amazarashi ニューアルバム『地方都市のメメント・モリ』をライター対談で紐解く

amazarashi | 2017.12.27

 2017年3月29日に、初のベストアルバム『メッセージボトル』をリリースしたamazarashi。バンドの原点と軌跡を形にすることで、“宛てのない手紙であり、願いであり、SOS”だったそれまでの活動に区切りをつけたようにも感じられた。そして同年12月6日。4枚目となるオリジナルアルバム『地方都市のメメント・モリ』をリリース。果たして新作には、どんな変化が刻まれていたのか。最新作を紐解くべく、音楽ライター・伊藤亜希、秦理絵の対談を企画。ライター歴、そしてamazarashi歴も違う2人が、新作のレビューから今後期待する活動まで、たっぷりと語ってくれた。


【プロフィール】

伊藤亜希
ライター歴32年。amazarashiはデビュー当時から知る。ファンクラブの密着取材の楽屋で、秋田ひろむさんの鼻歌を聴いたのがいい思い出。


秦 理絵
ライター歴10年。amazarashiを初めて見たのは約3年前。360°ライブでオフィシャルライターを務める。いつか秋田ひろむさんに直接インタビューするのが夢。


amazarashiの核となる世界観、そして今作から感じる変化とは?

伊藤亜希(以下、伊藤):アルバム『地方都市のメメント・モリ』どうだった? 音源届いた直後に“メメント・モリ”検索した?
秦理絵(以下、秦):それ、私、ミスチルが好きなので知ってたんですよ。「花 -memento mori-」っていう曲があって。死を愛するとか。直訳すると、必ず死ぬことを忘れるなっていう意味のラテン語ですよね。
伊藤:すごい(笑)。私は調べて知ったんだけど、古代ローマの話とかにつながっていって、面白かった。
秦:amazarashiっぽいですよね。ずっと死ぬことを歌い続けることで、生きることを歌ってきたアーティストだから。
伊藤:そこが、このバンドが、多くの人に支持された理由のひとつだと思うんだよ。生への執着というか、生きる時間は限られている……ということを思い出させてくれる。だからどの曲も、未来を歌っていても、すごく刹那を感じる。生命の刹那っていうか。
秦:そういう意味で今回のアルバムはamazarashiのこれまでの世界観を引き継いでるんですけど、より秋田ひろむのパーソナルな生き方とか故郷への想いが滲み出た作品だと思うんですよね。メジャーデビューから5年が経って、ベストアルバムも出したことで、より自分を剥き出しにできるようになった。だからこそ人間の温もりが強く出てるのが、いままでと違うと思いました。
伊藤:あぁ、温もりって、わかる! 温かさ、優しさ、みたいなキーワードは、私も聴いてて浮かんできたんだよね。で、何でだろうって考えた時に、他人との距離が縮まった、縮めようとしているんじゃないかなと思った。この場合、他人=聴き手でもあると思うんだけど。歌を届けたい相手がはっきりしたことで、相手の体温を感じることができたのかもしれない。それは逆を返せば、聴き手は秋田ひろむの体温が感じられるってことなんじゃないか、と。これまでなかった触感、温度という感覚をサウンド全体で他人と共有しようとしている気がする。

収録曲から選ぶ、一番好きな曲。その理由とは?

伊藤:具体的な話もいこうか? ズバリどの曲が好き?
秦:迷わず「たられば」なんですよね。初めて聴いたのが、『メッセージボトル』のツアーだったんですけど、この曲って秋田ひろむの人生そのものじゃないですか。人生こうだったら良かったのにって、一見ネガティブなんだけど、そうやってやり直したら“果たしてそれは僕なんだろうか”って終わるのを聴いたとき、震えました。こんな人生讃歌はないぞって。
伊藤:歌詞からセレクトしたってこと?
秦:そうですね。で、面白いと思うのが、amazarashiの初期の曲で「光、再考」っていうのがあるんですけど、そこでも“生まれ変わったら”って歌ってるんですよ。今度こそ自分を愛せるかなあって。同じ“たられば”なんだけど、違う終わり方をしてる気がするんですよね。「光、再考」のときも自分を肯定しようとしてたけど、うまくできなかった。でも、「たられば」は自分を正面から肯定できるようになった、いまの秋田ひろむだからできた曲だと思います。
伊藤:今、目から鱗が落ちた! ものすごく納得した。表現者としてのテーマ変わってない。でもやっぱり内面的な変化もあって、具体的に歌詞にも出てきてるんだね。腑に落ちたわ~。
秦:伊藤さんは何が良かったですか?
伊藤:私も第一印象では、迷わずなんだけど「ワードプロセッサー」。サウンドで選んだ。どうしても最初はサウンドやアレンジで選んじゃう傾向がある。面白いかそうじゃないかという、感覚的な判断ができるから。理由がいらないからね。だから、その初期衝動を大切にしました。ですが、理由もちゃんと整理してきました。でないと、ライターやってる意味がない。
秦:その心は?
伊藤:まずはamazarashiのパブリックイメージをしっかり受け継いだ王道のアプローチであること。もうひとつも秋田ひろむのポエトリーリーディングが、今の時点での最高峰であること。この曲のスピード感や、リズムの一部を担っている。でももっとすごいと思ったのは、単語の意味が彼の口から発されると同時に入ってくること。思考回路を通らないで、プリミティブな状態で、ダイレクトに入ってくるんだよね。イメージとしては、彼らのライヴの映像で言葉が降ってくるような演出があるじゃない? あれをサウンドでもやっちゃってるじゃんって思った。これはすごく衝撃だった。秋田ひろむ、闘ってんなぁって思った。
秦:へえ、ラップがリズム楽器なのはわかりやすいけど、ポエトリーリーディングなのにリズム楽器として成立してることが画期的なんですね。すごい分析!
伊藤:ありがとうございます。なんか偉そうですね、私。

amazarashiを聴くと不安になる? amazarashiの音楽が持つ力とは。

伊藤:私、この機会に、秦さんの世代に是非聞いてみたいことがあったんですが、いい?
秦:なんですか?
伊藤:amazarashiを聴いてて、無性に不安になることってない? 勝手にリスナーの皆さんと同世代かなと思って。それで質問してみたいと思ったんだけど。
秦:それって、伊藤さんはamazarashiを聴くと不安になるからですよね?
伊藤:違うの。逆。安心するんだよ。
秦:え!? それだったら私も一緒ですよ。安心します。
伊藤:なんで安心するの?
秦:それはもう言うまでもないかもれないけど、代弁してくれるから。バカにされて悔しいとか、あらゆることに意味を求め過ぎる世の中へと憤りとか、私だけが持ってる感情じゃないんだっていうのを気づかせてくれる安心感ですよね。そのうえで前を向いて戦っていける力をくれるのが私にとってのamazarashiの音楽なんです。
伊藤:なるほど。私の場合は、共感じゃないんだね、正直に言うと。私、本人よりもamazarashiのメインリスナーよりも年代が上なんだよ。申年なんだけど。で、下の世代に、こういう風に世間をとらえて、もがいて、答えを出そうとしている表現者がいて、それを支持する層もたくさんいる。しかもどんどん増えていて、全国ツアーの規模も拡大してるじゃない? この事実でも安心するし、未来は自分で決めるものなんだと改めて思う。なんか、この若者たちに、この音楽に素直に期待していいんだな、期待する人たちがいるっていう、そんな安心感。
秦:そっか……。いや、その言葉うれしいです。安心の意味は全然違うけど、伊藤さん世代の人にそういうふうに届いているっていうのは感激しました。
伊藤:彼らの音楽を聴いていて、まぁ、自分の嫌なところをつきつけられて、ハッとする痛さは毎回あるけど、それよりもamazarashiが作り出したこれからの方が、大きい。楽しいよね、考えるだけで。ちなみにさ、もう、2人の立場は置いといて、これからのamazarashiにどんなことして欲しい?
秦:どういうことをしてほしい?……この伊藤さんの分析のあとに付け加えることって何もないんですけど(笑)。とりあえず、Mステに出てほしい。
伊藤:あのプロジェクターを持ち込んでね(笑)。
秦:そうそう。あのライブのやり方だと、どこでもできるわけじゃないから、初めてフェスのステージで見たときに感動したんですよ。その場所で初めてamazarashiを知った人が明らかに衝撃を受けてるのが快感だったんですよね。だから、それをお茶の間にも広げるためにMステとか……あわよくば紅白とか出てほしい!
伊藤:いいね! 紅白にもあのプロジェクター持ち込んでね。私はフリーライブとかかな。ゲリラライブ的な。あとは、高校とかの学園祭でゲリラライブ。ゲリラ2回続いちゃったけど。
秦:ゲリラ豪雨的な! 雨ざらしだけに。
伊藤:オチたね(笑)。滲み出る昭和感が出ちゃったけど、大丈夫かな。私は大丈夫だけど。でもいいか、音楽シーンに登場したときも、ゲリラ的だったじゃん、amazarashiって。


amazarashi 秋田ひろむ 弾き語りライブ「理論武装解除」
2017.12.07@舞浜アンフィシアター ライブレポート

http://music.emtg.jp/liveReport/201712111134b009c

tag一覧 J-POP アルバム インタビュー 男性ボーカル amazarashi

リリース情報

地方都市のメメント・モリ

地方都市のメメント・モリ

2017年12月13日

SMAR

1.ワードプロセッサー
2.空洞空洞
3.フィロソフィー
4.水槽
5.空に歌えば
6.ハルキオンザロード
7.悲しみ一つも残さないで
8.バケモノ
9.リタ
10.たられば
11.命にふさわしい
12.ぼくら対せかい

お知らせ

■ライブ情報

amazarashi Live Tour 2018
「地方都市のメメント・モリ」

04/20(金) [東京]Zepp DiverCity Tokyo
04/28(土) [大阪]Zepp Osaka Bayside
04/30(月) [福岡]福岡市民会館
05/04(金) [愛知]Zepp Nagoya
05/06(日) [広島]JMSアステールプラザ大ホール
05/12(土) [宮城]SENDAI GIGS
05/19(土) [新潟]新潟県民会館
05/20(日) [石川]本多の森ホール
05/26(土) [東京]豊洲PIT
06/03(日) [北海道]Zepp Sapporo

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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