本当の意味での“ロックバンド”に。飛躍的な進化を遂げたSHE’S 2ndアルバム『Wandering』

SHE’S | 2017.12.06

 本当の意味でSHE’Sが“ロックバンド”になった。12月6日にリリースされる2ndアルバム『Wandering』はそう確信をするのに十分な最高傑作だ。前作アルバム『プルーストと花束』から約11ヵ月ぶり、その間にはミニアルバム『Awakening』のリリースや生のストリングスとコラボした初のホールツアーを開催するなど、ハイスピードで制作とライブに打ち込んできたSHE’S。今作で飛躍的な進化を遂げた背景には、初めてプロデューサーを起用して片寄明人氏(GREAT3)を迎えたほか、錚々たるクリエイター陣が集結したという外的な要因もあるが、それ以上にいまメンバー全員が強い意志をもってSHE’Sをかっこいいロックバンドにするために真正面から向き合えたことが大きいと思う。今回のインタビューでは、リード曲「White」の多幸感を引き立たせるダークなアルバムの収録曲を中心に紐解きながら、彼らの核心にある魅力に迫ってみた。

EMTG:ちょっと予想を超えるぐらい良いアルバムでした。
井上竜馬(Vo・Key):でしょ?
全員:あははははは!
広瀬臣吾(Ba):「でしょ?」って。
EMTG:フルアルバムとしては前作『プルーストと花束』から1年も経ってないのに、よくここまで辿り着いたなと。作り終えたときは完全に空っぽになってたじゃないですか。
井上:たしかに『プルースト』のあとは放心状態で何も作る気がしなかったけど、そこからはまた聴く音楽もめっちゃ増えたんですよ。いままで新しい音楽を聴くときはYouTubeの関連動画だったんですけど、最近はサブスクでも聴き始めて。いろいろな音楽を発掘するのが楽しい時期だったんです。そのなかで自分が好きな音楽の傾向はUKに多いなっていうのに改めて気づいて、イギリスに行ったりしたので。それは大きかったかな。 
EMTG:他のメンバーもいろいろな音楽を聴く期間だったんですか?
広瀬:そうですね。俺はヘヴィな方向にいったかなあ。
井上:ああ、べビメタ(BABYMETAL)ね。
広瀬:(笑)……は新しいアルバムが出てないからあんまり聴かなかったけど、いままでガッツリは弾いてなかったヘヴィなものを聴くようになりましたね。
木村:今回はプロデューサーに片寄さんがいて、ドラムテックに白根(賢一)さんもいたから、その2人からいろいろな音楽を教えてもらったんですよ。
EMTG:え、ドラムテックは白根さんなんですか?
木村:そう、GREAT3のつながりで。
服部:片寄さんは僕の好きそうなギタリストを紹介してくれるんですよ。たとえばエアプレイ(デイヴィッド・フォスターとジェイ・グレイドンが80年代に組んだユニット)を教えてもらったら、そのギターを弾いてるジェイ・グレイドンのソロCDを貸してくれたりして。そういうのを聴いたら、いままでとは全く違うアレンジが出てくるんですよね。
EMTG:いまはバンドとして何か新しいものを吸収しないとダメだなっていうことを考える時期だったんですか?
井上:なんとなく自分のなかで「セカンドアルバムはめっちゃ良いアルバムを作らないといけない」っていうのがあったんですよね。それは「爆売れしてやる」っていう意味じゃなくて。ほんまに自分たちが120%納得できるアルバムを作りきらないと、後がないっていう危機感があったんです。だから今回はよりメロディを重視したし、片寄さんと一緒にしっかりと時間をかけて1枚のアルバムを構築していくっていう作業をしていったんです。
EMTG:いままでSHE’Sはプロデューサーを立てずに自分たちでやってきたバンドですけど、このタイミングで片寄さんと組んだのは、どういう意図があったんですか?
井上:この作品の前から、いつかプロデューサーを入れたいっていう話はあったんですよ。そうすることで自分たちがどうなっていくんやろう?っていう好奇心があって。それでSHE’Sにより近いところいるミュージシャンにお願いをしたかったんです。
EMTG:片寄さんと一緒に制作をするなかでどんな発見がありましたか?
広瀬:片寄さんはプレイヤーでもありボーカルでもあるので、メロディに対してのフレーズとかリズムのとり方を重要視されるんですね。だからプリプロではいつもよりさらに細かくフレーズを考えられたっていうのは大きいですね。
木村:でもプリプロで細かいフレーズを決めたあとは、僕がレコーディング中に細かいところを気にして「ここは大丈夫ですか?」とか聞くと、「流れが良かったらそれでOKだから」とか言っていただいて。音楽を作るうえで大事な部分は何かということを教えてもらいましたね。
広瀬:綿密に作っていくんだけど、いざ録るとなったらミスとかも気にせずに、しっかり曲の流れを捉えられれば大丈夫だからっていうことですね。
EMTG:栞汰くんはどうですか?
服部:音作りのときに片寄さんが「こんなエフェクターを使ったらどう?」って持ってきてくれたんです。今回、「Flare」ではファズ(エフェクター)をギターソロで入れてるんですけど、僕はSHE’Sでファズは使わんかなって思ってたところに、片寄さんが「何でも試してみようよ」って言ってくれたんですよね。
EMTG:自分たちのなかで勝手に作っていたルールを取っ払ってくれたんですね。
井上:僕の場合も、「ここのメロディを悩んでるんですよね」ってなったときに、「いまのノリで歌ってみてよ」って言ってくれて。試しに演奏しながら歌ってみたら、そのなかのワンフレーズを聴き逃さずに拾ってくれるんです。その集中力は絶対に自分にも必要やなと思いましたね。
EMTG:あと、今回アルバムを聴いて思ったのが、「Blinking Lights」とか「The World Lost You」みたいなSHE’Sらしいって曲って、いままでは竜馬くんの“歌”が引っ張ってる感じがしてたんだけど、ちゃんとロックバンドの曲になったなと思ったんですよ。
広瀬:うん。バランスが良くなってきましたね。
EMTG:片寄さんも、「J-POPのド真ん中を走るだけのバンドかと思ったら大間違いだ」っていうコメントを寄せてたし。今回のアルバムではよりロックバンドとしてのSHE’Sをきちんと表現したかった部分もあったんじゃないですか?
井上:うん。最近出した「Over You」とか「Beautiful Day」のミュージックビデオだけを見てると、僕たちってJ-POPっぽいバンドだなって思われがちかもしれないけど、そこだけじゃ終われないのがSHE’Sだと思うんですよ。いまはそれが前よりも見えてきてるから、よりロックバンドらしさを出せたらいいよねっていうのは片寄さんとも話しました。それで、「Blinking Lights」とかは、プリプロの過程でBPMを5早くして、よりロックに仕上げたんです。片寄さんとも「ロックの名曲みたいにしたい」っていうのは話したので。やっぱりその意識は強かったような気がしますね。それで「Flare」みたいな曲もできていったんです。
EMTG:なるほど。「Flare」と、それに続く「Getting Mad」がアルバムの前半にあることで、激しくてエモーショナルなSHE’Sを打ち出せてますもんね。
井上:やっぱり「Flare」みたいなエモい曲がSHE’Sを始めたときの核なんですよ。そこは失いたくないなと思って。いま振り返ると、(前作ミニアルバムの)『Awakening』は朝から夜になっていくっていう爽やかな作品だったから、こういう曲がなかったんですよ。でもアルバムではそれを見せたいっていうのはありましたね。いままでは「Getting Mad」はアルバムの後半に入れてたんですけど、前半のオラついたところに出したかったんです。
EMTG:意外とオラついたバンドであることが伝わっていないことにフラストレーションもあったんですか?。
井上:うーん、と言うより、やっぱりピアノが入ってる分、バラードがフィーチャーされやすいんですよね。なんせ僕が良い曲を書きすぎるので……。
EMTG:あはははは!自分で言っちゃうんだ。
広瀬:いまの太字にしといてください。
井上:僕がバラードで名曲を書きすぎるので(笑)、エモい部分が核にあるにも関わらず、そういうふうに見られないから。改めて「Flare」のような曲を大事にしたかったんですよね。
木村:今回こういう暗い曲をクローズアップしていくことで、よりライブでお客さんもちゃんと反応してくれるんじゃないかなっていうのはありますね。
井上:いまの「暗い曲」って言われるのは、ちょっと……心外だなあ(笑)。
木村:えっと……じゃなくて、ロックテイストのダークな曲で。
井上:必死に巻き返してる(笑)。
EMTG:でも、先日の草月ホールのライブでも思ったけど、「Long Goodbye」とか「Ghost」みたいな、暗めの曲ゾーンがけっこうSHE’Sのライブでは肝になりますよね。
井上:たしかに。たぶん、あれがSHE’Sなんですよね。
EMTG:最終的には光を歌うバンドではあるんだけど、その過程はめちゃくちゃ暗い。
井上:僕は「Long Goodbye」みたいな曲がいちばん歌ってて気持ちいいんですよ。暗いなかで光を求めていくっていうのは一貫して変わってないし、それが僕の歌いたいことやから。いろいろなことにチャレンジしながら、そこはずっと見せたいなとは思いますね。
EMTG:ちなみに今回はレコーディングに参加しているゲストミュージシャンも錚々たるメンバーです。ストリングスが四家卯大さん、ホーンが山本拓夫さん、さらにエンジニアはグレッグ・カルビって……あらゆる日本の名盤に参加している人たちっていう。
広瀬:そうなんですよね。レコーディングスタジオで作業をしながら、Mステをかけとったら、福山(雅治)さんのバックで山本さんがおって。「あれ? 山本さん?」みたいな。すごい人と一緒にレコーディングしたんだなあって思いました。
井上:山本さんと四家さんとか、それこそミスチルをやってる人ですよ。そういう人たちと一緒にクリエイトするのはワクワクしましたね。
服部:この人らがやってくれるんやって思うと、「すごいな」としか言えないです。
EMTG:実際、井上くんが考えたフレーズを弾いてもらったんですか?
井上:いや、いままでは僕が作ったのを弾いてもらってたんですけど、今回は丸投げをしました。これはもう僕が作るよりもやってもらったほうが面白いやろうなと思ったから。
広瀬:ほんまに周りだけ見たら、超一流の人ばかりですからね。
EMTG:それに対して確かにまだSHE’Sはキャリアが短いのは事実だけど、ちゃんと向き合えてるなと思いましたけどね。クリエイターとして対等であろうとしてる。
井上:そうですね。曲にも自信があったから引け目がなかったというか。「うわ、こんな人とやれるんや……」って言うよりは、「やった!」ってふつうに喜べましたね。
EMTG:ストリングスとホーンが入って、アルバムの集大成になるのが最後に収録されている「Home」ですね。デモの段階からこういう壮大なものをイメージしてたんですか?
井上:これはそうですね。唯一変わったのがピッコロを入れようと思ってところをティンホイッスルっていう楽器に変えたぐらいです。最初から(効果音の)車の音も入れてたし。
EMTG:レコーディングのなかでも最後のほうにできた曲だったんですか?
井上:ほぼ最後です。でも僕のなかではわりと早々にできていたから、そこに向かってアルバム全体を作っていくっていう作業だったんです。「Home」に向かってどんだけ「放浪」(= Wandering)できるか、いろいろな曲を作れるかっていうのはテーマでしたね。
EMTG:今回のアルバムで旅立ちから家に帰り着くまでをテーマにした作品にしたいと思った理由は何だったんですか?
井上:僕は昔からホームありきの旅みたいな感覚は強いんですよ。「帰ってくる場所があるからこそ旅に出るんだ」っていう意識を持ちながら、ひとり旅を始めたので。1曲目の「All My Life」では、旅で出会ったおじいさんに言われた言葉があって。右に行っても、左に行ってもいい、掴んでも手離してもいい。それがこの旅の答え合わせをしてくれる感覚だったんです。そうやって帰る場所があるから、いろいろな挑戦ができる。SHE’Sの芯があるからこそ、いろいろな楽曲のチャレンジができるっていうことも気づいたんです。それは自分だけじゃなくて、リスナーにとっても同じだと思うんですよね。もし家庭に居場所がないなら、SHE’Sの音楽とかライブを居場所にして帰ってくれたらいい。だから、今回は「All My Life」と「Home」ありきで全てが始まったし、それがなかったらこのアルバムは『Wandering』にならなかったと思います。
EMTG:わかりました。前作の『プルーストと花束』では竜馬くんの過去を辿る作品だったけど、今回はメンバー4人で音楽の放浪をできたことも大きな意味があったと思います。
井上:たしかにSHE’Sが、“この4人でやれる音楽は何なのか”っていうことが見えてきたなっていうのは作りながらも思ってました。今回は「放浪」っていうタイトルをつけたうえで、4人でどこまでいけるやろう?っていう気持ちで書いてたので。そのなかに栞汰のギターがあったり、臣吾とキムの育ってきたベースとドラムがあって、自分が作りたいものだけじゃなくて、そこを基準にして曲を作るのも楽しかったんです。バンドのクセやったりとか、SHE’Sの特徴をソングライターの自分が見えてきたのは良かったですね。
EMTG:アルバムを作り終えて、いまはどんな心境ですか?
木村:いまはすごく自信に満ち溢れてるというか。どこまでもいける気がしてます。
広瀬:キムにしては珍しいコメントや。
EMTG:ね、キムくんってこういうことを言わないタイプなのに。
井上:いまびっくりしたわ。
木村:この作品でもしっかり成長できたし、今年の夏にたくさんライブをやったことでも成長を実感してるので、いまは自信しかないです。
EMTG:本当にキムくんがそう言えるのも無理もないぐらい素晴らしい作品だと思います。
広瀬:100万枚売れます?
EMTG:えっと……100万枚は……。
全員:あはははは!
井上:困らせてる(笑)。
EMTG:ここで「100万枚売れる」って断言するのは嘘くさくなるけど、できるだけたくさんの人に聴いてもらいたいです。
井上:うん。最初にも言ったとおり、今回はめちゃくちゃ良いものを作りたいっていうタイミングだったから、ここですごいミュージシャンと一緒に作れたことも、バンドが良い波にのれる前兆でもあるんかなって思うし。これから先を信じたくなる作品になりましたね。

【取材・文:秦 理絵】

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リリース情報

Wandering

Wandering

2017年12月06日

ユニバーサルミュージック

1. All My Life
2. Blinking Lights
3. Flare
4. Getting Mad
5. Remember Me
6. White
7. Beautiful Day
8. C.K.C.S.
9. Over You
10. The World Lost You
11. Home

お知らせ

■ライブ情報

SHE’S Tour 2018 “Wandering"
<with guest>
2018/02/07(水) 松本ALECX
2018/02/09(金) 神奈川F.A.D YOKOHAMA
2018/02/11(日) 栃木 HEAVEN’S ROCK 宇都宮 VJ-2
2018/02/14(水) 滋賀U☆STONE
2018/02/15(木) 神戸VARIT.
2018/02/17(土) 三重 松阪M’AXA
2018/02/19(月) 京都MUSE
2018/02/21(水) 浜松 窓枠
2018/02/24(土) 盛岡CLUB CHANGE WAVE
2018/02/25(日) 郡山HIP SHOT JAPAN

<one man>
2018/03/02(金) 福岡 DRUM LOGOS
2018/03/03(土) 広島 クラブクアトロ
2018/03/09(金) 岡山 YEBISU YA PRO
2018/03/11(日) 大阪 なんばHatch
2018/03/17(土) 金沢 AZ
2018/03/18(日) 新潟 NEXS
2018/03/21(水) 札幌 ペニーレーン24
2018/03/23(金) 仙台 darwin
2018/03/31(土) 名古屋 ダイアモンドホール
2018/04/01(日) 東京 EX THEATER ROPPONGI



MERRY ROCK PARADE 2017
2017/12/23(土) ポートメッセなごや1号館~3号館

rockin’on presents COUNTDOWN JAPAN 17/18
2017/12/30(土) 幕張メッセ国際展示場1~11ホール、イべントホール

Livemasters Inc. countdown “GT2018"
2017/12/31(日) Zepp DiverCity

uP!!! SPECIAL LIVE HOLIC vol.13 supported by SPACE SHOWER TV
2018/01/12(金) 高松festhalle

uP!!! SPECIAL LIVE HOLIC extra vol.2 supported by SPACE SHOWER TV
2018/02/12(月・祝) 新木場STUDIO COAST

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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