多くの創作活動との繋がりの中で制作された『音色パレットとうたことば』は、湯木慧の“生き様”を表現する大きな作品としての一部に。

湯木慧 | 2017.09.20

 今年2月に初の全国流通盤となるミニアルバム『決めるのは“今の僕”、生きるのは“明後日の僕ら”』をリリースした湯木慧。シンガーソングライターとして楽曲を制作し、ライブ空間やMVの場面装飾を手がけ、今年6月からは3ヶ月連続で初の個展を開催するなど、クリエイティブな才能を遺憾なく発揮している19歳のアーティストだ。今回はその個展や今後のツアー、また新たに発表された初のフォトブックなど、たくさんの要素との繋がりの中で制作されたという2ndミニアルバム「音色パレットとうたことば」について聞いた。

EMTG:2ndミニアルバム『音色パレットとうたことば』が完成しましたね。
湯木慧:はい。CDとしては出来上がったんですけど、私の感覚としては、今もまだすごく大きな<作品>を作っている感じなんです。同じコンセプトで繋がっている、デカいものを作っているというか。
EMTG:というと?
湯木:今年の6月から3カ月連続で初の個展をやっていたんですが、その個展とか今回のCD、ツアー、そして初めてのフォトブックなど、いろんなものが「音色パレットとうたことば」というテーマのもとで連動しているんです。もっと細かく言うとCDのトレーラーとか、MVとか、とにかくいろんなものが繋がって初めてひとつの作品になるようなイメージ。だから、今度のツアーでやっと湯木慧の「音色パレットとうたことば」が完成するって感じなんです。音楽の裏にある情景、情景から聴こえてくる音楽ーーその両方を表すっていう私の生き様みたいなものを、約5ヶ月かけて作品にしているような感じで。
EMTG:なるほど!
湯木:これまでライブでちょっと飾ったり、ライブペインティングをしたりすることはあったけど、作品として描き上げた自分の絵で個展を開くっていうのが夢だったんです。ずっとやりたかった個展が実現したのはすごく大きくて。その個展では弾き語りのライブもやっていたんですが、そこでは表現しきれなかったものが今回のCDになり、個展に来た方も来られなかった方も楽しんでいただけるように、フォトブックという形であの個展に広がりを持たせたりしているんです。
EMTG:フォトブックでは、絵を描いている過程なども見ることが出来るそうですね。
湯木:はい。絵を描いている瞬間を撮ってもらうっていうのは初めてで。白紙に私がどうやって絵の具を乗っけているのかとか、どんな表情で描いているのかとか、絵が完成するまでの過程も細かく記録されてるんですよ。自分にとっても新しい試みだったけど、きっとここから新しい湯木慧の一面みたいなものを感じてもらえるようなものになってるんじゃないかなと思います。
EMTG:CDに関しては?
湯木:CDだけ聴くっていう人もいると思うんですけど、CDはCDで、それぞれの曲が描いている景色だったり、歌詞カードのアートワークだったり、CDとしての音や色を楽しんでもらいたいんですよ。前作の時は収録されている曲のすべてが<生と死>というテーマで関連付いていて最後にオチがあるっていう構成だったから、ひょっとしたら今回曲だけを聴いて「バラバラだな」と感じる方がいるかもしれないけど、大きな意味で、みんなひとつのデカいパレットに乗っかっているというイメージなんですよ。それぞれの曲も、1枚1枚の絵も、それをまとめたCDもフォトブックも、5ヶ月間かけて作り上げている私のパレットなんです。
EMTG:そのイメージ、すごくよくわかります。では曲作りの面について伺っていきたいんですが、以前は負の方向に感情が動いた時に曲が出来ることが多いと言われてました。高校卒業~進学を経て、今回の曲作りに関してはどうでしたか?
湯木:今回は個展というものがまずあったので、曲も、色や情景が浮かぶものとして作っていきました。新しい出会いや人間との関わりの中で感化されて書くというよりも、まず背景があって、景色があって、その中で自分が曲を作っているような感じ。たとえば「アルストロメリア」は、夜空で、お花があって、そこにいる不安な気持ちを抱えた少年に何を言うかっていう物語として作っていきました。「万華鏡」は、回る万華鏡とかビーズの万華鏡っていう具体的なイメージを個展と結びつけながら作っていったもの。でも「碧に染めてゆくだけ」は今までの作り方に近いです。私自身のことを歌っているんですが、いろんな色に染められてしまってるんじゃないかっていう不安の中で、それでも明日は自分の好きな碧に染まってゆくだけだっていう原点回帰の歌になっています。
EMTG:たしかに、どの曲もちゃんと色彩を感じさせてくれますね。
湯木:さっきパレットの話をしましたけど、CDとして見た時に、暖色とかプラス的な色も入れたかったんですね。「魔法の言葉」はパレットの中のオレンジの部分を作りたくて入れた曲です。でもただのポップで優しい曲にはしたくないから、「最後は皆死ぬんだ」とか「どうせ一生一度の人生だろう」とか、ちょっと尖った言葉も入れてオレンジを表しました。
EMTG:「存在証明」は今年、19歳の誕生日に作ったそうですね。
湯木:19歳って、大人か子供かわからない境目にいる気がしたんです。個展の準備もしていたから毎日が本当に忙しかったし、自分としてはとてつもなく大きなものに向き合っている感覚だったので不安や焦りで切羽詰まっていたんですけど、今だからこそ、こういう時だからこそ歌える曲を自分の存在証明として歌いたいと思ったんです。
EMTG:前回の取材の時に、生きている証としてポロポロポロッとフンのように自分の気持ちを作品にして残していきたいと言われてましたが、「存在証明」という曲には、ちょっと違う意味合いがあるように思いました。
湯木:ポロポロ出てくるものっていうのは、私が創作するものの”生まれ方”として、溢れて出てきたものを形にしていることの例えなんですね。でもこの曲は、私の在り方を歌ったものなんです。曲が作れなくなった時は目で見えるものを信じて、目で見えるものが信じられなくなった時はあたたかい言葉を信じる。”生まれ方”もひっくるめて、私が私であるための生き方みたいなものを歌っているから、何年経ってもきっと大事に思う曲なんだろうなって思ってます。すでに、この曲に助けられてるんですよね。自分の曲だけど。
EMTG:この曲はどんな色のイメージなんですか?
湯木:今回のコンセプトからはズレてしまうかもしれないんですけど、この曲だけは何色かわからないんですよね。今回の曲の後ろには必ず色とか背景があるけど、この曲だけはないんです。自分のことって、自分がいちばん見えにくいじゃないですか。だから、わからないっていう意味での真っ白、何色にも染まることができる白、見えないけどそこにある無色透明みたいな感じというか。だからこそ特別だし、ずっと残るんだろうなって思うんです。
EMTG:このCDひとつ取っても、湯木さんにとって大きな意味を持つ”作品作り”であったことは間違いないですね。
湯木:はい。曲作りという面では新しい表現の仕方もわかりましたし、10代最後の年で、「存在証明」という曲が書けたこともすごく嬉しくて。みんながこの曲でどんな色を想像するかはわからないけど、自分としては、最後に白になれてよかったなって思ってます。すでに、来年から何色になろうかなって感じですけど(笑)
EMTG:9月30日から始まる「色彩ツアー」も楽しみです。
湯木:福岡、大阪、名古屋は対バン形式なんです。私だけだったパレットに各地でいろんな人の色が加わるので、どんな色彩が生まれるのか私も楽しみにしています。

【取材・文:山田邦子】

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リリース情報

音色パレットとうたことば

音色パレットとうたことば

2017年09月20日

LD&K

1.碧に染めてゆくだけ
2. アルストロメリア
3. 魔法の言葉
4. 万華鏡
5. 存在証明

お知らせ

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眠い 中国語
私が通っているクラスには、アジア圏から来ている留学生がたくさんいるんです。授業中、中国の友達に「眠いね」って言いたかったので検索したんですが、発音が難しくて結局言えませんでした(笑)


■ライブ情報

湯木慧”音色パレットとうたことば”
リリースツアー

09/30(土) 福岡ハナウタザッカテン
10/14(土) 大阪 cafe room
10/21(土) 札幌 musica hall caf
10/29(日) 名古屋 パラダイスカフェ21
11/03(金祝) 東京 三軒茶屋グレープフルーツムーン

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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