Anly 7枚目のシングルは渾身のバラード「Venus」

Anly | 2017.11.29

 大きな反響を呼んだ「北斗七星」に続いてAnlyがリリースする7枚目のシングルは、現在テレビ朝日系ドラマ『科捜研の女』の主題歌として流れているバラード「Venus」だ。孤独を抱えながらの日々の暮らしに、まるで輝く金星のように輝き寄り添ってくれるその曲は、シンガー・ソングライターとしてのここからの方向性をも予感させるよう。Anlyに話を聞いた。

EMTG:夏にリリースした6thシングル「北斗七星」は、Anlyさんがずっと大事にしてきた曲でした。あれを出したことで、何かひとつの区切りがつけられた実感があったのでは?
Anly:ありましたね。ライブで歌う度に「あれはなんていう曲ですか? いつCDになるんですか?」と訊いてくださる方がたくさんいたので、やっと形にできて、しかも弾き語りじゃなく、もっと世界観の広がった音で届けることができたのが、とても嬉しかった。その「北斗七星」をタイトルにしたツアーをやれたのも私にとって大きなことでした。
EMTG:今回の「Venus」はその「北斗七星」の次のシングルということもあって、聴く前からここからの方向性を予感させる曲になるんじゃないかと考えていたのですが、実際そういう曲になりましたね。
Anly:はい。星をテーマに書いたというところでは「北斗七星」から繋がっていますけど、サウンド面に関しては今までと違って8分の6拍子で表現することができた。プロデューサーでアレンジャーのJEFF MIYAHARAさんと一緒に音作りをしていくなかで、何か新しいものに触れられた気がします。
EMTG:作ったのはいつ頃なんですか?
Anly:最近です。ドラマ『科捜研の女』の主題歌というお話をいただいてから書き下ろしました。いつも音を録っている部屋にたまたまそのときはガット・ギターしか置かれてなくて、それを弾いていたらなぜか8分の6拍子のフレーズが出てきて、それを膨らませて作ったんです。レコーディングもそのままそのガット・ギターを使いました。
EMTG:スチール・ギターを弾く感覚とは、やはり違う?
Anly:違いますね。指弾きだけど、弦を掴んでいるような弾き方をしたからこそ、あのリズム感が出せたんじゃないかと思います。
EMTG:主題歌ということで、ドラマの制作サイドから「こういう曲を書いてほしい」というリクエストはあったりしたんですか?
Anly:女性への応援歌というテーマはおっしゃってましたね。それと主演の沢口靖子さんへの応援歌というふうにも言われていました。でも私が応援するまでもなく沢口さんは凛とされてる方なので、じゃあそんな沢口さんはどんなことを考えて17シリーズもこのドラマを続けてらっしゃるのかなって考えて。そこから歌詞を書いていったんです。ひとつのことを長くやり続けたり、もっと上を目指そうとするときって、外からは強く見えていても、内面に孤独感のようなものが必ずあると思うんですよ。でも、それでもひとりで頑張る。その“ひとりで頑張っている”イメージが、夜明けの空に浮かんでいる金星のイメージと重なって、そこから金星=Venusを軸に組み立てていったんです。
EMTG:このドラマにおける沢口さんの役柄をイメージしたんですか? それとも女優・沢口靖子さん自身をイメージしたんですか?
Anly: どちらもです。私のなかではリンクする部分が多くて。憧れの人ですね。お会いしたことはないけど、会っても何も喋れなくなっちゃいそう(笑)。それに私が小さい頃から続いているドラマの主題歌を歌わせてもらえるってことだけで、本当に光栄です。
EMTG:聴いていて映像が浮かび上がってくる曲だなと思いました。
Anly:メロディができた段階では草原とか空とかが浮かんでいたんですけど、デモを渋谷のスクランブル交差点のあたりで聴いてみたら、ふと「あ、この風景に合うな」と思って、頭にあった映像を渋谷に変えて書き始めてみたんです。
EMTG:都会で眠れない夜に押し寄せる不安や孤独感。Anlyさん自身、東京に出てきた初めのうちは、そういうものを感じていたわけですよね。
Anly:はい。自分のなかで辛かったそういう時期を思い出して、そんなときにこういう曲があったらよかったのになって。そんなふうにも思いながら書いてましたね。あの頃は辛くても、そういう自分にぴったり当てはまる曲がなかった。だから、できることならタイムスリップして、あの頃の自分にこの曲を聴かせてあげたい。
EMTG:以前の自分が“不安に潰されそうになりながらも何かを探していた”としたら、今は成長して“私があなたの全て受け止めたい”と大きく包む側だったりするのかな。
Anly:いえ、今でもどっちかひとつじゃなくて、両方あると思います。自分自身、不安を感じることもあるし、同じように今感じている誰かに対して“どんなときもひとりじゃないから”って伝えたい気持ちになることもある。相手をVenusと捉えることもあれば、自分がVenusのようにあなたのそばにいるよと感じてもらいたいところもあって、そういうふうに互いに見つめ合ってる雰囲気が出せればいいなと。私もあなたのVenusになれるし、あなたもまた誰かのVenusになれるんだよって感じとってもらえたら嬉しいですね。
EMTG:金星はいつも地球の一番そばでまわっている惑星ですからね。
Anly:はい。だから、いつもそばにいて思い合ってますよ、っていう。
EMTG:歌い方で意識したところはありますか?
Anly:高校で合唱をやってた頃の歌い方を少し意識しました。ブレスの長い歌い方。いっぱい息を吸ってから歌いましたね。それがこの曲に合うと思ったので。
EMTG:最後、「Can you shine?」と問いかけるように終わるのが、とてもいいなと思いました。
Anly:あ、それ、すごく嬉しいです(笑)。
EMTG:ではカップリング曲の話も。「Merry X’mas」はAnlyさんにとって初めてのクリスマスソングですね。
Anly:はい。沖縄生まれなので今までは冬の曲を書こうという気持ちにならなかったんですけど、書いてみたら面白くて。ザ・クリスマス!っていうコード感で書くことが新鮮で楽しかったです。
EMTG:歌詞に「雪だるまも溶けちゃうくらい抱きしめてね」という一節があるけど、沖縄だと雪だるまも……。
Anly:全然ない。本物の雪だるまを初めて見たのは3年くらい前だから、わりと最近なんですよ。エリック・クラプトンのライブを初めて観に行ったのが(2014年の)2月で、そのとき道端に誰かが作った雪だるまがあって、それをよく覚えてますね。まだ高校生のとき。
EMTG:Anlyさんにとって、クリスマスはどういうもの?
Anly:まず、キラキラしてるイメージですね。子供の頃のワクワク感は今も忘れられない。みんなが幸せに見える時期というか。街がイルミネーションに包まれるだけでワクワクしますね。
EMTG:伊江島のクリスマスはどんなふうだったんですか?
Anly:伊江島にも本気でイルミネーションを飾ってるおうちがあって、みんなでドライブしてわざわざそれを見に行く、みたいな(笑)。あとは教会でお菓子を食べながら歌ったり。それぐらいでしたけど、それでもワクワクしてました。
EMTG:じゃあ、東京のクリスマスには驚いたでしょ?
Anly:びっくりしました。本気度が違う(笑)。テーマパークみたいですよね。それとカップル率の高さ。クリスマスにカップルが歩いている光景は伊江島では見れなくて、みんな家族で過ごすのが当たり前なので、“わぁー、こんな感じなんだー”って驚きましたね。
EMTG:この曲は東京のクリスマス感が出てますよね。
Anly:そう、東京のクリスマス。街を歩いてウキウキする気持ちを書きました。悲しいクリスマスソングというものもあるけど、悲しい曲は書きたくなくて。20歳だから“20歳感”を出しちゃおうと(笑)。初めはモータウンっぽいグルーブがあったんですけど、そこにジェフさんがアグレッシブなドラムとか打ち込みとかを入れてくれて、さらにキラキラ感を出してくれた。歌も、始まりだけは静かに歌ってますけど、そこから想像を覆すテンションの高さで。思いっきりハッピーに歌ってみたんです。
EMTG:もう1曲はビートルズの「Come Together」。お父さんとよく聴いていた曲なんですか?
Anly:いえ、実はそんなに聴いてたわけじゃなくて。父も私もポール・マッカートニーはよく聴いてたけど、ビートルズ・フリークというほどではなかったんです。でも毎年行われている『Dear BEATLES』というライブイベントに今年出演させていただいて。そのときに坂崎(幸之助)さんと「ブラックバード」を一緒に歌って、「もう一曲、なんか好きなのを歌っていいよ」と言われたので、じゃあ今までやったことのない曲をやりたいなと。ちょっとブルースっぽい曲がいいなと思って探していたら「Come Together」に行き当たって、歌ってみたら拍手をいっぱいもらえたんです。それで気をよくして、フジロックでも歌ったんですけど。
EMTG:観ましたよ、フジロックのステージ。「Come Together」を弾き出した途端、僕の近くにいた年配の方がめちゃめちゃ喜んで、「フ~っ!」って声をあげてた(笑)
Anly:あははは。そうそう、イントロを弾いただけで「フ~っ!」って言ってる人がいて、さすがフジロックって思いましたね。まあ、そうやって歌ってきて、いい感じで温まってきたので、ここでこの曲を形に残しておきたいなと。ライブっぽく一発録りでやってみたんです。
EMTG:いつかロックの名曲カヴァー集なんていうのも聴いてみたいですね。ところで今回のシングルとは別の話ですが、ロンドン出身で今はL.A.を拠点に活動しているシンガー・ソングライター、メイジー・ケイの「Distance」という曲にAnlyさんが参加されてますよね。あれはどういう経緯で?
Anly:「Distance」をJEFF MIYAHARAさんがプロデュースされていて、その繋がりから歌わせていただくことになったんです。
EMTG:切なくて、すごく沁みるいい曲ですね。
Anly:嬉しい。ちょっと和風な感じもありますよね。桜がヒラヒラ舞っているような。日本語の歌詞は私とジェフさんで考えました。
EMTG:さて、2017年ももうすぐ終わりですが、Anlyさんにとってどんな1年でした?
Anly:あっという間の1年でした。「カラノココロ」(2017年1月リリース)が2年前ぐらいの気がする。すごい昔のような気がします。そこから始まり、やりたいと思っていたことがどんどん実現していった。フジロックにも出れたし、ツアーも2回やれたし、ライブを通して曲が育っていくことも実感できたし。ループペダルという自分にとっての相棒を見つけられたのもよかったですね。始めたのは高校を卒業してすぐですけど、今では本当に自分の相棒と呼べるものになって、おかげで新しい扉も開いていってる気がします。
EMTG:2018年はどんな年にしたい?
Anly:フェスにたくさん出たいですね。野外で歌うのはすごく楽しいので。あと、2ndアルバムを出すにあたって曲作りもしているんですけど、入れたい曲がもうたくさんできていて。たぶん何曲かは削らないといけなくなるくらい。こんな曲もあんな曲も入れたいし。今はまさにワクワク時期なんです。

【取材・文:内本順一】

tag一覧 Anly シングル 女性ボーカル

リリース情報

Venus

Venus

2017年11月29日

ソニー・ミュージックレコーズ

1. Venus
2. Merry X’mas
3. COME TOGETHER
4. Venus-instrumental-
5. Merry X’mas-instrumental-

お知らせ

■コメント動画



■ライブ情報

毎日がクリスマス 10TH ANNIVERSARY!
2017/12/10(日)横浜赤レンガ倉庫1号館 3Fホール

Anly 21st Birthday Live
2018/01/19(金) 渋谷eggman
2018/01/21(日) 梅田Shangri-La(大阪)

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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