大きく飛躍を遂げた、“グルーヴィスタ”Nulbarichの2017年を締めくくる2nd EP

Nulbarich | 2017.12.05

「NEW ERA」がHondaのCMソングとなり、ジャミロクワイ来日公演のサポートアクトとして日本武道館のステージに立つなど、話題に事欠かない2017 年を駆け抜けたNulbarichが、飛躍の年を締め括る新作EP『Long Long Time Ago』を発表する。JQのトラックメーカー的な資質がこれまで以上に反映された「In Your Pocket」をはじめとする多彩な4曲は、彼らの独自性を改めて印象付けるもの。新木場STUDO COAST 2デイズを含む来年のワンマンツアーも発表され、この勢いはまだまだ続きそうだ。

EMTG:『Long Long Time Ago』はこれまで以上にJQさんのトラックメーカー的な資質が強く出ている作品だと感じました。
JQ:トラックメーカーとしての部分をいかにバンドに落とし込むかっていうのは、Nulbarich結成当初からの課題だったので、「In Your Pocket」みたいなヒップホップな感じはずっとトライしたかったんです。夏前くらいから試行錯誤を始めて、でもできたのはホント最近ですね。
EMTG:改めて、トラックメーカーとしてのルーツを話していただけますか?
JQ:もともとDJプレミアが神と称されていて、そこを軸としつつ、NASとかKRS-ONEとか、ヒップホップアーティストがいっぱいいたじゃないですか? それを聴いて超かっこいいなって思ってたんですけど、ちょっとスタミナ使うジャンルだなって思ったときに、デ・ラ・ソウルとかを知り、クレバーな人たちがやってるちょっとライトなヒップホップって感じがスッと入ってきたんです。一番衝撃だったのはデラの「Ring Ring Ring (Ha Ha Hey)」のリミックス。ああいうサックスとか、ジャジー系のサンプリングにめっぽう弱くて。なので、ファンキー・DLとか、日本だとNujabesさんとか、その辺をひたすら聴いてました。プロデューサーとして一番影響されたのはジャスト・ブレイズで、ティンバランドとか、ファレル(ファレル・ウィリアムス)とか、そのあたりを聴いて、自分でもトラックメーカーを目指し始めた感じですね。
EMTG:「In Your Pocket」はちょっとティンバランドっぽさもあるなって思いましたが、実際の曲作りはどのように行ったのでしょうか?
JQ:今回自分たちで演奏したものをサンプリングして、パッドに落として、ヒットするっていう、セルフサンプリング的なやり方をしてるんです。しかも、サンプリングのために別曲を作って、それを贅沢にヒットするっていうのは今回が初めてで。作ってる側にしか違いは分かりにくいと思うんですけど、素材を組み合わせて一曲作るのと、コードが決まってて、それをただチョップしてるだけだと、グルーヴが全然違うんです。
EMTG:時間がかかったのは、特にどんな部分での試行錯誤が大きかったのでしょう?
JQ:もともとサンプリング系って、1ループの方がかっこいいっていうか、1ループにしたがっちゃうんですよね、僕が(笑)。なので、全然サビに行かないんです。作ってて、「行きたくない」ってなっちゃう。なので、2ウェイでできあがったサビメロとヴァースが全然繋がらなくて、それを上手くつなげるのに3か月くらいかかったんじゃないかな。
EMTG:1ループのかっこ良さは分かってるけど、Nulbarichでやるのであれば、はっきりとしたサビを作りたかった?
JQ:1ループの曲はすでに死ぬほどかっこいい曲が世の中にいっぱいありますしね。そこは先人たちの曲を聴いた方が絶対かっこいいんで。でも、今回別のやり方をやってみて、みんながやらない理由がよくわかりました(笑)。まあ、何とかまとまってくれたかな。
EMTG:2曲目の「Spellbound」は非常にサイケデリックで、THE LOW END THEORYのような、LAのビート・シーンを連想したりもしました。
JQ:今のヒップホップってホントに幅広くて、ポップスに侵食してるじゃないですか? 音色的にも、ビート感も、ヒップホップは常に新しいものを取り入れてるし、世の中もヒップホップの流行りをポップスに落とし込むのが速い。なので、「Spellbound」もLAっちゃLAだし、ポップスって言われたらポップスっていうか、もはやその境目はなくなってきてると思うんですよね。わかるのは西と東くらいっていうか、NYのヒップホップとウェッサイの差はわかるけど、それ以外はもういろんなところに侵食しちゃってる気がするんですよね。
EMTG:もはや「ヒップホップ=黒い」ということでもないですもんね。
JQ:そんなこと全然ないし、日本のアイドルの子たちのサウンドクリエイターとかも、全然808ビートだったり、クラブ系で言えば、ダブステップ使ってたりも全然ある。その垣根ってとっくの昔になくなってる気がするんで、そういう部分では特別意識はしてないです。まあ、「In Your Pocket」と「Spellbound」は東西で言えば逆のアプローチではあるんで、無意識にバランスを考えてそうしたのかもしれないですけど。
EMTG:3曲目の「Onliest」は音数を絞って、ちょっとファニーな曲調が印象的です。
JQ:「気まぐれな女子に翻弄される男」みたいな歌詞の世界観なんですけど、もともとはビンテージの機材のことを歌った曲なんです。ビンテージってすごい気まぐれで、メンテナンスに超時間かかるし、費用もかかるんですけど、でもいいときは超いい音を鳴らすから、「結局お前が手放せない」みたいな。そういうビンテージに対する想いって、すげえ小悪魔ちゃんに翻弄されてるやつっぽいなって思って、擬人化してみました。
EMTG:実際にビンテージの機材が使われてるんですか?
JQ:そうですね。前からもちろん興味はあったんですけど、手の届くものではなかったので、便利さで選んだものを使ってたんですけど、今は自分の音楽に集中できる環境にいるので、「一個のいいものを大事にする」っていう、やっとそういう気持ちになれて、ビンテージを買ってみました。そのときからモノに対する感覚が変わったというか、わがままなくらいの方が、すげえ愛着沸くんですよ。それで曲のコンセプトが生まれて、曲調にも合うなって思ったんです。
EMTG:4曲目の「NEW ERA(88 REMIX)」は一転、生バンドによるネオソウル風の仕上がりになっていますね。
JQ:これは生ドラムとウッドベースとローズをスタジオに持ち込んで録りたいっていう、ただの僕の夢っすね(笑)。ローズは憧れだったし、ウッドベースはヤバいし、ドラムもヤバいじゃないですか?(笑)自分の好きなベスト3の楽器のアンサンブルだけで一回作りたかったんです。ただ、新曲で一曲だけこのアレンジだと、バランス的にどうだろうと思って、「じゃあ、既存の曲のリミックスで」ってなったときに、この3つの楽器が一番フィットして、一番変化をつけられるのは「NEW ERA」かなって。実際に、いい化け方をしてくれたので、これに関しては大満足っすね。「NEW ERA」にはまた助けてもらっちゃったって感じです。
EMTG:『Long Long Time Ago』というタイトルの由来は?
JQ:いつか「昔々Nulbarichってやつがいてさ、あいつらやばかったんだよ」って言ってもらえるように、このCDが人の手を渡っていってほしいっていう想いを込めたタイトルです。そのくらい長い年月受け継がれて欲しいし、それくらい傑作だと思ってるし、今回のEPはすごく発見が多かったので、このEPのことはずっと忘れないだろうなってホントに思ってるんです。今年一年の経験のリアルタイムなメモでもあるし、ホントに貴重な一枚になったなって思いますね。
EMTG:2017年はNulbarichが一気に駆け上がった一年だったけど、逆に言えば、今のご時世一気に忘れ去られることもなくはない。でもそうじゃなくて、ちゃんと長く残るものを提示していきたいんだっていう、音楽家としての姿勢の表れでもあるように思います。
JQ:確かに、サイクルが速過ぎて、僕たち自身がついて行けてない部分があるし、「すごく注目されてますね」って言ってもらえてるけど、いつまでそう言ってもらえるかはわからないですしね。サイクルが速いと感じるのって、自分が遅いってことで、自分がもっと速くなればいいだけだから、もっともっと頑張らないとなって。スピードが速い分、ライブや曲の質が下がるんじゃ意味ないんで、作る曲は全曲フルスイング、ライブも全箇所フルスイングでやっていきたいですね。燃え尽きるまで……ホントに燃え尽きちゃったらすいません(笑)。

【取材・文:金子厚武】

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リリース情報

Long Long Time Ago

Long Long Time Ago

2017年12月06日

レインボーエンタテインメント

1.In Your Pocket
2.Spellbound
3.Onliest
4.NEW ERA(88 REMIX)

お知らせ

■マイ検索ワード

椅子 疲れない
今作業用の椅子がなくて、椅子ばっか調べてます。疲れない、ハイテクな椅子を探してるんですけど、「筋肉にフィットする」とか、なんかしっくりくるのがないんですよね(笑)。


■ライブ情報

Nulbarich ONE MAN TOUR 2018 "ain’t on the map yet" Supported by Corona Extra
03/14(水) なんばHatch
03/16(金) 新木場STUDIO COAST (追加公演)
03/17(土) 新木場STUDIO COAST
03/28(水) 仙台Rensa
04/06(金) 広島クアトロ
04/07(土) 福岡イムズホール
04/13(金) 名古屋ダイアモンドホール
※03/16、17の新木場STUDIO COASTは完売

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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