ストリングス&ホーンを従えて行う特別なベストセレクション公演「Sinfonia “Chronicle”」で、SHE’Sが表現したいこととは?

SHE’S | 2018.04.27

 SHE’Sには、いつかフルオーケストラで自分たちの音楽を表現したいという夢がある。その夢を実現するために、SHE’Sが「Sinfonia “Chronicle”」(シンフォニア・クロニクル/通称シンクロ)という自身の新たなライブシリーズを立ち上げた。その第1回目の会場は5月25日のNHK大阪ホールと5月27日の中野サンプラザ。ストリングスとホーンを迎えたスペシャルな編成で、これまでにリリースしてきた楽曲の中から選びぬかれたベストセレクション公演として開催されるという。今回は、その開催を直前に控えたメンバー全員にSHE’Sが「シンクロ」という新たな場所で何を表現したいのか、話を聞いた。

EMTG:本題に入る前に、4月に終わった「SHE’S Tour 2018 “Wandering”」がバンド史上最長で。対バン10本、ワンマン10本というロングツアーでしたけど、長かったですか?
広瀬臣吾(Ba):思ったよりすぐ終わっちゃったなっていう感じでしたね。
EMTG:どうしてそう感じたんでしょう?
広瀬:今まで考えたことのなかったことを、いっぱい考えたツアーだったかなっていうのはあるんですよ。セットリストの組み方とか……。
井上竜馬(Vo):それ、今まで考えてなかったんや(笑)。
広瀬:まあ、いつもより全員で考えたかなっていう感じだったんですよね。
木村雅人(Dr):メンバーがお互いに助け合えたんです。今までは竜馬にMCも歌も引っ張ってもらってたところが多かったんですけど、今回のツアーでは全員でMCをやるっていうのをひとつのデフォルトにしたくて。
EMTG:それはツアーを回る前に決めてたことだったんですか?
服部栞汰(Gt):いや、対バンツアーの真ん中を過ぎたぐらいからですね。今回は1本ライブが終わったら、みんなで次に向けてしっかり話し合ったりもしたんですよ。
井上:今までそういう話し合いはほとんどなかったもんな。
服部:それでみんなでMCをやるって決めたんですけど、最初の頃はグダグダでしたね(笑)。緊張しちゃって……。急に「うわ、急にキムが入ってきたっ(汗)!」とか。
井上:そしたら、すぐに俺のほうを見て助けを求めてきたよな(笑)。
全員:あはははは!
服部:もちろんMCだけじゃなくて。ライブの煽り方とか、お立ち台の使い方とか、自分たちの見せ方をちゃんと考えられたから、今まででいちばん成長したツアーでしたね。
EMTG:そういう意識になったのは、やっぱり前半の対バンツアーが大きかった?
井上:そうですね。あからさまに打ちのめされて、あからさまに自分たちに足りないものが見えてきたんです。さっきキムが「助け合えた」って言ってたけど、対バンの先輩バンドは自分のメンバーのことをめちゃめちゃ信頼してたんですよ。それと同じぐらいお客さんのことも信頼してた。それを対バン相手の……俺らのホームでも感じさせられるっていうのは、やっぱり格の違いを感じたんです。それは経験の差だけなんかな?と思ったら、そうじゃないから。意識の違いなんですよ。それで、俺らも各々のメンバーの出方を見直すようになったし、俺の場合だったら、ハンドマイクで歌う時はメンバーに楽器を任せるっていう姿勢を出すことで、信頼しようと思ったし。そういう細かいことを積み重ねながら、より良く意識が変わっていけた20本だったと思いますね。
EMTG:ちなみに、対バンでは誰にいちばん刺激を受けましたか?
全員:TOTALFAT。
EMTG:声が揃った(笑)。
井上:そもそもライブの持って行き方が全然違いましたね。たぶん俺らは“ロックバンド”としていたいバンドなのに、そういう活動をし切れてなかったんですよ。だから、ゴリゴリのロックバンドとやることで、「これがやりたいんだ!」みたいな感覚は生まれて燃えるんですよね。それはBIGMAMAにしても、バニラズ(go!go!vanillas)にしても。
EMTG:うん、その流れはワンマンにも続いてて。ファイナルのEXシアターで見た時、SHE’Sが今まで以上にロックバンドとしてタフになったなって感じました。
井上:対バンツアーで得たことは、絶対にワンマンで生かしたいと思ってましたからね。
EMTG:特に「Running Out」から「WHITE」へつないだ流れが素晴らしかった。熱くて激しいSHE’Sとドラマチックで美しいSHE’Sをあえて繋いで聴かせるっていう。
井上:ふつうに考えたら、だいぶヘンテコな流れなんですけどね。
服部:あそこはすごく心配だったから、スタジオで何回も合わせたんですよ。
井上:でも、いろいろな人が「あの流れは良かった」って言ってくれたんです。SHE’Sの中ではロックなタイプの曲の後に、SHE’Sの……持ち味って言うのかな? ああいうバラードっぽい曲の両方を、ちゃんと死なせずに表現できたのは良かったなと思いますね。
EMTG:SHE’Sのライブって、初めて来た人はびっくりしますよね。「WHITE」とか「Over You」のイメージでいると、こんな泥臭いバンドなのか!ってなるから。
井上:もっとパブリックイメージに沿った見せ方に絞れば、SHE’Sはもっと需要がある層に届くんじゃない?って言われるんですけどね。それも納得はできるんですけど……。
広瀬:そんなん言い出したら、俺が髭を伸ばすのも無しじゃないですか。(※広瀬は今回のツアーから髭を伸ばし始めた)
全員:あははは!
井上:俺もライブで柄シャツを着るべきじゃないし、もっとヒラヒラした貴公子みたいな服を着ればいいっていうことになるからね。
広瀬:襟元がフリフリのやつな(笑)。
井上:そうしたくないのは、やっぱり俺らは“ロックバンド”でいたいっていうのがあるんですよね。シュッとしたバンドに見えるけど、根っこはそうじゃないよっていうのを見せたい。だから、俺は「Getting Mad」みたいな曲も書くし。ああいうフックを入れるのは、明確に言ってないけど、その曲自体が「ロックバンドでいたい」っていう自分たちの意思表示になればと思ってるからなんです。
EMTG:そういえば、今話にも出ましたけど、臣吾くんが髭を伸ばした件は、ファンの間では問題になってて(笑)。いつから伸ばしてたんですか?
広瀬:ツアーの直前からです。
井上:ゲネプロの前まで1週間ぐらい会わなかったから、俺らが気づいたのは1本目の2日前ぐらいやったよな?
広瀬:その前から生やしてたのは気づいてなかったの?
服部:単純に剃ってないんやな、と思ってた。
EMTG:メンバーはそれを見て何か声をかけたんですか?
服部:「いいやん」って言った。
井上:俺らの中に髭キャラはおらんかったしな。もともと俺と臣吾は髪型も一緒で、似てるって言われてややこしかったら、ちょうどいいなと思いましたね。
広瀬:正直、事務所の人に「剃ったほうがいいんじゃない?」って言われたら、剃ってたんですけど。何も言われないから、いいかなって。まあ、賛否両論あるけどな。
EMTG:なるほど(笑)。そういういろいろな変化があったツアーを経て、5月に新しく始まるライブが「Sinfonia “Chronicle"」です。
井上:ストリングスとホーンと一緒にやるライブですね。
EMTG:去年初めてストリングスツアー(「SHE’S Hall Tour 2017 with Strings ~after awakening」)を開催したことが、きっかけだったりするんですか?
井上:昔からフルオーケストラのライブをやりたいと思ってたし、いつかホールでライブをやるぞっていう意気込みもあったから、その目標の第一歩として、去年のツアーはやったんですよね。それをよりブラッシュアップしたいっていうところから「Sinfonia “Chronicle"」が始まったんです。だから来年はもっと(楽器が)増えてるかもしれなくて。
EMTG:ゆくゆくはフルオーケストラを目指すんですよね?
井上:そうです。
EMTG:そもそも、どうして昔からフルオーケストラでやりたいと思ってたんですか?
井上:やっぱり誰かと一緒に演奏するのはシンプルに面白いんですよね。SHE’として、この4人のライブをずっと一緒にやってきて、これからもやっていきたいけど、そうじゃない人と演奏すると、何とも言えないゾクゾク感があるんですよ。その楽しさを、去年ストリングスと一緒に回ったホールツアーで味わっちゃったんですよね。
EMTG:今日、前半のインタビューで“ロックバンド“へのこだわりっていうのを聞いたから、あえて聞きますけど。ロックバンドの中には、なるべく他の楽器を入れないことを貫くバンドもいるじゃないですか。そのあたりはどう考えてるんですか?
井上:俺はロックバンドっていうのは、メンバーだけの演奏だから“ロックバンド”だっていう風には思わないんですよね。そもそも曲として壮大なものが好きだから。4人だけの音でやることに執着がないです。そういうのをやりたい時はライブハウスでやればいいし、ホールではホールの見せ方でライブをしたいんですよ。最近、ブルーノ・マーズのライブを見に行ったんですけど、この先、例えば、俺らが武道館とかもっともっと大きい会場に行った時には、ああいうショーをしたいなと思ったんですよね。そういうライブを目指したうえで、“ロックバンド”っていう姿も絶対に見せられると思うから。そもそもホールクラス、スタジアムクラスには、そういうロックバンドがいっぱいいますし。
EMTG:たしかに。オーケストラを入れたバンドって、誰を思い浮かべます?
井上:俺の中ではthe HIATUSですよね。めちゃくちゃフルオーケストラやけど、ちゃんとロックバンドになってましたから。
服部:俺はKISSかな。ライブDVDで見たんですけど、あのレベルのロックバンドがやるフルオーケストラはかっこいいですよね。
井上:へぇ~、それ見たいわあ。
EMTG:「Sinfonia “Chronicle”」っていうタイトルは、Sinfonia=交響曲と、Chronicle=年代史を組み合わせた言葉だそうですけど、どういう意味を込めたんですか?
井上:去年は「with Strings」みたいなことだったんですけど、これからフルオーケストラに向かっていくために何かを掲げていきたいなっていうのは考えてて。シンフォニック的な言葉を入れたかったのと……クロニクルはなんで出てきたんだっけ?
スタッフ:略称があったらいいよねって。
井上:あ、そうや。略して、シンクロになったら、お客さんとシンクロできるとか、ストリングスと俺らがシンクロするっていう意味になるから、クロから始まる言葉を探したんですよ。で、クロニクルは年代史やから、ここから歴史を重ねていけるなと思って。
EMTG:いい言葉ですね……でも、これ、去年のストリングスツアーの時からつけとけば良かったのに(笑)。
全員:あはははは!
広瀬:まあ、去年はここから繋がっていけるとは思ってなかったからね。
井上:改めて、ここからですね。
EMTG:今、準備はどういう段階なんですか?
井上:やっとセットリストが決まってきた感じですね(4月中旬の取材時点)。
服部:みんなでホーンのアレンジを確認したりしてます。
井上:俺、昨日聴いてひとりで踊っちゃった(笑)。
EMTG:楽しそう!元の音源にストリングスとかホーンが入ってない曲に関しては、このライブ用のアレンジをするっていうことですよね?
井上:そうです。もともとストリングスが入ってない曲にも、アレンジャーの方に「ここにも追加でストリングスを入れてください」ってお願いをしたりとか。もともとのバンドの音を減らす感じではなくて、バンドの音にストリングスとホーンが入ったらどうなるのか?っていう面白さでやるのは、相変わらず去年のツアーと一緒ですね。
EMTG:かなりガラッと変わりそうな曲もあります?
服部:めちゃくちゃありますよ。
井上:やっぱりホーンの存在はデカいよな。
広瀬:お客さんの3分の1しか知らんかも?っていう曲もあるよね。
服部:けっこう昔の曲もやる予定なんです。
井上:今回はSHE’Sのベストセレクションっていうコンセプトなので、インディーズ時代の曲もガンガン入れていくし、コアな曲も入れたら面白くなるんちゃう?っていうノリで考えてるので。来てくれる人はインディー盤も予習して来てくれたら、より楽しめると思いますね。

【取材・文:秦 理絵】

tag一覧 ライブ SHE’S

リリース情報

Wandering

Wandering

2017年12月06日

ユニバーサルミュージック

1. All My Life
2. Blinking Lights
3. Flare
4. Getting Mad
5. Remember Me
6. White
7. Beautiful Day
8. C.K.C.S.
9. Over You
10. The World Lost You
11. Home

お知らせ

■ライブ情報

Sinfonia “Chronicle” #1
■2018年5月25日(金) NHK大阪ホール
時間:開場 18:00 / 開演 19:00
料金:全席指定 ¥4,500(税込)

■2018年5月27日(日) 中野サンプラザ
時間:開場 17:00 / 開演 17:30
料金:全席指定 ¥4,500(税込)


【 Sinfonia “Chronicle"特設ページ 】
http://she-s.info/sin-chro/



NIIGATA RAINBOW ROCK 2018
05/04(金)万代シテイ(無料会場) / 新潟LOTS / NEXS NIIGATA / 新潟GOLDEN PIGS RED STAGE 新潟GOLDEN PIGS BLACK SATGE / 新潟CLUB RIVERST / LiveHouse柳都 SHOW!CASE!! 柳都オレンジスタジアム / 市民プラザ / ジョイアミーア / 日報ホール

rockin’on presents「JAPAN JAM 2018」
05/05(土)千葉市蘇我スポーツ公園

OSAKA METROPOLITAN ROCK FESTIVAL 2018
05/19(土)METROCK大阪特設会場(大阪府堺市・海とのふれあい広場)

百万石音楽祭 2018 ~ミリオンロックフェスティバル~
06/02(土)石川県産業展示館 1〜4号館

XFLAG FREAK2018 Presented by MONST NIGHT
06/29(金)幕張メッセ 国際展示場1・2ホール

SUMMER TIME LOVER CIRCUIT「サマラバ!」2018
06/30(土)仙台市内ライブハウス6会場

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

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