重要ですね。台湾も日本と同じようにライブハウスがたくさんあって、みんな50人とか100人のキャパから活動をスタートして、少しずつ規模を大きくしていくんです。僕もそういうところから始めたわけですけど、ライブで学んだのは音楽を伝えるということだけじゃなくて、「いかに自分の音楽を通して、聴いてくださるみなさんの心と繋がるか?」ということでした。
シンリズム:僕は自分自身が楽しんでいないと、お客さんにも楽しんで頂けないのかなと感じています。あと、僕はトークがすごく苦手でして…。今後、もっとライブをやることによって慣れてくるのかなと思っているんですけど、どうなんでしょう?
クラウド・ルー:ライブをたくさんやることは、やはり必要ですね。僕も実は最初の頃、トークがものすごく苦手だったんです。どちらかと言うと性格が人見知りで、恥ずかしがり屋なので。でも、何百回もライブをしたことによって、「ファンのみなさんは、ずっと会っていなかった友だちなんだ」と思って話をすればいいんだと考えるようになりました。自分をちゃんと持って、それをみなさんに伝えることができれば、受け入れてもらえると思っています。
シンリズム:僕は他のアーティストさんのライブを観て、「MCは、こういう風に喋るべきなのかな?」とか考えるんですけど、いざ、自分がステージに立って喋る場面になると、全然考えていなかった方向に話が行ってしまって、落としどころがわからなくなるんですよ(笑)。
クラウド・ルー:なるほど(笑)。僕もいっぱい他のみなさんのライブを観て研究しました。あと、いろいろな講演やトークショーの映像を観て、表情や心構えについて考えたこともあります。そういうのを踏まえながら自分に合ったやり方を見つけていきましたね。でも、デビューして10年くらい経って、やっと少しずつできるようなったのかなというくらいです。これだけ研究していても、まだまだなんですよ。シンリズムさんは、まだお若いですから、今からどんどん道が拓けていくと思いますよ。

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シンリズム:そうおっしゃって頂けて安心しました(笑)。
EMTG:今の時代はインターネットを通じて音楽とかトークとか、幅広い事柄について吸収しやすいと同時に、作ったものを発信しやすくもなっていますよね。
シンリズム:そうですね。僕は今の所属事務所の人に見つけてもらったきっかけがサウンドクラウドに上げた音源でしたから。
クラウド・ルー:今は発信するための方法が多すぎるという面もありますけど、どこか1ヶ所に投稿すれば、いいものは必ず見つけてもらえるんだと思います。いろんなものを観たり聴いたりするのは楽しいですし。僕はYouTubeを1日中家で観ていられるタイプです(笑)。
シンリズム:そうなんですね(笑)。休日は、どのように過ごしていらっしゃるんですか?
クラウド・ルー:音楽フェスに行くのが大好きです。
シンリズム:僕は映画が好きなので、映画館に行くことが多いです。それ以外はレコード屋さんに行ってレコードを漁ったりしていますね。
EMTG:おふたりとも、音楽から離れる瞬間はなさそうですね。
クラウド・ルー:僕も映画が好きなんですけど、映画を観たい理由は、「流れる音楽を聴きたいから」というのが大きいです。
シンリズム:僕も「この映画は良かった」と思うポイントが、「劇中でどれだけいい音楽が使われていたか?」だったりします。
クラウド・ルー:映画を観つつもそうなるのは、同じみたいですね(笑)。
シンリズム:そうですね(笑)。僕はいい音楽を聴いたり、いい映画を観ることによって、「今ならいい音楽を作れるぞ」という流れに行きやすいんですけど、クラウド・ルーさんにとっての曲作りのきっかけのスイッチって、どのようなものなんですか?
クラウド・ルー:いろいろなきっかけがあります。例えば、出かけるためにスニーカーを履いて紐を結んだ瞬間に突然降ってくることもありますし。そういう時は出かけるのをやめます。あと、友人と話をしている時に聞いた一言で、「これは歌詞に使えるかも」って思うこともあります。そういう時は友人を置いて、即、家に帰っちゃうんですよ(笑)。
シンリズム:(笑)僕も人と話していて、「これは題材にできそう」とか「歌詞のテーマにできるぞ」ということがあります。でも、「すぐ帰る方が作れるなあ……」と思いつつ、「じゃあ帰るね」とは、なかなかできないです。クラウド・ルーさんは、どうやって帰っているんですか?
クラウド・ルー:僕は曲を作るためには、何でもできるんです。だからさっさと帰ります(笑)。シンガーソングライターって、郵便配達員みたいなものだと僕は思っているんです。「空から降ってきたものをいかにみなさんに届けるか?」というような、手紙を届ける役割に近いことなのかなと考えています。
シンリズム:人と喋っていて、「これを後で曲にしよう」とメモっておきながらも、結局形にすることができなかった時、僕はすごく後悔するんです。だからクラウド・ルーさんの今のお話を聞いて、「その通りかもしれないな」と思いました。
クラウド・ルー:作った曲というものは、僕がこの世を去った後も存在し続けるんですよね。だから曲を作るっていうことを、僕はすごく大事にしたいんです。
シンリズム:とても勉強になるお言葉です。クラウド・ルーさんの最新アルバムは、スランプに陥った時期に台北から故郷の台南まで歩いて旅をした体験をもとに作ったとお聞きしているんですけど、僕も楽曲ができない時があるんですよ。本当に大きいスランプに陥るという経験をまだしていない分、曲ができないと焦りがちです。

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クラウド・ルー:10歳以上の年上の僕としては、そういう時の苦しい気持ちは、とてもよくわかります。僕の経験から言えるのは、人生には「最悪」というのはなくて、「もっと最悪」っていうものしか存在しないということですね。そういう「もっと最悪」というものがあるのだから、仮にスランプだと感じても現在の状況を深刻に考え過ぎずに、自分を信じて努力をして、それを音楽として記録していけばいいんじゃないですかね。それが転機にも繋がりますし、助けにもなるんじゃないかなと僕は考えています。
シンリズム:ありがとうございます。今日は学ばせて頂くことが多いです。
EMTG:今、クラウド・ルーさんがおっしゃったことは、「いつも信じて」(アルバム『What a Folk!!!!!!』に収録されている。「自分を信じなきゃ」の日本語版)という曲にも通ずるものではないでしょうか。
クラウド・ルー:はい。この日本語の歌詞は、写真家の川島小鳥さんに書いて頂いたんですけど、僕のアルバムにとって、とても大きな存在です。シンガーソングライターにとって一番幸せなのは、ファンのみなさんと一緒に成長して歩んでいけるということなんです。「いつも信じて」も、そういう曲だと思います。誰もが同じような経験をしているものですから、そういうものを共有しながら噛み締めて、「スランプに陥っているのは自分だけ」とは考えずに、「必ずわかってくれる人がいる」と信じていれば、前に進むことができるんだと僕は思っています。

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シンリズム:曲ができなくて落ち込むことがあったら、今日お聞きしたお話を思い出すようにします。
クラウド・ルー:これからも一緒に頑張っていきましょう。シンリズムさんは蟹座ですよね?
シンリズム:そうです。クラウド・ルーさんの誕生日は7月15日で、僕は7月17日なので、すごく近いんですよ。
クラウド・ルー:台北の蟹座は僕が代表して、東京の蟹座はシンリズムさんが代表して、これからさらに頑張って音楽を発信していきましょうね(笑)。そうやって繋がり続けられたら、いずれ一緒に何かできる日が来るかもしれないですよ。
シンリズム:はい。その時はぜひよろしくお願いします。
EMTG:変なことを突然お訊きするようで大変恐縮ですが……おふたりのシンボルといえばメガネですけど、蟹座同士、メガネのこだわりも似たところがあるんですかね?
クラウド・ルー:僕はメガネをかけると安心感を覚えるんですよ。だからメガネは安心感を重視します。
シンリズム:僕は目が悪くてずっとメガネをかけていて、高校の時はコンタクトレンズにしていたんです。でも、メガネをかけた方が安心感があるというのは、僕も一緒かもしれません。
クラウド・ルー:僕はメガネを外さなければいけない時は、とても不安になります。
シンリズム:その気持ち、わかります(笑)。今日はいろいろ勉強することができました。ありがとうございます。
クラウド・ルー:こちらこそありがとうございます。こうしてお会いできて、なんだか遠く離れたところにいる友だちのようにシンリズムさんのことを感じました。お互いに普段は海を隔てて暮らしていますけど、それぞれの場所で頑張りましょう。シンリズムさんのご活躍に期待していますし、お互いにいい作品を作り続けて、いずれコラボレーションができたらいいですね。

【取材・文:田中 大】
【通訳:星原 宣子 】

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リリース情報

クラウド・ルー『What a Folk!!!!!! 』

クラウド・ルー『What a Folk!!!!!! 』

2017年08月23日

Team Ear Music

1.Happy Chakra
2.一坪半 ~4.95m2 Dream~
3.携帯(一)
4.夏の歌
5.ムーンライト備忘録
6.今日はここで眠ろう
7.善良なメガネ
8.携帯(二)
9.Wedding Ring
10.星座の愛情物語~蟹座は愛し続けられるのか
11.自分を信じなきゃ
12.いつも信じて(「自分を信じなきゃ」日本語Ver.)

※(M2:m2は平方メートル)

リリース情報

シンリズム『Have Fun』

シンリズム『Have Fun』

2017年05月10日

FAITH MUSIC ENTERTAINMENT INC.

01. 彼女のカメラ
02. FUN!
03. 春の虹
04. ラジオネームが読まれたら
05. ATTACK! ATTACK! ATTACK!
06. Pure
07. 話をしよう
08. 遊びロック
09. ショートヘア
10. 長く続く道
11. Music Life

お知らせ

クラウド・ルー
(盧廣仲 ルー・グワンチョン)


1985年台南生まれ。大学1年の時、交通事故に遭ったきっかけで、入院中にギターを独学で始める。退院後の翌年、大学の音楽コンテストで優勝、現在の所属事務所にスカウトされる。
3枚のシングルを経て08年にアルバムデビュー。発売初週は台湾の多くのチャートで1位を獲得。その自然体と音楽性の高さで大ブレイク。
最も権威ある第20回金曲奨(ゴールデン・メロディ・アワード)では最優秀新人賞および最優秀作曲賞を受賞、その後も数々の音楽賞を総なめに。
これまでに、2016年など4度にわたり台北アリーナでのソロ・コンサートを開催。日本ではサマーソニック(2015)など日本のフェスにも参加。
2016年11月に初の日本でのワンマンライブ(東京、大阪)を開催、東京公演はチケット先行発売1時間で即完となる。
日々の生活からふと感じたことを純粋かつシンプルに表現するその音楽スタイルは台湾内外で反響を呼んでいる。



シンリズム

1997年7月17日生まれの神戸出身20歳。
作詞・作曲・編曲はもちろん、Vo,Gt,Ba,Key,Dr,Syn,Trb,プログラミングまでをひとりでこなすマルチプレーヤーにしてシンガーソングライター。
2015年5月、1stアルバム『NEW RHYTHM』をリリース。リード曲の『心理の森』がFM802、cross fmをはじめ、全国のFM・AMラジオ局で5月度最多となる33局のパワープレイ、スペースシャワーTVでは「Power Push!」にも選出された。
高校在学中に東名阪クアトロを含むワンマンツアーを成功させ、2016年春、音楽大学へ通う為上京。
2017年5月10日に、CM曲として話題になった「FUN!」を含む全11曲を収録した、2nd ALBUM「Have Fun」をリリース! そして、8月には2nd Tour「Have Fun」を東京・大阪にて開催し大盛況に終えた。

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