ギリシャラブが志磨遼平(ドレスコーズ)が監修を務めるレーベルJESUS RECORDSより新作EP『(冬の)路上』をリリース

ギリシャラブ | 2018.01.18

 京都を拠点に活動するバンド、ギリシャラブが新作EP『(冬の)路上』をリリースする。昨年に京都のミロクレコーズからリリースした『イッツ・オンリー・ア・ジョーク』で注目を浴びた彼らは、サイケデリックなサウンド、妖しい色気のあるメロディ、そして文学性の高い日本語歌詞が魅力のニューカマーだ。

 新作は、志磨遼平(ドレスコーズ)が監修を務めるレーベルJESUS RECORDSからリリースされる。バンドを率いる天川悠雅(ヴォーカル)は音楽のみならず海外文学や映画の膨大な素養の持ち主で、そういうルーツが、聴いていて思わずハッとさせられるフレーズの数々に結実している。

 独特な癖の強さを持ちつつも、よりポップな存在となってきた彼らは、どんな変化を経てきたのか。天川悠雅へのメールインタビューでは、ルーツや作品の背景、そして昨年に夭逝した埜口敏博(ベース)のことまで、様々なことを訊いた。

EMTG:『(冬の)路上』はドレスコーズ志磨遼平さんが監修するレーベルJESUS RECORDSからの第一弾アーティストとしてリリースされます。彼からどのように誘われたか、どういう志を共にしたか、教えてください。
天川悠雅:6月に京都の京都みなみ会館という映画館に志磨さんがトークショーをしに来て、そのあとにそこのベランダで少し話しました。前作『イッツ・オンリー・ア・ジョーク』は、大学の軽音楽部の部室で、そこにある機材を使って録音しました。あの作品を作れたということは素晴らしい体験であったけれども、今度はプロのエンジニアに録音してもらい、「より多くの人に開かれた作品を作りたい」という意志がありました。そういった話をしたら志磨さんがそれならと、「JESUS RECORDS から出さないか」と言ってくれたんだとおもいます。とてもうれしく、スキップして帰りました。映画館には、自転車で来ていたのですけれど。
EMTG:志磨遼平さんは前作『イッツ・オンリー・ア・ジョーク』の「機械」「セックス」をレコード屋で偶然に聴いてすぐに気に入ったとツイートしています。自分たちの曲が届いたこと、それをきっかけにレーベルに所属するようになるなど関係が生まれたことは、バンドにとってどういうフィードバックになりましたか。
天川:ものすごくうれしかった。ほぼ純粋に音楽だけで気に入ってた。今よりもっといろんな人にぼくらの音楽を聴いてもらいたいし、志磨さんのお陰もあってそのための環境は整ってきています。
EMTG:『イッツ・オンリー・ア・ジョーク』から9ヶ月でバンドは大きな転機をいくつも迎えました。自分たちに最も影響を与えたと思える出来事を振り返っていかがですか?
天川:7月にベースを弾いていた埜口が亡くなったこと。あれはたいへん大きな出来事でした。彼の友人としてどのようなことを考えたか、ということについてここで語るのは控えます。あくまでバンドとしてあの頃どのような状態だったのか一言でいえば、もうとにかくぐちゃぐちゃだった。3月にメンバーが一人抜け、二人入って、入ったメンバーが、いろいろな意味で一筋縄ではいかない。バンドのサウンドを練り上げるのに想像以上に時間も労力もかかる、でも3、4ヶ月経ってようやく少しアンサンブルがまとまり始めた、そんな中で。でも、誰も「辞めたい」と言わなかった。それが重要なファクターだという気がします。
EMTG:ギリシャラブのバンドサウンドは、フレーズとフレーズの間の隙間を活かした独特なアレンジが特色に感じます。60年代や70年代の日本語のフォークやロック、00年代以降の海外インディ・ロック、ワールドミュージックなど様々なルーツを感じさせるのですが、自分たちとしてはどんな影響源が大きいと思っていますか。
天川:好んで聴いていたのは、60年代~90年代の英米のロック音楽。逆にいえば、そことの距離を常にはかりながら音楽を作ってきたように感じます。それ以外に、いままでに積極的に参照したおぼえのあるのは70年代、80年代のイギリスのフォーク、いまの西アフリカのブルースやポップ音楽、トロピカリアの頃のブラジル、チル・ウェイブとか……。
EMTG:天川さんはブラーをフェイバリットに挙げているようですが、ブラーというバンド、もしくはデーモン・アルバーンというミュージシャンのどういうところを尊敬していますか。
天川:ブラーからギタリストのグレアム・コクソンが脱退し、バンドがその活動停止するころからデーモンはそのソロでアフリカやアジアの音楽と向き合うようになったんです。第三世界の音楽をまなざす、デーモンのそういったアティチュードは誰の目にも明らかで。他のプロジェクトと違って、基本的に決まったメンバー四人でやらないといけないわけでしょう。デーモンと同じだけの音楽的な広がりを、他のメンバーが等しく持っているわけではないでしょうから難しかったと思います。でもそういう制約を反転させて全然違った力にする。『マジック・ウィップ』のドラムなんて、聴いた瞬間に「ブラーだなあ」と笑ってしまいますけれど、それもひとつの力ですよね。
EMTG:ギリシャラブの大きな特色は歌詞にあるとも思います。数々の映画や文学作品を参照元に、イメージ喚起力の強い言葉を用いた寓話のような歌詞を持つ曲がとても多い。こういった作風はどのようにして磨かれていったのでしょうか。
天川:ぼくは歌詞を知らなかった。いや、知っていたけれど、ほんとうに心酔したり、研究したりするくらい好きな歌詞っていうのが、日本の音楽にも、外国の音楽にもありませんでした。単純に日本の音楽にあかるくないというのが大きいのかも。だから、自分が読んできた小説や映画や詩が拠り所になるのは、自分としては自然なのです。こんな歌詞は自分にしか書けないと胸を張っていえるのかどうかはさておき、自分にはこの歌詞しか書けない、と胸を張っていうことは、すべての音楽をやっている詩人の責務でしょう。
EMTG:いろいろと仕掛けの多い曲の構造である一方、ギリシャラブのポップ性をもたらしているのはメロディと歌の持つキャッチ力でもあると思います。メロディを作る上でどんなものであるように心がけていますか。
天川:最も多いパターンは、和音や構成、リズムが先に出来て、メロディーが来る。メロディーは、曲が呼んでくれます。それに身を任せるようにしています。
EMTG: 『(冬の)路上』の5曲はどんなコンセプト、テーマをもとに作っていきましたか。『イッツ・オンリー・ア・ジョーク』はある種のストーリーテリングを持った構成のアルバムでしたが、今回はそういった物語性は意識しましたか。
天川:意識しませんでした。というより、そういった物語性を廃することを制作開始当初から意識していました。とにかくポップな曲を5曲集めてポップ・アルバムを作るんだ、それを目当てに曲を書きました。曲で勝負しようと考えていたということですね。
EMTG:『(冬の)路上』というタイトルはどのような意図でつけたのでしょうか。
天川:3曲目「ブラスバンド」の冒頭の歌詞から取りました。タイトルに悩んでいるときに知り合いの鞄に ”ON THE ROAD”って書いてあるのをみて、それが『ブラスバンド』の歌詞とリンクしてこれでいこう、と。どうしたってケルアックと結びつけずにはいられないし、そう考えると、ずいぶん大時代的なタイトルにもおもえるでしょう? ぼくはこのタイトル、気に入っています。先の質問に対する回答に鑑みていえば、前作『イッツ・オンリー・ア・ジョーク』のように、アルバム全体のメタファになるようなタイトルはダメだった。しかしアルバムを表象する言葉が必要だった。ビート運動っていうのは、社会のシステムと、そこに与する保守層への反発の力だったでしょう。そういう意味では、今回の作品は、「路上」の地平から歌われているとおもいますよ。
EMTG:「からだだけの愛」はディスコビートと曲後半のコーラスが印象的な一曲です。ギリシャラブの中でも最も大衆性を持った曲になり得ると思うのですが、これはどんなモチーフから生まれた曲でしょうか。
天川:今あえて、ディスコ・ビートをやりたいというアイデアはぼんやりありました。デッド・オア・アライヴの “ You Spin Me Round ”みたいな。それでギターの取坂の家で酒に酔ったときに、アコギを弾きながら、五分くらいで展開、メロディー、歌詞が同時に出てきました。こだわっていたのはサビのメロディの音程で、この曲≪I Miss Youは毎日で~≫の音程が、他のどのセクションよりも低いんです。ミドル・テンポのディスコ・ビートと、低い音程で言葉数の多いメロディーというのは相性がいいのだと思います。
EMTG:「モデラート・カンタービレ」は、冒頭のハーモニーやギターリフ、途中のギターリフ、物語性を持った歌詞も含めて、サイケデリックで幻想的な感触の強い曲に感じます。これはどのようにして生まれた曲でしょうか。
天川:ジャパンの1stアルバム 『Adolescent Sex』に入ってる感じの曲のイメージにデヴィッド・ボウイの『レッツ・ダンス』のリズムとか、ちょっとフラメンコっぽいアコギとか、そういう感じをイメージしながら作りました。歌詞は今作では唯一、(台詞を除いて)三人称で書きました。ギロチンで首を刎ねられるというのは、ぼくが実際に子供の頃から何度か見た悪夢なんです。書いてみて思ったのは、ぼくが読んできたフランスの小説と、悪夢というのは非常に親和性が高いというか、悪夢そのもののような小説が多いですね。
EMTG:ラストの「どういうわけか」は、ダブの音響処理やワールドミュージック的なリズムを用いたリズムが印象的です。この曲はどういうイメージから作っていったものですか。
天川:おそらく2015年か2016年からある曲です。ウォッシュト・アウトを、その頃、その少し前かな、はじめて聴きました。ぼくがいいと思ったのは、ドラムにハイハットやライドの刻みが欠けていて、シンプルで、サステインが短かったこと、反対に良くないと思ったのはリヴァーブの音が空間いっぱいに広がっていて、隙間がなかったことです。そこで、シンプルでサステインの短いドラムに、抑制のきいたギターとベースのリフレインを土台に、ラテン・パーカッションを上物として扱う、隙間だらけの曲を作りました。ピアニカは志磨さんのアイデアで入れたんですが、それで少しダブっぽいイメージが皆に共有されて、そのベクトルでミックス作業も進みました。
EMTG:作品にはセルフ・プロデュース的なアマチュアリズムを脱し、より開かれた存在を目指しているような感触を受けます。自分たちとしてはどんな方向に向かっていると感じていますか。
天川:音としては、よりブライトでハイ・ファイな方向へ進むんじゃないか、と。求道的に自分の好きなように音楽を作るっていうことと、それが多くの人に伝わって好まれるっていうことが相容れないものだと考えるひともいるだろうけれど、ぼくはそうは思いません。少なくともギリシャラブが、それらが両立する地点に向かっているような感触はあります、ぼくやメンバーが舵を取っているわけではなく、作った作品やぼくらの活動がひとりでに運動した結果として。自分としては今まで通り、自分がクールだと思う音楽を作ります。

【取材・文:柴 那典】

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リリース情報

(冬の)路上

(冬の)路上

2018年01月17日

JESUS RECORDS

1.からだだけの愛
2.モデラート・カンタービレ
3.ブラスバンド
4.ペーパームーン
5.どういうわけか

お知らせ

■MUSIC VIDEO

「からだだけの愛」MV

「モデラート・カンタービレ ? からだだけの愛(Official Video)


■ライブ情報

●ギリシャラブ「(冬の)路上」発売記念LIVE

日程:2/18(日)
会場:新宿レッドクロス
出演:ギリシャラブ、Gateballers、Gi Gi Giraffe
開場/開演: 18:00 OPEN / 18:30 START
チケット代:前売り¥2,500 / 当日¥3,000

日程:2/25(日)
会場:京都 西院ネガポジ
出演:ギリシャラブ、カネコアヤノ、折坂悠太(合奏)
開場/開演: 18:00 OPEN / 19:00 START
チケット代:前売り¥2,400 / 当日¥2,900

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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