今年結成10周年を迎えたMOROHAが再録によるベストアルバムをリリース。その意義とは…?

MOROHA | 2018.06.05

 今年結成10周年を迎えたMOROHA。彼らがラップとギターで紡いできた物語たちは、時に聴く者の背筋をしゃんとさせ、胸を熱くさせ、気持ちをほっこりさせ、俺にもやれる! と心を鼓舞させてきた。
 そんな彼らがメジャーレーベルに移籍。再録によるベストアルバム『MOROHA BEST~十年再録~』をリリースする。リリースから日を重ね、ライブを重ねる中、多くの糧を経ての再録となった今回の楽曲たち。ワンマイク、ワンギターのみのスタイルと、楽曲に込めた想いや姿勢、気持ちや願い、初期衝動や心の機微描写や表現たちはそのままに、更に今ならではの表現や表情付けがオンされたように伺える。
 そんな彼らにインタビューを。まずはふと疑問に思った。これまであえてスタンドアローンでやってきながらも、何故ここでメジャーと手を組む必要があったのか……?と。何か理由があるはずだ。話はそこから始まり、のちに私の不意な作品印象から意外な展開に……。

EMTG:MOROHAには、ここまでわりとスタンドアローンで出来ている印象もあったもので、今さらこのタイミングでのメジャーからのリリースが少々意外でした。果たしてその必要性があるのかな……?って。
アフロ:自分もそう思います。だからこそ一緒にやれるところもあって。
EMTG:それは?
アフロ:自分たちで出来ない状況でメジャーと仕事をすると、きっと言いなりになるでしょうから。今、もう既に自分たちだけで立ってるよ、という状況で仕事をするのであれば、対等に話が出来るじゃないですか。
UK:特別、メジャーやインディーズにこだわってやってきたわけじゃないですからね。その時々で最も自分たちが欲しているものを選択してきただけで。これまでも特別何か思いがあって選んで来たわけでもなかったし。逆を言うと元々メジャーも視野にあったとも言えるわけで。今回、その必要な時が来て、その相手がユニバーサル(今回リリースのメジャーレコードメーカー)で、このタイミングだったんでしょう。
アフロ:どのみち俺ら2人だけで出来てたことって今までも全く無かったんです。例えインディーでやろうが自分たち2人だけでなく、そこのスタッフの方々にも手伝ってもらってきたもので。そこに関しては今も昔も変わらないかな。これまでも、周りの人で、「この人はどれぐらいMOROHAのことを好いてくれているか?」で俺たちは誰と組むか? を決めてきましたからね。で、「次のリリースの際に誰と仕事する?」となった時に、一番熱意があったのがユニバーサルさんだったと。なので、会社や組織ではなく人で選びました。その選んだ人がいる会社がたまたまユニバーサルで、デカくてえらく金を持っているらしいぞと。で、やったーって。
EMTG:またまた(笑)。
アフロ:だったらその強みを活かしたやり方を当然考えるわけで。基本、俺ら自体のやることは変わらないので。今でも必要であれば自分たちでチラシも撒くし。インディーズの頃とやっていくということは変わらず一緒ですからね。
EMTG:それって、今回の再録ベストと一緒ですね。今も昔もやっていることや方法論は全く変わってないという。まずはメジャーリリースからの第一弾で、今回どうして再録ベストを出したか? からお聞かせ下さい。
アフロ:理由の半分は、特に1stの頃は当時の録音物じゃ今の自分たちが聴いて物足りないからでした。より声も太くなってるし、UKのギターもより感情的になってるし。その今の自分たちとして録音し直したい気持ちが半分。残りの半分は、こんなことを言うとマイナスプロモーションかもしれないけど、正直敗北でもあったからで。
EMTG:敗北……ですか?
アフロ:そうです。敗北の歴史があったが故に、このような方法を取らざるを得なかった。というのも、1st、2nd、3rdが、もっとお茶の間的で、その角の商店のおっちゃんやおばちゃんにまで知れ渡っていたら、これをやる必要は無かったかもしれないんです。俺の書いているリリックに関しては連続ドラマなんで、1st、2nd、3rdってドラマで言う1話、2話、3話の視聴率になってくるんです。で、まだこの程度の視聴率だったら4話目を放送した時に、視聴率30%を越える伝説的な番組にはならないなって。故に、最録ベストという今のスキルで録り直した今の自分たちを、メジャーという拡散力のある人たちと組んでリリースするのが最良の手だと思ったんです。
EMTG:では、次は確実に視聴率30%を狙う為の……。
アフロ:いや、もうこれが30%いくと思ってますから。あと欲を言えば、自分たちの過去の作品たちも素晴らしいと自負しているんで、もっともっと聴いてもらいたいというのもあって。それらにも、もう一度光を当てたいですからね。
UK:元々寄せ集め的なベストアルバム自体が好きじゃなかったですから。だけど、再録として今の自分たちの状態でもう一度パッケージ出来るんだったら、それはまた意味合いが違ってくるので。で、今回このような形で出すことになったんです。これが普通にこれまでのベスト盤だったら出してなかったでしょうね。
EMTG:どうですか? 録り直してみて。本来理想としていたものに近づけましたか?
アフロ:だとイイですね。でも、過去の自分たちもけっこう手ごわいですから。
EMTG:分かります。今回、過去のものと比べて聴いたんですが、表現力や音の鳴り等は格段にレベルが上がったんですが、逆に失ったものもあったなって。
アフロ:うわっ、それって超へコむ。それを言語化できますか?
EMTG:うーん……当時、頭の中で想像していたものに対しての虚勢やギラギラした部分の欠如というか……。今や現実になっていたり、それを追い越している部分もあるじゃないですか。今は既に見えていたり、正体が分かっていたり。その見えない仮想敵みたいなものに対する闇雲なガムシャラさは、やはり失ったかなって。
アフロ:うわっ、その意見は今一番ツラいです。
EMTG:フォローするわけじゃないけど、今、逆に得ているものもあるじゃないですか。
アフロ:いや、それじゃダメなんです。暮らしから変えます。もう一回、あの六畳一間のあの生活に戻らなくちゃなって。やっぱりイヤなんですよ。ひとつも無くしたくないんですよ、あの時の想いを。
EMTG:それでも逆に驚いたのは、1stから既に長い時間が経っているのに、相変わらず今でも初期衝動を擁していたところだったんです。
アフロ:それ、今やフォローにしか響かないです。まっ、都度そこで受けた感情を次に活かしてきたのが俺たちなので。そういった声もプラスにしていこうとは思ってますが、正直、そう感じられないように作ったつもりだったので。
EMTG:そうならないようにというのは?
アフロ:今の俺の方がギラギラしているし、今の俺の方が手さぐりでいようという状況に身を置いているつもりだったので。
EMTG:でも、やはりあの時から色々と時間が経ち、その分得たり、糧になっている部分もあるので、変わらず居続けるのは逆におかしいんじゃないですか? ぶっちゃけ、当時は机上だけで歌っていたものが多かった気がします。
アフロ:その言葉、非常に救いではあります。確かに。作った時は想像でしかなかったものもあります。例えば「奮い立つCDショップにて」の《DISC-1で試聴も出来る》って箇所。これは今では現実になっていたりするわけで。そう考えると響き方が違うかも。そこは当時の野心から、今では説得力に変わるわけですからね。
EMTG:そうです、そうです。今ならではのビフォーアフターが加わったというか。
アフロ:そうだ、そうだ! そういった響き方になってきますよね。
EMTG:言い替えると、一部分は活動していくうちに現実化出来たという、立証の歴史でもあったんじゃないかなって。
アフロ:分かる! そうなんですよね。だけど、どうしても自分はもっともっとと求めてしまうんです。でも、ここまでキチンと立証して下さったし、説明して下さってホント嬉しいです。
EMTG:いや、逆に私は言えば言うほど、自分で言い訳をしているように思えてきました(笑)。UKさん、今の会話を聴いてどう感じました?
UK:ハングリーさは自分も持っているつもりなんです。俺自身は、過去の自分に対してどうとか、勝負したり、比べているつもりはさらさらなくて。だって当時も自分としては、どの作品も100%の力を出してきたわけで。自分としては、当時知らなかった感情や想いも加わった分、良くも悪くも成長したアルバムですから。逆に過去の作品から失ってたものがあったと言われるのも、誇らしいことだと思ってます。なので、アフロのようにそういった部分での悔しさはありませんね。もしそれがあったら、あまりにも当時の自分がかわいそうですから。もちろん技術的な後悔は沢山ありますよ(笑)。でも、知らないなりの100%は常にして来たと自負しているんで。レコーディング方法は全く変わっていないので、単なる技術力や表現力の違いや変化としか認識してません。
EMTG:ちなみに今回の選曲に関しては?
アフロ:今のライブで演っているままなんですよね。選曲も今のライブでのセットリストみたいなもので。
UK:レコーディングに関しても、特に何も考えずにいつものライブ通りにやりましたから。
EMTG:何か聴きどころはありますか?
アフロ:1曲目と2曲目の間の曲間です。
EMTG:私はMOROHAのライブでの、お客さんが一音一句を聞き漏らすまいとライブに対峙しているかのような、みなさんが微動だにせずに聴き入っている、あの緊張した雰囲気がたまらなく好きなんです。
アフロ:でも正直、これからは座りのライブの方に移ろうとも考えていて。今まではライブハウスが主戦場でしたが、お客さんの聴いている状況を見ていると、座って聴いてもらった方が落ち着いて向き合えるからいいのかなって。俺らのライブはたぶん、地獄に感じるか、響くかのどちらかでしょうから。始まって数秒でイエスかノーか相手に判断してもらえるようにならないとなって。その2極のどちらかに分かれてもらえるように。常に最高か最悪かのどちらか。それは徹底してやりたいんです。
EMTG:そもそもMOROHAのライブはツンデレじゃないですか。ツンで来たと思ったら、急に真逆のデレが来る。その繰り返しだから、逆になかなか途中で逃げられない(笑)。
アフロ:そうなんです。分かってるじゃないですか。ここまで言って完全に見透かされてて恥ずかしいです。
EMTG:最後に今後のMOROHAのビジョンをお聞かせ下さい。
アフロ:いつまでも自分の曲に常に感動できる自分でいたいですね。それが根本なので。
UK:それを見つける旅です。あっ、後悔しない曲を作っていきたいです。あと、今後もネガティブなことでも言える時に言っておこうかなって。
EMTG:では、せっかくなのでここで何かひとつ言って下さい。
UK:実は俺、この前、うんこを漏らしたんです(笑)。
EMTG:……。
アフロ:先日それをUKが俺に嬉しそうに話してくれて。それが凄く嬉しかったんですよね。20年後も漏らした時はちゃんと報告出来る間柄、そんな二人でいたいんです(笑)。

【取材・文:池田スカオ和宏】

tag一覧 アルバム 男性ボーカル MOROHA

リリース情報

MOROHA BEST~十年再録~

MOROHA BEST~十年再録~

2018年06月06日

YAVAY YAYVA RECORDS / UNIVERSAL SIGMA

01. 革命
02. 二文銭
03. 俺のがヤバイ
04. ハダ色の日々
05. 奮い立つCDショップにて
06. 三文銭
07. 恩学
08. 勝ち負けじゃないと思える所まで俺は勝ちにこだわるよ
09. tomorrow
10. バラ色の日々
11. スペシャル
12. 四文銭

このアルバムを購入

お知らせ

■コメント動画




「MOROHA BEST~十年再録~」単独ツアー
07/15(日)F.A.D YOKOHAMA
07/17(火)名古屋 ROCK’N’ROLL
07/19(木)大阪アメリカ村 CLAPPER
07/21(土)広島・音楽喫茶 ヲルガン座
07/26(木)高松TOONICE
08/02(木)IWAKI burrows
08/04(土)仙台 enn 2nd
08/05(日)八戸 ROXX
08/09(木)札幌 KLUB COUNTER ACTION
08/11(土)福岡 Queblick
08/14(火)長野 the Venue
08/16(木)熊谷 モルタルレコード2F
08/24(金)the five morioka
08/26(日)新潟 CLUB RIVERST
08/30(木)京都 Live House nano
09/05 [Wed] G-shelter

MOROHA ZEPP TOKYO 単独ライブ
12/16(日)ZEPP TOKYO  ※詳細は後日発表

※その他のライブ情報・詳細はオフィシャルサイトをご覧ください。

トップに戻る