赤い公園 アルバム『熱唱サマー』への道程と今後について津野米咲(G)が語ってくれた。

赤い公園 | 2017.09.20

 佐藤千明(Vo)が脱退を表明したのは7月3日。それに揺れることなく『熱唱サマー』をリリースし、佐藤、津野米咲(G)、藤本ひかり(B)、歌川菜穂(D)の4人での最後のライヴ「熱唱祭り」を、8月27日にZEPP DiverCity TOKYOで成功させた赤い公園。最高の歌と演奏で全27曲を聴かせたこのライヴは、赤い公園の4人も満杯のオーディエンスも、言葉にならない思いをぶつけあった熱い祭りだった。その祭りを終えて、そこに至るまでの経緯、そして赤い公園のこれからを、津野米咲は忌憚なく語ってくれた。

EMTG:『熱唱祭り』お疲れさまでした。4人が全力で成し遂げた、心に残るライヴでした。終わってステージ降りた瞬間に4人で号泣したんじゃないかとか想像しましたけど?
津野:いや、ないです。最後の最後にチーちゃん(佐藤千明)がマイク落としたんで、爆笑です。
EMTG:スタートのSEが「千明音頭」。
津野:はい、本気で作りました。私の携帯の中に、チーちゃんの動画もヴォイスメモもいっぱいあるし、私のiTunesにはいろんなライヴ音源が入っていて、ということはMCとかもあって。そんな半端ないライブラリーからサンプリングして作ったんですよ。"ウケるー"の一言で片付けられましたけど。
EMTG:全27曲のセットリストに入魂ぶりが感じられましたけど、最新作『熱唱サマー』の曲がメインな感じでしたね。
津野:全曲やりました。他も可能な限りの曲を入れました。4人それぞれ思い出の曲とか違うと思うし、もっとやりたい曲はたくさんあったんですけど。でも自分たちにとっても、自分たちを最後まで連れてってくれるような、自分たちもお客さんになれる、みたいなセットリストでした。
EMTG:ライヴ中はどんな感じだったんですか?
津野:ライヴ中はマジでやること多くて、普通に1曲1曲で精一杯でしたね。それでいいんだって思う。って、やってる最中に思いました。チーちゃんも、最後だから死力を尽くします!って。今日で終わりなんですけど?って(笑)。
EMTG:ゲストに、ホーンズ、ギター、キーボードの方が入られてましたが、『熱唱サマー』もホーンとかストリングスとか豪華に入ってますね。アルバムでも1曲目の「カメレオン」が、ライヴではホーンズ3人が入った形での1曲目でアガりました。
津野:レコーディングに参加してくれたNATSUMENのホーンズは、ライヴでは1人違うんですけど、今までより音楽的なライヴをお届けするにはどうしたらいいか考えた時に、少し生に置き換える分量を増やしたかったんですね。ギターはアルバムでは2曲参加してもらったんですけど、2曲じゃ足りないぐらい必要だったので、大好きなギタリストに来ていただいて。「黄色い花」も、いつもはシーケンスで入れてるストリングスをブラスで入れてもらって。今までやりたいけど現実的じゃなかったことが、チーちゃん脱退のどさくさに紛れて、私の夢が叶っていたという。『熱唱サマー』をレコーディングしてる時は、ライヴをやる予定がなかったんで、調子に乗っていろいろ加えていて。だから再現することになってライヴはほんとに大変だったんですよ。
EMTG:ライヴの本編最後で歌った「ほら」は、『熱唱サマー』でも印象的な曲ですね。
津野:「ほら」は、私が高校の時に同級生と組んでいたバンドで作った曲なんですよ。赤い公園のみんなの先輩になるんですけど、そのバンドのヴォーカル(後藤麻由)が歌詞を書いていて。高3の文化祭のテーマソングで作って、体育館で全校生徒の前で演奏した。私が卒業して文化祭を見に行ったら、赤い公園がこの曲をコピーしてくれていて。私たちの青春の曲ですね。
EMTG:そんなストーリーがある曲とは!
津野:私、今まで作った曲の中でかなり好きで、でも自分で歌詞書いてないし、でもやるんだったら歌詞変えたくないし。だから赤い公園でやることないのかもって、思ってたんですけど、なんか今回すんなり入ってきて。やろうって言ったら、みんな、いいねって。私たちの誰も歌詞を書いていないというのがすごい良くて、より素直に自分の中に曲が入ってくる感じがありましたね。今回の「熱唱祭り」の前にこの曲を演奏したのは高3の時。それ以来だから、自分には2重に思い出があるような気がして、自分にとってのアンセムみたいなところがあったので、ライヴでもこの曲をやってる時は、さすがにウルッときましたね。
EMTG:高校時代の1ページという感じの歌詞ですよね。
津野:そうですね。ただ、ただ、いい歌詞だなって。"大人になった僕らは何をしているのかな"ってあるんだけど、その頃は本当にそういう風に思っていて。“大人になった私は赤い公園っていうバンドをやっててね、ヴォーカルが抜けちゃうんだ”って思いながら演奏してた。大人になったなあって思いました。
EMTG:この曲を作った頃に想像してたのと違ってました?
津野:まず、バンドをこんなに楽しくやってることを、想像してなかったですから。まだまだ希望の歌に聴こえるなって思いました。この曲は大人になればなるほど、グッとくるかもしれない。答え合わせみたいな曲。
EMTG:アルバムの中でも重要な曲?
津野:私にとっては特に重要な曲ですね。アレンジも当時とほとんど変わってなくて、スタジオでみんなの音をごちゃごちゃにしながら録って。チーちゃんもハンドマイクで歌って、音が割れてる。すごい楽しかったです。
EMTG:そう聞くと、『熱唱サマー』に青春ソングが多いのもうなずける気がします。
津野:そういうのは、もともと書きたいテーマではあったんですけど、「ほら」が引っ張ってってくれた部分はありますね。このアルバムって、恋も色濃いし、青春も色濃くて、ピンクと青! みたいな、グラデーションにならない感じで、曲を並べるのが大変だったんですよ。その中で蝶番みたいな役割をしてくれる曲がいくつかあって、「ほら」もそのひとつでしたね。
EMTG:というのは?
津野:「ほら」から「勇敢な子供」まで、意図してなかったけど組曲のようになっていて。「ほら」で“大人になったら何してるのかな”って言ってるのが「journey」で現実になって、「勇敢な子供」は家に帰って、“でもそんなにみんな強くないよね”って。最後の≪猫も杓子も天使の顔≫に尽きる。チーちゃんも、(歌川)菜穂も(藤本)ひかりも、きっとライヴにきてくれるであろうみんなも――これ作ってる時はライヴ前だったんで――みんな天使の顔だぜ、という願いを込めて締めくくる。組曲みたいな並びになりました。
EMTG:未来を感じさせるアルバムなんだと改めて思います。でも、このアルバムを作っている間に、佐藤さんの脱退が決まったんでしょう? 話しにくいかもしれないけど、経緯を話してもらえますか。
津野:先にシングルを3曲録って、アルバムを録り始めるあたりから、脱退するやも知れぬという感じで、録り終える頃には決まってました。でも具体的に、こういうことで脱退します、というのではないんですよ。言葉にならないようなものがずっと、チーちゃんだけじゃなくて、みんなにもあったから、止めないわけだから。たまに光になるけど、たまに冷たい鉛になるみたいな。それが同居してる感じをずっとみんな抱えてやってきて。それがとうとう、ということだったと思うんですけど。正直すごい寂しいことだけど、正直そういう空気から抜け出す、ホッとする気持ちもある。お客さんには申し訳ないですけど。空気を読んで気を使うのは得意じゃないけど、何でもかんでもあけすけってわけにもいかず、気を配りあうのがバンドだと思うから。
EMTG:津野さんの楽曲に、佐藤さんのヴォーカルは非常に重要だったんじゃないかと思いますけど、その辺の葛藤もあったのでは?
津野:もちろんすごく大事なヴォーカリストだし、チーちゃんは赤い公園の顔だと思ってるけど、私の曲の精神性とチーちゃんの歌との誤差があるというのを求めて、チーちゃんとやっていたので。私の思い通りになるのが赤い公園ではないから。何が正解かって思うものに向かって進むほど、正解はN極S極ぐらいに真逆になるんじゃないかってことが、すべての原因かなと思ってるんですけど。チーちゃんは、いろんなものを背負ってしまっていた。それを下ろすことができなかったのはお客さんには申し訳ないけど。今は私たちは、よく頑張ったんじゃないかなと思っています。チーちゃんも、もっともっと輝ける場所があるかもしれないって思ってるから、こういう決断を下したわけで。私たちもそう思ってるから、やってみてほしい。
EMTG:今後のことはどんな風に考えていますか。
津野:まだ何も決まっていないし、何ができるかやってみないとわからないし。可能性は、全部やってみますね。全く別物になるとは思いますけど、曲を作っている人間が同じだけで。できることを、やります、シンプルに。今は3人でしっかり何か見つけるまでやってみますけど、1年後は20人に増えてるかもしれない(笑)、何も確約できない。でも、赤い公園というバンドは意地でも残していきたいと思います。

【取材・文:今井智子】

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リリース情報

熱唱サマー

熱唱サマー

2017年08月23日

ユニバーサルミュージック

1.カメレオン
2.闇夜に提灯
3.AUN
4.最後の花
5.ジョーカー
6.プラチナ
7.恋と嘘
8.セミロング
9.BEAR
10.ほら
11.journey
12.勇敢なこども

《全12曲収録》

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