インディーズ時代のキュウソネコカミを彷彿とさせる遊び心溢れる4thアルバム

キュウソネコカミ | 2017.12.06

 キュウソネコカミが待望の4thアルバム『にゅ~うぇいぶ』を12月6日にリリースする。今作が「これぞキュウソ!」と誰もが膝を打ちたくなる作品になった理由は、ひとことで言うなら、吹っ切れたから。以下のインタビューでもカワクボが「いままで名作を作ろうと思ってた」と明かしているが、メンバーが勝手に背負っていた束縛から解放されたという今作にはインディーズ時代のキュウソを彷彿とさせる、やりたい放題で恐れを知らない遊び心が溢れまくっている。とはいえ、不倫がテーマの「ギラギラおじさん」や、ダメンズと付き合う女子の生態を歌った「自由恋愛の果て」という曲を紐解くと、少子化問題を斬り込む社会派キュウソも出現。「何も考えずに聴けばいい」という仮面をかぶりながら、実は伝えたいメッセージをあちこちに盛り込んだアルバムは、聴けば聴くほど好きになるはずだ。

EMTG:今回はザ・キュウソというアルバムになったんじゃないですか?
カワクボタクロウ(Ba):そう言ってもらえると嬉しいですね。
EMTG:自分たちでもキュウソの王道を目指した作品ではないんですか?
ヨコタシンノスケ(Key・Vo):結果的にはそうなったんですけど。
オカザワカズマ(Gt):好きなものを、“面白いな”って思いながら曲作りをしてたら、こうなっちゃったっていう感じなんですよ。
ソゴウタイスケ(Dr):何にも縛られずにインディーズ時代のときみたいに作ったというか。
ヨコタ:だから、曲作りが楽しかったんです。
EMTG:ということは、メジャーデビューしてからは何かに縛られていた?
ヨコタ:いや、そういうわけじゃないんですけど、勝手に自分たちで「こうしたほうがいいんじゃないか?」って作ってた曲があったのは間違いないんです。
カワクボ:たぶんちょっと前のタームは名曲を作ろうとして、がんばってたんですよ。後世に残るようなものを作ろうとしてたんですけど、もうやめました。「わかってんだよ」(2016年10月26日リリースシングル)ができたことで、「もう大丈夫だ」と思ったんです。
EMTG:たしかに、なんとなくキュウソって名曲を作ろうとすると……。
カワクボ:狙い過ぎちゃうんですよね(笑)。
ヨコタ:気張ってるのが見えちゃうんですよ。「わかってんだよ」もそういう曲だけど、僕はすごく好きで。でも、いま僕たちがやってもなかなか伝わらない。10年経ったらわかってくれる人が増えるだろうなとは思うんですけど。っていう長い目で見たときに、まだ僕らはデビューから2~3年だよなって気づいたというか。自分たちがやりたいことを楽しんでやってもいい時期だと思ったんです。
EMTG:いままで作ってきた曲も、「ファントムヴァイブレーション」とか「DQNなりたい、40代で死にたい」とか、名曲を作ろうとしなかったものが名曲になってますからね。
ヨコタ:そうなんですよね。だから今回のアルバムに入ってる「TOSHI-LOWさん」はキラーチューンを作るというよりも、単純にBRAHMANを意識したライブの展開を考えて作ったんですけど、思いのほか反響があるんですよ。
ヨコタ:それがインディーズのときの反応に似てるんですよね。
オカザワ:そうね。
EMTG:「TOSHI-LOWさん」を作るきっかけは何かあったんですか?
ヤマサキセイヤ(Vo・Gt):「サブカル女子」の歌詞で細美武士さんが登場してるのが、TOSHI-LOWさんの耳にも入りまして。“細美の曲があるらしいな。あいつだけずるいじゃねえか。俺の曲も書けよ”っていうヤンキーの先輩のノリみたいな感じで言ってもらったんです。
ヨコタ:近年、セイヤがTOSHI-LOWさんに気に入られたんですよ。細美さんもなんですけど。そこは誰も予想をしてなかった。“TOSHI-LOWさんと仲良くしてもらえるの?”って。
EMTG:セイヤくんがTOSHI-LOWさんとか細美さんみたいな、それこそ00年代からロックシーンで闘ってるような人たちに気に入られるのはどうしてだと思いますか?
カワクボ:ああ、なんでだろう……?
ヨコタ:僕らがセイヤから「バンドを組もう」って言われたときに、「こいつとなら」と思ったのと似てるような気がしますけどね。言葉では説明しづらいんですけど、やっぱり面白い奴じゃないですか。どっちかと言うと、セイヤは後輩よりも先輩に好かれるところがあって。「なんだ? この動きをするやつは」みたいな感じになるんでしょうね。
ソゴウ:大学生のときから先輩とライブをやってましたよね。
ヨコタ:たしかに見い出されたのはそうだった。
ヤマサキ:まあ、ついて行くほうがラクですよね(笑)。僕は道を示したりはできないので。
EMTG:そんなこともないと思うけど……。
ヨコタ:セイヤの場合は明確に何かを言うわけじゃないけど、行動とか歌でなんとなく道を示すというか、自分の考えを入れてるんだろうなっていうのはありますよね。正統派な曲じゃないやつで、自分の考えを楽しく言えるんだなっていうね。
EMTG:わかります。ちなみにアルバムのサウンド的には今回もネタの宝庫というか。「冬幻狂」は初のメロディックパンクですか。
ヨコタ:そうですね、そういうバンドを意識したんでしょうね(笑)。
EMTG:「ギラギラおじさん」では演歌を?
ヤマサキ:2回目ですからね。演歌をやるのは。
ヨコタ:あれに手応えを感じてないのに、「またやったのか!」っていう(笑)
ヤマサキ:俺らに波止場が主役の曲はいらんのにな。
ヨコタ:悪ふざけがすぎました。
EMTG:さっきの「TOSHI-LOWさん」もですけど、いままでもキュウソの曲って“なんちゃってオマージュ”みたいな曲が多いですよね。
オカザワ:みんな好きなんですよ。
ソゴウ:僕らはなんでもやっていい空気感を持ってるんだと思いますね。他のバンドだったら、「え?こんなん、このバンドじゃない」とか思われそうじゃないですか。僕らってそういうのをやっても、「まあ、キュウソだな」って思われるから。
EMTG:インディーズ時代から「いつかネタが尽きる」と言われ続けているキュウソですけど、そのあたりはどうですか?
カワクボ:たぶん尽きないと思いますよ。まだまだカントリーもジャズもボサノヴァもあるし、セイヤはそれに合う歌詞を書けるから無限大だと思います。
ヨコタ:テーマを探すことも、いまはあんまりプレッシャーじゃないと思うんですよ。「より面白いものをテーマにしなきゃいけない」とか「これに目をつけたか!」っていうところじゃなくてもなんとなく曲になっちゃう。「TaiFu is coming to Town」とかもそうで。台風がきて学校に行きたくないとか、思ったより大したことないじゃんとか、もしかしたら誰かが歌ってきたような曲も、セイヤの目で見たら違うふうに歌えるって思うから。もっとつまらないことがテーマでも面白いんじゃないかなと思いますね。
EMTG:セイヤくんは歌詞を書くというところでは今回はどうでしたか?
ヤマサキ:「俺は地球」とか「サクランボウイ」「自由恋愛の果てに」とかは苦労しましたね。
EMTG:「自由恋愛の果てに」は得意そうですけど。どういう部分で苦労したんですか?
ヤマサキ:もともと「自由恋愛」は「プロ彼女」っていう曲だったんですよ。芸能人の彼女になる人。でも、その意味を勘違いしてて。僕はバンドマンの彼女のことだと思ってたんですけど、調べたら本当に芸能人の彼女になるために意識高く鍛えてますみたいな人のことだったんです。で、「なんでお前に言われなあかんねんや!」っていう歌詞になりました。
EMTG:ダメンズと付き合う女子の歌。
ヤマサキ:それで婚期を逃すやつが多いなと思うんですよね。
EMTG:また女子を敵にまわるような発言を……。
ヤマサキ:いや、敵にまわすんじゃなくて、これは提案ですね。「あなたの彼氏は大丈夫ですか? わかるよ、クズ彼氏のほうが魅力的だよね、でも、結婚相手じゃないんじゃない?」っていう。昔はお見合いとかでしっかりとした男が用意されてたけど、いまは自由恋愛だから顔だけ好きでもいいわけじゃないですか。そうなったときの「果てに」の歌なんです。
ヨコタ:あ、そういう意味だったんだね。
EMTG:意外と少子化問題につながる深い話でもあるというか。
ヤマサキ:そうなんですよ。少子化がいちばん嫌なんですよ。もっとなんとかしたらいいのにって思う。もっとテレビでエロを放送したらいいんじゃないかと思いますね。隠し過ぎた結果、意味わからない日本になってる気がするので。
EMTG:それで言うと、「サクランボウイ」も童貞の男の歌だから、これも同じカテゴリーの社会問題として対になってる気がします。
ヨコタ:男は男でっていうね。どっちもこういう状況を作ってるんだぞと。
ヤマサキ:日本の人口が増えていけばいいと思いますよ。
EMTG:正論ですけど……これ何のインタビュー?っていう方向ですけど、大丈夫かな。
ヤマサキ:大丈夫です(笑)。いま個人の生活が華やか過ぎるんですよね。それが子供を産んだら地味になる。自分のオシャレなんか気にしてる場合じゃなくなるわけで。
ヨコタ:損したっていうふうに思う人もいるんですよね。
ヤマサキ:ちょっと男と女で不公平も感じますよね。子どもができても男は働けるけど、女の人はちゃんと子どもにつかないといけない期間があるから。
EMTG:男の人はいつまでも「ギラギラおじさん」(不倫がテーマの曲)でいられるけども。
カワクボ:つながるなあ(笑)。
EMTG:そうやって『にゅ~うぇいぶ』を聴くと、キュウソが歌ってることって社会問題に密接に関わってるってことですよね。
ヨコタ:一見、社会を斬ってないように見えて小突いてるんです(笑)。
EMTG:セイヤくんの意図として、そこまで聴く人に読み取ってほしい?
ヤマサキ:それは無理でしょ。わかりやすいものをリスナーは求めてるから。
EMTG:「5RATS」でも“上積みだけしか見てない奴に言われっぱなしです”って歌っているように?
ヤマサキ:そう。だから僕らも表に出す曲はわかりやすくしてるんです。あまりにも時代に沿わないと結局死んじゃうだけだから。僕らは似たようなことをやってても一応生きていける業界なんですよ。でも売れるのは時代に沿わないことをいちばん最初にやったやつらで、2番手、3番手が苦労してるのも見てるし。そういうのを踏まえたうえで、表に出るやつはわかりやすいやつにして、アルバムのなかにこれだけの幅を出したんです。
EMTG:たぶんキュウソがバンドとしてやりたいことをできるのは、シングルよりもアルバムのほうなんでしょうね。
オカザワ:本当にそれ!
ヨコタ:今年はちょっとシングルを出しすぎたよな。
ソゴウ:シングルモードが長かった。
カワクボ:一面しかないバンドじゃないんだから、シングルじゃダメだよね。
ヤマサキ:ふつうのバンドだったら、しばらくの方向性を出すのがシングルになると思うんですよ。でも僕らは1枚出したら数ヵ月間は「これ」って思われる。で、次に出したら、「あれ?」みたいな。で、その次に出したら、「こっちに戻ったんだ」っていうふうに、出すたびにぐらぐらされるから、シングルは向いてないと思うんですよね。
ヨコタ:今回、最終的にアルバムにはクセの強い14曲が収まってくれたし、何よりも「☆断捨離☆」とか「ギラギラおじさん」みたいな曲を思い出せて良かったなと思ってます。
EMTG:最後にアルバムのタイトルを『にゅ~うぇいぶ』にしたのは?
ヤマサキ:いままでのフルアルバムのタイトルがお固いっていう(笑)。
ヨコタ:『人生はまだまだ続く』。
ソゴウ:『10代で出したかった』『大事なお知らせ』……。
ヤマサキ:全くポップじゃない(笑)。
ヨコタ:そこからスタートして考えたときに、「わかってんだよ」の感じに引っ張られないようにはしましたね。「いま、俺たちはここにいる!」「まだまだやれる!」とか、どう考えても自分たちが伝えたいことは重いってなったときに、そういうところの発信からは外したやつにしたかったんです。そしたら、セイヤが「ニューウェイブは?」って。
ヤマサキ:ポッと出たよな。
ヨコタ:そのときに目から鱗だったんですよね。言ってるテーマにしても、さっき言ったような社会を斬ってるっていうふうには思わせずに、蓋を開けたときに斬ってるほうがより威力が増すというか。最初はそういうつもりで聴いてもらわなくていいから、途中で「え!?思ってたよりすげえやん」ってなってもらえたらいいんです。
EMTG:入口はポップだけど、意外と重い。
ヨコタ:で、その「意外と」の部分は、みんなにわかってもらえなくてもいいんです。
EMTG:でも、そこまで何回も聴き込んでいろいろなことに気づくと、今回のアルバムはセルフタイトルにしてもいいぐらいの作品だってわかると思います。
ヨコタ:そうなると良いですね。僕らもセルフタイトルの案はあったんですよ。でもそれを言っちゃうと自分たちでもハードルを上げ過ぎちゃう。あとね、「渾身の」って言い過ぎると、みんな引くんだっていうのもわかったんです(笑)。それは俺らには合ってない。
ヤマサキ:セルフタイトルが向かないよね。
ヨコタ:自分たちでもめちゃくちゃ楽しく和気藹々と作ってたぶん、セルフタイトルは自分たちでも持て余すんじゃないかなって。好き放題でやってこそがキュウソだよっていうのがわかってくれたらいいから、最終的に『にゅ~うぇいぶ』で腑に落ちたんです。

【取材・文:秦 理絵】

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リリース情報

にゅ〜うぇいぶ

にゅ〜うぇいぶ

2017年12月06日

ビクターエンタテインメント

1. 5RATS
2. サギグラファー
3. メンヘラちゃん
4. TOSHI-LOWさん
5. ☆断捨離☆
6. 自由恋愛の果てに
7. NO MORE 劣化実写化
8. ギラギラおじさん
9. 冬幻狂
10. 邪邪邪 VS ジャスティス
11. TaiFu is coming to Town
12. 俺は地球
13. サクランボウイ
14. わかってんだよ

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お知らせ

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■ライブ情報

ヒッサツマエバ〜とぎなおし〜’17-18ツアー
12/08(金) 川崎CLUB CITTA’
12/09(土) 松本Sound Hal
12/11(月) 岐阜club-G
12/12(火) 浜松窓枠
12/14(木) なんばHatch
12/18(月) 奈良NEVER LAND
12/20(水) 滋賀U☆STONE
【2018年】
01/12(金) 岡山CRAZYMAMA KINGDOM
01/14(日) 松江AZTiC canova
01/16(火) 周南RISING HALL
01/20(土) 松山WstudioRED
01/21(日) 高知CARAVAN SARY
01/23(火) 福井CHOP
01/24(水) 金沢EIGHT HALL
01/30(火) 徳島club GRINDHOUSE
02/01(木) 名古屋DIAMOND HALL


DMCC REAL ONEMAN TOUR 2018 -Despair Makes Cowards Courageous
03/02(金) Zepp Sapporo
03/04(日) 仙台PIT
03/08(木) 福岡DRUM LOGOS
03/10(土) 熊本B.9 V-1
03/11(日) 鹿児島CAPARVO HALL
03/15(木) 新潟LOTS
03/17(土) 富山MAIRO
03/21(水祝) 広島BLUELIVE
03/24(土) 高松festhalle.
03/29(木) Zepp Nagoya
04/05(木) 新木場STUDIO COAST
04/06(金) Zepp DiverCity
04/14(土) 神戸ワールド記念ホール
04/21(土) 台湾・台北WALL

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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