試し書きコレクター寺井広樹がthe peggiesにラブコール!世界初の“試し書き”のみで作られた歌詞の誕生秘話

the peggies | 2017.12.05

 11月22日に配信がスタートした「I 御中~文房具屋さんにあった試し書きだけで歌をつくってみました。~」は、文房具店の試し書きだけで作った楽曲。全国の10店舗から収集した約1万2000枚の試し書き用紙に書かれていた言葉のみを使って作詞を行い、メロディをつけたのだという。このような斬新な試みは、もちろん世界初。MVも公開された直後から大きな話題を呼んでいる。北澤ゆうほ(Vo・G)と世界108ヶ国、約4万枚の試し書きを収集している試し書きコレクター・寺井広樹に、楽曲制作のエピソードや試し書きの深い魅力について語り合ってもらった。

北澤:初めて寺井さんにお会いした時、「試し書きコレクターの寺井さんです」と紹介して頂いたんですよね。私、「試し書きコレクター」というのがよくわからなくて(笑)。
寺井:そうでしょうね(笑)。
北澤:でも、「試し書きで曲を作ってみない?」というお話を頂いた瞬間、「面白そうだな」と思いました。どうなるのかわからな過ぎることを、メジャーデビューして約半年のタイミングでできるというのが嬉しかったです。
寺井:今回のコンセプトは「世界初の試みで、不特定多数のみなさんを作詞家にする」っていうことですけど、いつかやってみたいなというのはずっと思っていたんです。まさに理想通りの曲を作って頂けました。単語の羅列にはならなくて、さすがだなと思いました。
北澤:ありがとうございます。子供の頃に通っていた作文教室が糧になっています(笑)。
寺井:「今まで試し書きを集めてきたのは、このためだったのかな?」と思いました。今年、試し書きをコレクションし始めてから、ちょうど10周年なんです。今回の曲の配信日の11月22日が「試し書きの日」に制定されましたし、本当にありがとうございます。
北澤:こちらこそ、ありがとうございます。
EMTG:こうして出会った寺井さんに、ゆうほさんはどのような印象を抱いています?
北澤:褒め言葉なんですけど、話せば話すほど変な人過ぎて(笑)。先日、一緒に文房具屋さんを巡った時も、何気ない発言や行動の全てがぶっ飛んでいました。試し書きに興味を持つのも、「何でそこに?」ということですからね。
寺井:ベルギーで豚のイラストが描かれた試し書きを見つけて、試し書きの魅力にハマったんですよ。見た瞬間に「額に飾りたい。無意識のアートだな」と思いました。あれを超える試し書きはいまだにないです。家で綺麗に保管しています。湿気対策を万全にするために、猫のトイレ砂の上のところに飾っています。猫は飼ったことないんですけど……。
北澤:ほんと、そういうところもぶっ飛んでいますね(笑)。
寺井:子供の頃から友だちがいなかったんです(笑)。1人だと面白いものを見つけないと孤独ですから。何でも逆転の発想をするところがありました。例えば中華料理屋さんで「冷やし中華始めました」ってあるじゃないですか。「冷やし中華終わりました」ってなぜ書かないんだろう?とか。ずっとそれが引っかかっていて、お店の人に言ったら、「冷やし中華終わりました」っていう張り紙をしてくれるようになりました。
EMTG:それが後に寺井さんがプロデュースをするようになる『離婚式』の原点ですね。
寺井:まさにおっしゃる通りです。
北澤:寺井さんは、「ニュースや天気も試し書きでわかる」っておっしゃっていますよね。
寺井:はい。試し書きは、ツイッターやフェイスブックのウォールみたいなところがあると思っています。世の中の大体の情報がわかりますよ。「消費税増税」もわかりましたし。
北澤:試し書きを見ると、どんな人かもわかるんですよね?
寺井:年齢とか性別とか、大体予想できます。当たっているかどうかは別として(笑)。そうやって予想するのも楽しいんです。北澤さんの書く歌詞は深読みしたくなるんですけど、そこが試し書きと似ていると思っています。
EMTG:the peggiesと寺井さんの出会いによって生まれた「I 御中~文房具屋さんにあった試し書きだけで歌をつくってみました。~」は、「世界で初となる、文房具店の試し書きだけで作った楽曲」ですけど、どのようにして制作を進めました?
北澤:私は曲と歌詞を一緒に作ることが多いんですけど、今回は歌詞からでしたね。ユニークなコンセプトのお話だったので、「ユニークな感じの曲にしよう」と思いました。それで最初に書いたのは「ある程度言いたいこともあるけど、わりと面白さの方に重点を置いている」というもので、微調整の自分の言葉も少し入れていたんです。でも、その後の打ち合わせで、「“試し書きだから面白くできた”じゃなくて“試し書きなのにいい曲なったね”っていうギャップを活かしたいから、もっとメッセージ性とかを濃くして、100%試し書きでいきましょう」ということになったんです。
EMTG:紆余曲折があったんですね。
北澤:そうなんです。「もっと引っ掛かりのある曲にしたいよね?」っていうことにもなり、そこでみんなが「これだ!」と思ったのが《I 御中》という試し書きでした。もともとの歌詞は、サビの美味しいところにちょっと《I 御中》がくる感じだったんですけど、繰り返すことにして、今の形になりました。
EMTG:寺井さんからのリクエストは、どういうものでした?
寺井:単語の羅列だけにはしたくないというはあったんですけど、それ以外は自由に作って頂きました。「これ、使いたいなあ」っていう言葉をたくさん選んで頂けて嬉しかったです。試し書きってよく《ゲシュタルト崩壊》っていう言葉が出てくるんですけど、それを使って頂けたのは衝撃でした。「これは普通なかなか歌詞に使わないけど、選んでくださるとは、さすがのセンスだな」と思いましたね。
北澤:《ゲシュタルト崩壊》は、ぜひ使いたいと思ったんです。歌詞で並べた《I 御中》と《つまんない御中》は、それぞれ別の人の試し書きでしたけど、多分、最初に《I 御中》って書いた人がいて、それに対して《つまんない》って言っているんですよね?
寺井:そうそう(笑)。
北澤:他人同士のやり取りが試し書きの紙の上で行われているのが、面白いと思いました。
寺井:そういうところが、試し書きのツイッターみたいな部分なんですよ。
EMTG:寺井さんのプロファイリングによれば、《I 御中》と《つまんない御中》を書いた人それぞれのパーソナリティは?
寺井:《I 御中》を書いた人は、おそらく意外と若い人でしょう。《つまんない御中》を書いた人は、《I 御中》って書いた人に対して、コイツうまいこと言いやがってみたいなやっかみがあるんです。「線で消してやろうか?」っていうくらいの勢いですから。
北澤:試し書きは、すごく上手い絵があるのも面白いと思いました。
寺井:上手い絵、ありますね。あと、最近、インスタ映えする試し書きも出てきているんです。最近見たのは、シロップがかかったホットケーキの試し書きですけど、フォトジェニックでした。リア充ぶってる試し書きもありますよ。「遠距離恋愛中の彼氏からプレゼントが届いた?」とか。多分、届いてないんでしょうけど。
北澤:そんな(笑)。でも、たしかに本当に届いていたら、そんなこと書かないかも……。
寺井:そうなんですよ(笑)。世相が出ていますねえ。「いいね」を要求するようなものが増えてきていると感じています。
EMTG:寺井さんは、試し書きコレクターですけど、コレクションの秘訣はあるんですか?
寺井:ピックアップのタイミングが難しいんですよ。「もうちょっと放っておいたら、いい試し書きが書き加えられるかも」というのがあるので。そういう場合は試し書きの生態系を荒らさずに放っておくんです。
北澤:生態系(笑)。育てている感覚ですか?
寺井:はい。そういう場合は、写真だけ撮っておきます。
北澤:面白いことが書いてあると、それに感化されて、もっと集まるということですね?
寺井:そうなんです。試し書きの紙の上ではコラボレーションが行われているんです。でも、「もうちょっと育てよう」と思ってカフェで時間をしばらくつぶして戻ってみると、紙が回収されたりしているんですよね。そういう時は「何であの時、とっておかなかったんだ!」という後悔と自分に対する憎悪がすごいです。
北澤:失敗もあるんですね(笑)。
寺井:ありますねえ。
北澤:試し書きって、普通だったら思いつかないような言葉があるのが面白いと思いました。
寺井:そうなんです。無意識のアートなんですよ。
北澤:裸の状態の発想、何も取り繕っていない言葉が試し書きにはいっぱいありました。the peggiesの歌詞は「伝えるためにはどうしたらいいか?」って、自分の想いにいろんな洋服を着せるような感覚で形にすることが多いから、そういうのとはまた別の言葉に触れたのが新鮮だったんですよ。試し書きの言葉と向き合ったことで、自分の中での「自由」ということの幅が広がった気がしています。「意味があるようでいて、ないようでいて、ある」みたいな言葉とかを歌詞に入れても形になるし、人に伝わるんだというのもわかったので、もっともっと自由に書いていってもいいんだなと思うようになりました。
寺井:the peggiesさんの曲って、もともとそういうバランスがいいと私は思っていました。どんなユニークな歌詞でも、北澤さんが歌ったら、全部かっこかわいい歌になりますし。絶対的な強さがあるので、今回お願いしながら安心でした。「I 御中~文房具屋さんにあった試し書きだけで歌をつくってみました。~」は、恋愛ソングにも受け取れるし、深い人間讃歌としても感じ取れる曲ですよね。そうやって、いろいろな受け取り方ができるのが、the peggiesさんの音楽の魅力です。
北澤:ありがとうございます。今回の曲は書き終わった時に、「自分の歌詞になった!」って思うことができました。先日、ライブでやったんですけど、すごくいい色を与えてくれています。the peggiesの根本にある「面白いこと、楽しいことをやりたい」という子供みたいな無邪気な感じを世に伝えられるきっかけにもなったと感じています。このお話を頂いた時、メンバー全員で「面白そうだね」って話していたんですよ。形になったものを聴いて「いい曲になったね!」って、マキコとみくが喜んでいたのが嬉しかったです。
寺井:こうして素晴らしい曲を作って頂けて、私としても本当にハッピーです。私、人を泣かせる『涙活』っていう仕事もしているんですけど。泣ける曲もいつかthe peggiesさんと作れないかなと、スタッフの方に既にご相談させて頂いています(笑)。
EMTG:(笑)寺井さんは、怪談コレクターでもありますよね?
寺井:はい。最近、あの世にも精通しているので、あの世の歌もいつか作って頂きたいです。
北澤:あの世の要素はないバンドですけど(笑)。
EMTG:(笑)寺井さんは、the peggiesにハマっているそうですが、お好きな曲は?
寺井:「いきてる」が大好きです。
北澤:あれは私が最大に病んでいる時の曲です(笑)。
寺井:「ブリキ」も大好きです。あの曲は、へこんでいる時に聴くと不思議とテンションが上がるんですよ。
北澤:「ブリキ」、いいんですよ(笑)。「いきてる」も「ブリキ」も人気があります。女の子のバンドで、こういう「考えさせられる」みたいな方向の曲を作るのは、あまりないのかなと。そこにthe peggiesの個性を感じてくれている人もいるので、そういう曲を今の自分として作りたい気持ちもあります。それもメジャーで改めて発信したい部分ですね。
EMTG:では、そろそろ対談を終了しますので、最後にお互いにメッセージを交換してください。
北澤:はい。では、私から。寺井さんは本当に世界観がすごいので、これからも誰も手をつけていないことに、どんどん着手していってください。エンタテインメント性のある人なので、これからも楽しませて頂きたいです。
寺井:ありがとうございます。the peggiesさん、とても好きです。100年先、200年先も楽しませるような、歌い継がれる歌を作ってください。
北澤:とても嬉しいお言葉です。ありがとうございます。

【取材・文:田中 大】




■寺井広樹 プロフィール
寺井広樹

試し書きコレクター。1980年神戸市生まれ、同志社大学卒業
2007年、世界放浪中にベルギーで「試し書き」に一目ぼれ。
これまで世界108カ国、約4万枚の試し書きを収集。
試し書きコレクターのほか「離婚式」「涙活」の発案者としても知られている。
『「試し書き」から見えた世界」(ごま書房新社)ほか30冊以上の著書を出版。
現在、ニューヨークで「世界タメシガキ博覧会」を開催中。
アーティストとコラボして曲作りを行う。
http://tameshigaki.org/

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リリース情報

[配信]I 御中~文房具屋さんにあった試し書きだけで歌をつくってみました。~

[配信]I 御中~文房具屋さんにあった試し書きだけで歌をつくってみました。~

2017年11月22日

Epic Record Japan

01.I 御中~文房具屋さんにあった試し書きだけで歌をつくってみました。~

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リリース情報

super boy ! super girl !!

super boy ! super girl !!

2018年01月24日

Epic Record Japan

1. GLORY
2. ネバーランド
3. 恋の呪い
4. 遠距離恋愛
5. ハートビート
6. I 御中~文房具屋さんにあった試し書きだけで歌をつくってみました。

お知らせ

■ライブ情報

the peggies super boy ! super girl !! tour 2018 ~SUPERMARKET TRIP !!!~
02/21(水) 香川・高松DIME
02/23(金) 福岡・DRUM Be-1
02/24(土) 広島・CAVE-BE
03/04(日) 北海道・札幌COLONY
03/09(金) 新潟・CLUB RIVERST
03/10(土) 宮城・仙台 LIVE HOUSE enn 2nd
03/15(木) 石川・金沢 vanvan V4
03/17(土) 愛知・名古屋 CLUB QUATTRO
03/18(日) 大阪・梅田CLUB QUATTRO
03/25(日) 東京・マイナビBLITZ赤坂

DECEMBER’S CHILDREN
〜supported by J-WAVE SONAR MUSIC〜

2017/12/02(土) 赤坂BLITZ ※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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